Development of self-sustainable sewage treatment system consisting of UASB and DHS(Down-flow Hanging Sponge) reactors for developing countrise (USAB法およびDHSリアクターから構成される開発途上国のための新規下水処理システムの開発)
氏名 Tandukar Madan
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第374号
学位授与の日付 平成18年03月24日
学位論文題目 Development of self-sustainable sewage treatment system consisting of UASB and DHS(Down-flow Hanging Sponge) reactors for developing countrise (USAB法およびDHSリアクターから構成される開発途上国のための新規下水処理システムの開発)
論文審査委員
主査 教授 原田 秀樹
副査 教授 藤田 昌一
副査 助教授 大橋 晶良
副査 助教授 小松 俊哉
副査 助教授 (東京大学環境安全研究センター) 福士 謙介
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Chapter I
General outline and objectives
1.1 Outline p.2
1.2 Objectives p.3
Chapter II
Literature review
2.1 Introduction p.5
2.1.1 Sewage treatment system p.5
2.1.2 Developing countries and sewage treatment p.6
2.1.3 Present scenario of water,wastewater and sanitation in developing countries p.8
2.2 Sewage production and characteristics p.9
2.3 Domestic sewage treatment p.11
2.3.1 Principles of bacterial metabolism p.11
2.3.2 Kinetics of bacterial activity growth and decay p.15
2.3.3 Oxygen uptake rate for aerobic sludge p.17
2.3.4 Net Biomass yield and observed biomass yield p.18
2.3.5 Different facilities for the treatment of municipal sewage p.19
2.4 Application of UASB for sawage treatment p.22
2.4.1 Microbiology of anaerobic treatment and production of methane p.22
2.4.2 USAB in developing countries p.24
2.4.3 Full-scale USAB reactors p.25
2.5 USAB design p.33
2.5.1 Reactor size and shape p.33
2.5.2 Feed inlet system p.35
2.5.3 Gas solid separator(GSS) p.35
2.5.4 Construction materials p.36
2.5.5 Cost analysis and comparison p.36
2.5.6 Draw backs of unaerobic treatment p.39
2.6 Post treatment for USAB p.40
2.6.1 Few important aspects for post treatment p.43
2.7 Conclusion p.49
References p.50
Chapter III
Development of DHS system
3.1 History of DHS system p.55
3.1.1 Background p.55
3.1.2 First Generation or Cubic type DHS(DHS G1) p.56
3.1.3 Second Generation or Curtain type DHS(DHS G2) p.60
3.1.4 Third Generation or Trickling filter type DHS(DHS G3) p.62
3.1.5 Fourth Generation or Array sponge type DHS(DHS G4) p.63
3.1.6 Fifth Generation or continuous sponge type DHS(DHS G5) p.63
3.1.7 Sixth Generation or hard sponge type DHS(DHS G6) p.63
3.2 Prospective of DHS as post-treatment system p.64
References p.65
Chapter IV
Process performance of the Second Generation DHS(DHS-G2) and process
optimization
4.1 Introduction p.67
4.2 Material and Methods p.68
4.2.1 Pilot plant Setup p.68
4.2.2 Operational conditions p.68
4.2.3 Shock load analysis p.69
4.2.4 Sampling and analytical methods p.69
4.3 Results and discussions p.70
4.3.1 Performance of USAB and DHS reactor p.70
4.3.2 Nitrogen removal p.75
4.3.3 Pathogen removal p.75
