小型FWDの時系列データを用いた路床および路盤の郷土評価法に関する研究
氏名 巽 吉生
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第448号
学位授与の日付 平成19年12月31日
学位論文題目 小型FWDの時系列データを用いた路床および路盤の郷土評価法に関する研究
論文審査委員
主査 准教授 高橋 修
副査 教授 丸山 暉彦
副査 准教授 岩崎 英治
副査 准教授 下村 匠
副査 北海学園大学工学部 教授 上浦 正樹
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第1章 序論
1.1 小型FWD開発の経緯 p.1
1.2 小型FWDの既往におけるデータ処理方法および研究成果 p.2
(1) 小型FWDの概要 p.2
(2) 小型FWDの測定方法 p.2
(3) 小型FWDを用いた既往のデータ処理方法 p.3
(4) 小型FWDの既往における研究成果 p.4
1.3 小型FWDの問題点および本研究の目的 p.4
1.4 本論文の構成 p.5
第2章 小型FWDの変位値を用いた再現性調査
2.1 はじめに p.11
2.2 小型FWDの再現性調査 p.12
(1) 地盤上の試験条件および試験結果 p.12
(2) コンクリート盤上での試験条件および試験結果 p.13
2.3 小型FWDの仕様が測定結果に影響 p.13
(1) 皿バネの概要およびゴムバッファの諸元 p.13
(2) ゴムバッファの違いが試験結果に与える影響 p.13
2.4 2章まとめ p.14
第3章 小型FWDの荷重と変位の時間積を用いた路床および路盤の強度評価法
3.1 はじめに p.23
3.2 ふるい分け試験及び突固め試験 p.24
(1) ふるい分毛試験 p.24
(2) 突固め試験 p.26
3.3 平板載荷試験と小型FWD試験による路床および路盤評価 p.29
(1) 試験概要 p.29
(2) 平板載荷試験の結果 p.29
(3) 小型FWD試験の結果 p.30
3.4 時間積比に基づく路床および路盤評価の提案 p.31
(1) 路床に対する時間積比とK30の関係 p.31
(2) 路盤に対する時間積比とK30の関係 p.31
3.5 時間積比とK30の関係式の妥当性 p.31
(1) 試験概要 p.32
(2) 路床における試験結果 p.32
(3) 路盤における試験結果 p.32
3.6 3章まとめ p.32
第4章 小型FWDの時系列データを用いた路床および路盤の有限要素モデル
4.1 はじめ p.47
4.2 有限要素解析による路床の強度評価 p.49
(1) 路床の解析モデル p.49
(2) 解析に使用する荷重の時系列データ p.49
(3) 解析結果および考察 p.50
4.3 有限要素解析による路盤の強度評価 p.51
(1) 路盤の解析モデル p.51
(2) 解析結果および考察 p.51
4.4 4章まとめ p.52
第5章 小型FWDの時系列データを用いた路床および路盤の個別要素モデル
5.1 はじめに p.61
5.2 軸対称問題での個別要素モデル p.62
(1) 個別要素法の基礎理論 p.62
(2) 既往モデルの問題点 p.67
(3) 軸対称問題での運動方程式 p.67
5.3 個別要素解析による路床の強度評価 p.68
(1) 路床の個別要素モデル p.68
(2) 逆解析による個別要素パラメータの同定 p.68
(3) 逆解析結果の妥当性 p.69
5.4 個別要素解析による路盤の強度評価 p.70
(1) 路盤の個別要素モデル p.70
(2) 路盤の逆解析結果の妥当性 p.70
5.5 5章まとめ p.71
第6章 まとめ
6.1 本研究のまとめ p.82
6.2 今後の課題 p.83
付録 p.84
謝辞 p.94
小型FWDは,地盤に重錘落下による衝撃を与え,その際に発生した荷重と変位の関係から地盤の強度評価を行う装置である.わが国では,路床および路盤の評価に平板載荷試験が標準的に実施されてきた経緯があり,小型FWD試験による評価の強度パラメータとしては,荷重と変位の時系列データからそれぞれのピーク値のみを取り出して,それらの比例計算によって求められる支持力係数(KP.FWD)を採用している.これは,平板載荷試験で求められる支持力係数(K30)と全く同じ算出方法によるものである.そして,Kp.FWDとK30には高い相関関係があり,Kp.FWDからK30が高い精度で推定できると報告されている.この他にも,路床を半無限弾性体と仮定した多層弾性理論に基づいて,小型FWDで測定した荷重と変位のピーク値から路床および路盤の弾性係数を推定する評価法が用いられている.
これまでの研究成果に基づいて,小型FWDを用いた強度評価が試験的に行われているが,いまだ実用化レベルに達していない.それには以下の2点が理由として指摘されている.
(1) 小型FWDを用いて路床および路盤に同じ運動エネルギを与えても,応答として測定される変位の値がゴムバッファ等の小型FWD機器の仕様によって異なる.そのため,荷重および変位のピーク値のみを使用した既往のデータ処理手法では,得られたKp.FWDの値がその使用機器に固有のものとなり,Kp.FWDが妥当なものであるのか判断できない.
(2) 評価対象である路床および路盤は不連続な土質系材料で構築されていることから,これらを弾性体と仮定した多層弾性理論を用いる方法は適切ではない.また,小型FWDを用いた評価試験は路床および路盤の動的応答を測定するものであることから,このような動的現象に対して適用が妥当なデータ解析手法を用いる必要がある.上記の問題点を改善するため,本研究では,小型FWDの荷重と変位のピーク値のみに着目するのではなく,それぞれの時系列データを使用した評価方法について検討した.強度評価のための新たな指標を導入し,その指標と平板載荷試験のK30値とを関連づけ,路床および路盤の新たな強度評価法の提案を行った.また,土質系材料で構成される路床および路盤の動的な変形挙動を表現できる解析方法を導入し,小型FWDを用いて路床および路盤をより合理的に評価する手法も提案した.
