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残留塩素の電気化学的検出に関する研究

氏名 池竹 英人
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第346号
学位授与の日付 平成17年8月31日
学位論文題目 残留塩素の電気化学的検出に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 山田 明文
 副査 教授 野坂 芳雄
 副査 教授 梅田 実
 副査 助教授 松原 浩
 副査 長岡工業高等専門学校名誉教授 中澤 章

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目次

第1章 序論 p.1
 1.1 日常生活における塩素消毒 p.1
 1.2 残留塩素の分析法 p.4
 1.3 残留塩素の特性 p.5
 1.4 本研究の目的 p.6
 1.5 本論文の構成 p.7
 [参考文献]

第2章 残留塩素の電気化学的検出 p.11
 2.1 緒言 p.11
 2.2 実験 p.12
 2.2.1 電極の作製 p.12
 2.2.2 装置 p.12
 2.2.3 試薬 p.14
 2.2.4 操作 p.14
 2.3 結果及び考察 p.14
 2.3.1 電極作成方法の評価 p.14
 2.3.2 残留塩素の電流-電位曲線 p.16
 2.3.3 溶存酸素の影響 p.21
 2.3.4 pHの影響 p.24
 2.3.5 拡散係数の測定 p.28
 2.4 結論 p.28
 [参考文献]

第3章 フローインジェクション分析用電気化学検出器の開発 p.31
 3.1 緒言 p.31
 3.2 実験 p.32
 3.2.1 検出器の構造 p.32
 3.2.1.1 ポーラログラフィック検出器 p.32
 3.2.1.2 固体電極検出器 p.35
 3.2.2 装置 p.36
 3.2.3 試薬 p.37
 3.2.4 操作 p.37
 3.3 結果及び考察 p.38
 3.3.1 ポーラログラフィック検出の評価 p.38
 3.3.1.1 フロー中での水銀電極安定の影響 p.38
 3.3.1.2 セル構造の影響 p.40
 3.3.1.3 検出器の基礎的特性評価 p.41
 3.3.1.4 チオ尿素化合物の分析 p.43
 3.3.2 固体電極検出器の評価 p.45
 3.3.2.1 検出器の基礎的特性評価 p.46
 3.3.2.2 電極更新の簡便化・迅速化 p.47
 3.4 結論 p.49
 [参考文献]

第4章 残留塩素のフローインジェクション分析 p.51
 4.1 緒言 p.51
 4.2 実験 p.52
 4.2.1 装置 p.52
 4.2.2 試薬 p.52
 4.2.3 操作 p.52
 4.3 結果及び考察 p.53
 4.3.1 印加電位 p.53
 4.3.2 濃度比例性及び再現性 p.54
 4.3.3 水道水中の残留塩素の分析 p.56
 4.4 結論 p.57
 [参考文献]

第5章 残留塩素センサーの開発 p.59
 5.1 緒言 p.59
 5.2 実験 p.60
 5.2.1 電極の作製 p.60
 5.2.2 装置 p.62
 5.2.3 試薬 p.62
 5.2.4 操作 p.62
 5.3 結果及び考察 p.63
 5.3.1 濃度比例性及び再現性 p.63
 5.3.2 共存イオンの影響 p.64
 5.3.3 水道水中の残留塩素の分析 p.66
 5.3.4 電極の薄膜化 p.67
 5.3.4.1 金薄膜電極の電流-電位曲線 p.67
 5.3.4.2 濃度比例性及び再現性 p.68
 5.3.4.3 水道水中の残留塩素の分析 p.70
 5.4 結論 p.70
 [参考文献]

第6章 残留塩素の電気化学的挙動 p.73
 6.1 緒言 p.73
 6.2 実験 p.74
 6.2.1 装置 p.74
 6.2.2 試薬 p.74
 6.2.3 操作 p.75
 6.3 結論及び考察 p.75
 6.3.1ポーラログラフィー p.75
 6.3.1.1 拡散係数 p.76
 6.3.1.2 活性化エネルギー p.77
 6.3.2 ノーマルパルスボルタンメトリー p.78
 6.3.2.1 速度論的パラメータ p.79
 6.3.2.2 活性化エネルギー p.84
 6.4 結論 p.85
 [参考文献]

