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面領域の表面性状測定機を対象とした校正及び測定標準に関する研究

氏名 根本 賢太郎
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第548号
学位授与の日付 平成22年3月25日
学位論文題目 面領域の表面性状測定機を対象とした校正及び測定標準に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 柳 和久
 副査 教授 矢鍋 重夫
 副査 教授 田辺 郁男
 副査 准教授 永澤 茂
 副査 准教授 明田川 正人
 副査 准教授 磯部 浩巳

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目次
第1章 序論
 1.1 緒言 p.1
 1.2 輪郭曲線方式による表面性状の評価 p.2
 1.2.1 タイプA深さ用標準片 p.5
 1.2.2 タイプB触針先端用標準片 p.5
 1.2.3 タイプC間隔用標準片 p.6
 1.2.4 タイプD粗さ用標準片 p.6
 1.2.5 タイプE座標用標準片 p.6
 1.2.6 輪郭曲線方式の標準片に関する研究 p.7
 1.3 面領域における表面性状の評価 p.9
 1.3.1 タイプER1二本の平行V溝標準片 p.11
 1.3.2 タイプER2網目状のV溝標準片 p.11
 1.3.3 タイプER3円状のV溝標準片 p.12
 1.3.4 タイプES球及び平面標準片 p.12
 1.3.5 タイプCS凸状・凹状円弧,三角形,V溝標準片 p.13
 1.3.6 タイプCG1格子形状標準片 p.13
 1.3.7 タイプCG2ワッフル形状標準片 p.14
 1.4 本研究の目的 p.14
 1.5 本論文の範囲と構成 p.15
第2章 面領域標準片の設計指針
 2.1 緒言 p.17
 2.2 表面性状測定機 p.17
 2.2.1 触針走査型 p.18
 2.2.2 光触針走査型 p.21
 2.2.3 共焦点光学系走査型 p.28
 2.2.4 光波干渉型 p.30
 2.2.5 微小探針走査型 p.32
 2.3 輪郭曲線方式標準片の設計指針 p.33
 2.4 面領域標準片の設計指針 p.36
 2.5 結言 p.39
第3章 ソフトウェアゲージの生成
 3.1 緒言 p.40
 3.2 不規則面形状を有するソフトウェアゲージの生成 p.40
 3.2.1 2-DARモデルによる不規則面形状データの生成 p.40
 3.2.2 周期性のある形状データの生成 p.47
 3.3 輪郭曲線方式のソフトウェアゲージの生成 p.50
 3.4 生成したソフトウェアゲージの検証 p.54
 3.4.1 面領域のソフトウェアゲージの検証 p.54
 3.4.2 輪郭曲線方式のソフトウェアゲージの検証 p.58
 3.5 結言 p.61
第4章 測定条件及び評価パラメータ
 4.1 緒言 p.62
 4.2 輪郭曲線方式の評価方法 p.62
 4.2.1 周期的な粗さ曲線 p.62
 4.2.2 非周期的な粗さ曲線 p.63
 4.2.3 触針式表面粗さ測定機の校正方法 p.65
 4.2.4 提案する輪郭曲線方式粗さ用標準片における測定条件 p.66
 4.3 面領域の評価方法の検討 p.67
 4.3.1 面領域粗さ用標準片の測定範囲 p.68
 4.3.2 面領域粗さ用標準片のサンプリング間隔 p.70
 4.4 不確かさ解析のためのバジェットシート p.78
 4.4.1 不確かさの要因 p.79
 4.4.2 不確かさ解析のためのバジェットシート p.85
 4.5 結言 p.86
第5章 粗さ用標準片の製作及び評価
 5.1 緒言 p.88
 5.2 工具軌跡の最適化 p.89
 5.3 加工条件の検討 p.93
 5.3.1 標準片材質の検討 p.93
 5.3.2 標準片加工面の平面加工 p.97
 5.3.3 ボールエンドミルの加工条件の最適化 p.98
 5.4 標準片の製作及び評価 p.102
 5.4.1 輪郭曲線方式粗さ用標準片の製作及び評価 p.102
 5.4.2 面領域粗さ用標準片の製作及び評価 p.110
 5.5 制作した面領域粗さ用標準片における不確かさの推定 p.117
 5.6 面領域粗さ用標準片の高精度化の検討 p.121
 5.7 結言 p.123
第6章 標準片の複製技術の検討
 6.1 緒言 p.125
 6.2 複製方法の検討 p.125
 6.2.1 電鋳による複製方法 p.125
 6.2.2 インプリントによる複製方法 p.129
 6.3 複製した標準片の評価 p.131
 6.3.1 電鋳により複製した標準片の評価 p.131
 6.3.2 インプリントにより複製した標準片の評価 p.132
 6.4 結論 p.134
第7章 結論 p.135
参考文献 p.139
関連論文,学会発表 p.147
謝辞 p.148

