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透過偏光解析法と分子動力学法によるスメクティック液晶自己保持膜の構造解析に関する研究

氏名 松橋 信明
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第348号
学位授与の日付 平成18年3月24日
学位論文題目 透過偏光解析法と分子動力学法によるスメクティック液晶自己保持膜の構造解析に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 赤羽 正志
 副査 教授 小野 浩司
 副査 助教授 安井 寛治
 副査 助教授 河合 晃
 副査 助教授 木村 宗弘

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目次

第1章 緒論 p.1
 1.1 はじめに p.1
 1.2 本研究の背景 p.1
 1.3 本研究の目的 p.5
 1.4 本研究の意義 p.6
 1.5 本論文の構成 p.7
 1.6 まとめ p.9

第2章 スメティック液晶と液晶自己保持膜 p.10
 2.1 はじめに p.10
 2.2 液晶 p.10
 2.3 液晶の分類 p.11
 2.3.1 相転移による分類 p.12
 2.3.2 構造による分類 p.13
 2.3.3 大きさによる分類 p.14
 2.4 スメクティック液晶とその強誘電性・反強誘電性 p.15
 2.4.1 スメクティック液晶の分類 p.15
 2.4.2 強誘電性と反強誘電性 p.17
 2.5 液晶自己保持膜 p.19
 2.5.1 液晶自己保持膜とは p.19
 2.5.2 液晶自己保持膜の特徴 p.20
 2.5.3 液晶自己保持膜の構造 p.20
 2.5.4 液晶自己保持膜の作製方法 p.21
 2.5.5 液晶自己保持膜の偏光顕微鏡観察 p.24
 2.6 まとめ p.25

第3章 液晶自己保持膜の構造モデルと理論解析 p.26
 3.1 はじめに p.26
 3.2 液晶自己保持膜の透過光の位相差 p.26
 3.2.1 ジョーンズベクトルと4×4マトリックス法 p.26
 3.2.2 4×4マトリックス法による液晶自己保持膜の光学特性の理論解析 p.27
 3.2.3 液晶自己保持膜の構造モデルとシミュレーション特性 p.41
 3.3 SmA相に限定した液晶自己保持膜の光学特性の理論解析 p.47
 3.3.1 SmA相液晶自己保持膜の光学特性の理論解析 p.47
 3.3.2 シミュレーション特性と考察 p.59
 3.4 まとめ p.62

第4章 透過偏光解析法と分子動力学法 p.63
 4.1 はじめに p.63
 4.2 透過偏光解析法による位相差の測定 p.63
 4.2.1 PEMを用いた透過偏光解析の測定原理 p.64
 4.2.2 実験システムの構成 p.71
 4.2.3 光学系の調整 p.73
 4.2.4 実験に使用する液晶材料 p.81
 4.3 分子動力学法による層構造解析 p.83
 4.3.1 分子動力学法 p.83
 4.3.2 分子動力学シミュレーションの計算方法 p.85
 4.4 まとめ p.92

第5章 透過偏光解析法による8CB液晶自己保持膜の構造解析 p.93
 5.1 はじめに p.93
 5.2 8CB-FSFにおける膜厚と屈折率異方性の決定 p.93
 5.2.1 膜厚と屈折率異方性の決定方法 p.94
 5.2.2 屈折率異方性が位相差の入射角依存性に与える影響 p.97
 5.2.3 3種類の8CB-FSFにおける最適フィッティング p.99
 5.2.4 層間隔が位相差の入射角依存性に与える影響 p.102
 5.2.5 結論 p.105
 5.3 2層から9層の8CB-FSFの透過偏光解析 p.105
 5.3.1 100サンプルの8CB-FSFにおける位相差の入射角依存性 p.106
 5.3.2 100サンプルの8CB-FSFにおける位相差の層数依存性 p.108
 5.3.3 2層から9層の8CB-FSFにおける最適フィッティング p.109
 5.3.4 屈折率異方性が最適フィッティングに与える影響 p.110
 5.3.5 結論 p.112
 5.4 まとめ p.112

