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下水汚泥溶融システムの効率化と最適化に及ぼす影響因子に関する研究

氏名 早瀬 宏
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第105号
学位授与の日付 平成9年9月17日
学位論文の題目 下水汚泥溶融システムの効率化と最適化に及ぼす影響因子に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 桃井 清至
 副査 教授 山田 明文
 副査 教授 松下 和正
 副査 教授 丸山 久一
 副査 講師 小松 俊哉

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目次
第1章 総論 p.1
第2章 溶融技術の現状と動向 p.5
2.1 緒言 p.5
2.2 溶融処理の位置付け p.5
2.3 溶融技術の現状と動向 p.6
2.4 溶融システムの設計上、維持管理上に関する提言 p.10
2.5 結言 p.12
第3章 溶融特性と粘性特性 p.14
3.1 緒言 p.14
3.2 粘性特性 p.14
3.2.1 粘性 p.15
3.2.2 塩基度調整法 p.21
3.3 広域処理下水汚泥 p.21
3.3.1 概況 p.22
3.3.2 粘度と温度特性 p.23
3.3.3 粘度推算式 p.25
3.3.4 スラグ性状試験 p.32
3.4 SiO2-CaO-Al2O3系合成スラグ p.33
3.4.1 実験方法 p.33
3.4.2 溶融特性と粘性特性 p.34
3.4.3 粘度推算式 p.41
3.5 J.S.Machinらの文献データ解析 p.42
3.5.1 粘度と温度特性 p.42
3.5.2 粘度推算式 p.45
3.5.3 粘度推算式の精度検証 p.48
3.5.4 等粘度三成分状態図 p.50
3.6 高度処理汚泥 p.56
3.7 ニつの粘度推算式に対する考察 p.59
3.8 結言 p.61
第4章 溶融システムの静的解析 p.64
4.1 緒言 p.64
4.2 運転制御の目的 p.64
4.3 システムに影響を及ぼす変動因子 p.65
4.4 運転指標と操作項目 p.65
4.4.1 旋回溶融システム p.66
4.4.2 コークスベッド溶融システム p.67
4.4.3 表面溶融システム p.68
4.4.4 流動焼却灰旋回溶融システム p.69
4.5 シミュレーション解析方法 p.70
4.5.1 旋回溶融システムのケーススタデイ p.70
5.5.2 コークスベッド溶融システムのムーススタデイ p.72
4.5.3 表面溶融システムのケーススタディ p.72
4.5.4 流動焼却旋回溶融システムのケーススタデイ p.72
4.6 シミュレーション解析結果 p.72
4.6.1 旋回溶融システムの解析結果 p.72
4.6.2 コークスベッド溶融システムの解析結果 p.80
4.6.3 表面溶融システムの解析結果 p.80
4.6.4 流動焼却旋回溶融システムの解析結果 p.81
4.6.5 各溶融システム解析結果比較 p.83
4.7 考察 p.87
4.8 シミュレーション解析結果を溶融炉の実機で検証 p.89
4.9 結言 p.91
第5章 溶融システムの動的解析 p.93
5.1 緒言 p.93
5.2 流動焼却灰旋回溶融炉のトレーサ試験 p.93
5.3 実験結果 p.95
5.4 考察 p.97
5.5 結言 p.97
第6章 溶融炉の耐火材 p.99
6.1 緒言 p.99
6.2 溶融炉内壁耐火材に要求される条件 p.99
6.3 結言 p.105
第7章 溶融スラグの結晶化 p.106
7.1 緒言 p.106
7.2 結晶化機構 p.106
7.2.1 核形成と結晶成長 p.106
7.2.2 分相現象及び速度増進剤 p.107
7.2.3 結晶成長速度 p.113
7.2.4 結晶化技術を理解するための模式図 p.113
7.3 溶融スラグ結晶化研究の歴史 p.118
7.4 下水汚泥溶融スラグ結晶化に対する研究の困難さ p.119
7.5 研究に有用な資料や実験技術 p.120
7.6 結晶化度の測定及び評価方法 p.125
7.7 メタル分離が結晶化に及ぼす影響 p.133
7.8 溶融スラグ結晶化製造技術の応用 p.133
7.9 結言 p.136
第8章 下水汚泥溶融システムの効率化と最適化に関する提言 p.141
8.1 第1章の総括 p.141
8.2 第2章の総括 p.141
8.3 第3章の総括 p.141
8.4 第4章の総括 p.142
8.5 第5章の総括 p.143
8.6 第6章の総括 p.143
8.7 第7章の総括 p.143
8.8 下水汚泥溶融システムの効率化と最適化に関する提言 p.144
謝辞 p.145

