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PLL技術及びセルフチューニング技術の電動機制御への応用と電動機駆動に適したパルス変調方式に関する研究

氏名 高野 明夫
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第270号
学位授与の日付 平成21年3月25日
学位論文題目 PLL技術及びセルフチューニング技術の電動機制御への応用と電動機駆動に適したパルス変調方式に関する研究
論文審査委員
 主査 准教授 野口 敏彦
 副査 教授 近藤 正示
 副査 教授 大石 潔
 副査 准教授 伊東 淳一
 副査 東京電機大学工学部教授 西方 正司

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目次
第1章 序論 p.1
 1.1 研究の背景 p.1
 1.1.1 電動機のPLL制御 p.1
 1.1.2 電動機のディジタル制御 p.5
 1.1.3 電動機駆動のための電力変換回路のパルス変調法 p.8
 1.2 研究の目的 p.9
 1.2.1 PLL技術に基づく加減速範囲の広い高精度な速度制御 p.9
 1.2.2 ディジタル制御技術に基づく高性能な回転位置制御 p.10
 1.2.3 新提案のパルス変調法に基づく電動機の可変速駆動 p.10
 1.3 論文の概要 p.11
 1.4 結言 p.13
第2章 PLLの同期過程 p.16
 2.1 PLLの基本構成と目的 p.16
 2.2 フィルタを用いない場合の同期特性 p.18
 2.3 フィルタを用いた場合の同期特性 p.19
 2.3.1 アクティブフィルタを用いた場合 p.21
 2.3.2 ラグリードフィルタを用いた場合 p.24
 2.4 PLLの周波数引き込みに関する結論 p.28
 参考文献 p.29
第3章 位相差のPIDフィードバックによる電動機のPLL速度制御 p.30
 3.1 緒言 p.30
 3.2 速度制御系 p.31
 3.3 同期引き込み範囲 p.35
 3.3.1 PDフィードバックの場合 p.36
 3.3.2 PID(PI)フィードバックの場合 p.37
 3.4 時間応答のシミュレーション p.41
 3.5 実験 p.43
 3.5.1 PDフィードバックの場合 p.43
 3.5.2 PIフィードバックの場合 p.43
 3.5.3 PIDフィードバックの場合 p.43
 3.6 結言 p.49
 参考文献 p.50
 付録 p.51
第4章 外乱補償を施した高速トルク制御誘導電動機のPLL速度制御 p.52
 4.1 結言 p.52
 4.2 制御系の構成 p.53
 4.2.1 高速トルク制御 p.53
 4.2.2 PLL速度制御系 p.56
 4.2.3 外乱補償制御系 p.58
 4.3 同期過程に及ぼすPID利得係数の影響 p.63
 4.4 実験結果 p.66
 4.4.1 利得係数の影響 p.66
 4.4.2 四象限制御と同期写真 p.70
 4.4.3 外乱補償制御 p.70
 4.5 結言 p.70
 参考文献 p.72
第5章 極ゼロ相殺法に基づく電動機の2自由度セルフチューニング制御 p.73
 5.1 緒言 p.73
 5.2 制御システムの構成 p.75
 5.3 極ゼロ相殺法(PZC)による設計 p.77
 5.3.1 2自由度速度制御 p.77
 5.3.2 位置制御 p.80
 5.4 制御器のセルフチューニング p.84
 5.5 実験 p.85
 5.5.1 速度制御系の目標値応答 p.88
 5.5.2 位置制御系の応答 p.88
 5.5.3 同定特性 p.90
 5.5.4 外乱に対する応答 p.92
 5.6 結言 p.92
 参考文献 p.95
第6章 ベクトル周波数変調法による電動機の可変速駆動 p.97
 6.1 結言 p.97
 6.2 ベクトル周波数変調法(VFM)の原理 p.100
 6.2.1 従来のサブハーモニック変調方式 p.100
 6.2.2 VFMの基本アルゴリズム p.100
 6.2.3 可逆チョッパへの適用 p.102
 6.2.4 三相インバータへの適用 p.106
 6.3 VFMを用いた電動機制御 p.114
 6.3.1 直流電動機の速度制御 p.114
 6.3.2 誘導電動機の可変速駆動 p.116
