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Thermodynamical analysis of expander for low-temperature Rankine cycle (低温度差ランキンサイクル用膨張機の熱力学的解析)

氏名 MUSTHAFAH BIN MOHD.TAHIR
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第543号
学位授与の日付 平成22年3月25日
学位論文題目 Thermodynamical analysis of expander for low-temperature Rankine cycle (低温度差ランキンサイクル用膨張機の熱力学的解析)
論文審査委員
 主査 准教授 山田 昇
 副査 教授 白樫 正高
 副査 教授 青木 和夫
 副査 教授 門脇 敏
 副査 准教授 鈴木 正太郎

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Contents p.v
 Abstract p.i
 Acknowledgments p.iii
 Contents p.iv
 List of Figures p.vii
 Nomenclature p.xi
1.INTRODUCTION p.1
 1.1 Background p.1
 1.2 Research Objectives p.2
 1.3 Chapter 1 References p.4
2.RANKINE CYCLE p.5
 2.1 Outline of this thesis p.5
 2.2 Rankine cycle model p.5
 2.3 Advantage of Rankine cycle p.10
 2.4 Energy balance calculation of ORC p.13
 2.5 Working fluid types for ORC p.15
 2.6 Past researches p.17
 2.7 Chapter 2 References p.19
3.FUNDAMENTAL CHARACTERRISTICS STUDY OF SMALL ORC SYSTEM p.20
 3.1 Outline of this thesis p.20
 3.2 Experiment of ORC with rotary-vane ecpander p.20
 3.3 Concluding remarks p.27
 3.4 Chapter 3 References p.29
4.EFFECT OF EXPANSION RATIO IN SMALL ORC SYSTEM p.30
 4.1 Outline of this thesis p.30
 4.2 Experiment of ORC with expansion valves p.30
 4.3 Concluding remarks p.45
 4.4 Chapter 4 References p.47
5.THERMODYNAMICS ANALYSIS OF EXPANSION PROFILE FOR DISPLACEMENT TYPE EXPANDER IN LOW-TEMPERATURE ORC p.48
 5.1 Outline p.48
 5.2 Analysis of volumetric expansion profile p.48
 5.3 Concept of varable expansion p.56
 5.4 Concluding remarks p.57
 5.5 Chapter 5 References p.59
6.THERMODYNAMICAL DESIGN OF SCREW EXPANDER FOR LOW-TMEPERATURE ORC p.60
 6.1 Outline p.60
 6.2 Analysis method p.60
 6.3 Rotor design of screw expander p.63
 6.4 Result and discussion p.68
 6.5 Design of variable expnasion mechanism p.73
 6.6 Concluding remarks p.75
 6.7 Chapter 6 References p.77
7.CONCLUSIONS p.79
Appendix p.81
A.1.1 Analysis of other working fluids p.81

