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Development of a depth controlling nanoindentation tester with subnanometer depth and submicronewton load resolutions

(サブナノメートルの変位分解能とサブマイクロニュートンの荷重分解能を有する押込み深さ制御方式ナノインデンテーション試験機の開発)

氏名 嶋本 篤
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第103号
学位授与の日付 平成9年6月18日
学位論文の題目 Development of a depth controlling nanoindentation tester with subnanometer depth and submicronewton load resolutions (サブナノメートルの変位分解能とサブマイクロニュートンの荷重分解能を有する押込み深さ制御方式ナノインデンテーション試験機の開発)
論文審査委員
 主査 教授 田中 紘一
 副査 教授 秋山 伸幸
 副査 教授 久曽神 煌
 副査 教授 矢鍋 重夫
 副査 教授 石崎 幸三
 副査 新潟工科大学 教授 一ノ瀬 幸雄
 副査 長岡技術科学大学 技術開発センター 客員教授 柳沢 雅広

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Contents
1.Introduction p.1
1.1 Background of indentation testing p.1
1.2 Estimation of mechanical properties from P-h curves p.2
1.2.1 Hardness and mean pressure p.2
1.2.2 Elastic modulus p.4
1.3 History of nanoindentation instruments p.8
1.4 Problems for nanoindentation instrument p.8
1.5 Scope of this study p.9
2.Displacement detection method p.19
2.1 Introduction p.19
2.2 Principles of OFDS p.25
2.2.1 General principle p.25
2.3 Geometrical analysis p.26
2.3.1 Model p.26
2.3.2 Influence of illumination sources p.33
2.3.3 Comparison between theoretical and experimental results p.35
2.4 Electronics in OFDS p.38
2.4.1 Stability of usual OFDS p.38
2.4.2 Principle of the OFDS with ac-modulated light source p.40
2.5 Experimental procedure p.42
2.5.1 Experimental setup p.42
2.6 Experimental results p.45
2.6.1 Sensitivity of the sensor p.45
2.6.2 Noise level of the sensor p.45
2.6.3 Drift of the sensor p.46
2.7 Discussion p.47
2.8 Conclusion p.51
3.Depth controlling nanoindentation tester p.53
3.1 Introduction p.53
3.1.1 Vibration isolation of nanoindentation system p.54
3.2 Vibration isolation of commercialized instruments p.58
3.3 The instrument used p.64
3.3.1 Displacement sensor p.64
3.3.2 Feedback control system p.70
3.3.3 Transmissibility of displacement p.72
3.3.4 Thermal drift p.73
3.4 Experiments of Nanoindentation p.75
3.5 Conclusion p.78
4.Nanoindentation analysis p.80
4.1 Introduction p.80
4.2 Finite-element analysis p.81
4.3 Nanoindentation experiment p.81
4.4 Numerical results p.83
4.4.1 Load-displacement relationships p.83
4.4.2 Contact stresses p.85
4.5 Experimental results p.88
4.6 Conclusion p.88
5.Chracterization of surface damaged layer p.90
5.1 Introduction p.90
5.2 Experiments p.91
5.3 Experimental results p.93
5.4 Discussion p.98
5.4.1 Analysis of indentation deformation p.98
5.4.2 Relationship between CSS lives and Young's moduli p.99
5.5 Conclusion p.101
6 Conclusions p.103

