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Dynamic microstructural evolution of Mg-9Al-1Zn(mass%)alloy during hot compression and improvement of tensile properties by its microstructural control (高温圧縮中のMg-9Al-1Zn(mass%)合金の動的組織変化とその組織制御による引張特性の改善)

氏名 徐 世偉
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第522号
学位授与の日付 平成21年9月30日
学位論文題目 Dynamic microstructural evolution of Mg-9Al-1Zn(mass%)alloy during hot compression and improvement of tensile properties by its microstructural control (高温圧縮中のMg-9Al-1Zn(mass%)合金の動的組織変化とその組織制御による引張特性の改善)
論文審査委員
 主査 教授 鎌土 重晴
 副査 教授 福澤 康
 副査 教授 南口 誠
 副査 准教授 宮下 幸雄
 副査 大阪大学接合科学研究所教授 近藤 勝義

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Contents
Chapter Page
Abstract p.ii
Chapters
1 Introduction p.1
 1.1 Importance of developing high performance magnesium alloys p.1
 1.2 Strengthning mechanisms of magnesium p.1
 1.2.1 Alloying p.5
 1.2.2 Grain refinement p.5
 1.2.3 Solid solution hardening p.7
 1.2.4 Precipitation Strengthening p.10
 1.2.5 Dispersion strengthening p.11
 1.2.6 Texture p.12
 1.3 Deformation modes of magnesium p.13
 1.3.1 Slip modes p.14
 1.3.2 Twinning modes p.14
 1.4 Forging process for magnesium alloy p.17
 1.5 Research purpose p.21
References p.23
2 Recrystallization mechanism of as-cast and homogenized alloy specimens during hot compression p.26
 2.1 Introduction p.30
 2.2 Experimental procedure p.30
 2.2.1 Preparation of alloy specimens p.33
 2.2.2 Differential Scanning Calorimetary (DSC) p.33
 2.2.3 Homogenization treatment p.35
 2.2.4 Hot compresssion test p.35
 2.2.5 Microstructure observation p.36
 2.3 Results and discussion p.37
 2.3.1 Microstructural changes with homogenization treatment p.37
 2.3.1.1 Microstructures of as-cast and homogenized alloy specimens p.37
 2.3.1.2 Grain size and texture of as-cast homogenized alloy specimens p.38
 2.3.1.3 Tensile properties of the as-cast and homogenized alloy specimens p.38
 2.3.2 Recrystallization mechanism of as-cast AZ91 alloy p.46
 2.3.2.1 DRX behavior at 300℃ p.46
 2.3.2.2 DRX behavior at 350℃ p.58
 2.3.3 Recrystallization mechanism of homogenized AZ91 alloy p.63
 2.3.4 Recrystallization mechanism of 24h homogenized AZX911 alloy p.72
 2.4 Conclusions p.79
References p.83
3 Effects of strain rate and compressive temperature on dynamic microstrctural evolution during hot compression p.86
 3.1 Introduction p.86
 3.2 Experimental procedure p.87
 3.2.1 Preparation of alloy specimens p.87
 3.2.2 Hot compresssion test p.87
 3.2.3 Microstructure observation p.88
 3.3 Results and discussion p.88
 3.3.1 Mocrostructures changes with heating and holding before hot compression p.88
 3.3.2 Microstructure of compressed AZ91 and AZX911 alloy specimens p.95
 3.3.3 Relationship between DRXed grain siza and Zener-Hollomon parameter p.108
 3.3.4 Texture development of compressed specimens p.112
 3.4 Conclusions p.115
References p.128
4 Aging characteristics of compressed specimens and tensile properties of as-compressed and peak-aged specimens p.119
 4.1 Introduction p.119
 4.2 Experimental procedure p.120
 4.2.1 Aging treatment p.120
 4.2.2 Tensile tests p.121
 4.2.3 Microstructure obvervation p.122
 4.3 Results and discussion p.122
 4.3.1 Aging characteristics of as0compressed specimens p.122
 4.3.1.1 Age-hardening reponses p.122
 4.3.1.2 Precipitation structures p.122
 4.3.2 Mechanical properties of as-compressed and peak-aged specimens p.127
 4.3.2.1 Tensile properties of as-compressed and peak-aged specimens p.127
 4.3.2.2 Tensile properties of peak-aged specimens p.132
 4.4 Conclusions p.139
References p.142
5 Summary p.143
Relevant publications p.150
Dedication p.i
Acknowledgement p.ii

