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Study of novel separation membranes prepared by hybrid molecular imprinting technique (ハイブリット分子インプリント法により作製した新規分離膜に関する研究)

氏名 武田 公平
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第463号
学位授与の日付 平成20年3月25日
学位論文題目 Study of novel separation membranes prepared by hybrid molecular imprinting technique (ハイブリット分子インプリント法により作製した新規分離膜に関する研究)
論文審査委員
 主査 教授 小林 高臣
 副査 教授 野坂 芳雄
 副査 教授 梅田 実
 副査 准教授 竹中 克彦
 副査 長岡工業高等専門学校物質工学科教授 丸山 一典

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Contens
 Abbreviation list
Chapter 1. General Introduction p.1
 1.1 Molecular imprinting techinique p.1
 1.1.1 fundamentals of molecular imprinting p.2
 1.1.2 Present approaches to molecular imprinting p.4
 1.1.3 Molecular imprinted membranes p.9
 1.2 Hybrid molecular imprinting technique p.13
 1.3 Outline of this thesis p.16
 1.4 References p.16
Chapter 2. Bisphenol A imprinted polymer adsorbents with selective recognition and binding characterristics p.21
 2.1 Introduction p.22
 2.2 Experimental p.23
 2.2.1 Materials p.23
 2.2.2 Preparation of BPA imprinted and non-imprinted polymers p.29
 2.2.3 Substrate binding with heterogeneous batch experiments to imprinted polymers p.31
 2.3 Results and Discussion p.32
 2.3.1 BPA binding ability of imprinted polymers p.32
 2.3.2 Recognition of BPA for imprinted polymers p.40
 2.3.3 Comparison of recpgnition abiliity of BPA and BPF imptinted polymers p.44
 2.4 Conclusion p.46
 2.5 References p.47
Chapter 3. Hybrid molecular imprinted membranes for targeted bisphenol derivatives p.48
 3.1 Introduction p.48
 3.2 Experiimental p.50
 3.2.1 Materials p.50
 3.2.2 Procedures of copolymerization for BPA-MIP powder p.50
 3.2.3 Preparation of hybrid BPA-MIP(HMIP) membranes p.52
 3.2.4 Batch binding of substrare to HMIP membranes p.52
 3.2.5 Permselective binding of substrate for HMIP p.55
 3.2.6 Scatchard analysis p.56
 3.3 Results and Discussion p.56
 3.3.1 Characteristics of HMIP membranes p.56
 3.3.2 Binding of ability to HMIP membranes p.60
 3.3.3 selective binding ability to BPA by HMIP membranes p.63
 3.3.4 permselectively binding abilities to BPA by HMIP membranes p.66
 3.4 Conclusion p.73
 3.5 References p.74
Chapter 4. Hybrid molecular imprinted membranes having selectivity and separation behavior to targeted indole derivatives p.76
 4.1 Introduction p.76
 4.2 Experimental p.78
 4.2.1 Materials p.78
 4.2.2 Preparation of IE imprinted polymers p.80
 4.2.3 Membrane formation by HMIP technique p.81
 4.2.4 Batch binding of substrates to the membranes p.84
 4.2.5 Permselective binding of substrates for membranes p.85
 4.3 Results and Discussion p.86
 4.3.1 Characteristics of P(IEMA-co-DVB)<sub>EX</sub> and hybrid membranes p.86
