Study on the Formation of Crystalline Phases in Bibased Superconducting Glass-Ceramics(Bi系超伝導ガラスセラミックスの結晶相の生成に関する研究)
氏名 Jabri Khaled
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第174号
学位授与の日付 平成10年3月25日
学位論文の題目 Study on the Formation of Crystalline Phases in Bibased Superconducting Glass-Ceramics (Bi系超伝導ガラスセラミックスの結晶相の生成に関する研究)
論文審査委員
主査 教授 小松 高行
副査 教授 松下 和正
副査 教授 植松 敬三
副査 助教授 内田 希
副査 助教授 斎藤 秀俊
[平成9(1997)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.
目次
Chapter I: Introduction
1. Definition of superconductivity p.3
2. Historical overview of superconductivity p.3
3. Theory of Superconductivity : BCS theory p.4
4. Property of superconductors p.6
5. High-Tc superconductors (Cuprate superconductors) p.9
6. Preparation method ofsuperconducting materials p.13
7. Application of superconductivity p.14
8. Purpose and structure of this study p.15
References p.16
Chapter II: Experimental procedure and apparatus
1. Experimental procedure p.17
a. Glass-ceramic route p.17
b. Sintering method p.17
2. Apparatus p.18
a. Thermal analysis p.18
b. X-ray diffraction p.18
c. Apparatus for superconducting property measurement p.19
d. Scanning electron microscope and electron probe microanalysis p.21
Chapter III: Glass formation, structure and kinetics of Bi-based system
1. Introduction p.22
2. Experimental procedure p.23
3. Results and discussion p.23
3.1 Glass formation in Bi1.6Pb0.4Sr2Ca2Cu3Ox sample p.24
Effect of CaO content on the glass formation
3.2 Glass structure p.27
3.3 Crystallization kinetics p.33
4. Conclusion p.35
References p.36
Chapter IV: Formation mechanism of the high-Tc phase in superconductive (Bi,Pb)2Sr2Ca2Cu3Ox
1. Introduction p.37
2. Experimental procedure p.38
3. Results and discussion p.38
3.1 Composition of Pb-compound p.40
3.2 structure of Pb-compound p.41
3.3 Electric properties of Pb-compound p.41
3.4 Formation of Pb-containing 2212 phase p.42
3.5 Formation of the high-Tc phase p.44
4. Conclusion p.48
References p.49
Chapter V: Thermal stability of the high-Tc phase
1. Introduction p.50
2. Experimental procedure p.51
3. Results and discussion p.51
3.1 Effect of Te substitution on the formation of the high-Tc phase p.51
3.2 Effect of Te substitution for Cu on the thermal stability of the high-Tc Phase p.55
3.3 Effect of Te substitution for Pb on the thermal stability of the high-Tc Phase p.57
3.4 Magnetic properties: hysteresis cycle p.58
3.5 Structural stability of the high-Tc phase p.59
4. Conclusions p.61
References p.61
Chapter VI: Effect of non-stoichiometry on superconducting properties
1. Introduction p.63
2. Experimental procedure p.64
3. Results and discussion p.65
3.1 Effect of Bi content p.65
3.2 Effect of Sr,Ca and Cu contents p.68
3.3 Superconducting properties of Bi1.6Sr2Ca1.2Cu2Oy glass-ceramics p.71
3.4 Meaning of non-stoichiometric starting composition p.72