本論文は,第1章から第6章までの章立てで構成されている.以下に,各章の概要をまとめる.
第1章では,小型FWDが開発された経緯と既往における小型FWDのデータ処理方法,その問題点,およびその他関連事項について記述し,本論文の位置づけを明確にした.
第2章では,本研究で使用する小型FWDの精度を確認するため,コンクリート基盤上において連続100回の測定を実施して,得られた変位データに基づいて測定の再現性について検討した.また,ゴムバッファの仕様(硬度と形状)が,小型FWDで測定される荷重と変位の時系列データに与える影響についても検討し,これらの関係について成果をまとめた.
第3章では,小型FWDによる路床および路盤の新しい評価方法を提案するための各種試験について記述した.小型FWD試験に用いる路床材料としてマサ土の,および路盤材料としてC-25,C-40,M-25,M-40の基本的特性を把握するため,ふるい分け試験,突固め試験を実施した.その後,それらの路床および路盤材料を組み合わせて,室内のコンクリート土槽内に様々な路床および路盤を構築し,平板載荷試験と小型FWD試験を実施して,数多くの試験データを蓄積した.そして,これらの試験結果から,機器の仕様に依存し難い評価指標を提案した.また,その評価指標とK30を関連づけることにより,路床および路盤の強度管理のための評価値を設定した.さらに,実舗装の路盤上において平板載荷試験と小型FWD試験を実施して,この強度評価法の妥当性について検討した.
第4章では,第3章で得られた小型FWDの荷重と変位の時系列データを用いて,有限要素法に基づく路床および路盤の解析モデルを構築し,強度パラメータである弾性係数の推定について記述するとともに,有限要素法を用いる場合の問題点について指摘した.線形有限要素モデルによって得られた路床および路盤の弾性係数は,既往の研究で知られている通常の値に比べてかなり小さな値であった.この原因としては,一般的な線形モデルは土質系材料で構築されている路床および路盤には不適当であることが挙げられる.路床および路盤は不連続な永久変形を生じるため,弾性連続体モデルでこのような変形挙動を表現しようとすると,必然的に弾性係数が小さな値となってしまう.
第5章では,第4章で述べた線形有限要素モデルの問題点を改善するために,個別要素法に基づく路床および路盤の解析モデルの構築について検討した.通常の個別要素法では,現象を平面ひずみ問題ととらえて解析対象を2次元個別要素の集合体でモデル化している.しかし,小型FWD試験は載荷板の中心を原点とする軸対称問題ととらえられる必要があるため,路床および路盤に対する小型FWDの載荷条件に基づいた軸対称個別要素モデルを構築した.そして,小型FWDの測定データに基づいて路床および路盤の個別要素モデルの力学パラメータを解析することにより,路床および路盤の強度を推定した.その後,個別要素法に基づいて得られた路床および路盤の力学的パラメータが妥当であるか判断するため,路床および路盤の個別要素モデルを使用して平板載荷試験の数値シミュレーションを行い,その応答を実測値と比較してそのモデルを評価した.このような個別要素法に基づく路床および路盤の解析モデルを求めることにより,その成果を小型FWD試験後の舗装の補修設計や構造設計に役立てることができる.
第6章では,各章で得られた知見を総括して本研究の結論を取りまとめるとともに,今後の課題について言及した.
本論文は,「小型FWDの時系列データを用いた路床および路盤の強度評価法に関する研究」と題し,6章より構成されている。
第1章では,小型FWDが開発された経緯と既往における小型FWDのデータ処理方法,その問題点,およびその他関連事項について記述し,本論文の位置づけを明確にしている。
第2章では,本研究で使用した小型FWDの精度を確認するため,コンクリート基盤上において連続100回の測定を実施し,測定データの再現性について検討している。また,ゴムバッファの仕様(硬度と形状)が,小型FWDで測定される荷重と変位の時系列データに与える影響についても検討し,これらの関係について言及している。
第3章では,小型FWDによる路床および路盤の新しい強度評価法を提案するための各種試験について記述している。試験に用いる路床材料としてのマサ土,および路盤材料としてのC-25,C-40,M-25,M-40に対して,基本物性試験を実施した。その後,それらの材料を組み合わせて室内土槽に様々な強度を有する路床および路盤を構築し,同一位置で平板載荷試験と小型FWD試験を実施した。そして,これらの試験結果に基づいて,機器の仕様に依存し難い評価指標を提案している。また,その評価指標とK30を関連づけることにより,路床および路盤の強度管理のための評価値を設定するとともに,この強度評価法の妥当性について検討している。
第4章では,前章で得た小型FWDの荷重と変位の時系列データを使用して,有限要素法に基づく路床および路盤の解析モデルを構築し,強度パラメータである弾性係数の推定について記述するとともに,有限要素法を用いる場合の問題点について指摘している。土質系材料で構築されている路床および路盤には不連続な永久変形を生じるため,弾性連続体モデルでは実際に即した変形挙動を表現することができない。
第5章では,第4章で記した線形有限要素モデルの問題点を改善するために,個別要素法に基づく路床および路盤の解析モデルについて検討している。軸対称個別要素モデルを新たに構築し,小型FWDの測定データに基づいて路床および路盤の個別要素モデルの力学パラメータを同定することにより,路床および路盤の強度を推定した。そして,個別要素法に基づく路床および路盤の解析モデルの妥当性を評価したうえで,本解析手法を舗装の補修設計や構造設計に適用することを提案している。
第6章では,各章で得られた知見を総括して本研究の結論を取りまとめるとともに,今後の課題について言及している。
よって,本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく,博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。