Research on Particle Size and Phase Control of Nanosized Powder in Pulsed Wire Discharge(パルス細線放電法における超微粒子の粒径と相の制御に関する研究)
氏名 床井 良徳
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第466号
学位授与の日付 平成19年3月25日
学位論文題目 Research on Particle Size and Phase Control of Nanosized Powder in Pulsed Wire Discharge (パルス細線放電法における超微粒子の粒径と相の制御に関する研究)
論文審査委員
主査 教授 末松 久幸
副査 教授 濱崎 勝義
副査 教授 原田 信弘
副査 教授 高田 雅介
副査 長岡技術科学大学特任教授 新原 晧一
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Chapter 1 Prolegomenon
1.1 Intoduction p.1
1.2 Applications of nanosized powders p.1
1.3 Synthesis process of nanosized powders p.3
1.4 Overview of pulsed wire dischagre p.4
1.4.1 Basic principle of PWD p.4
1.4.2 History of EW and PWD p.5
1.4.3 Comparsion between EW and PWD p.10
1.5 Purpose of this study p.11
1.6 Composition of this thesis p.12
Chapter 2 Particle Size and Phase Control in PWD and Proposal of a Method to Estimate Plasma/vapor Density
2.1 Intoduction p.14
2.2 Browian coagulation in the Free Molecular Regime p.15
2.3 Particle size control in PWD p.17
2.3.1 Ambient gas pressure p.17
2.3.2 Relative energy p.18
2.3.3 Ambient gas species p.18
2.4 Ploblem of particle size control p.19
2.5 Phase control in PWD p.20
2.6 Proposal of plasma/vapor density p.21
2.7 Conclusion p.22
Chapter 3 Preparation of Metallic Nanosized Powders and Verification of Plasma/vapor Density
3.1 Intoduction p.23
3.2 Experimental setup p.25
3.2.1 Experimental apparaturs p.25
3.2.2 Circuit PWD p.26
3.2.3 Estimation of energy deposition p.27
3.3 Experimental procedure p.29
3.4 Preparation of Cu nanosized powders p.30
3.4.1 Generation of plasma/vapor p.30
3.4.2 Analysis of prepared powders p.39
3.5 Preparation of Ag and Ni nanosized powders p.44
3.5.1 Experiment procedure p.44
3.5.2 Generation of plasma/vapor p.44
3.5.3 Analysis of prepared powders p.45
3.6 Preparation of smallest Cu nanosized powder p.49
3.6.1 Experimental procedure p.49
3.6.2 Results p.49
3.7 Preparation of smallest Cu nanosized powder p.52
Chapter 4 Development of Gas Puff Apparatus for PWD and Prepration of Nanosized Powders buy PWD with Gas Puff
4.1 Intoduction p.53
4.2 Development and operation of gas puff apparatus p.54
4.2.1 Development gas puff apparatus p.54
4.2.2 Operation of gas puff apparatus p.54
4.3 Preparation of Cu nanosized powders p.58
4.3.1 Experimental procedure p.58
4.3.2 Results and discussion p.60
