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Studies on reconstruction of three-dimensional magnetic stray fields for magnetic heads using reflection electron beam tomography

(反射形電子線トモグラフィ法による空間漏れ磁界分布の3次元再構成に関する研究)

氏名 殷 軍
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第151号
学位授与の日付 平成9年8月31日
学位論文の課題 Studies on reconstruction of three-dimensional magnetic stray fields for magnetic heads using reflection electron beam tomography(反射形電子線トモグラフィ法による空間漏れ磁界分布の3次元再構成に関する研究)
論文審査委員
 主査 教授 松田 甚一
 副査 教授 花木 真一
 副査 教授 荻原 春生
 副査 助教授 中川 匡弘
 副査 講師 加藤 和夫

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Contents
Chapter 1 Introduction
1.1 Hitherto Methods for Magnetic Stray Field Measurements p.1
1.2 The Purposes of This Study p.5
References(Chapter1) p.8
Chapter 2 Three-dimensional Magnetic Vector Field Reconstruction by Reflection Electron Beam Tomography
2.1 Introduction p.11
2.2 General Relations between Deflection Vector and Three-dimensional Magnetic Fields within the Half Spacez≧0 p.12
2.3 Separations of Incident Deflection and Reflecting Deflection from Total Deflection Experienced by an Electron Beam p.13
2.4 In Explanations of Relations between Deflection Vector and Threedimensional Magnetic Fields by Fourier Expansion Method p.18
2.5 Magnetic Vector Field Reconstruction Simultaneously Using Deflection Vectors Measured from Two Incident Directions p.19
2.5.1 An Electron Beam Trajectory in Three-dimensional Magnetic Fields p.20
2.5.2 Reconstruction of Magnetic Field Distributions Using First Group of Deflection Data p.21
2.5.3 Further Corrections of Magnetic Field Distributions Using Second Group of Deflection Data p.29
2.6 Summary of Chapter 2 p.32
Appendix 1 Expressions of Three-dimensional Magnetic Fields by Fouricr Series Expansion Method p.34
Appendix 2 Expressions of Deflection Vector by Fourier Series Expansion Method p.37
Appendix 3 Calculation of the Three-dimensional Magnetic Field Distributions by Boundary Element Method(BEM) p.42
References (Chapter 2) p.44
Chapter 3 Evaluation of The Reconstruction Method
3.1 Introduction p.45
3.2 Analytical Model for Computer Simulations p.45
3.3 Simulation Results p.47
3.4 Discussions p.57
3.5 Summary of Chapter3 p.76
References (Chapter 3) p.78
Chapter 4 Summary of This Study and Remain Problems p.79
Acknowledgments p.84
Published Works p.85

