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Application of dispersive wave models for tsunami generation, propagation and runup (分散性波動モデルの津波の発生・伝播・遡上現象への適用)

氏名 Alwafi Pujiraharjo
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第483号
学位授与の日付 平成20年8月31日
学位論文題目 Application of dispersive wave models for tsunami generation, propagation and runup (分散性波動モデルの津波の発生・伝播・遡上現象への適用)
論文審査委員
 主査 准教授 細山田 得三
 副査 教授 陸 旻皎
 副査 准教授 力丸 厚
 副査 准教授 熊倉 俊郎
 副査 新潟大学工学部教授 泉宮 尊司

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Title Page p.i
Acknowledgements p.ii
Abstract p.iii
List of tables p.v
List of figures p.vi
Contents p.xii

Chapter 1 Introduction p.I-1
 1.1 Backgrounds p.I-1
 1.2 Objectives of the research p.I-6
 1.3 Outline of dissertation p.I-7
 References p.I-8
Chapter 2 Boussinesq-type equations for surface gravity waves: derivation and analysis p.II-1
 2.1 Introduction p.II-1
 2.2 Derivation of Boussinesq equations p.II-6
 2.2.1 Scaling and governing equations p.II-7
 2.2.2 Power series solution of Laplace equation p.II-8
 2.2.3 The kinematics boundary condition at the sea bed p.II-10
 2.2.4 Kinematics boundary condition at the free surface p.II-12
 2.2.5 The dynamic boundary condition at the free surface p.II-14
 2.3 Equations in terms of the horizontal velocity at the SWL p.II-15
 2.4 Equations in terms of the depth-averaged horizontal velocity p.II-17
 2.5 Equations in terms of the depth-integrated flux p.II-19
 2.6 Equations in terms of the horizontal velocity at an arbitrary z-level p.II-20
 2.7 Fourier analysis of the Boussinesq-type equations p.II-22
 2.7.1 Linear analysis p.II-24
 2.7.1.1 p.II-24
 2.7.1.2 Equations in terms of depth-averaged horizontal velocity, U p.II-26
 2.7.1.3 Equations in terms of horizontal velocity at an arbitrary level, u p.II-28
 2.7.2 Nonlinear analysis p.II-30
 2.7.2.1 p.II-30
 2.7.2.2 Equations in terms of depth-averaged horizontal velocity, U p.II-31
 2.7.2.3 Equations in terms of horizontal velocity at an arbitrary level, u p.II-34
 2.7.3 p.II-37
 2.7.3.1 Linear analysis of enhanced Boussinesq-type equations p.II-38
 2.7.3.2 Non-linear analysis of enhanced Boussinesq-type equations p.II-40
 2.8 Tsunami induce seafloor movement p.II-42
 2.9 Summary p.II-49
 References p.II-51
Chapter 3 Numerical solution p.III-1
 3.1 Introductions p.III-1
 3.2 Finite different schemes p.III-4
 3.2.1 Time differencing p.III-8
 3.2.2 Space differencing p.III-11
 3.3 Boundary conditions p.III-16
 3.3.1 Reflection boundary p.III-16
 3.3.2 Absorption boundary p.III-17
 3.4 Bottom friction p.III-20
 3.5 Wave breaking treatment p.III-20
 3.6 Runup treatment p.III-23
 3.7 Summary p.III-28
 References p.III-28
Chapter 4 Dispersive and nonlinearity effects on tsunami generation and propagation p.IV-1
 4.1 Backgrounds p.IV-1
 4.2 Tsunami generation p.IV-2
 4.3 Tsunami propagation and runup p.IV-10
 4.4 Summary p.IV-15
 References p.IV-15
Chapter 5 Model verifications p.V-1
 5.1 Introduction p.V-1
 5.2 One-dimension model verifications p.V-2
 Sine wave runup on constant slope beach p.V-2
 5.3 Two-dimension model verifications p.V-4
 5.3.1 Tsunami generation and evolution in a rectangular basin p.V-4
 5.3.2 Tsunami runup on a conical island p.V-10
 5.4 Summary p.V-20
 References p.V-20
Chapter 6 Application to Indian Ocean Tsunami of December 26th, 2004 p.VI-1
 6.1 Introduction p.VI-1
 6.2 Numerical domain and boundary conditions p.VI-3
 6.3 Tsunami source p.VI-5
 6.4 Simulation result and discussions p.VI-14
 6.4.1 Dispersion effect on the IOT propagation p.VI-14
 6.4.2 Maximum amplitude and runup p.VI-21
 6.4.3 Tsunami arrival time p.VI-24
 6.4.4 Runup and inundation at Banda Aceh, Indonesia p.VI-29
 6.4.5 Runup and inundation at the East coast of Sri Lanka p.VI-34
 6.5 Summary p.VI-37
 References p.VI-38
Chapter 7 Conclusions and further research p.VII-1
 7.1 Conclusions p.VII-1
 7.2 Recommendations for further research p.VII-3

