本文ここから

Performance Analysis of a Scramjet-Driven MHD Power Generation(スクラムジェットエンジンで駆動されるMHD発電の性能解析)

氏名 Triwahju Hardianto
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第468号
学位授与の日付 平成20年3月25日
学位論文題目 Performance Analysis of a Scramjet-Driven MHD Power Generatio (スクラムジェットエンジンで駆動されるMHD発電の性能解析)
論文審査委員
 主査 教授 原田 信弘
 副査 教授 近藤 正示
 副査 教授 大石 潔
 副査 准教授 伊東 淳一
 副査 東京工業大学大学院総合理工学研究科教授 山岬 裕之

平成19(2007)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

Abstruct p.i
List of Figures p.iv
List of Tables p.vii
Contents p.viii

1. Introduction p.1
 1.1 Thesis Background p.1
 1.2 Objectives of Thesis p.4
 1.3 Outline of Thesis p.4
2. HVEPS Scramjet-Driven MHD Power Generation p.6
 2.1 Basic Concept of MHD Generator p.6
 2.2 Conventional Type MHD Generator p.7
 2.3 Scramjet-Driven MHD Power Generation p.8
 2.3.1 Split-Coil Superconducting Magnet p.9
 2.3.2 MHD Generator Channel p.10
 2.3.3 Loading and Electrical Instrumentation p.11
 2.3.4 Thermodynamic State at Channel Entrance p.12
3. Mathmatical Model p.14
 3.1 One-Dimensional Governing Equations p.14
 3.2 Non-Uniformity p.18
 3.3 Three-Dimensional Governing Equation p.20
 3.3.1 Turnulence Model p.21
 3.3.2 Electric Model p.22
 3.3.3 Boundary Condition p.24
4. Numerical Methods p.25
 4.1 One-Dimensional Calculation p.25
 4.1.1 MacCormack Method p.25
 4.1.2 Artifical Viscosity p.26
 4.1.3 Initial Condition p.27
 4.2 Three-Dimensional Calculation p.28
 4.2.1 Transformation of the Motion Equation p.29
 4.2.2 Grid Layout p.29
 4.2.3 Interpolation Factors p.31
 4.2.4 Electrical Potential Solution p.33
 4.2.5 Multigrid Concept p.33
5. Performance of a Scramjet-Driven MHD Power Generation p.35
 5.1 Introduction p.35
 5.2 Working gas Properties p.36
 5.2.1 Working Gas Parameter p.36
 5.2.2 Performance of Working Gas p.37
 5.2.3 Summary p.41
 5.3 1D and 3D Performances of MHD Generator in Uniform Condition p.42
 5.3.1 Operating Conditions p.42
 5.3.2 Performance Results of 1D and 3D p.43
 5.3.3 Summary p.54
 5.4 Comparison Performance of MHD Generator in Uniform and Non-Uniform Condition p.55
 5.4.1 Operating Conditions p.55
 5.4.2 Comparison Performance Results p.56
 5.4.3 Summary p.65
 5.5 Comparison Performance of MHD Generator with Experimental Results p.65
 5.5.1 Operating Conditions p.65
 5.5.2 Determination of G-Factor p.66
 5.5.3 Comparison Performance with Experimental Results p.74
 5.5.4 Summary p.77
 5.6 Proposal of the Best Performance by means of Channel Digonal Angle Selection p.77
 5.6.1 Operating Conditions p.78
 5.6.2 Diagonal Angle Selection p.79
 5.6.3 Summary p.86
6. Conclusions and Further Research p.87
 6.1 Conclusions p.87
 6.2 Further Research p.89
References p.90

