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Synthesis and Emission Behavior on Phosphor Whiskers (栄光ウィスカーの合成と発光挙動)

氏名 佐藤 裕子
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第363号
学位授与の日付 平成18年3月24日
学位論文題目 Synthesis and Emission Behavior on Phosphor Whiskers (栄光ウィスカーの合成と発光挙動)
論文審査委員
主査 教授 齋藤 秀俊
副査 教授 植松 敬三
副査 教授 石崎 幸三
副査 教授 高田 雅介
副査 教授 小松 高行

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Table of contents p.i
List of publication and meetings p.vi
List of Figures p.xxi
Acknowledgement p.xxvi

Chapter1 General Introduction
 1.1 Overview p.1
 1.1.1 Phenomenon and material p.1
 1.1.2 Fundamentals of luminescence p.3
 1.1.3 Luminescence of rare-earth ions p.6
 1.2 Literature survey p.8
 1.2.1 History of phosphor p.8
 1.2.2 Y2O3 as phospher p.9
 1.2.3 Impurity analysis in ceramic film and whisker p.11
 1.3 Statement of problem p.13
 1.4 Objective of this study p.15
 1.5 Outline of this thesis p.16

Chapter2 Synthesis and Luminescence Properties of Y2O3:Eu3+Whiskers and Films p.22
 2.1 Introduction p.23
 2.2 Experimental p.24
 2.2.1 Sample preparation p.24
 2.2.2 Evaluation of sample p.26
 2.3 Results and discussion p.27
 2.3.1 Analysis of crystal structure p.27
 2.3.2 Morphological observation p.28
 2.3.3 PL-spectra p.29
 2.4 Summary p.32
 References p.33

Chapter3 Synthesis and Luminescence Properties of Y2O3:Tb3+ Whiskers and Films p.35
 3.1 Introduction p.36
 3.2 Experimental p.37
 3.2.1 Sample preparation p.37
 3.2.2 Evaluation of sample p.37
 3.3 Results and discussion p.39
 3.3.1 Determination of crystalline orientation p.39
 3.3.2 Crystal morphology of samples p.40
 3.3.3 PL spectra and integrated luminescence intensity p.42
 3.4 Summary p.44
 References p.45

Chapter4 Synthesis and Luminescence Properties of Y2O3:Tm3+ Whiskers and Films p.46
 4.1 Introduction p.47
 4.2 Experimental p.48
 4.2.1 Sample preparation p.48
 4.2.2 Evaluation of sample p.49
 4.3 Results and discussion p.50
 4.3.1 Orientation on the X-ray diffraction p.50
 4.3.2 Crystal morphology of samples p.52
 4.3.3 PL spectra and integrated luminescence intensity p.53
 4.4 Summary p.56
 References p.57

Chapter5 Thermally Stimulated Processes in Y2O3:Eu3+ Whiskers p.58
 5.1 Introduction p.59
 5.2 Experimental p.60
 5.2.1 Sample preparation p.60
 5.2.2 Analysses of dopant concentrations p.60
 5.2.3 Measurements of photoluminescence and photoluminescence excitation spectra p.60
 5.2.4 Time decay measurements p.61
 5.3 Results p.61
 5.3.1 PL and PLE spectra of Y2O3:Eu3+ p.61
 5.3.2 Temporal variation of the Eu3+emission at different temperatures p.66
 (a) Time decay curves of the 5D0→7F2emission(red) p.66
 (b) Time decay curves of the 5D2→7Fjemission(blue) p.67
 (c) Time decay curves of the 5D1→7Fjemission(green) p.68
 5.4 Analysis and discussion p.69
 5.4.1 Themally stimulated increase of the PL intensity p.69
 5.4.2 Multiphonon relaxation within the Eu3+ ion p.71
 5.4.3 Increase of the PL intensity as a result of the multiphonon relaxation p.78
 5.5 Summary p.82
 References p.83

Chapter6 Trap Analysis in the Crystal of Y2O3:Eu3+ phosphors p.84
 6.1 Introduction p.85
 6.2 Experimental p.86
 6.2.1 Sample preparation p.86
 6.2.2 Evaluation of sample p.87
 6.3 Results and discussion p.87
 6.3.1 Determination of crystalline orientation p.87
 6.3.2 Crystal morphology of sample p.88
 6.3.3 PL spectra p.89
 6.3.4 TL spectra p.90
 6.5 Summary p.93
 References p.94

Chapter7 Luminescence Properties from C2 site of C-type Cubic Y2O3:Eu3+ Whiskers p.96
 7.1 Introduction p.97
 7.2 Experimental p.98
 7.2.1 Sample preparation p.98
 7.2.2 Evaluation of sample p.99
 7.3 Results and discussion p.99
 7.3.1 Crystalline structure p.99
 7.3.2 PL spectra and integrated intensity of samples p.101
 7.3.3 Site analysis of Y2O3:Eu3+ Whiskers p.103
 7.4 Summary p.107
 References p.108