 海底地震による津波は人命にかかわる多大な被害を生じる場合が多く、地震国であるわが国のみならず国外においても社会的な関心が非常に高い。特に2004年12月26日に発生したスマトラ沖地震によるインド洋津波災害には高い関心が集まり、多くの研究者がそのメカニズムの解明に取り組んだ。津波の伝播特性を理解することは津波の到達時間の予測やその結果を受けた住民の避難行動の高度化に直結するものであり精力的な検討が行われている。地震によって発生する津波の到達時間を予測するためには波の分散性を考慮することによる伝播速度の精度よい評価が不可欠である。また、浅海域での非線形性による波形の変形なども考慮に入れる必要がある。本研究では、長波から深海波までの種々の周波数成分を含んだ津波についてその伝播を精度よく予測する数値計算手法を構築し、室内実験および2004年のインド洋津波において計測された水位変動データとの比較検討をいった。また、津波の発生の境界条件設定について従来にない工夫をすることにより精度の高い数値計算となった。
 本論文は7章により構成されている。第1章では、これまでに起こった様々な地震津波被害を概観し、研究の背景および本研究の位置づけについて述べた。
 第2章では様々な種類のブシネスク方程式による表面重力波の基礎理論を展開した。ブスネスク方程式は、波の分散性を考慮し、深海波から浅海域・極浅海領域(長波領域)にいたるまで様々な周波数成分や水深に対応した波動方程式である。深海波領域ではストークス波、浅海域ではクノイド波の分散関係式に漸近するように分散関係が構成されている。この章では種々のブシネスク方程式の誘導についてその基礎的な理論解析を行い、分散関係の一致性について議論している。また、地震によって発生する海底面の水位変動を動的に評価するために、運動方程式中に海底面の変動に関する項が含まれており、海底面の変動に応じた海水の運動を動的に評価できる数値計算システムとなっている。
 第3章は、本計算プログラムの離散化およびそれに応じた空間微分および時間積分手法が詳細に述べられている。本計算に用いた離散化格子の種類は、通常用いられるスタガード格子とは異なり、コロケート格子となっている。すなわち、水位や線流量などの未知数が同一の点において定義されている。このため、風土差分のような安定だが精度が低いスキームではなく、やや不安定を助長するが精度の高い中心差分系のスキームを採用している。数値積分は最初に陽的にアダムス・バシュフォーススキームについて解き、次いでその結果を予測値として反復計算による修正をかける、予測子-修正子法を用いて計算を行っている。
 第4章は、津波の発生や伝播・遡上に及ぼす分散性と非線形性の影響について述べられている。深海域を伝播する津波は分散性が、浅海域を伝播する場合は非線形性が重要となる。ここでは様々な仮定に基づいた数値スキームを用いて同一の地形に対して計算を行い、波動方程式の分散性と非線形性が波形の変化や到達時間に与える影響について考察を行った。
 第5章は、遡上の計算手法について述べ、スロット法による遡上計算の方法とその改良として、スロット内部にスポンジ層を設け、遡上波を停止させるスキームを新たに導入した。このことによりスロットを通過していく非現実的な波の伝播を抑制することが可能となった。また、計算によって求めた津波の生成・伝播・遡上精度を評価するため、遡上計算の理論値や公表されている実験結果を用いて比較検討を行った。その結果、本研究に用いた数値計算法が妥当な精度であることが評価された。
 第6章では、2004年12月26日に発生したスマトラ地震でのインド洋津波の計算結果について記述されている。計算精度を向上させるため、震源域をこれまでに実績のない5セグメントに分割し、動的津波発生スキームを用いて津波を発生させた。計算に用いた、モデルは、非線形性、分散性について4種類のものを比較検討した。計算の妥当性については、人工衛星Jason-1による海面高度測定結果および津波遡上高および到達時間に関する公表されている聞き取り調査結果を用いて検証した。その結果、遡上高について本数値計算手法の妥当性が確認され、インド洋の両岸程度の距離を伝播する遠地津波では分散性の影響を考慮することによって到達時間の精度が向上することを示した。また、遠地津波においても部分的な浅海域の存在が水位地形の非線形性を助長することが示された。
 最終章である第7章では全体の総括を行った。