 MHD発電は,高温プラズマを強磁界中を流すことによって電力を得るシステムである。本研究では,ダイアゴナル壁接続(Diagonal Conducting Wall,DCW)発電機を用いた極超音速機搭載型発電システムの発電性能に関する詳細な数値解析を行った。ここでは,高圧燃焼器によるジェット燃料の燃焼プラズマにシードを導入して動作プラズマを生成し,それを強磁界中を高速で流すことによって発電する。
 極超音速機搭載型発電システム(Hypersonic Vehicle Electric Power System)では,極超音速機の推進器として開発されているスクラムジェットエンジンの出口流路にMHD発電機を組み込むことを想定する。飛行条件はマッハ8程度を模擬して,エチレン燃料を酸素富化燃焼したプラズマにNaKを1重量%程度シードして導電性を確保してMHD発電機に導き,その発電性能を調べることを主な目的とする。
 数値解析において,基礎方程式として質量保存,また電磁流体力学効果を考慮した運動量及びエネルギー保存の式を導出し,1次元及び3次元に拡張して解くことによって,発電流路内の電位分布や流体諸量の分布や変化,出力性能などを求め,米国で行われている実験結果や解析結果と比較検討した。 推進性能を評価するために,単パルスあたりのプラズマ膨張速度,比推力,及び推力などを詳細に調べることを目的とした。1次元の方程式系は,初期条件を等エントロピー流れとして,人口粘性を導入したMacCormack法を用いて解く。また3次元の偏微分方程式系は断面内の質量保存式と運動量保存式を同時に解き、次に断面内の電位分布を多重格子法で解く。
 数値解析を行い,まず理想的な場合を想定し,均一なプラズマ条件のもとで1次元解析と3次元解析との比較を行った。結果として,電流や電圧など電気的諸量およびガス温度や流速など流体諸量に関して,1次元解析と3次元解析の結果に大きな相違は見られなかった。発電性能は,3次元解析の方が境界層の成長のために若干低くなることがわかった。1次元解析において,均一プラズマ条件と不均一プラズマ条件との比較のために,MHD発電機の解析において通常用いられるG-Factorを導入して,その発電性能への影響を調べた。G-Factorを導入して非一様なプラズマ条件では,理想的な場合に比べて電気的諸量や流体諸量に大きな相違が見られ,発電出力も大きく劣化することがわかった。より実際的な状況を再現するために,電極近傍での電圧降下の影響を考慮し,さらにG-Factorを変化させた解析を行った。その結果,非一様性の効果はガス圧力,温度,導電率,ホール係数そして発電出力を減少させ,ガス速度とマッハ数を増加させることがわかった。適当な値のG-Factorを導入することによって,実験で測定されたホール電位分布をシミュレートできることがわかった。このことは主要な損失機構がプラズマの非一様性と電極近傍の電圧降下によることを明らかにし,これらの損失機構を低減させることで発電性能を向上できる可能性を示唆するものである。MHD発電機の有効領域において,実験で測定されたホール電界をほぼ説明することが可能であり,燃焼効率が89%での発電出力は13.6kW程度と考えられる。
 以上のように,ここで行った数値解析によって,適切な非一様性の効果と電極近傍の電圧降下を考慮することで実験結果をほぼシミュレートできることがわかったので,さらに高い発電性能を得るためにダイアゴナル角の最適化を提案した。実際のMHD発電機で採用されているダイアゴナル角は60度であるが,ここでは10度から80度まで変化させてその発電性能を調べた。その結果,ダイアゴナル角が40度の場合,発電出力は21.6kWと最も高い性能を得ることがわかった。このときの出力は,現状の60度の場合の13.6kWと比べて約58%の増加であり,より高い発電性能を実現するために本研究で行った数値解析手法を用いることが高性能MHD発電機の最適な設計にとって有効であることが明らかになった。

 本論文は「Performance Analysis of a Scramjet-Driven MHD Power Generation」(スクラムジェットエンジンで駆動されるMHD発電の性能解析)と題し,6章より構成されている。
 第1章「Introduction」では,本研究の主題であるMHD発電の歴史的背景としてこれまでの発電実験をレビューし,本研究の目的と範囲を明確にしている。
 第2章「HVEPS Scramjet-Driven MHD Power Generation」では,本研究で取り上げる,極超音速機搭載型のスクラムジェットエンジン駆動のMHD発電研究の背景,基本概念および本研究で対象としている米国の実験装置と最近の実験結果について述べている。
 第3章「Numerical Model」では,数値解析に用いる1次元および3次元の電磁流体力学効果を考慮した基礎流体方程式と電磁界方程式,境界層の取扱いと座標系,さらにG-Factorを導入したプラズマの非一様性のモデル化と取扱いについて述べている。
 第4章「Numerical Methods」では,第3章で示した基礎偏微分方程式系の解法を示しており,1次元解析では有限差分法の1種であるMacCormack法を用い,3次元解析では断面内の質量保存式と運動量保存式を同時に解き、次に断面内の電位分布を多重格子法で解くMultigrid Magnetohydrodynamic(MGMHD)の手法を用いている。
 第5章「Performance of a Scramjet-Driven MHD Power Generation」では,数値解析による結果と米国での最近の実験結果との比較や他の解析結果との比較を行っている。 均一なプラズマ条件のもとで1次元解析と3次元解析との比較を行っており,結果として,電気的諸量および流体諸量に関して,1次元解析と3次元解析の結果に大きな相違は見られなかった。発電性能としては3次元解析の方が境界層の成長のために若干低くなることを見出している。1次元解析において G-Factorを導入して非一様なプラズマ条件では,理想的な場合に比べて電気的諸量や流体諸量に大きな相違が見られ,発電出力も顕著に劣化することを示した。より実際的な状況を再現するために,電極近傍での電圧降下の影響を考慮し,さらにG-Factorを変化させた解析を行い,非一様性の効果は流体諸量,電気諸量に影響し,発電出力を減少させることを示した。適切なG-Factorの導入によって,実験で測定されたホール電位分布をよく説明できることを示した。このことは主要な損失機構がプラズマの非一様性と電極近傍の電圧降下であり,これら損失機構を低減させることで発電性能の向上の可能性を示唆する。さらに,最適なダイアゴナル角の存在を見出し,これまでの実験結果の約1.6倍の発電出力が期待できることを提案している。
 第6章「Conclusions and Future Research」で,本研究で得られた結論と今後の研究への提言として総括している。
 これら本論文によって得られた知見は,極超音速機搭載型MHD発電の実用化に向けて有益である。よって、本論文は工学上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

平成19(2007)年度博士論文題名一覧

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る