 6.4 結言 p.119
 参考文献 p.121
第7章 p.123
 7.1 本研究による成果 p.123
 7.2 今後の課題 p.129
謝辞 p.131
本研究に関する研究業績 p.132

 電動機は各種産業機械並びに家庭電化製品の根幹をなす基本要素として重要な位置を占めている。本論文は電動機制御に関する制御技術の開発と実現を目指したもので,次の2つのアプローチから迫っている。一つはPLL(フェーズロックトループ)技術の導入であり,もう一つはマイクロプロセッサによるディジタル制御技術の導入である。PLLによって高精度な速度制御を実現し,ディジタル制御によって高度な回転位置制御を実現している。さらに,電力変換回路のパルス変調法を新たに提案し,それを電動機の可変速駆動に適用して制御特性の改善を試みている。
本論文は7章から構成され,大きく3つの部分に分かれている。第2章,第3章,第4章がPLL制御に関する章である。第5章がディジタル制御に関する章であり,第6章が新提案のパルス変調法に関する章である。第1章は序論であり,第2章以降は次のようになっている。
第2章では,まずPLLの挙動を理解するため,位相面解析法を用いてPLLの同期引き込み過程を紹介し,周波数引き込み範囲を求めている。想定したPLLは正弦波PLLであり,位相比較器には乗算形位相比較器を仮定している。ループフィルタを用いない場合,ラグリードフィルタを用いた場合,アクティブフィルタを用いた場合の3通りについて,それぞれの同期過程を位相面に描き,周波数引き込み範囲と定常位相偏差を求めている。そして,周波数引き込み範囲を無限大にするためには,位相差の積分が必要であるとの知見を得ている。
第3章では,誘導機のすべり周波数制御にPLLを適用した場合について述べている。フィルタの代わりに位相差に関して比例(P),積分(I),微分(D)の三項フィードバックを適用し,従来のPI制御,PD制御,提案のPID制御について,周波数引き込み範囲と安定性の両面から比較検討している。さらに,P,I,Dの各要素が制御系にいかなる影響を与えるのかについても統一的に検討している。
第4章では,高速トルク制御法によって誘導機の発生トルクを瞬時制御しつつ,誘導機に位相差のPIDフィードバックを施してPLLによる速度制御を試みている。そして,前章では十分に行われていなかった位相面解析によって,P,I,Dの各利得係数が同期過程にどのような影響を与えるのかを改めて考察し,実験によってこれを検証している。また,四象限運転の各象限をPLL制御モードと定トルク制御モードの二種類に分割し,象限ごとに制御モードの切り換えを行うことで,過渡的に滑らかな制御を実現している。更に,加速度検出器を内蔵した外乱補償器を設計して外乱トルクを推定し,この推定値をフィードバックすることにより,外乱による過渡的な同期はずれを抑制している。本章の特徴は,高速トルク制御法による優れたトルク応答性と,PLLによる高精度な速度制御性,および外乱推定補償法による強力な外乱抑圧特性とを同時に有する高性能な速度制御系を実現した点にある。
第5章では,電動機の速度および回転位置に関するディジタル制御について述べている。z変換域での極ゼロ相殺法を提案するとともに,適応同定器を併用して,制御器をセルフチューニングしながら誘導機の速度と回転位置の制御を行っている。まず,速度から位置に至るパルス伝達関数を正確に表現することにより,速度制御だけでなく位置制御に対しても極ゼロ相殺法による設計を行った。また,適応同定器の出力情報に基づいて制御器のパラメータをセルフチューニングすることにより,極とゼロ点をz平面内の指定位置で相殺できるようにしている。そして,速度制御系と位置制御系の目標値パルス伝達関数を完全に分離された一次遅れとし,ほとんどオーバーシュートのない応答を実現している。
第6章では,可逆チョッパとインバータについて根本的に同一に扱えるパルス変調法を提案している。提案法は,出力波形のパルス幅に注目しているのではなく,空間ベクトルの周波数に注目した変調法なので,ベクトル周波数変調法(VFM: Vector Frequency Modulation)と呼んでいる。まず提案するVFMの原理を述べた後,可逆チョッパにVFMを適用して直流電動機を駆動し,その速度制御を試みる。次に,三相インバータにVFMを適用して誘導機の可変速駆動を行い,磁束軌道から指令周波数ごとに導いた電圧波形と実験結果とを比べると共に,周波数が連続的に調整されてV/f一定制御が実現されることを示している。