 近年、再生可能エネルギー利用技術の一つとして低温度差ランキンサイクルの開発が求められており、高効率・小型・分散型エネルギー回収システムとして実用化が期待されている。
 各種の排熱は再生可能エネルギー源として重要である。たとえば日本全国の工場からの排熱量は一般世帯の年間エネルギー消費量の約70%に相当し、100℃以下の低温熱源が全排熱量の約45%を占めている。つまり、これら、低温熱源から動力および電力を回収する低コスト、効率的、クリーンな新技術の開発が必要である。その有望な候補技術としてランキンサイクルがあるが、小型・低温度差になるほどシステム全体の熱効率が顕著に低下する傾向がある。このため、出力が10kW未満のシステムは未だ実現化されていない。
 本研究の目的は、低温度差ランキンサイクルの高効率化の鍵となる膨張機の高効率化を達成するための手法を明らかにすることである。本目的達成のため、まず、小型の低温度差ランキンサイクル装置を試作し、膨張機における作動流体の膨張プロセスが膨張機効率およびシステム熱効率に及ぼす影響について熱力学的見地から解析した。次いで、熱源温度が不安定な条件において高い膨張機効率を達成するための容積型膨張機の膨張プロファイルを求め、そこから膨張比可変の新規コンセプトを提案した。さらに、容積型膨張機の一つであるスクリュー膨張機の理想ローター形状を熱力学的見地に基づいて設計し、最終的に可変膨張機構付スクリュー膨張機の基本デザインを提案した。
 以下に本論文の概要を示す。
 第一章「Introduction (序論)」では、本研究の目的を上記のように定めるに至った背景について述べた。
 第二章「Rankine Cycle (ランキンサイクル)」では、低温度差ランキンサイクルの構成要素および動作原理について解説し、サイクルの効率を評価するための膨張機効率、熱膨張などの諸量に関する基礎方程式および計算手段について記述すると共に、従来の研究の概要についてまとめた。
 第三章「Fundamental characteristics study of small ORC system (小型低温度差ランキンサイクルの基本特性)」では、低沸点の有機冷媒であるHFC245faを作動流体とする小型の低温度差ランキンサイクル試験装置を試作し、これを用いて膨張機の膨張比が膨張機効率およびシステム熱効率におよぼす影響を示した。さらに低温度差ランキンサイクルの定常稼動時における熱収支を明らかにした。これらの基礎実験から、膨張機前後の膨張比設定が膨張機効率を支配する要因であることがわかり、熱源温度が不安定な条件においては膨張比可変機構導入が必要である可能性を示した。
 第四章「Effect of expansion ratio in small ORC system (小型低温度差ランキンサイクルにおける膨張比の影響)」では、膨張機の替わりに膨張比を可変できる膨張バルブを組み込んだ小型低温度差ランキンサイクル試験装置を試作し、これを用いて膨張比がシステムの熱効率等に及ぼす影響を検証することで、可変膨張機構の有効性の一端を明らかにした。
 第五章「Thermodynamic analysis of expansion profile for displacement-type expander in low-temperature ORC (低温度差ランキンサイクル用容積型膨張機の膨張プロファイルの熱力学的解析)」では、低温度差ランキンサイクルに適する膨張機形態として容積型膨張機を取り上げ、熱源温度が異なる条件下における3つの異なる作動流体(HFC245fa、アンモニア、二酸化炭素)の最適膨張プロファイルを熱力学理論に基づいて解析し、得られた膨張プロファイルの類似性から、高い膨張機効率を達成するための膨張比可変機構の具体的動作原理を提案した。
 第六章「Thermodynamical design of screw expander for low-temperature ORC (低温度差ランキンサイクル用スクリュー膨張機の熱力学的設計)」では、膨張比可変機構の適用が可能な容積型膨張機としてスクリュー膨張機に着目し、Finite-time Thermodynamic Analysis (有限時間熱力学的解析)により、エントロピー変化ポテンシャルが最小となるスクリュー膨張機のローター形状を設計した。結果的に、膨張時の作動流体温度変化が線形的になる場合においてエントロピー変化ポテンシャルが最小となり、これを実現するローター形状は、従来の“等ピッチ”ローター形状とは異なる“不等ピッチ”ローター形状となることが明らかとなった。最後に膨張比可変機構付スクリュー膨張機の基本デザインを提案した。
 第七章では、本研究で得られた知見を総括した。

 本論文は、「Thermodynamical analysis of expander for low-temperature Rankine cycle(低温度差ランキンサイクル用膨張機の熱力学的解析)」と題し、7章より構成されている。
 第1章「Introduction(序論)」では、初めに工場排熱の現状を述べ、排熱回収の必要性を説明している。とくに温度レベルが100℃程度の排熱から10kW程度の動力或いは電力を回収する分散型排熱回収技術として低温度差ランキンサイクルが有望であり、その実用化のためには専用膨張機の開発が急務であるため、本研究の目的とすることを示している。
 第2章「Rankine cycle(ランキンサイクル)」では、低温度差ランキンサイクルの作動原理を解説し、熱力学的諸量に関する基礎方程式および計算手法について記述すると共に、従来研究の概要を示している。
 第3章「Fundamental characteristics study of small ORC system (小型低温度差有機ランキンサイクルの基本特性)」では、低沸点有機冷媒HFC245faを作動流体とする小型低温度差有機ランキンサイクル(ORC)装置を試作し、実験結果から膨張機前後の膨張比が膨張機効率を支配する要因であることを明らかにしている。
 第4章「Effect of expansion ratio in small ORC system(小型低温度差有機ランキンサイクルにおける膨張比の影響)」では、膨張比を任意に設定できる膨張バルブを組み込んだORC装置を試作し、熱源温度が不安定な条件においては膨張比可変機構を導入することで膨張機効率を高められることを実験により明らかにしている。
 第5章「Thermodynamic analysis of expansion profile for displacement-type expander in low-temperature ORC(低温度差有機ランキンサイクル用容積型膨張機の膨張プロファイルの熱力学的解析)」では、ORCに適する膨張機形態として容積型膨張機を取り上げ、熱源温度が異なる条件下における作動流体の最適膨張プロファイルを熱力学理論に基づいて解析し、得られた膨張プロファイルの類似性を利用して高い膨張機効率を達成する膨張比可変機構の動作原理を明らかにしている。
 第6章「Thermodynamical design of screw expander for low-temperature ORC(低温度差ランキンサイクル用スクリュー膨張機の熱力学的設計)では、膨張比可変機構の適用が可能な容積型膨張機としてスクリュー膨張機に着目し、熱力学的解析によりエントロピー変化ポテンシャルが最小となるスクリュー膨張機のローター形状を明らかにした上で、膨張比可変機構付スクリュー膨張機の基本デザインを示している。
 第7章では、本研究で得られた知見を総括している。
 以上のように、本論文では熱力学的解析に基づいて低温度差ランキンサイクル用膨張機の高効率化を達成する手法を明らかにしており、工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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