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Development of an innovative sewage treatment system consisting of UASB and DHS (UASBとDHSを組み合わせた革新的下水処理システムの開発)

氏名 小野寺 崇
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第500号
学位授与の日付 平成21年3月25日
学位論文題目 Development of an innovative sewage treatment system consisting of UASB and DHS (UASBとDHSを組み合わせた革新的下水処理システムの開発)
論文審査委員
 主査 准教授 小松 俊哉
 副査 准教授 山口 隆司
 副査 准教授 姫野 修司
 副査 東北大学大学院工学研究科教授 原田 秀樹
 副査 木更津工業高等専門学校准教授 上村 繁樹

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CONTENTS
Chapter 1 General introduction p.1
Chapter 2 The state of the art for UASB and post-treatment system p.11
Chapter 3 Evaluation of the sludge properties in a UASB treating municipal sewage under moderate climate conditions p.37
Chapter 4 Development of down flow hanging sponge reactor using new packing material p.53
Chapter 5 Evaluation of the characteristics of an alternative packing material for wastewater treatmentsystem p.71
Chapter 6 Long-term evaluation of the process performance of a full-scale DHS for nitrogen and fecal coliforms removal p.83
Chapter 7 Effect of a long -term outage on the performance of the full-scale DHS reactor for post-treatment of UASB treating municipal sewage p.103
Chapter 8 Conclusion p.115

 本研究グループが研究開発を進めているUASB (Upflow Anaerobic Sludge Blanket)とDHS (Downflow Hanging Sponge)を組み合わせた新規下水処理システムは、エネルギー消費が少なく、高い処理性能が得られるため、持続可能な下水処理の中核技術として期待されている。UASBは、既に熱帯・亜熱帯地域では実下水処理場で運転されており、運転管理が比較的容易で処理効率が高いため、開発途上国を中心に広く普及が進むと予測されている。さらに、UASBには温帯地域への適用範囲の拡大が求められている。しかし、冬季には保持汚泥の活性が必然的に低下するため、処理性能が悪化することが報告されている。そのためUASBは温帯地域の下水処理には普及しておらず、冬季において処理性能の安定性を維持する技術が求められている。DHSは、スポンジを汚泥の保持担体に適用した散水ろ床型のプロセスであり、本研究室が独自に開発を進めている技術で、これまでに第1世代型から第5世代型まで開発された。DHSは、処理性能と適用性の向上を図るとともに、実用化に向けた知見の集積を行っていく必要がある。以上のような背景から、本研究ではUASBとDHSを組み合わせた下水処理システムの開発を目指し、(1) 温帯地域へのUASBの適用に向けた知見の獲得、(2) DHSの処理性能および適用性の向上、(3) 実用化に向けた実規模DHSの性能の実証を目的とした。
 温帯地域にUASBを適用するためには、水温の低下による低い汚泥活性を補うため、汚泥を高濃度かつ良好な性状に保つことが必要であると考えた。そこで、中温消化汚泥を種汚泥とした無加温UASBを用いて、下水の通年連続処理運転を行い、その処理特性、保持汚泥性状および保持汚泥量の把握を行った。その結果、UASBは水温が11℃から27℃の条件において、流出全CODが平均123 mg/L (除去率65%)、SSが平均40 mg/L (除去率71%)の処理性能を発揮し、冬期においても処理水質を維持できることがわかった。このとき、UASBにはグラニュール汚泥が形成されたことが確認され、季節に関係なく、保持汚泥のSVIは約50 ml/gVSS以下となり、良好な沈降性を示した。その結果、連続運転期間で汚泥濃度が増加し、500日目には23.3 gVSS/Lの高い汚泥濃度を維持できることが判明した。このため、下水処理UASBを温帯地域で運転する際には、保持汚泥濃度を高く保ち、長いSRTを確保すれば、水温が低下した際にも良好な処理性能を発揮可能であることが判明した。また、見かけの汚泥増殖収率は同じ水温においても、温度低下期 (夏→冬)よりも温度増加期 (冬→夏)の方が低い傾向を示しており、最大で0.168 gVSS/gCODremoved、最小で-0.054 gVSS/gCODremovedとなった。さらに、UASBにおけるセルロースは、冬季に蓄積し、夏季に分解されていることが判明した。このため、UASBは、汚泥活性が低下した冬季ではSSを蓄積および捕捉除去し、温度増加期においてSSの分解を促進させる機構が処理水質を維持するために重要であることが示唆された。
 DHSの適用性および処理性能の両立を図るため、適用性の高い担体のランダム充填方式を採用し、接触効率および酸素供給能を高めた新規汚泥保持担体を開発した。この担体を用いたDHS-G6をUASBの後段処理に適用し、連続運転試験を行なった。本システムは、HRTが8.8時間 (UASB: 6.6時間、DHS: 2時間)の運転条件下で、処理水のSSが17 mg/L、BODが12 mgBOD/L、TKNが 6 mg/Lの良好な処理水質を得た。新型スポンジ担体の保持汚泥濃度は約12 gVSS/Lとなり、前世代型スポンジ担体よりも低かった。一方、スポンジ体積ベースの理論HRTが120分に対して、実測HRTが67分となり、ランダム充填方式である前世代型DHS (DHS-G3)よりも高い接触効率が得られた。DHS-G6の酸素供給は自然通気のみで、反応器内の酸素濃度は外気と同程度となり、処理水のDOは平均6.8 mg/Lを得た。DHS-G6では、優れたDO供給に加え、保持汚泥が高い硝化活性 (最大126 mgN/gVSS・day)を有していたことで、卓越したTKN除去性能を発揮したと考えられた。
 さらに、インドに建設された実規模DHSを用いて、処理性能の実証と実用化に向けた知見の獲得を行った。DHSは、処理水量が500 m3/dayの規模であり、HRTを1.5時間に設定して1800日間の連続モニタリングを行った。その結果、DHS処理水はBODが6 mg/L、アンモニア性窒素が5 mg/L、ふん便性大腸菌群が1.5×105 MPN/100mLの良好な処理水質を得られることを確認した。このとき、本DHSはパイロットスケールDHSと同程度の処理性能を有していることが判明した。さらに、DHSは(1) 5.3 mg/Lもの高いDOを有していたこと、(2) 汚泥濃度が23~46 gVSS/Lと高かったこと、(3) 52 mgN/gVSS/dayの高い硝化活性を有していたことから、技術的な特長が発揮されたことが確認された。よって、DHSは実規模への適用が十分に可能であることが実証された。
 本研究により、(1) 温帯地域へのUASBの適用に向けた汚泥濃度および汚泥性状に関する知見の獲得、(2) 新型スポンジ担体を適用したDHSにより処理性能および適用性の向上、(3) フルスケールDHSの性能の実証が達成され、新規下水処理システムの実用化および適用地域の拡大を推進する工学的に有用な知見を獲得できた。