 4.3.2 selective binding of IE to P(IEMA-co-DVB)<sub>EX</sub> powder and p.94
 4.3.3 Permselectivity of IE to hybrid membranes p.98
 4.4 Conclusion p.101
 4.5 References p.102
Chapter 5. selectively removing bisphenol A from serum by molecular imprinted polymer membranes p.104
 5.1 Introduction p.104
 5.2 Experimental p.107
 5.2.1 Materials p.107
 5.2.2 Preparation of HMIP membranes p.107
 5.2.3 Evaluation of selective binding to BPA in serum for HMIP membrane p.111
 5.3 Results p.112
 5.3.1 Characteristic properties of HMIP membranes p.112
 5.3.2 BPA binding ability of HMIP membranes p.114
 5.3.3 Serum clitical chemistry parameters p.118
 5.3.4 Binding of BPA in a DCS/saline mixture p.118
 5.4 Discussion p.122
 5.5 References p.127
Chapter 6. Molecular-imprinted nylon membranes for the permselective binding of phenylalanine as optical-resolution membrane adsorbents p.129
 6.1 Introduction p.129
 6.2 Experimental p.132
 6.2.1 Materials p.132
 6.2.2 Preparation of the molecular-imprinted membranes p.134
 6.2.3 Substrate recognition and binding by heterogeneous batch experiments to imprinted nylon membranes p.136
 6.2.4 permselective binding experiments of substrate solutions through L-phenylalanine imprinted membranes p.137
 6.3 Results and Discussion p.137
 6.3.1 Characterization of the imprinted nylon membranes p.137
 6.3.2 Binding of L- and D-phenylalanine to the imprinted nylon membranes by heterogeneous batch experiments p.138
 6.3.4 Permselective binding of L-phenylalanine in permeation experiments of the imprinted nylon membranes p.143
 6.3.5 Selective recognition of D-phenylalanine by the D-form imprinted nylon membrane Conclusion p.146
 6.4 Conclusion p.148
 6.5 References p.148
Chapter 7. Summary p.150
List of publications p.153
Presentations in conferences and Symposiums p.155

 機能性高分子開発の手法の1つとして、分子インプリント法が着目されている。この手法は、ホストとなるポリマー材料に、ターゲットとなる分子(鋳型分子)の形状や機能性を記憶させ、鋳型分子を選択的に認識・吸着できる機能性高分子を合成する技術である。一般に、分子インプリントポリマー(MIP)は、機能性モノマーと硬いポリマー構造を有する架橋剤の共重合により合成される。そのため、得られる材料の形状は主に粒子や粉体に限られており、MIPの分子認識・吸着能力を実際に応用するためには、カラムに充填するなどの方法を用いなければならず、その用途は限られていた。
 これらを改善するため、本研究では、ハイブリッド分子インプリント法という新規インプリント概念を提唱した。ハイブリッド分子インプリント法では、MIP粉末を足場(scaffold)となるポリマーの溶液に分散後、相転換法により製膜することでMIP粒子を膜中に担持できる。このように、MIPの分子認識・吸着性をハイブリッド分子インプリント(HMIP)膜にそのまま保持させることが可能であり、そのため、MIPを種々の用途に応用できる。この技術により、簡便な膜状分子認識材料の作製法が確立され、今後のMIPの応用展開の進展が期待される。
 本論文では、ビスフェノールA(BPA)またはインドール-3-エタノール(IE)を鋳型分子としたHMIP膜を作製し、それぞれの分子認識・吸着特性の評価を行い、この新規分子インプリント法の有効性を実証した。
BPAまたはIEをターゲットとしたHMIP膜の作製は、MIP粒子の合成とハイブリッド化による製膜の2段階で行った。MIP粉末は、BPAまたはIEをメタクリル化した機能性モノマーと架橋材であるジビニルベンゼンとの共重合により得た。それぞれ加水分解反応を経て、BPAまたはIEをインプリントしたBPA-MIPまたはIE-MIPを合成した。粉砕・ふるい分けを行った各MIPの粉末を、ポリスルホン(PSf)等の膜材ポリマーの溶液に20~56 wt.%で混合し、ガラス基板上で均一の厚さに引き伸ばした後、ガラス基板ごと水浴相内に投入し、PSfの液-固相転換過程でMIP粉末を含んだまま膜状に成形した。特に混合割合50 wt.%の場合、良好な膜特性を示したことから、この混合割合のHMIP膜で、BPAまたはIEとそれらの構造類似体を含む水溶液中で、バッチ吸着および膜透過による分離実験を行い、分子認識・吸着特性の評価を行った。加えて、BPAをターゲットとしたHMIP膜については、ウシ血清中においてBPAの選択的吸着・分離も試みた。