Chapter8 General Conclusions p.109

蛍光体開発の歴史は、発光素子、受像素子、表示素子など現代を支える電子製品の発明の歴史に一致する。現代では、エネルギー消費をさらに抑えたディスプレイを開発するために、より輝度の高い蛍光体が求められている。このような蛍光体を創出するためには、新しい考え方に立脚した蛍光体の設計・製造法が導入されなければならない。
本研究では新しい考え方による蛍光体の設計・製造のための手段として、大気開放型化学気相析出(CVD)法を導入するとともに、蛍光体の発光効率を評価するための指標として高温における結晶欠陥解析法ならびに発光中心の置換位置解析法を提案する。特に評価指標の開発には大きな努力を費やしている。高温における結晶欠陥解析法は、開発した蛍光体を加熱しながら蛍光を得て、そのスペクトルより結晶のバンド構造とトラップ構造を明らかにする。一方、発光中心の置換位置解析法は結晶中に存在する発光中心が占める格子位置を明らかにする。これら解析法で得た知見を大気開放型CVD過程にフィードバックすることで、より発光効率の高い蛍光体を創製した。
第1章「General Introduction」では、本研究の背景として蛍光体の開発史と評価手法を解説し、特に無機蛍光体の合成・評価に関するこれまでの研究をまとめて問題点を明らかにし、本研究の背景、目的および本論文の構成を示した。
第2章「Synthesis and Luminescence Properties of Y2O3:Eu3+Whiskers and Films」では、<100>方向に高い配向性を示し、ウイスカー形態を有する<100>Y2O3:Eu3+ウイスカーを作製した。作製した<100>Y2O3:Eu3+ウイスカーの発光スペクトルより、611 nmに5D0→7F2に帰属される赤色発光を確認した。多結晶Y2O3:Eu3+膜の発光強度は約3 at.%で最大を示すのに対し、<100>Y2O3:Eu3+ウイスカーの発光強度はEu濃度10 at.%まで増大した。しかしながら作製した<100>Y2O3:Eu3+ウイスカーの表面積は多結晶Y2O3:Eu膜のそれより43%小さい。これらの結果より、ウイスカーの強い発光が結晶学的な利点より不完全性の減少や適切な発光サイトに組み込まれたEu3+の数のような結晶の本質によるものと結論付けられた。
第3章「Synthesis and Luminescence Properties of Y2O3:Tb3+ Whiskers and Films」では、<100>Y2O3:Tb3+ウイスカーを作製した。542 nm に5D4→7F5遷移に帰属される緑色発光を確認した。多結晶Y2O3:Tb3+膜の発光強度は約3 at.%で最大を示すのに対し、<100>Y2O3:Tb3+ウイスカーの発光強度はTb3+濃度1.5 at.%で最大となった。
第4章「Synthesis and Luminescence Properties of Y2O3:Tm3+Whiskers and Films」では、<100>Y2O3:Tm3+ウイスカーを作製した。作製した<100>Y2O3:Tm3+ウイスカーの発光スペクトルより、454 nmに1D2→3F4遷移に帰属される青色発光を確認した。多結晶Y2O3:Tm膜の発光強度は約0.7 at.%で最大を示すのに対し、<100>Y2O3:Tmウイスカーの発光強度はTm濃度1.5 at.%で最大となった。
第5章「Thermally Stimulated Processes in Y2O3:Eu3+ Whiskers」では、<100> Y2O3:Eu3+ウイスカーの発光プロセスについて考察をおこなった。300 K-1135 Kの高温領域において<100> Y2O3:Eu ウイスカーの温度増加と共に発光強度が増大した。高温領域における発光強度の増大は5DJ(J=1,2)準位から5D0準位へ連続的に生じる多フォノン過程が原因であることがわかった。このことは、結晶中に発光を阻止する欠陥が少ないことを示す。
第6章「Trap Analysis in The Crystal of Y2O3:Eu3+Phosphors」では、 Y2O3:Eu3+ 蛍光体を(111)イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)単結晶基板とSiO2ガラス基板の上に合成し、90 K - 200 Kの温度条件で発光強度を調べた。 (111)YSZ単結晶基板上の Y2O3:Eu3+蛍光体は強い蛍光を発したものの、SiO2ガラス基板上のそれは弱かった。熱ルミネッセンス測定の結果、SiO2 ガラス基板上の Y2O3:Eu3+ 蛍光体でトラップが多く、そのために輝度が弱くなったと結論した。
第7章「Luminescence Properties fromC2 Site of C-type Cubic Y2O3:Eu3+ Whiskers」では、<100>Y2O3:Eu3+ウイスカーのサイト解析を行った。解析の結果、多結晶 Y2O3:Eu3+膜は0.7 at.%から非発光サイトであるC3iサイトを占有することが確認された。一方、 <100>Y2O3:Eu3+ ウイスカーのEuイオンは濃度の増大と共に発光サイトであるC2サイトを優先的に占有することを確認した。結晶学的視点から考察した結果、結晶座標よりC2サイトおよびC3iを構成するYイオンとOイオンの結合距離はそれぞれ最大2.3 Åおよび2.2Åと算出された。:Eu3+イオンを添加した場合、Eu-Oの結合距離は2.33Åである。単結晶のように極めて高い結晶性を有するY2O3:Eu3+ウイスカーの:Eu3+イオンはC3iサイトより安定なC2サイトを選択することが示唆された。よって、Eu=10 at.%まで濃度の増加と共に発光強度が増大するものと結論付けられた。
第8章「General Conclusions」では各章の結果を詳細に検討し、本研究の目的に対して次の結論を得た。大気開放型CVD法により、適切な条件でY2O3:RE3+ (RE=Eu, Tb, Tm)ウイスカーを得ることで、無配向Y2O3:RE3+膜よりも高い輝度を有する蛍光体を設計できることがわかった。ウイスカーは欠陥の少ない構造であり、さらに賦活元素を適切な位置に配置する傾向が強いことがその理由である。高温蛍光解析の結果から、高温では5DJ(J=1,2)準位から5D0準位へ連続的に生じる多フォノン過程が支配的になったため、蛍光を阻止する結晶欠陥が少ないことがわかった。サイト解析の結果から、単結晶のように極めて高い結晶性を有するY2O3:Eu3+ウイスカーのEu3+イオンはC3iサイトより安定なC2サイトを選択することがわかった。