4.4 Synthesis of Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> nanosized powders p.69
4.4.1 Experimental procedure p.69
4.4.2 Results and discussion p.71
4.5 Conclusion p.76
Chapter 5 Synthesis of TiO<sub>2</sub> Nanosized Powders and Particle Size and Phase Control of TiO<sub>2</sub> Nanosized Powders
5.1 Intoduction p.77
5.2 Experiment procedure p.78
5.3 Results p.79
5.3.1 Generation of plasma/vapor p.79
5.3.2 Analysis of synthesis powders p.84
5.4 Discussion p.89
5.5 Conclusion p.92
Chapter 6 Synthesis of AIN Nanosized Powders in N<sub>2</sub> without NH<sub>3</sub> and Suggenstion on the New Synthesis Technique for Nitrides
6.1 Intoduction p.93
6.2 Experiment procedure p.95
6.3 Results and discussion p.96
6.3.1 Synthesis of AIN nanosized powders p.96
6.3.2 Analysis of synthesis powders p.99
6.4 Conclusion p.104
Chapter 7 Summary
7.1 Summary p.105
7.2 Conclusion p.107
References p.111
Acknowledgements p.119
Research Performance p.120
近年、ナノテクノロジーの発展とともにナノ材料への関心が高まっている。これらナノ材料は省エネルギー・省資源・低環境負荷などに関する法令を克服するための基盤材料であり、最たるものとして超微粒子がある。現在、これら超微粒子は様々な手法を用いて合成されており、低コストかつ大量生産および前記法令を克服する製造技術、さらには粒径や相の制御性の良い技術が要求されている。
パルス細線放電法(Pulsed Wire Discharge: PWD)はパルスパワー技術を応用した金属プラズマ/蒸気を用いた超微粒子の合成方法のひとつであり、省エネルギーかつ低環境負荷な手法として期待されている。これまでの研究によって、粒径制御あるいは粒子形成機構に関して多くの知見が得られているが、その形成機構について明確な見解は得られていない。本研究では、プラズマ/蒸気の密度に着目し、プラズマ/蒸気の密度と粒径・相の関係を明らかにすることで、PWD法における粒径と相の制御に関する総合的な知見を得ることを目的とし、プラズマ/蒸気の密度を示す密度パラメータを提唱した。様々な条件下で超微粒子の作製を行った結果、高速度写真から算出したプラズマ/蒸気の密度と提唱した密度パラメータとには相関があるこが明らかとなった。またPWD法における超微粒子の粒径と相がプラズマ/蒸気の密度に依存することが明らかとなり、PWD法における超微粒子形成機構に対して多くの知見を得た。
本論文は、「Research on Particle Size and Phase Control of Nanosized Powder in Pulsed Wire Discharge(パルス細線放電法における超微粒子の粒径と相の制御に関する研究)」と題し、以下の7章より構成されている。
第1章「Prolegomenon」では、超微粒子の応用と作製技術について記述し、要求されている性能と技術について明確にした。またPWD法について概説し、本研究の有用性と目的及び本論文の構成を示した。
第2章「Particle Size and Phase Control in PWD, and Proposal a Model to Estimate of Plasma/vapor Density」では、これまでに得られている知見を基に、作製された粒子の粒径とプラズマ/蒸気の密度との関係を示し、密度パラメータを提唱した。
第3章「Preparation of Metal Nanosized Powders and Verification of Plasma/vapor Density」では、第2章で提案した密度パラメータの実証と粒径とプラズマ/蒸気の密度との関係について明記した。また以上の得られた知見から最も小さな銅超微粒子の作製を試み、メディアン粒径が5nm程度の粒子の作製に成功した。
第4章「Development of Gas Puff Apparatus for PWD and Preparation of Nanosized Powders by PWD with Gas Puff」では、PWD法にガスパフ装置を組み込んだ新たな手法を提案し、これまで困難であった低圧雰囲気中での超微粒子の作製を試みた。その結果、従来の装置で作製された物よりも小さな粒子の合成に成功し、ガスパフ装置の有用性を示した。