3.5 Effect of Pb on Superconductivity in non-stoichiometric samples p.72
4. Conclusions p.75
References p.76
Chapter VII: Effect of Ga-addition on the glass-forming ability and superconducting properties of Bi-Sr-Ca-Cu-O system, and superconductivity in Ga-Sr-Ca-Cu-O system
1. Introduction p.77
2. Experimental procedure p.78
3. Results and discussion p.78
A. Effect of Ga addition on superconducting glass-ceramics of Bi-based system
A1. Glass formation and thermal stability p.78
A2. Superconducting properties p.81
A3. Formation of Ga-compound p.84
B. Superconductivity in Ga-Sr-Ca-Cu-O system p.85
4. Conclusions p.89
References p.90
Chapter VIII: Conclusions p.91
Publications p.93
超伝導は、完全な導電性(ゼロ抵抗)、完全反磁性、ジョセフソン効果のような特異な現象を示す状態であり、それらを示す超伝導材料はエレクトロニクスを始め、電力、加速器、医療科学など様々な分野に応用することができる。特に、電気抵抗がゼロであることからジュ-ル熱によるエネルギ-の損失を抑えることができ、地球環境の立場からも極めて重要な材料である。これまで様々な種類の超伝導体が開発されているが、中でも液体窒素温度を越える臨界(超伝導転移)温度を示す酸化物高温超伝導体への期待は大きい。特に、110Kという臨界温度を示し、かつ融液急冷試料がガラスになるBi-Pb-Sr-Co-Cu-O系(Bi系)超伝導体は注目に値する。
ガラスの結晶化によって得られるBi系超伝導ガラスセラミックスは、ファイバ-化や加工性の点から大いに期待されているが、臨界電流密度の改善、磁束ピンニングの導入など解決すべき問題点も多い。そこで本研究では、より優れた特性を持つBi系高温超伝導体の開発を目指して、特に臨界温度110Kを示す高温相と呼ばれている(Bi,Pb)2Sr2Ca2Cu3Oxの生成機構を明らかにすることを目的とする。さらにガラスセラミックス法を用いて、大気圧以下でのGa-Sr-Ca-Cu-O(Ga系)系酸化物高温超伝導体の作製を試みた。本研究は以下の8章から構成されている。
第1章「緒言」では、本研究の背景、超伝導現象、銅系高温酸化物超伝導体の特徴およびガラスセラミックス法の原理を記述し、本研究の目的と意義を明らかにした。
第2章「実験方法及び実験装置」では、ガラスおよび超伝導ガラスセラミックスの作製方法、ガラスの熱的性質および超伝導ガラスセラミックスの超伝導特性の評価に用いられた実験装置とその測定条件を具体的に記述した。
第3章「Bi系におけるガラス形成能、ガラス構造および結晶化速度論」では、まず、種々の量のグルコ-スを添加して銅の価数状態(Cu2+とCu+)を変化させたBi1.6Pb0.4Sr2-Ca2Cu3Ox融液急冷試料を作製し、ガラス形成能がCu+含有量の増加と共に向上することを明らかにした。また、Bi1.6Pb0.4Sr2Ca2-xCu3Oyのガラス形成能を調べた結果、x=0.5および1.0の試料が完全なガラスになることを見出した。さらに、Bi2Sr2CaCu2Oxガラスにおける密度および粘性のCu+含有量との相関から、Bi系ガラスの網目構造として、[BiO6]八面体が2配位構造を有するCu+でつながっているというモデルを提案した。
第4章「(BI,Pb)2Sr2Ca2Cu3Oxにおける高温相の生成機構」では、高温相の生成における鉛の役割りおよび高温相の生成反応を検討した。まず、Bi0.2Pb1.8Sr1.2Ca0.7-Cu0.8Ox組成を持つ新しい鉛化合物を同定し、この鉛化合物が820℃以上で分解することを明らかにした。分解によって解放された鉛はBi2Sr2CaCu2Ox超伝導相(2212相)に固溶し、鉛を含む2212相が生成することが分かった。さらに、生成した鉛を含む2212相が856℃付近でCu2+と反応して液相を生じ、その液相が周りに存在するCa2+を吸収し、そこから高温相が成長することを明らかにした。
第5章「高温相の熱的安定性」では、856℃付近で生成した高温相が800℃以下の温度で再び熱処理すると分解し始めるという現象を取り上げた。鉛の一部をTeで置換したBi1.6Pb0.3Te0.1Sr2Ca2Cu3Oxガラスセラミックスにおいて生成した高温相は、800℃以下の温度においてもなかなか分解しないことを見出した。高温相の低温における熱的安定性について鉛化合物の生成の観点から考察した。
第6章「超伝導特性に対する非化学量論の効果」では、Bi2Sr2CaCu2Ox化学量論組成から陽イオン比を土20%範囲以内で変化させたガラスセラミックスを作製し、その超伝導特性を検討した。その結果、Bi,Srを少なくし、Ca,Cuを多くすることによってガラスセラミックスの超伝導特性が向上することを見出した。特に、Bi1.6Sr2CaCu2Ox試料は92Kという高い臨界温度を示すことから、出発組成として非化学量論組成を用いる方が、生成した超伝導結晶において最適なBi量、すなわちホ-ル濃度が形成しているものと考察した。
第7章「Bi系超伝導ガラスセラミックスのガラス形成能に対するGaの添加の影響および大気中でのGa-Sr-Ca-Cu-O系の高圧相の生成」では、まず、少量のGaの添加はBi系のガラス形成能の向上に有効であることを明らかにした。種々の条件でGa系ガラスセラミックスを作製したが、大気圧下においてGa系高圧超伝導相の生成は確認できなかった。しかしながら、1000~1020℃での酸素中熱処理によって得られた試料では、電気抵抗の温度依存性において超伝導現象の兆候が見られることから、Ga系超伝導相がわずかに生成しているものと結論した。なお、Ga系の非超伝導相としてGaSr0.55Ca1.05Cu0.5Oxが生成していることを提案した。
第8章「緒論」では、本研究を総括した結論を記述した。