第7章は本論文の結論であり,各章で検討した電動機制御法に関する総括を行うとともに,本研究で残された課題について述べている。

本論文は「PLL技術及びセルフチューニング技術の電動機制御への応用と電動機駆動に適したパルス変調方式に関する研究」と題し,全7章から構成されている。
第1章は序論であり,研究の背景,目的と論文概要について述べている。
第2章では,まずPLLの挙動を理解するため,位相面解析法を用いてPLLの同期引き込み過程を紹介し,周波数引き込み範囲を求めている。想定したPLLは正弦波PLLであり,位相比較器には乗算形位相比較器を仮定している。ループフィルタを用いない場合,ラグリードフィルタを用いた場合,アクティブフィルタを用いた場合の3通りについて,それぞれの同期過程を位相面に描き,周波数引き込み範囲と定常位相偏差を求めている。そして,周波数引き込み範囲を無限大にするためには,位相差の積分が必要であるとの知見を得ている。
第3章では,誘導機のすべり周波数制御にPLLを適用した場合について述べている。フィルタの代わりに位相差に関して比例(P),積分(I),微分(D)の三項フィードバックを適用し,従来のPI制御,PD制御,提案のPID制御について,周波数引き込み範囲と安定性の両面から比較検討している。さらに,P,I,Dの各要素が制御系にいかなる影響を与えるのかについても統一的に検討している。
第4章では,高速トルク制御法によって誘導機の発生トルクを瞬時制御しつつ,誘導機に位相差のPIDフィードバックを施してPLLによる速度制御を試みている。そして,前章では十分に行われていなかった位相面解析によって,P,I,Dの各利得係数が同期過程にどのような影響を与えるのかを改めて考察し,実験によってこれを検証している。また,四象限運転の各象限をPLL制御モードと定トルク制御モードの二種類に分割し,象限ごとに制御モードの切り換えを行うことで,過渡的に滑らかな制御を実現している。更に,加速度検出器を内蔵した外乱補償器を設計して外乱トルクを推定し,この推定値をフィードバックすることにより,外乱による過渡的な同期はずれを抑制している。本章の特徴は,高速トルク制御法による優れたトルク応答性と,PLLによる高精度な速度制御性,および外乱推定補償法による強力な外乱抑圧特性とを同時に有する高性能な速度制御系を実現した点にある。
第5章では,電動機の速度および回転位置に関するディジタル制御について述べている。z変換域での極ゼロ相殺法を提案するとともに,適応同定器を併用して,制御器をセルフチューニングしながら誘導機の速度と回転位置の制御を行っている。まず,速度から位置に至るパルス伝達関数を正確に表現することにより,速度制御だけでなく位置制御に対しても極ゼロ相殺法による設計を行った。また,適応同定器の出力情報に基づいて制御器のパラメータをセルフチューニングすることにより,極とゼロ点をz平面内の指定位置で相殺できるようにしている。そして,速度制御系と位置制御系の目標値パルス伝達関数を完全に分離された一次遅れとし,ほとんどオーバーシュートのない応答を実現している。
第6章では,可逆チョッパとインバータについて根本的に同一に扱えるパルス変調法を提案している。提案法は,出力波形のパルス幅に注目しているのではなく,空間ベクトルの周波数に注目した変調法なので,ベクトル周波数変調法(VFM: Vector Frequency Modulation)と呼んでいる。まず提案するVFMの原理を述べた後,可逆チョッパにVFMを適用して直流電動機を駆動し,その速度制御を試みる。次に,三相インバータにVFMを適用して誘導機の可変速駆動を行い,磁束軌道から指令周波数ごとに導いた電圧波形と実験結果とを比べると共に,周波数が連続的に調整されてV/f一定制御が実現されることを示している。
第7章は本論文の結論であり,各章で検討した電動機制御法に関する総括を行うとともに,本研究で残された課題について述べている。
よって,本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく,博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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