第7章 総括 p.89

論文目録 p.93

謝辞 p.97

 塩素は、我々の日常生活の中で消毒剤として広く利用されており、病原性微生物による感染症を防ぐために重要な役割を果たしている。身近なものとしては上水道が挙げられるが、この他にもプール、入浴施設、食品工場など様々な場所で使用され、微生物学的な安全性を高めている。それらの安全性を維持するために、残留塩素を指標とした水質管理手法が用いられており、残留塩素濃度を適正に維持、管理、記録することが求められ、それを迅速かつ的確に分析することが非常に重要となっている。その分析には、従来から比色法が簡便であるために広く利用されていたが、試薬に毒性があるなど必ずしも最適な方法ではなく、また自動測定や連続測定の必要性などからも新規の分析法が望まれている。そこで本研究では、従来の比色法にかわる方法として電気化学的な検出方法について検討し、これを応用したフローインジェクション分析システム及び残留塩素センサーの開発を行った。
 第1章「序論」では、塩素消毒や残留塩素の重要性、現状における残留塩素の分析法とその問題点を示し、本研究の背景及び目的について述べた。
 第2章「残留塩素の電気化学的検出」では、従来の分析法にかわる方法として電気化学的な手法を提案し、残留塩素の還元反応を応用した検出方法について述べた。種々の電極を用いて残留塩素の還元反応における電流-電位曲線を測定し、残留塩素の検出に適した電極を模索した。その結果、金電極及び水銀電極において、溶存酸素の還元波の影響を受けない電位で残留塩素の検出ができることを見出し、煩雑な除酸素操作を伴わない、実用的な残留塩素分析の可能性を示した。
 第3章「フローインジェクション分析用電気化学検出器の開発」では、残留塩素の分析に電気化学検出器を用いるフローインジェクション分析(FIA)法を応用するためのFIAシステムの構築について述べた。FIAシステムでは特に検出部が重要であることから、新たに電気化学検出器を開発し、検出器の構造が感度、再現性に及ぼす影響を検討した。その結果、セル体積、電極近傍でのフローパターンが検出感度に大きく影響することを明らかにし、セルデザインの重要性を指摘した。また、作製した検出器の基礎的特性評価を行い、濃度比例性が3桁程度、繰り返し再現性が数%程度と良好な結果が得られ、FIA用電気学検出器として適用できることを示した。
 第4章「残留塩素のフローインジェクション分析」では、第3章のFIAシステムを用いた残留塩素の迅速分析について述べた。FIA法における各種条件を検討し、濃度比例性や再現性がオルトトリジン吸光光度法と同等以上であることを示した。また、実試料分析として水道水中の残留塩素の分析を行い、吸光光度法とよく一致することを確認し、FIA法による残留塩素の迅速分析を確立した。
 第5章「残留塩素センサーの開発」では、オンサイト用を目指した残留塩素センサーの開発について述べた。固体電極では電極表面を定期的に再研磨する必要があるが、電極を薄膜化することによってディスポーザブルが可能となり、電極のメンテナンスを容易とした。また、残留塩素の分析に影響を及ぼすイオンを検討し、銅イオンが存在する系では、銅イオンの還元に伴う正の妨害を受けることを示した。実試料への応用として水道水中の残留塩素の分析を行い、比色法とよく一致することを確認し、残留塩素センサーとして実用化が可能なことを示した。
 第6章「残留塩素の電気化学的挙動」では、残留塩素の還元反応における電気化学的挙動について述べた。金電極を用いたノーマルパルスボルタンメトリーにおいて、残留塩素の電極反応における還元反応が非可逆反応であることを明らかとした。また、電極反応の速度論的パラメータである、半波電位E1/2、移動係数α、E=0Vにおける速度定数kc0をそれぞれ求め、残留塩素の電極反応を示した。
 第7章「総括」では、本研究の成果を述べた。本研究では、従来の方法にかわる残留塩素の検出方法として、残留塩素の還元反応を用いる電気化学的な検出方法を見出すことができ、これを応用したフローインジェクション分析システムやオンサイト型残留塩素センサーの開発を行い、実用化への可能性を確立した。

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