 サブナノメートルの変位分解能とサブマイクロニュートンの荷重分解能を有する圧し侵入深さ制御方式のナノインデンテーション試験機を開発した。
 第1章では、まずナノインデンテーション試験法を概観し、硬度・平均面圧の定義、弾性常数の導出法について解説した。さらに、発表されている種々のナノインデンテーション試験機についてその特徴、欠点等を概説し、ナノインデンテーション試験機の問題点を明らかにした。
 第2章では、ナノインデンテーション試験機のキーパーツであるサブナノメートルオーダーの変位検出法について、まず静電容量変位計、差動変圧器、光ファイバー変位計を比較し、それらの得失を明らかにして、光ファイバー変位計が、ナノインデンテーション試験機の変位計として有用である事を示した。続いて光ファイバー変位計の幾何光学的解析を行ない、変位計の感度、分解能と光ファイバー変位計の幾何学定数との関係を定式化し、分解能および感度を向上させるためには、細いファイバーを出来るだけ多数束ねる事が有効である事を示した。
 光ファイバー変位計でサブナノメートルの変位を安定に測定するために、まず従来の直流増幅方式の光ファイバー変位計回路の温度ドリフトの原因が、光源光量の変動、初段のオペアンプのバイアス電流の変動が主な要因であることを示した。これらの影響を除去するために、光源に発光ダイオードを用いて、光源光量を交流変調し、受光信号を特殊なバイアシングしたのち位相検波型を行い、さらにモニターしている光源光量に比例した値で除算することにより、0.03nm/Hz1/2の分解能を達成した。また、同一の位相検波型の光ファイバー変位計を2組用意して、同一の被測定対象物の変位を4ksにわたって測定・比較した結果、試作機は1nm/℃程度の安定度を有する事が分かった。
 第3章では、押込み深さ制御型ナノインデンテーション試験機について述べている。本章では、ナノインデンテーション試験機で最大の問題である除振問題を取り上げ、現在発表されているナノインデンテーション試験機の一般的な動特性解析モデルを提案し、床振動が圧子試料間の相対変位に伝達され、試料表面に損傷を与えることを定量的に明らかにした。この問題を解決するために、圧子の負荷荷重を零バランス法で測定し、床振動やその他の外乱による圧子と試料間の振動の影響を除去するために、圧子変位を圧子と試料間の相対変位でフィードバックする新しい圧し押込み深さ制御方式のナノインデンテーション試験機を提案し、試作した。その結果、圧子と試料間の相対変位は、0.1nm以内の変動に抑制され、±0.2nmの試料表面位置の検出が可能となり、また最大押込み深さ5nm程度でのナノインデンテーション試験が可能となった。
 第4章では、ナノインデンテーション試験で問題となる三角錐圧子の圧子先端半径の影響を、三次元有限要素法によって解析し、有限の圧子先端半径を有する三角錐圧子を弾性半空へ押込んだときの、圧子負荷荷重Ρと押込み深さhとの関係は、P+△P=Ctan αE*(h+△h)2で表わされることを明らかにした。ここでCは圧子の幾何定数、αは圧子先端角でありBerkovich圧子の場合にはそれぞれ0.95、65°である。E*は圧子と試料の複合弾性常数△h、△Pは圧子切断長さに対応した押込み深さ、荷重の補正量である。ガラス試料に対するナノインデンテーション試験結果と上式は、ほぼ完全に一致した。また有限要素解析から推定される塑性変形開始時の試料内部の最大せん断応力は、ガラス試料の理論強度とほぼ等しいことを明らかにした。
 第5章では、ナノインデンテーション試験の応用として、Mn-Znフェライト磁気ヘッドスライダーの表面仕上げによる加工変質層の評価について述べた。Mn-Znフェライトの仕上げ面の硬度、弾性定数は粗研削後のラッピング量に依存して劇的に変化し、ラップ量が小さい場合には、硬度、弾性定数ともバルクの値よりも極めて小さくなり、ラップ量の増加とともにバルクの値に近づいていく。粗研削後のラップ量が異なるMn-Znフェライトスライダーについて、摺動試験を行なった結果、ラップ量が小さい試料は摩擦係数が大きく、また摺動距離の増加とともに急激に摩耗が進行した。一方、ラップ量が比較的大きな試料では、摩擦係数は小さく、摺動による摩耗も認められなかった。表面の弾性定数の変化による摩擦計数の変化は、BowdenとTaborの凝着摩擦理論でほぼ説明する事ができた。
 第6章では、本論文を総括し、また将来の展望、今後解決すべき問題点を述べた。

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