BPAをターゲットとしたHMIP膜では、Scatchard解析を行い、水系での吸着平衡定数を測定したところ、BPAに対し20700 M-1と高い値を示した。また、BPA-MIP粒子単体においても19700 M-1とHMIP膜とほぼ同等の値を示す一方、PSf単体膜に対しては480 M-1と非常に小さい値であることが分かった。これらより、MIP粒子を担持したPSf-HMIP膜のBPA吸着特性は、インプリント効果により有効な吸着作用を示すことが確認できた。また、BPAとその構造類似体であるビスフェノールE(BPE)およびビスフェノールF(BPF)や2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアルコール(HPA)を各20 Mで含む混合水溶液をHMIP膜に透過したところ効果的に分離することができ、HPAに対する各基質の分離係数は、10.8(BPA)、10.0(BPE)、9.6(BPF)となり、インプリントターゲットであるBPAに対し最も高い選択性を示した。また、BPAを0.05~100 Mの濃度で含むウシ血清10 ml中にて、HMIP膜によるBPAの吸着実験を行ったところ、そのBPA濃度が6~14%減少する結果が得られた。また、同時に血清中に含まれる21種の成分評価を行い、その成分にほとんど影響を与えないことも確認できた。さらに、ScaffoldとしてPSfの他に、ナイロン、セルロースアセテート等のポリマー素材にも応用可能であることが示された。
 一方、IE-MIP粒子とそのHMIP膜についても同様に、IEとその構造類似体であるインドールの分離を試みた。しかし、IE-MIP粒子単体ではIEに対して選択性を示さず、インドールの吸着がより効率的であった。アルコール/水系での吸着実験により、水系では疎水性相互作用による非特異的なインドール吸着が支配的であることが判明した。しかし、IE-MIPを含むHMIP膜では、インドールに比べ、IEに対する吸着がより効果的に生じ、インプリント効果を発現できた。この理由は、MIP粒子がHMIP膜中でPSfに包み込まれ、疎水性相互作用によるインドールの吸着を低減できたことに起因すると考察した。
 以上のように簡便なハイブリッド分子プリント法により、分子認識・分離機能を有する膜素材の開発に成功し、その分子吸着ならびに分離膜特性を調査・検討した。その結果、この手法は汎用性が高く、原則的に既存のMIP材料全てに応用できるため、様々な新規分子認識材料の作製が期待される。

 本論文は「Study of novel separation membranes prepared by hybrid molecular imprinting technique(ハイブリッド分子インプリント法により作製した新規分離膜に関する研究)」と題し、全7章から構成されており、ハイブリッド分子インプリント法という新規インプリント概念を提唱し、この手法で作製できたハイブリッド分子インプリント(HMIP)膜の分子認識・吸着特性を述べている。
 第1章「General Introduction」では、分子インプリント法について概説し、膜状分子インプリント材料のこれまでの経緯と、ハイブリッド分子インプリント法の新規性とその技術的位置づけについて解説し、本論文の目的を述べている。
 第2章「Bisphenol A imprinted polymer adsorbents with selective recognition and binding characteristics」では、Bisphenol A(BPA)に対して分子認識・吸着特性を持つ粉末状の分子インプリントポリマー(MIP)を合成し、そのBPA選択特性について説明している。
 第3章「Hybrid molecular imprinted membranes for targeted bisphenol derivatives」では、合成したBPA-MIP粉末を用い、種々の膜材とハイブリッド分子インプリント膜を作製している。ポリスルホン等とのハイブリッド化により、これらの膜材がMIP粉末の足場として作用し、両者の協働吸着作用により、BPAへの吸着能力が増加することを述べている。また、ヒドロキシエチルフェノールとビスフェノール誘導体の膜分離実験において高い選択性を持つ分離挙動を示す事を説明している。
 第4章「Hybrid molecular imprinted membranes having selectivity and separation behavior to targeted indole derivatives」では、インドール-3-エタノール(IE)に対して認識・吸着特性を有するMIPを新規に合成し、ポリホンとのHMIP膜を作製し、そのIEとインドールの分離特性を評価するとともに、膜分離に応用できる事を述べている。
 第5章「Selectively removing bisphenol A from serum by molecular imprinted polymer membranes」では、BPA-HMIP膜をウシ血清中で用い、BPAの吸着特性を評価し、血清という特殊な環境中においても分子認識性が発現することを初めて見出している。
 第6章「Molecular-imprinted nylon membranes for the permselective binding of phenylalanine as optical-resolution membrane adsorbents」では、種々のナイロンによる相転換分子インプリント膜を作製し、そのキラル分離特性を評価している。
 第7章では、本論文で得られた結果と考察を要約している。
 以上の内容より、本論文は工学上および工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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