第6章 透過偏光解析によるMHPOBC液晶自己保持膜の構造解析 p.113
 6.1 はじめに p.113
 6.2 SmCA*相からSmA相への相転移の振舞い p.113
 6.2.1 厚いMHPOBC-FSFの透過偏光解析 p.114
 6.2.2 薄いMHPOBC-FSFの透過偏光解析 p.116
 6.2.3 2層のMHPOBC-FSFの相構造の推定 p.120
 6.2.4 4層のMHPOBC-FSFの相構造の推定 p.121
 6.2.5 結論 p.122
 6.3 SmCα*相の振舞い p.122
 6.3.1 14層のMHPOBC-FSFにおける位相差の温度依存性 p.123
 6.3.2 14層のMHPOBC-FSFにおける位相差の電界依存性 p.124
 6.3.3 14層のMHPOBC-FSFにおける位相差の入射角の依存性 p.124
 6.3.4 4、5、7層のMHPOBC-FSFにおける位相差の電界依存性 p.125
 6.3.5 結論 p.127
 6.4 まとめ p.127

第7章 分子動力学法による8CB液晶自己保持膜の構造解析 p.128
 7.1 はじめに p.128
 7.2 液晶 p.129
 7.3 液晶の分類 p.133
 7.4 構造の温度依存性 p.134
 7.4.1 配向オーダーパラメーターの温度依存性 p.134
 7.4.2 層感覚の温度依存性 p.136
 7.4.3 膜厚の温度依存性 p.138
 7.5 結論 p.138
 7.6 まとめ p.138

第8章 結論 p.140

参考文献 p.142

本研究に関する発表論文及び学会発表 p.149

謝辞 p.153

 液晶は限りない可能性と魅力を秘めた非常に興味深い研究テーマであり、液晶材料の最大の優位性は、自己組織化によって自発的に分子性配向が実現できる点である。そのような液晶材料物性研究における格好の研究対象が、シャボン玉のように両界面が空気で液晶そのものの純粋な物性を研究できる液晶自己保持膜である。
 本研究は、スメクティック液晶自己保持膜において、透過偏光解析法と分子動力学法による構造解析を行い、膜厚や屈折率異方性を決定し、構造や物性を解明するものであり、(1)光学特性の理論解析、(2)光弾性変調素子を用いた透過偏光解析システムの構築、(3)8CB液晶自己保持膜の光学物性パラメーターの決定、(4)MHPOBC液晶自己保持膜の構造解析、(5)分子動力学法による8CBの構造解析の5つが研究目的である。
 本論文は8章から構成され、第1章が緒論、第2章がスメクティック液晶と液晶自己保持膜、第3章が液晶自己保持膜の構造モデルと理論解析、第4章が透過偏光解析法と分子動力学法、第5章が透過偏光解析法による8CB液晶自己保持膜の構造解析、第6章が透過偏光解析法によるMHPOBC液晶自己保持膜の構造解析、第7章が分子動力学法による8CB液晶自己保持膜の構造解析、そして第8章が結論である。
 第1章は緒論で、本研究の背景、目的、意義、論文構成について説明した。
 第2章では、液晶の概要、分類、スメクティック液晶の分類とその強誘電性・反強誘電性について説明した。そして、液晶自己保持膜の概要と特徴、構造、作製装置と作製手順を説明し、8CB液晶自己保持膜の偏光顕微鏡観察について紹介した。
 第3章では、液晶自己保持膜における透過光の位相差の入射角依存性や膜厚(層数)依存性をシミュレーションできる2つのパターンの理論解析方法を説明した。1つは様々な液晶分子配向パターンの構造モデルに対応可能な解析方法で、複雑な層構造の解析に有効な理論解析で、もう1つは層構造をSmA相のみに限定して膜厚(層数)と屈折率異方性を決定するのに有効な解析方法であり、それぞれの特性について考察を行った。
 第4章では、本研究における解析方法である透過偏光解析法と分子動力学法について説明した。透過偏光解析法による位相差の測定に関し、光弾性変調素子を用いた透過偏光解析の測定原理、実験システムの構成、光学系の調整、実験に使用する液晶材料について説明した。また、分子動力学法による層構造解析に関し、概要や計算方法について説明した。
 第5章では、8CB液晶自己保持膜における透過光の位相差の入射角依存性の実測特性にSmA相に限定した解析的手法によるシミュレーション特性を最小二乗フィッティングさせ、膜厚と屈折率異方性の決定、屈折率異方性や層間隔が位相差の入射角依存性に与える影響について検討した。また、100サンプルの8CB液晶自己保持膜の透過光の位相差の入射角依存性や層数依存性について系統的に検討した結果、2層から9層にきれいに分離し、屈折率異方性 n∥=1.665、n⊥=1.523及び層間隔約2.3nmを得ることができた。本解析法は、非常に再現性が高く、1層ごとの特性変化を明確に識別できる高精度・高感度な液晶自己保持膜の層数決定方法であることがわかった。
 第6章では、MHPOBC液晶自己保持膜の透過偏光解析を行い、位相差の温度依存性、入射角依存性、電界依存性の実測特性と分子構造モデルを仮定したシミュレーションにより、SmCA*相からSmA相への相転移の振る舞いやSmCα*相の振る舞いについて検討した。厚膜における両表面層の傾きと電界によるスイッチ現象、薄膜における相構造の推定、SmCA*相における分子の傾く方向(奇数層の場合は印加電界と垂直な面、偶数層の場合は印加電界と平行な面)について検討した。また、SmCα*相の相構造は3°の小さな傾き角を持つ螺旋構造で、電界に関して閾特性を有し、閾値以下では4層と5層の間の厚さのピッチを持つ螺旋構造、閾値以上では螺旋が解けてSmC相を形成することがわかった。
 第7章では、2層64分子の8CBの自己保持膜とバルク試料の分子動力学シミュレーションを行い、配向オーダーパラメーター、層間隔、膜厚の温度依存性について、自己保持膜とバルク試料の特性比較を行い、温度変化に伴う分子構造変化に関する有用な知見を得ることができた。配向オーダーパラメーターの温度依存性から、相転移温度を得ることができ、自己保持膜の相転移温度はバルク試料と比べて高く、SmA相の温度範囲が広いことがわかった。また、自己保持膜の層間隔はバルク試料と比べて小さいことがわかった。
 第8章は結論で、本研究によって得られた有用な知見についてまとめた。