 本論文は「Application of dispersive wave models for tsunami generation, propagation and runup(分散性波動モデルの津波の発生・伝播・遡上現象への適用)と題し、7章より構成されている。
 第1章では、これまでに起こった様々な地震津波被害を概観し、研究の背景および本研究の位置づけについて述べている。
 第2章では様々な種類のブシネスク方程式による表面重力波の基礎理論を展開している。また、地震によって発生する海底面の水位変動を動的に評価するための計算手法を展開している。
 第3章は、基礎方程式の離散化とそれに応じた空間微分および時間積分手法が述べられている。離散化格子の種類は、コロケート格子となっており、水位や線流量などの未知数が同一の点において定義され、精度の高い中心差分系のスキームを採用している。数値積分は最初に陽的にアダムス・バシュフォーススキームについて解き、次いでその結果を予測値として反復計算による修正をかける、予測子-修正子法を用いている。
 第4章は、津波の発生や伝播・遡上におよぼす分散性と非線形性の影響について述べている。様々な仮定に基づいた数値スキームを用いて同一の地形に対して計算を行い、波動方程式の分散性と非線形性が波形の変化や到達時間に与える影響について考察している。
 第5章は、遡上の計算手法について述べ、その妥当性について検討している。計算で用いた遡上計算手法であるスロット法について解説し、その改良として、スロット内部にスポンジ層を設け、遡上波を停止させるスキームを新たに導入している。このことにより従来生じていたスロットを通過して遡上する非現実的な波の伝播を抑制させている。また、計算によって求めた津波の生成・伝播・遡上の精度を評価するため、遡上計算の理論値や公表されている実験結果を用いて比較検討を行い、研究に用いた数値計算法の精度の妥当性を示している。
 第6章では、2004年12月26日に発生したスマトラ地震でのインド洋津波の計算結果に述べている。計算精度の向上のため、震源域をこれまでに実績のない5セグメントに分割し、動的津波発生スキームを用いて津波を発生させている。数値モデルの非線形性および分散性について4種類を比較検討している。計算の妥当性について、人工衛星による海面高度測定結果および津波遡上高と到達時間についての聞き取り調査結果を用いて検証している。その結果、遡上高について本数値計算手法の妥当性が確認され、インド洋の両岸程度の距離を伝播する遠地津波では分散性の影響を考慮することによって到達時間の精度が向上することを示した。また、遠地津波においても部分的な浅海域の存在が水位地形の非線形性を助長することを示している。
 最終章である第7章では全体の総括としている。
 本論文は、以上のように波動場数値計算を駆使し、津波伝播解析の高精度化に大きく寄与しており、工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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