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微小異物位置決め機能付き原子間力顕微鏡の開発と半導体ウエハ欠陥解析 への応用に関する研究

氏名 藤野 直彦
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第249号
学位授与の日付 平成18年3月24日
学位論文題目 微小異物位置決め機能付き原子間力顕微鏡の開発と半導体ウエハ欠陥解析への応用に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 宮内 信之助
 副査 助教授 下村 雅人
 副査 助教授 石黒 孝
 副査 助教授 河合 晃
 副査 長岡工業高等専門学校教授 反町 嘉夫

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目次

第1章 緒言 p.1-p.5
 1.1 本論文の背景 p.1
 1.2 本論文の目的と構成 p.3
 第1章の参考文献 p.5

第2章 高精度微小異物位置決め方法の考案 p.6-p.16
 2.1 序文 p.6
 2.2 異物検査装置(WIS)の検査原理とその評価限界 p.7
 2.3 数値座標変換法を用いた座標リンケージ精度 p.10
 2.4 SEMによる異物観察の限界と対策 p.12
 2.5 微小異物の検出・位置決めの原理 p.14
 2.6 微小異物分析のための研究方針 p.15
 第2章の参考文献 p.16

第3章 高精度微小異物位置決め方法の検証 p.17-p.24
 3.1 序文 p.17
 3.2 欠陥と付着粒子の分離手法 p.17
 3.3 数値座標変換法を用いた微小欠陥・COPのSEM観察 p.19
 3.4 高精度微小異物位置決め方法を用いたCOPのAFM観察 p.22
 第3章の参考文献 p.24

第4章 位置決め機能付きAFMの開発 p.25-p.44
 4.1 序文 p.25
 4.2 高精度微小異物検出・位置決め装置の設計 p.25
 4.3 高精度微小異物検出・位置決め装置の性能評価 p.28
 4.4 位置決め機能付きAFMの設計と試作 p.34
 4.4 位置決め機能付きAFMの基本性能評価 p.38
 第4章の参考文献 p.43

第5章 SC1洗浄前後のCOPのAFM観察とその生成メカニズム解明 p.45-p.65
 5.1 序文 p.45
 5.2 WISを用いたSC1洗浄/BHF処理におけるCOPの評価 p.45
 5.3 SC1洗浄に伴うCOPの形態変化解析 p.48
 5.4 BHF処理に伴うCOPの形態変化解析 p.60
 5.5 SC1洗浄に伴う付着粒子の形態変化 p.62
 第5の参考文献 p.64

第6章 酸化膜形成前後のCOPのAFM観察とその生成メカニズム解明 p.65-p.80
 6.1 序文 p.65
 6.2 熱酸化膜形成/酸化膜除膜に伴うCOPの形態変化解析 p.65
 6.3 熱酸化膜形成に伴うCOPの形態変化解析 p.66
 6.4 WISを用いた熱酸化膜形成におけるCOPの評価 p.70
 6.5 COPの生成確率や成長速度に与える外部環境の影響 p.73
 6.6 COPの絶縁酸化膜特性に与える影響 p.74
 6.7 COPの実態に関する知見の整理 p.75
 6.8 COPの生成・成長モデルとCOPの削減化対策 p.77
 第6の参考文献 p.79

第7章 張り合わせSOIウエハ表面欠陥とタッチポリッシュ導入欠陥のAFM観察 p.81-p.95
 7.1 序文 p.81
 7.2 張り合わせSOIウエハの仕様とウエハ評価条件 p.81
 7.3 表面欠陥のAFM観察とその実態解明 p.83
 7.4 タッチポリッシュ導入欠陥のAFM観察とその実態解明 p.88
 7.5 表面欠陥およびタッチポリッシュ導入欠陥の実態とその削減化対策 p.94
 第7の参考文献 p.94