 マグネシウム合金は構造用金属材料中で最も比重が小さく、優れた比強度と比剛性を有し、リサイクルも容易である。自動車産業におけるマグネシウム合金の利用は軽量化に役立つことから、燃費の改善が可能となり、地球環境に有益である。ただし、絶対的な強度、特に0.2%耐力は他の金属材料より低く、しかも六方晶構造(HCP)に起因して活動するすべり系が少なく、常温付近での加工性が悪いため、既存材料並みの強度と加工性の向上が必要とされている。本研究では既存の押出し材を用いた鍛造プロセスではなく、ユビキタス元素のみを含む市販合金の鋳造まま材を用いた直接鍛造により組織制御し、マグネシウム合金鍛造材の高強度、高延性化を低コストで達成することを目指した。すなわち、動的析出を期待できる高アルミニウム含有高純度Mg-9Al-1Zn (mass%) (AZ91)合金および1mass%のCaを添加したMg-9Al-1Zn-1Ca(mass%) (AZX911)合金を対象として、熱間加工前の均質化処理条件を変化させ、第二相の形態およびマトリックス中の溶質元素濃度の揺らぎを変化させた供試材を作製し、それらの高温圧縮変形に伴う動的再結晶挙動、ミクロ組織変化、圧縮材の機械的性質に及ぼす温度、ひずみ速度および圧縮後の時効処理の影響をミクロ組織学的観点から考察した。

 第1章では、既存マグネシウム合金の特徴およびその応用例、利用限界とともにマグネシウム合金の高機能化の必要性、マグネシウムの変形機構、高強度化のための組織制御方法および本研究の目的について述べた。

 第2章では、まずAZ91およびAZX911の鋳造材を用いて415℃で均質化処理を行い、第二相の形態およびマトリックス中の溶質元素濃度の揺らぎを変化させた供試材を作製した。AZ91合金とAZX911合金とも24hの均質化処理で、既に粒界のMg17Al12 (β) 晶出相はほぼ消失するものの、AZ91合金では粒界近傍にAl濃度の高い領域が、AZX911合金ではAl-Ca系化合物が残存する。100hの長時間均質化処理を施すことにより、AZ91合金のマトリックス中の溶質元素濃度はほぼ均一になる。後方散乱電子回折法(EBSD)を用いて溶質元素濃度の均一性の異なる試料の高温圧縮変形に伴う再結晶メカニズムを調べた結果、両合金とも、粒内ではまず 圧縮双晶が生じ、その双晶内に引張双晶が生じる二重双晶が形成され、さらに二重双晶内部でのすべり変形と動的回復を伴った転位の再配列により形成される小傾角粒界が大傾角化し、新粒が形成されるという 二重双晶を伴った動的な連続再結晶(CDRX)が生じる。均質化処理を施し、粒内の溶質濃度を高めることで、圧縮加工中にβ相の動的析出が再結晶粒界で生じ、再結晶粒の粗大化が顕著に抑制される。粒界近傍では、均質化処理の有無に関わらず、同様な粗大化抑制効果が、CDRX粒中で生じる。

 第3章では、AZ91合金およびAZX911合金供試材に高温圧縮加工を行い、圧縮条件(温度およびひずみ速度)と生成されるミクロ組織の関係を調べた。両合金とも、圧縮温度が低く、ひずみ速度が大きいほど再結晶率は低くなるものの、再結晶粒径は微細になる。AZ91合金では圧縮温度が低くなるほど、動的再結晶粒の粒界に不連続析出するβ相が多くなり、それらの粒界ピン止め効果により再結晶粒の粗大化が顕著に抑制される。一方、AZX911合金では、粒界に晶出するAl-Ca系化合物の形成に伴って不連続析出するβ相の量が少なくなるため、300℃で圧縮した場合、AZ91合金よりAZX911合金の方が再結晶粒径は大きくなるが、400℃で圧縮した場合でも、圧縮中に分断されたAl-Ca系化合物が粒界ピン止め効果を発現し、結晶粒の粗大化が抑制され、AZ91合金より再結晶粒径は小さくなる。溶質元素の濃度揺らぎのない100h均質化処理材を350℃と400℃で圧縮した場合、多量のβ相が均一に析出し、均一な再結晶組織が得られる。以上のような第二相による再結晶粒の粒界ピン止め効果により、AZ91合金およびAZX911合金では従来の単相合金で得られているような再結晶粒径とZパラメーター ( )の関係は成り立たず、再結晶粒径は温度に強く依存する。