反射形電子線トモグラフィ法による空間漏れ磁界分布の3次元再構成に関する研究
 磁気記録技術は現代社会を支える基幹技術の一つと言え、さらなる大容量化が要求されている。現在、磁気記録媒体上における1ビットの記録情報の占有面積はサブμm2になろうとしている。このような微細領域における非線形で複雑な記録再生機構を解明し、高密度化を実現する一つの要素としての磁気記録ヘッドを最適化設計する必要がある。そのため、微小な磁気ヘッドの漏れ磁界分布形状を、3次元的に精度良く実測できる有効な手法の開発が重要な問題となっている。
 最近提案されている方法は、電子線を多方向から入射し、漏れ磁界を通過した電子線の位置偏向量データから、磁気ヘッドのギャップ前面サブμmの位置における磁界分布を再構成する電子線トモグラフィと呼ばれる手法である。この手法を用いることにより、磁気ヘッドの漏れ磁界分布を1μm以下の高分解能及び10Gauss程度の感度で測定することができる。しかしながら、この手法の問題点は、磁気ヘッド表面から0.3μm以内の近傍の磁界分布を測定する場合、電子線が磁気ヘッドの表面に衝突し、偏向量の検出が行えず、その結果、磁界分布が計測できないことにある。これに対して、磁気ヘッドの表面(ここでは、電子線の反射面と呼ぶ)に対して45度で電子線を入射し、反射面から反射してきた反射電子線の位置偏向量から、磁気ヘッドのギャップに極近傍の磁界分布計測を可能にする反射形電子線トモグラフィ法が提案されている。この方法では、電子線を磁気ヘッドの表面に反射させることにより反射電子線の位置偏向量が得られるので、従来の手法のような電子線がヘッドに衝突することによって偏向量計測が困難となる問題を解決することができる。しかし、残念ながらこの手法に基づく高精度な磁界再構成アルゴリズムは開発されておらず、アイデアの段階にとどまっていた。本研究は、反射形電子線トモグラフィのための高精度再構成アルゴリズムの開発に関するものである。
 全文は4章よりなる。
 第1章「序論」においては従来の漏れ磁界分布の計測手法について概説するとともに、反射形電子線とトモグラフィ法の原理、そして本研究の目的について述べた。
 第2章では、反射電子線の位置偏向量データから空間漏れ磁界分布の3次元再構成手法を提案した。この手法は、代数的再構成法(ART法)と呼ばれる逐次近似解法に基づいており、推定磁界分布中を通る電子の軌道を厳密に計算し、得られた推定偏向量と実測偏向量との差を小さくするように磁界分布を反復補正しながら、元の磁界分布を推定する方法である。これにより、電子軌道の曲がりを厳密に考慮した漏れ磁界分布再構成が可能となる。さらに、反復補正を行うに祭し、再構成アルゴリズムが発散することなく、速く収束するためには、初期磁界分布をできるだけ真の分布に近い値に設定することが望ましいが、その方法について述べた。まず、2.2節では、偏向量と3次元磁界分布との関係を確立した。次に、2.3節と2.4節で、偏向量から初期値を決定する方法について述べた。この方法では、3次元磁界分布領域を通過する電子の直進性を仮定し、偏向量と3次元磁界分布との関係式に3次元磁界分布のフーリエ級数展開式を代入して偏向量のフーリエ級数展開式を導き出し、これらの解析解の形を参考にして初期値を設定した。最後の2.5節では、初期磁界分布を使用した反復補正方法を提案した。
 第3章では、3次元磁界分布再構成法の有効性を確認するために、磁界分布が理論的に既知である一巻きコイルモデル(一辺100μm)を用いて、再構成シミュションを行った。再構成誤差を定量的に評価した結果、コイル端から0.1μmの距離における数千Gauss程度以上の強磁界分布を20%程度の誤差で計測できることを明らかにした。本手法では数千Gaussの強磁気に対しても再構成誤差はほとんど増加せず、計測試料の極近傍の磁界分布を計測する手法として有効であることを示した。
 次に、再構成誤差の一つの要因である、格子点間隔(すなわち電子線の走査間隔)が再構成特性に及ぼす効果を定量的に検討した。格子点間隔を細かくすること、つまり、再構成要素数を増やすことによって、再構成誤差を減少させることができ、磁気記録媒体の長手方向に沿って磁界分布の半値幅程度の格子点間隔を取った場合、再構成誤差は20%以下に抑えられることを示した。また、50%以下の誤差で磁界分布を再構成するためには、偏向量の計測誤差を30%以下に抑えなければならないことを明らかにした。さらに、Karlqvistの2次元磁気ヘッドモデルにより、磁気記録媒体の長手方向に沿って磁界分布の半値幅と磁気ヘッドのギャップ幅との関係を定量的に検討した。その結果、電子線の入射間隔は磁気ヘッドのギャップ幅の半分以下の程度に設定しなければならないことが分かった。また、Lindholmの3次元磁気ヘッドモデルにより、計測面における磁界分布の存在範囲とヘッドのギャップ幅やトラック幅との関係を定量的に検討した。その結果芟v測範囲を磁気ヘッドのギャップ幅の20倍プラス、トラック幅の程度に設定する必要があることが分かった。
 最後に、磁気ヘッドの3次元モデルを用いて、ヘッド表面の近傍における磁界分布の再構成シミュレーションを行い、数千Gauss程度の磁界分布を20%程度の誤差で再構成できることを明らかにした。

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