4.3.4 Tracer analysis p.78
4.3.5 Shock load events p.79
4.3.6 Characteristics of DHS sludge p.82
4.3.7 SEM Photographs of retained sludge p.85
4.3.8 Characteristics of USAB sludge p.86
4.4 Conclusion p.88
References p.88
Chapter V
Development and evaluation of the Fourth Generation DHS(DHS-G4) system
5.1 Fourth Generation DHS Reactor (DHS G4) p.96
5.1.1 Basic concept of the design of the fourth generation DHS p.96
5.1.2 Arragement of sponge and construction of module& reactor p.96
5.1.3 Distribution of wastewater in the module and the Distributor p.99
5.2 USAB reactor: p.103
5.2.1 Design and construction p.103
5.2.2 Gas solid separator(GSS) p.105
5.3 Sewage tanks,sensors and pumps p.107
5.4 Sampling ports p.107
5.5 Operational Condition p.109
5.6 Experimental Strategy p.109
5.7 Starting up reactors p.113
5.8 Experimental results p.115
5.8.1 general characteristics of sewage and reactor effluents p.115
5.8.2 Organic removal p.118
5.8.3 Nutrient removal p.127
5.8.4 Profile of wastewater along the height of DHS reactor p.135
5.8.5 Pathogen removal p.136
5.9 Tracer analysis p.138
5.10 Characteristics of DHS sludge p.141
5.10.1 Sludge development p.141
5.10.2 Excess sludge and sludge yield p.143
5.10.3 Solid retention time(SRT) p.144
5.10.4 Specific oxygen utilization rate(SOUR) p.144
5.10.5 Specific Nitrification activity in G4 DHS p.146
5.11 Characteristics of USAB sludge p.147
References p.151
Chapter VI
Performance comparison of USAB & Fifth Genaration DHS(DHS-G5) and activated sludge process for sewage treatment
6.1 Introduction&Background p.155
6.2 Methods and materials p.156
6.2.1 Reactor description and operational conditions p.156
6.3 Results and Discussion p.159
6.3.1 Treatment efficiency p.159
6.3.2 Sluge retainment and excess sludge production p.164
6.3.3 Energy requirement and cost p.166
6.4 Conclusion and recommendations p.167
References p.168
Chapter VII
Conclusions and recommendations
7.1 Conclusions p.171
7.2 Few recommendations for future research p.177
本研究は発展途上国のための低コスト省エネ型の下水処理システムとしてUASB (Upflow Anaerobic Sludge Blanket) とDHS (Down-flow Hanging Sponge) リアクターを組み合わせたシステムを実現化するため長期間におけるパイロットスケール実験を行った。UASBリアクターに適切な後段処理として数年前開発されたDHSリアクターをさらに改良した新世代型DHSを開発し、その処理特徴と処理性能の把握を目的とした。DHS法はポリウレタンスポンジを固定担体とした生物膜法である。DHS法はエアレーションを必要としないことや余剰汚泥がほとんど発生しないといった経済面でのメリットに加え、メンテナンスフリーでコンパクト性を合わせ持ち、極めて良質な処理水を安定的に得ることが可能である。
十年前我々の研究グループが最初にDHSシステムを世に送り出してから、これまでに第6世代までが報告されている。第1世代型DHS (DHS-G1) は、キューブ型のスポンジを数珠状に吊り下げた構造をしており、2年以上の連続実験から、その処理能力の高さを証明した。第2世代型DHS (DHS-G2) は、プラスチックのシートの両面に三角柱のスポンジを張り合わせた構造をしている。DHS-G2も5年間ノンストップ連続処理運転を行い、平均BOD除去率で95%以上、アンモニア性窒素除去率では約70%と卓越した処理能力を示した。その後、開発されたDHS-G3は円柱状スポンジにサポート材を施した構造になっており、リアクター内にランダムに充填するだけの非常にシンプルな構造である。DHS-G3においてもDHS-G2同様の優れた有機物除去能が確認された。