 本論文は、「Development of an innovative sewage treatment system consisting of UASB and DHS(UASBとDHSを組み合わせた革新的下水処理システムの開発)」と題して8章で構成される。
 第1章では、本研究の意義と目的について述べ、論文の構成について記述している。
 第2章では、研究の背景と既往の研究について記述している。ここでは、低コスト型の下水処理技術として期待されているUASB技術やUASBの後段処理技術についてまとめている。
 第3章では、温帯地域における下水処理に適用したUASBの保持汚泥濃度や性状の評価を行っている。その結果、水温が低下する冬期においても、良好な処理水質が維持できることを示している。また、UASBの保持汚泥性状は冬期においても良好な沈降性を維持されていた。このとき、保持汚泥の汚泥増殖収率は、最大で0.68 gVSS/gCODremoved、最小で-0.054 gVSS/gCODremovedと、季節変動することを確認していた。
 第4章では、DHSの適用性および処理性能を共に向上させるため、新規汚泥保持担体を開発して連続実験を行っている。この結果、従来のDHSよりも優れた硝化性能を発揮することに成功した。これは新規担体が、高い汚泥保持濃度、長い実滞留時間および高いDOを発揮したことが影響していることを推察していた。
 第5章では、DHSの汚泥保持担体特性の評価が行われている。DHSは、従来の生物学的処理システムと比較して、処理性能に寄与する重要な要因である、(1)汚泥濃度、(2)下水と汚泥との接触効率、(3)DO、(4)HRTが高いポテンシャルを有していることが報告された。
 第6章では、実規模DHSリアクターを用いて、処理性能の実証と実用化に向けた知見を得ている。DHS処理水はBODが6 mg/L、アンモニア性窒素が5 mg/L、ふん便性大腸菌群が1.5×105 MPN/100mlの良好な処理水質を得られることを確認している。このとき、DHSは(1)5.3 mg/Lもの高いDOを有していたこと、(2)汚泥濃度が23~46 gVSS/Lと高かったこと、(3)52 mgN/gVSS/dayの高い硝化活性を有しており、技術的な特長が発揮されたことが確認されたことが示されている。この結果、DHSは実規模への適用が十分に可能であることが実証されたと結論づけられていた。
 第7章では、開発途上国における運転停止トラブルに対するDHSの耐性に着目している。DHSは10日間の強制的な運転停止後、再稼働直後から良好な処理水質を維持しており、優れた耐性を有していることが明らかにされていた。
 以上のように本論文は、低コスト型新規下水処理システム(UASB+DHS)に関してまとめたものであり、基礎的な知見から実用化に向けた実践的な知見まで幅広く探求することで、本システムの技術開発を推進していることから、工学上および工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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