表面機能が緻密化及び複雑化することによって,表面性状の評価も面全体の評価を行うために輪郭曲線方式から面領域の測定へと拡張されている.しかし,それらの表面性状測定に使用される測定機の校正及び測定用標準片は,輪郭曲線方式の標準片であるため,面領域の表面性状測定機を校正するための標準片として十分な性能を有しているとは言えない.そこで本研究では,面領域の表面性状測定機を対象とする面領域粗さ用標準片の製作を行い,その粗さ用標準片を用いた各種測定機の性能検証システムを構築することを目的として研究を行っている.
第1章「序論」では,これまでの校正用及び測定用標準片における研究動向を示すと共に,ISOにおいて検討されている面領域の標準片に関する問題点を示し,本研究における背景と目的を述べている.
第2章「面領域標準片の設計指針」では,市販の表面性状測定機に関して測定方法による分類を行い,各測定機の仕様及び波長特性,測定可能傾斜角度について明らかにしている.また,それらの測定機性能に基づき,校正に用いる標準片の形状を設計するための要素として,測定面の傾斜角度,微小表面凹凸,曲率半径,広い波長帯域を有する不規則面形状,等方性,周期性の6つの設計要素を示している.そしてSteadmanの手法を用いて,製作する粗さ用標準片の波長帯域及び振幅について明らかにしている.
第3章「ソフトウェアゲージの生成」では,不規則面を有する標準面データを非因果的二次元自己相関モデル(2-D ARモデル)により生成し,傾斜角度及び表面波長の制限された設計値通りの特性を有する面領域及び輪郭曲線方式のソフトウェアゲージを作成している.また,2-D ARモデルに境界条件を付加することによって,周期性のある面領域及び輪郭曲線方式の不規則面形状の生成を可能としている.
第4章「測定条件及び評価パラメータ」では,生成したソフトウェアゲージデータに基づき,一定の粗さパラメータが得られる面領域の粗さ用標準片における測定条件を導出している.また,評価パラメータとして算術平均粗さ(Sa)と最大高さ粗さ(Sz)の2つを定めている.そして,面領域の粗さ用標準片について不確かさ要因を提示し,SN比の手法を用いて,各評価パラメータのアライメントによる測定誤差及び傾きによる測定誤差に関し求めている.更に,不確かさ解析のためのバジェットシートを作成し,面領域の粗さ用標準片を用いた不確かさ解析方法を提案している.
第5章「粗さ用標準片の製作及び評価」では,生成したソフトウェアゲージを元に,超精密5軸制御加工機により,面領域及び輪郭曲線方式の粗さ用標準片を製作している.工具軌跡の最適化には,モルフォロジカルフィルタを用いたデータ処理アルゴリズムを開発し,使用する工具先端半径より小さな曲率を除去し加工誤差の低減を図っている.また,製作した粗さ用標準片の幾何学的精度を,第4章に示した不確かさ解析手法に基づき検証及び値付けを行い,種々の測定機に用いることが可能であることを示している.更に,製作した輪郭曲線方式の粗さ用標準片について,市販されている標準片との比較を行い,本研究で製作した標準片の実用性を明らかにしている.
第6章「標準片の複製技術の検討」では,製作した面領域の粗さ用標準片を用いて電鋳とナノインプリントによる複製の検討を行い,母型と同等の形状精度を有する複製品を製作している.また,電鋳及びナノインプリントによる粗さ用標準片複製の製作条件及び課題について明らかにしている.
第7章「結論」では,本研究で得られた主要な結果を総括し,更に,本研究課題の今後の展開について言及している.
以上のことから,本研究においてソフトウェアゲージデータと等価である面領域の粗さ用標準片及び輪郭曲線方式の粗さ用標準片が製作でき,それらの複製方法に関して方向性を示すことができた.しかしながら,製作した標準片を用いて測定機の不確かさ解析も含む評価に使用するためには,より高精度にそれら標準片の値付けを行うことが必要である.したがって,面領域の標準片を値付け可能な測定機の開発が望まれる.

本論文は、「面領域の表面性状測定機を対象とした校正及び測定標準に関する研究」と題し、7章より構成されている。
第1章「序論」では、これまでの校正用及び測定用標準片における研究動向を示すと共に,本研究の背景と目的を述べている。第2章「面領域標準片の設計指針」では、市販の表面性状測定機を対象に分類を試み、各測定機の仕様及び波長特性,測定可能傾斜角度について明らかにしている。また、測定機性能に基づき、校正に用いる標準片の形状を設計するための要素として、測定面の傾斜角度、微小表面凹凸、曲率半径、広い波長帯域を有する不規則面形状、等方性、周期性の6つの設計要素を示し、製作する粗さ用標準片に必要とされる波長帯域及び振幅について明らかにしている。第3章「ソフトウェアゲージの生成」では、不規則面を有する標準面データを非因果的二次元自己相関(2-D AR)モデルにより生成し、設計値通りの特性を有する面領域及び輪郭曲線方式のソフトウェアゲージを完成させた。境界条件を拘束させることにより、周期性のある広領域対応の不規則面形状の生成を実現している。第4章「測定条件及び評価パラメータ」では、生成したソフトウェゲージデータに基づいて、一定の粗さパラメータが得られる面領域の粗さ用標準片における測定条件を導出している。また、面領域粗さ用標準片の不確かさ要因を提示し、アライメントによる測定誤差と傾きに伴う測定誤差をSN比で表示している。さらに、不確かさ解析のためのバジェットシートを作成し、面領域の粗さ用標準片を用いた不確かさ解析方法を提案している。第5章「粗さ用標準片の製作及び評価」では、工具軌跡データに変換する一連のデータ処理アルゴリズムを開発し、超精密5軸制御加工機を用いて面領域及び輪郭曲線方式の粗さ用標準片を製作した。製作した標準面実量器の幾何学的精度を第4章に準じて検証し、不確かさを含めた標準面実量器の値付けを行うとともに実用化を達成している。第6章「標準片の複製技術の検討」では、製作した面領域の粗さ用標準片を母型として電鋳とナノインプリント技術による複製実験を行っており、信頼性の高い標準面実量器の供給が可能であることを実証した。第7章「結論」では、上記の各章で得られた知見を総合してまとめ、さらに本研究課題の今後の展開についても言及している。
 以上のように、本論文で得られた知見は工学上貢献するところが多く、その成果は工業的有用性も高いことから、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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