 本論文は、「透過偏光解析法と分子動力学法によるスメクティック液晶自己保持膜の構造解析に関する研究」と題し、8章より構成されている。
 第1章「緒論」では、液晶自己保持膜研究の背景、歴史について述べ、本研究の目的と意義を明らかにしている。
 第2章「スメクティック液晶と自己保持膜」では、液晶の概要、分類、スメクティック液晶の分類とその強誘電性・反強誘電性について説明している。そして、液晶自己保持膜の概要と特徴、構造、作製装置と作製手順を説明している。
 第3章「液晶自己保持膜との構造モデルと理論解析」では、液晶自己保持膜における透過光の位相差の入射角依存性や膜厚(層数)依存性をシミュレーションできる2つのパターンの理論解析方法を説明している。1つは様々な液晶分子配向パターンの構造モデルに対応可能な解析方法で、複雑な層構造の解析に有効な理論解析で、もう1つは層構造をSmA相のみに限定して膜厚(層数)と屈折率異方性を決定するのに有効な解析方法であり、それぞれの特性について考察を行っている。
 第4章「透過偏光解析法と分子動力学法」では、本研究における解析方法である透過偏光解析法と分子動力学法について説明している。
 第5章「透過偏光解析法による8CB液晶自己保持膜の構造解析」では、8CB液晶自己保持膜における透過光の位相差の入射角依存性の実測特性にSmA相に限定した解析的手法によるシミュレーション特性を最小二乗フィッティングさせ、膜厚と屈折率異方性の決定、屈折率異方性や層間隔が位相差の入射角依存性に与える影響について検討し、本解析法は、非常に再現性が高く、1層ごとの特性変化を明確に識別できる高精度・高感度な液晶自己保持膜の層数決定方法であることを示している。
 第6章「透過偏光解析法によるMHPOBC液晶自己保持膜の構造解析」では、MHPOBC液晶自己保持膜の透過偏光解析を行い、位相差の温度依存性、入射角依存性、電界依存性の実測特性と分子構造モデルを仮定したシミュレーションにより、SmCA*相からSmA相への相転移の振る舞いやSmCα*相の振る舞いについて検討し、新たな知見を得ている。
 第7章「分子動力学法による8CB液晶自己保持膜の構造解析」では、2層64分子の8CBの自己保持膜とバルク試料の分子動力学シミュレーションを行い、配向オーダーパラメーター、層間隔、膜厚の温度依存性について、自己保持膜とバルク試料の特性比較を行い、温度変化に伴う分子構造変化に関する有用な知見を得ている。
 第8章「結論」では本研究で得られた結論をまとめている。
 以上のように、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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