第8章 位置決め機能付き分析装置の将来像と半導体産業以外への応用 p.96-p.111
 8.1 序文 p.96
 8.2 位置決め機能付きAFMの開発・普及状況 p.96
 8.3 位置決め機能付きSEMの開発状況と今後の展開 p.98
 8.4 位置決め機能付き分析装置に残された開発課題と今後の展開 p.102
 8.5 塗布型磁気記録媒体の高性能化とその物性解析に残された課題 p.102
 8.6 高機能性磁性粉(N-VCZ重合処理γ-Fe2O3) p.103
 8.7 重合処理磁性紛を用いた磁性塗布膜の磁気特性 p.105
 8.8 磁性粉の配向性評価とその限界 p.106
 8.9 位置決め機能付き分析装置の磁性塗布膜解析への適用化策 p.109
 第8の参考文献 p.110

第9章 本論文の総括 p.112-p.114
 第9の参考文献 p.114

謝辞 p.115

研究業績リスト p.116-p.124

 超LSIの高集積化は、主にデバイス構造の微細化と薄膜化によって達成されてきた。
現在、最小配線幅0.13μm級の256メガビットDRAM(Dynamic Random-Access Memory)の量産が加速されるとともに、次世代0.09μm級の1ギガビットDRAMの量産化技術の開発が進んでいる。このような細い配線を形成する場合、その電気的な断線やショート等の直接原因になる0.1μm級の微小異物の低減が不可欠である。ウエハ上の微小な異物検査には、光学式の異物検査装置(WIS:Wafer Inspection System)が広く用いられている。WISはシリコンウエハ上に存在する異物の位置座標(異物分布)と、その大きさならびに異物の粒度分布を測定するものである。しかし、個々の異物が付着粒子なのか、傷なのか、あるいは組成の異なる偏析物なのか等の実態分析をすることはできない。従って、WISで検出された異物について、直接観察や組成分析のできる分析装置の開発が強く望まれている。
 本論文の目的はWISで検出される任意の異物に対して、直接観察や組成分析できる分析装置を開発すること、その開発の装置を用いて微小異物の実態やプロセスに与える影響を解析すること、また、これらのことを通して今後とも進化を遂げるであろう半導体デバイスの発展ならびに分析装置の高性能化等に貢献することにある。
 本論文は9章から構成され、まず、市販のWISと分析装置との座標を完全にリンケージするために考案した新技術について示し、これを用いて開発した位置決め機能付き原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)の全貌について記す。次に開発したAFMの応用例として、観察困難であったシリコンウエハ表面に点在する0.1μm級COP(Crystal Originated Particle)が半導体プロセスに伴い変化する様子等を観察しその生成メカニズムとその対策等について考察する。最後に今後の微小異物に関する分析技術の将来像と新たな応用展開について展望するとともに本研究の意義と成果について総括する。以下、各章の要旨について記す。
 第1章では、超LSIの高集積化の変遷とそれに伴って製造現場が持ち続けてきた微小異物の低減化に関する課題を抽出し、それを解決するために取り組んだことの概要について記す。
 第2章では、WISにより検出される異物の位置を分析装置の座標上で確認するのが困難であった理由と、それを克服するために考案した光散乱技術に基づく微小異物の検出・位置決め方法の原理について記す。また、この原理を採用した分析装置を開発するためにとった方針について記す。
 第3章では、上記考案の微小異物の検出・位置決め方法の機能検証をすべく、市販のAFMに同方法を適用し、これまで観察できなかったウエハ上の微小異物であるCOPの直接観察に至るまでの経緯について記す。
 第4章では、第3章において実用化の目処を得た考案の微小異物の検出・位置決め方法をもとに設計・試作した位置決め装置の要部について記し、同装置を用いた実験から、光散乱現象の利用による微小異物の検出限界が、少なくとも0.04μmであることについて明らかにする。また、その位置決め装置を大型ステージ付きAFMに搭載することからWISの持つ座標と完全に座標リンケージできる位置決め機能付きAFMの基本性能とその観察例について記す。
 第5章では、位置決め機能付きAFMの最大の特徴である高い位置決め再現性を利用した、プロセス前後におけるウエハ上の同位点観察から、洗浄工程では除去できないCOPの実態がCZ型シリコン結晶中に内在する点欠陥のような極めて小さいgrow-in欠陥からの生成・成長物であること、また、その成長が洗浄に伴うシリコン結晶表面の酸化現象とエッチング現象に基づいていることを明らかにする。
 第6章では、SC1洗浄や熱酸化プロセスに伴うCOPの生成・成長過程を観察・解析し、WISによる測定結果と比較することからCOPの生成・成長メカニズムをモデル化し、デバイスの電気的な劣化メカニズムに与える影響について考察する。また、WISを用いた測定結果からCOPの少ないCZ型結晶の育成条件およびウエハ加工条件を導き・管理するのに有効と考えられるパラメータを定め、このパラメータを用いてデバイスの電気的な劣化を防ぐ対策について提案する。
 第7章では、次世代半導体基板として注目される張り合わせSOI(Silicon On Insulator)ウエハ上に生成・成長する微小欠陥の実態が、SOIウエハ製造に用いられるCZ型シリコン結晶に生成するCOPと、研磨工程において誘引される転移欠陥のような極微細欠陥であることを明らかにする。また、これら欠陥の削減化方法についても考察し提案する。
 第8章では、今後の半導体産業の発展にとって有用となる微小異物の分析技術の将来像と半導体産業以外の分野への微小異物分析の応用展開について展望する。特に半導体産業以外の分野への展開については、磁場配向性を改善した表面処理磁性粉のもつ高機能性発現要因の解明という目的を例に取って検討する。
 第9章では、前記各章で得られた知見に基づき本研究が半導体産業や分析技術にもたらした意義と成果について総括する。