本論文は「Synthesis and Emission Behavior on Phosphor Whiskers」と題し、8章より構成されている。
第1章「General Introduction」では、本研究の背景として蛍光体の開発史と評価手法を解説し、特に無機蛍光体の合成・評価に関するこれまでの研究をまとめて、問題点を明らかにし、本研究の背景、目的および本論文の構成を示している。
第2章「Synthesis and Luminescence Properties of Y2O3:Eu3+ Whiskers and Films」では、<100> Y2O3:Eu3+ウイスカーを作製し、その発光スペクトルより611 nmに5D0→7F2に帰属される強い赤色発光を確認している。ウイスカーの強い発光が不完全性の減少や適切な発光サイトに組み込まれたEu3+の数のような結晶の本質により得られると結論付けている。
第3章「Synthesis and Luminescence Properties of Y2O3:Tb3+ Whiskers and Films」では、<100>Y2O3:Tb3+ ウイスカーを作製し、542 nm に5D4→7F5 遷移に帰属される強い緑色発光を確認している。ウイスカーの発光強度は1.5 at.% Tbで最大となることを明らかにしている。
第4章「Synthesis and Luminescence Properties of Y2O3:Tm3+ Whiskers and Films」では、<100>Y2O3:Tm3+ ウイスカーを作製し、454 nmに1D2→3F4遷移に帰属される強い青色発光を確認している。ウイスカーの発光強度は1.5 at.% Tmで最大となることを明らかにしている。
第5章「Thermally Stimulated Processes in Y2O3:Eu3+ Whiskers」では、<100>Y2O3:Eu3+ウイスカーの発光プロセスについて考察するために300 K-1135 Kの高温領域において、<100>Y2O3:Eu3+ウイスカー発光強度を調査している。ウイスカーは高温においてより強い発光を示すことを明らかにするとともに、発光強度の増大が5DJ(J=1,2)準位から5D0準位へ連続的に生じる多フォノン過程が原因であることを突き止めている。この結果よりウイスカー結晶中に発光を阻止する欠陥がきわめて少ないと結論している。
 第6章「Trap Analysis in The Crystal of Y2O3:Eu3+ Phosphors」では、結晶学的品位の高い(111)YSZ単結晶基板上のY2O3:Eu3+ウイスカーは強い発光強度を示すのに対し、結晶学的品位の低いSiO2 ガラス基板上のY2O3:Eu3+ 多結晶膜では弱いことを示している。熱ルミネッセンス測定の結果、結晶学的品位の低い後者でトラップが多く、そのために発光強度が弱くなったと結論している。
第7章「Luminescence Properties from C2 Site of C-type Cubic Y2O3:Eu3+ Whiskers」では、<100>Y2O3:Eu3+ウイスカーのサイト解析を行い、きわめて高い結晶学的品位を有するY2O3:Eu3+ウイスカーのEu3+イオンはC3iサイトより安定なC2サイトを選択することを明らかにしている。
第8章「General Conclusions」では、本論文の内容を簡潔に要約している。
本論文は工学上及び工業上貢献するところがきわめて大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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