 我が国の下水汚泥溶融システムは、導入された歴史が浅く、体系的な運転制御、運転管理まで至らず、溶融システムの最適運転制御に関する研究が遅れていた。
 本論文は、このような背景に対して下水汚泥溶融システムの効率化と最適化に及ぼす影響因子に関する研究であり、主として三つの目的第一は、溶融システムに影響を及ぼす汚泥性状の変動因子(汚泥含水率、汚泥有機物含有率)について静的シミュレーション解析して変動の吸収メカニズムを解明するとともに運転制御の省エネルギー特性を求め、定量化すること、第二は、溶融炉の長期安定運転に影響を及ぼす因子として溶融スラグ粘度を測定し、溶融スラグの挙動を把握すること、第三は、効率的に製造された溶融スラグの高品質化の尺度として圧縮強度因子に着目し、下水汚泥溶融スラグ結晶化に適用できる確実な知見を得ること等から構成され、効率的で最適な溶融システムの構築を目指すものである。
 「総論」では、本研究の背景と目的及び各章の概要について述べた。
 「溶融技術の現状と動向」では、最終処分場の確保困難、汚泥の大幅な減容化、確実な安定化・無害化及び建設資材化の観点から最近見直されてきた溶融処理の位置付けを行うとともに溶融炉の分類、溶融炉の比較等について整理を行った。
 「溶融特性と粘性特性」では、窯業、鉄鋼、ガラス分野等で採用されている三成分状態図を下水汚泥の溶融温度と粘度に適用し、整理を行った。
 融液の粘度が溶融システムの長期安定運転につながる考えから粘度因子については広範囲にかつ、連続的に測定した。
 広域処理下水汚泥に対して、粘性流動の活性化エネルギーを等粘度パラメータにした粘度推算式を新しく提案するとともにE.N.daC.Andradeの理論式からも類似式を誘導することができ、頻度係数と粘性流動の活性化エネルギーの間に高度な一次式の相関関係が存在することを実験的に明らかにした。
 また、信頼性、再現性の高いJ.S.MachinらのSiO2-CaO-Al2O3系合成スラグ粘度データに解析を加え、広い温度範囲、広い組成範囲に適用できる別の形式の粘度推算式を導き出し、定量化したことにより精度の高い粘度の推定が可能になった。粘度推算式から等粘度三成分状態図を作成し、粘度に対する主要な組成因子は、広い範囲で考えると塩基度でなくCaO含有率そのものである重要な知見を得た。
 実験から導出した粘度推算式とJ.S.Machinらの粘度データから導出した2つの粘度推算式について考察を行った。
 粘度推算式又は活性化エネルギーを組成成分の関数で定量化したことにより、単に粘度の推定、成分調整だけでなく、ガラス構造の研究や結晶化機構の解明に広く応用され得るものである。
 「溶融システムの静的解析」では、熱収支・物質収支モデルを用いて代表的な4つの溶融システムの変動因子として汚泥性状特に、脱水汚泥含水率、汚泥有機物含有率を取り上げ、ケーススタディを実施して静的シミュレーション解析を行い、変動の吸収メカニズムの解明及び従来、定性的でしかなった補助燃料消費量について運転制御の最適なケースに対して定量化を行った。
 さらに、机上による静的シミュレーション解析の結果を溶融炉の実機で検証を行い、比較的良好な一致を見ることができた。
 「溶融システムの動的解析」では、溶融スラグの挙動を調べるためシステムの主機である溶融炉について実際に稼動している実機を使ってトレーサ試験を行い、平均汚泥滞留時間、セルフコーティング層厚、スラグ化率を算定し考察した。
 「溶融炉の耐火材」では、下水汚泥溶融炉に使用される耐火材の情報が極めて少ないためヒアリング調査を行い、耐食性と耐スポーリング性両者に優れた耐火材は現在のところ存在せず、溶融炉の間欠運転が多くてもよいように耐スポーリング性を重視し、耐食性についてはセルフコーティングで補完する考えが一般的であること等の知見を表に整理した。
 「溶融スラグの結晶化」では、実験又は結晶工学や結晶化ガラスの研究成果も含めて調査を行い、下水汚泥溶融スラグ結晶化に適用できるわずかな一般性のある確実な知見を抽出し結晶化機構の模式図、分相現象の導入、結晶化速度増進剤(核形成剤、分相促進剤、粘度低下剤)の分類、結晶化度測定及び評価方法等について整理するとともに結晶化度評価法として新しく多大ピーク法を導入してその妥当性を確認した。
 最後に、本研究を通して得られた成果を総括し、その応用について要約するとともに下水汚泥溶融システムの効率化と最適化に関する提言を行った。

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