 本論文は、「微小異物位置決め機能付き原子間力顕微鏡の開発と半導体ウエハ欠陥解析への応用に関する研究」と題し、9章より構成されている。第1章「緒言」では、半導体ウエハ表面に点在する微小異物検出や分析・評価技術に関する従来の研究の概要を示すとともに、本研究の目的と範囲を述べている。
 第2章「高精度微小異物位置決め方法の考案」では、これまで観察できなかったウエハ上の任意の0.1μm級異物に対して、分析装置の狭い視野内に捉え得るように考案された微小異物の位置決め方法を述べている。
 第3章「高精度微小異物位置決め方法の検証」では、上記の位置決め方法をノウハウ的に原子間力顕微鏡観察に応用し、これまで洗浄不良と見なされていたウエハ表面のCOPが、シリコンと表面酸化膜との界面に生成する結晶性の欠陥であることを明らかにしている。
 第4章「位置決め機能付きAFMの開発」では、上記の位置決め方法をもとに設計・試作した位置決め機能付きAFMの概要を示すとともに、同装置を用いた実験から、光散乱現象の応用により少なくとも、0.04μmの異物検出・位置決めが可能であることを実証している。
 第5章「SC1洗浄前後のCOPのAFM観察とその生成メカニズム解明」では、位置決め機能付きAFMの高い位置決め再現性を利用して、洗浄前後におけるウエハ上の同位点観察から、COPの実態がCZ型シリコン結晶の引き上げ形成時に内在された微細欠陥からの生成・成長物であることを明らかにしている。
 第6章「酸化膜形成前後のCOPのAFM観察とその生成メカニズム解明」では、洗浄や熱酸化で変化するCOPの観察結果等から、その生成・成長メカニズムをモデル化し、デバイスの電気的な劣化メカニズムに与える影響を考察するとともに、その劣化対策を述べている。
 第7章「張り合わせSOIウエハ表面欠陥とタッチポリッシュ導入欠陥のAFM観察」では、張り合わせSOIウエハ上の微小欠陥の実態が、酸化膜形成時に生成したCOPと研磨工程で誘引される転移欠陥のような極微細欠陥であることを明らかにするとともに、これらの欠陥の削減化方法を示している。
 第8章「位置決め機能付き分析装置の将来像と半導体産業以外への応用」では、今後の半導体産業の発展にとって有用となる微小異物の分析技術の将来像と、半導体産業以外の磁性分野への微小異物の応用展開を展望している。
 第9章「本論文の総括」では、各章で得られた知見に基づき、本研究が半導体産業や分析技術によってもたらした意義と成果について総括している。よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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