本研究では第四と第五世代DHSリアクターを中心に数年に渡って研究を行った。第四世代DHS(DHS-G4)はスケールアップ性能やメンテナンス性の更なる向上を見据えて改良を加え開発した。DHS-G4 の担体には、棒状スポンジ (材質: ポリウレタン;2.5 cm x 2.5 cm x 50 cm) を同サイズのネットリング (材質: ポリプロピレン) にはめ込んだものを1段に15本並べ、さらにそれを格子状に20段積み重ねて一つのモジュールを形成させたものを用いた。DHS-G4はこのモジュール4つを積み上げ、スポンジ総容積が375 L (1,200本のスポンジ担体)、 モジュールに対するスポンジの充填率が39%のリアクターである。各段の間には、0.7-1.0 cmの、モジュール間には10 cm程の隙間が設けてあり、処理水がこの隙間を通る間に酸素が供給される点がDHS-G4の大きな特徴である。又、前処理を行うUASBの溶積は1149 Lとした。
供給水は分流式スクリーン通過後の都市下水を用いた。下水は、UASBで前段処理されたのち、後段のDHS-G4 に全量供給した。実験条件としてUASBリアクターを6時間、DHSリアクターを2時間の滞留時間で運転して連続処理性能を調べた。なお、温暖な途上国地域の年間平均気温を想定し、全プロセスの設定温度は20-25 oCに制御した。 本システムによる有機物(BOD)除去は90%以上、又ふん便性大腸菌除去は3~4 Logを達成した。又、DHSから発生する余剰汚泥の量は非常に少なく、1L処理水当り7.5 mg-VSSであった。この理由はスポンジ内で高濃度で保存されている汚泥により長く維持されているSRTであった。仮にこの余剰汚泥量をCODcr換算して、処理水の全CODcrに加算したとしても、途上国の排水基準を十分満足することができる。
その後、第五世代DHS(DHS-G5)を開発しUASBリアクターと組み合わせ実下水を処理すると共に、ほぼ同じ排水条件で運転されていた活性汚泥法と処理能力を比較する事にした。DHS-G5は波形の連続スポンジをプラスチックシートの両側に貼り (スポンジカーテン)、それを配列してモジュール化したものである。本システムでは四つのモジュールを積み重ね、スポンジ容積を479 Lとした。水理学的滞留時間 (HRT) は、UASB 6時間、DHS 2.5時間とした。また比較対象の活性汚泥法は、HRT 9時間 (設計HRT) で運転されている浄化センターのものとした。
本UASB + DHSシステムの処理水質は、活性汚泥法と比べると若干劣るものの、開発途上国の水質基準を十分に満足しうるものであった。又、エアレーションが不要な上、余剰汚泥の発生量も大幅に削減されるため、活性汚泥法に比べて、大幅にコストを削減できると考えられる。途上国では活性汚泥法のような処理システムは、経済的及び技術的な問題から建設及び維持管理が難しいと考えられ、途上国の下水処理問題に理想的な解決案ではない。適切な下水処理システムを提案するためには、国々における経済的、技術的制限および社会情勢を理解する必要がある。UASB+DHSの研究の結果から、我々が提案した新規下水処理システムは経済的かつ維持管理が容易なプロセスとして発展途上国への適応が十分可能であると言える。我々はUASB + DHSシステムを、経済的かつ維持管理が容易な発展途上国適応型プロセスとして提案する。
本論文は、「Development of self-sustainable sewage treatment system consisting of UASB and DHS(Down-flow Hanging Sponge) reactors for developing countries/UASB法およびDHSリアクターから構成される開発途上国のための新規下水処理システムの開発」と題し、7章より構成されている。
第1章「General outline and objectives」では、本研究の概要を示すとともに目的とその研究範囲を述べている。
第2章「Literature review」では、途上国の下水問題とその影響を列挙し、問題の解決が極めて重要であることを明確化している。また、現在までに行われている下水処理の研究がまとめられている。
第3章「Development of DHS system」では、研究の核心であるDown-flow Hanging Sponge (DHS)リアクターの進化とその研究について述べている。
第4章「Process performance of the Second Generation DHS (DHS G2) and process optimization」では、第二世代DHSリアクターを用い長期間実験によりシステムの最適化を試みている。そして、UASBとDHSを組み合わせた新規下水処理システムの運転管理における最適な条件を得ることに成功している。
第5章「Development and evaluation of the Fourth Generation DHS (DHS G4) system」では、維持管理の良さを中心に新たに第四世代DHSリアクターを開発し、その評価を行っている。新DHSの処理性能、汚泥増殖、汚泥収量および余剰汚泥の発生等について明らかにしている。
第6章「Performance comparison of UASB and the Fifth Generation DHS (DHS G5) and activated sludge process for sewage treatment」では、UASB+DHSシステムの処理性能を為先進国で標準とされている活性汚泥法と比較し、評価している。UASB+DHSシステムは活性汚泥法と同程度の処理性能を持っていることを明らかしている。
第7章「Conclusions and few recommendations for future research」では、研究で得られた成果を総括している。以上の研究結果からUASB + DHSシステムを、経済的かつ維持管理が容易な発展途上国適応型プロセスとして提案している。また、今後取り込むべき問題点についても述べられている。以上のように、本論文では途上国で適用可能な新規下水処理システムとして提案されたUASB+DHS法に関する知見と新たな発見を数多く収集しており、下水問題の解決に向けての大きな一歩であるといえる。よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認められる。