第5章「Synthesis of TiO2 Nanosized Powders and Particle Size and Phase Control of TiO2 Nanosized Powders」では、酸化チタン(TiO2)粒子の合成を通して、PWDにおける相の制御に関する知見の構築を行った。その結果、合成された粒子中のルチル含有量は雰囲気圧力と細線に投入するエネルギーに依存する結果を得た。また第2章で提案した密度パラメータは、第3章の銅超微粒子の作製時と同様の結果を示した。この結果を基に、ルチル含有量とプラズマ/蒸気密度との関係が、雰囲気圧力に対して非常に良い相関を持つ事が示され、同一密度の場合には圧力に対して比例的にルチル含有量が増加することが明らかとなった。これらの結果から、PWDにおいての相の制御は、プラズマ/蒸気密度と雰囲気圧力によって可能である事を示した。
第6章「Synthesis of AlN Nanosized Powders in N2 without NH3 and Suggestion on the New Synthesis Technique for Nitrides」では、より簡便に窒化アルミニウム(AlN)を作製する技術の構築とアーク放電による影響について記述した。細線に投入するエネルギーを非常に高くすることで、これまで困難であった窒素雰囲気中でのAlN超微粒子の合成に成功した。作製された粒子のAlN含有量は97wt.%でメディアン粒径5nmである。またPWDにおけるアーク放電は、活性化学種を作製する際に重要であることを示した。
第7章「Summary」では、本研究で得られた結果をまとめるとともに、本研究で明らかになった知見をこれまでのPWDの原理に導入し、粒子形成モデルの提案を行った。
本論文は、「Research on Particle Size and Phase Control of Nanosized Powder in Pulsed Wire Discharge(パルス細線放電法における超微粒子の粒径と相の制御に関する研究)」と題し、全7章から構成されている。
第1章「Prolegomenon」では、超微粒子の応用と作製技術について記述し、要求されている性能と技術について明確にし、本研究の有用性と目的及び本論文の構成を示している。
第2章「Particle Size and Phase Control in PWD, Proposal of a Method to Estimate Plasma/vapor Density」では、これまでに得られている知見を基に、作製された粒子の粒径とプラズマ/蒸気の密度との関係を示し、密度パラメータを提唱している。
第3章「Preparation of Metal Nanosized Powders and Verification of Plasma/vapor Density」では、第2章で提案した密度パラメータの実証と粒径とプラズマ/蒸気の密度との関係について明記し、得られた知見から最も小さな銅超微粒子の作製を試み、メディアン粒径が5nm程度の粒子作製に成功している。
第4章「Development of Gas Puff Apparatus for PWD and Preparation of Nanosized Powders by PWD with Gas Puff」では、パルス細線放電法にガスパフ装置を組み込んだ新たな手法を提案し、従来の圧力で作製された物よりも小さな粒子の合成に成功し、ガスパフ装置の有用性を示している。
第5章「Synthesis of TiO2 Nanosized Powders and Particle Size and Phase Control of TiO2 Nanosized Powders」では、酸化チタン(TiO2)粒子の合成を通して、パルス細線放電法における相の制御に関する知見の構築を行っている。実験の結果、合成された粒子中のルチル含有量は雰囲気圧力と細線に投入するエネルギーに依存し、プラズマ/蒸気密度とルチル含有量の評価を行った結果、ルチル含有量とプラズマ/蒸気密度との関係は、雰囲気圧力に対して非常に良い相関を持つ事が示され、同一密度の場合には圧力に対して直線的にルチル含有量が増加することを明らかとしている。以上の結果は、PWDにおいての相の制御は、プラズマ/蒸気密度と雰囲気圧力によって可能である事を示している。
第6章「Synthesis of AlN Nanosized Powders in N2 without NH3 and Suggestion on the New Synthesis Technique for Nitrides」では、より簡便に窒化アルミニウム(AlN)を作製する技術の構築とアーク放電による影響について記述しており、細線に投入するエネルギーを非常に高くすることで、窒素雰囲気中でのAlN超微粒子の合成に成功している。この結果から、パルス細線放電中のアーク放電が、活性化学種を作製する際に重要であることを明らかにしている。
第7章「Summary」では、本研究で得られた結果をまとめるとともに、本研究で明らかになった知見をこれまでのPWDの原理に導入し、粒子形成モデルの提案を行っている。
本論文で示されたこれらの知見は、パルス細線放電法における超微粒子の粒径と相に関する知識基盤を確立し、パルス細線放電法を用いて粒径が数ナノメートルの超微粒子の合成が可能であることを示している。よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。