 第4章では、第3章で得られた圧縮まま材を用いて180℃で時効処理を行い、圧縮材の時効特性を調べるとともに、圧縮まま材およびT5処理材の引張特性を調べ、それらとミクロ組織の関係を検討した。時効処理により各試料とも微細なβ相の連続析出および不連続析出が生じ、高い時効硬化能が得られる。高温で圧縮した試料ほど、T5処理時に微細なβ相が多量に析出し、ピーク時効硬さは高くなる。一方、AZX911合金ではAl-Ca系化合物が形成され、マトリックス中に固溶するAl量が少なくなるため、時効硬化能は低下する。また、100h均質化処理したAZ91合金はマトリックス中の溶質元素濃度が均一になるため、350℃および400℃で圧縮した場合、時効により多量のβ相が均一に析出するようになり、高い時効硬化能が得られる。その結果、圧縮まま材の引張強さおよび0.2%耐力は低温で圧縮することによる多量のβ相の動的析出、再結晶粒微細化および強い底面集合組織の形成により上昇する。T5処理材では圧縮温度が高くなるほど圧縮後の時効中に微細なβ相が多量に析出するため、引張強さおよび0.2%耐力とも顕著に向上する。AZ91合金の24hおよび100h均質化処理材を用いて圧縮温度400℃、ひずみ速度2×10-1s-1の条件で圧縮し、T5処理を施した試料はそれぞれ引張強さ364MPa、0.2%耐力248MPa、伸び7.7%、および引張強さ371MPa、0.2%耐力265MPa、伸び8.2%と、既存の6061アルミニウム合金T6処理材に匹敵する引張特性を示す。

 第5章では、本論文で得られた研究成果をまとめるとともに、既存のAZ91合金鋳造材を用いた組織制御により高強度と適度な延性が得られるプロセス条件を提示し、結論とした。

 本論文は、「Dynamic microstructural evolution of Mg-9Al-1Zn(mass%) alloy during hot compression and improvement of tensile properties by its microstructural control」と題し、5章より構成されている。第1章「Introduction」では、マグネシウム合金の高機能化の必要性とその目標を達成するための基礎となる変形機構と組織制御方法を調査するとともに、本研究の目的を述べている。

 第2章「Recrystallization mechanism of as-cast and homogenized alloy specimens during hot compression」では、Mg-9Al-1Zn (AZ91)合金およびそれにCaを1%添加したAZX911合金の連続鋳造材の均質化処理時間を変化させて、粒内の溶質濃度が異なる試料を作製し、高温圧縮に伴うミクロ組織変化を、後方散乱電子回折法を用いて詳細に検討している。その結果、両合金とも二重双晶を伴った動的な連続再結晶が生じるとともに、長時間の均質化処理により粒内の溶質濃度を高めた試料では、圧縮加工中に再結晶粒界にMg17Al12(β)相の動的析出も生じ、再結晶粒の粗大化が顕著に抑制されることを明らかにしている。

 第3章「Effects of strain rate and compressive temperature on dynamic microstructural evolution during hot compression」では、AZ91およびAZX911合金の再結晶組織に及ぼす圧縮条件の影響を調べ、圧縮温度が低く、ひずみ速度が大きいほど再結晶率は低くなり、再結晶粒径は微細になるものの、粒内の溶質濃度が高く、加工温度が低いほど動的に不連続析出するβ相の粒界ピン止めによる再結晶粒粗大化効果が顕著に現れるようになり、その結果、再結晶粒径は従来報告されているような温度補償ひずみ速度(Zener-Hollomon因子)だけでは一義的には表せず、温度に強く依存することを明らかにしている。

 第4章「Aging characteristics of compressed specimens and tensile properties of as-compressed and peak-aged specimens」では、上記圧縮材の時効特性、さらには圧縮材およびそれにピーク時効処理を施したT5処理材の引張特性とミクロ組織の関係を調べている。その結果、圧縮まま材の引張強さおよび0.2%耐力は低温圧縮中に多量に動的析出するβ相、再結晶粒微細化および強い底面集合組織の形成により上昇し、一方T5処理材では圧縮温度が高くなるほど時効中に微細なβ相が多量に析出するため、引張強さおよび0.2%耐力とも顕著に向上し、既存の展伸用6061アルミニウム合金T6処理材に匹敵する引張特性が得られることを示している。

 第5章「Summary」では、本論文で得られた研究結果をまとめるとともに、既存のAZ91合金鋳造材を用いた組織制御により高強度と適度な延性が得られるプロセス条件を提示し、結論とした。

 よって、本論文は工学上および工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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