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環境保全に配慮した旋盤の高精度化技術の開発

氏名 金子 義幸
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙278号
学位授与の日付 平成22年3月25日
学位論文題目 環境保全に配慮した旋盤の高精度化技術の開発
論文審査委員
 主査 教授 田辺 郁男
 副査 教授 矢鍋 重夫
 副査 教授 柳 和久
 副査 准教授 上村 靖司
 副査 准教授 磯部 浩巳

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目次
第1章 緒論 p.1
 1.1 緒言 p.1
 1.2 従来の研究 p.5
 1.3 本論文の構成 p.7
 参考文献 p.12
第2章 ニューラルネットワークを用いた旋盤の簡易知能型熱変形制御(環境保全のために冷却装置を使用しない熱変形対策) p.17
 2.1 緒言 p.17
 2.2 簡易知能型熱変形制御システムの説明 p.17
 2.3 ニューラルネットワークの構築とその代数式化 p.19
 2.4 簡易知能型熱変形制御とその効果 p.26
 2.4.1 CNC旋盤の改造とCNCプログラムの対応 p.26
 2.4.2 評価実験結果 p.29
 2.5 結言 p.38
 参考文献 p.38
第3章 環境保全に配慮した構造設計による旋盤の熱変形抑制技術 p.41
 3.1 緒言 p.41
 3.2 環境保全に配慮した構造設計による熱変形抑制技術の説明 p.41
 3.2.1 三次元ゼロ芯構造 p.41
 3.2.2 セルフ強制冷却構造 p.43
 3.2.3 断熱ユニットを用いた三層構造 p.45
 3.3 環境保全に配慮した構造設計による旋盤の熱変形抑制技術の評価 p.46
 3.3.1 評価実験方法 p.46
 3.3.2 各技術の効果 p.48
 3.3.3 一般工場環境下での評価 p.52
 3.3.4 実切削実験による評価 p.56
 3.4 結言 p.58
 参考文献 p.59
第4章 研削加工を必要としないチャック及び刃物台の材質を考慮した高品位面加工用びびり振動抑制技術 p.61
 4.1 緒言 p.61
 4.2 チャック及び刃物台の最適構成材料の選定 p.62
 4.3 実切削実験による評価 p.72
 4.3.1 丸型チップによる中仕上げ切削 p.72
 4.3.2 シェービングチップによる仕上げ切削 p.82
 4.4 結言 p.79
 参考文献 p.80
第5章 傑作加工を必要としないリニアモーター駆動旋盤による鏡面加工を目的とした切削方法の構築 p.83
 5.1 緒言 p.83
 5.2 実験に使用したリニアモータ旋盤の基本構成・仕様 p.83
 5.3 鏡面加工方法の提案 p.85
 5.3.1 切削開始位置の位相を変更しながらの複数回旋削加工する方法の提案 p.85
 5.3.2 新しい平バイトで仕上げ加工する方法の提案 p.88
 5.4 切削開始位置の位相を変更しながらの複数回旋削加工する方法の評価 p.91
 5.5 新しい平バイトで仕上げ加工する方法の評価 p.95
 5.6 結言 p.100
 参考文献 p.101
第6章 稼動時の排出CO2量検討による各章の高精度化技術の環境負荷評価 p.103
 6.1 緒言 p.103
 6.2 稼動時における環境負荷評価方法の概要 p.104
 6.2.1 冷却装置稼動時における検討 p.105
 6.2.2 空調装置稼動時における検討 p.107
 6.2.3 油圧ユニット稼動時における検討 p.108
 6.2.4 円筒研削盤稼動時における検討 p.112
 6.2.5 油剤廃棄時における検討 p.114
 6.3 各高精度化技術における環境負荷評価 p.116
 6.3.1 第2章から第5章の各章の高精度化技術の効果 p.116
 6.3.2 高精度化技術の旋盤に適用した時の効果 p.120
 6.4 結言 p.125
 参考文献 p.125
第7章 結論 p.127
謝辞 p.130
付録 省スペース型旋盤を用いた各工程の排出CO2量検討による環境負荷評価

本論文は、「環境対応型次世代旋盤のための高精度化技術の開発」と題し、環境対応型旋盤とそれを用いた高精度な加工技術の開発を目的とした。まず、工作機械の簡易知能型熱変形制御では、熱変形をニューラルネットワークで事前予測して補正を行う対策を提案し、恒温施設や冷却機がなくても高精度な加工が可能であることを明らかにした。また、構造設計による熱変形対策として、三次元零芯構造、セルフ強制冷却構造、熱源断熱ユニット構造の3つの構造を提案し、各構造が熱変形抑制効果があることを確認した。つぎに、旋盤構造一部であるチャックと刃物台を鉛製にすることによって、びびり振動を起こしにくくし、研削作業不用とし、その分のエネルギ削減をした。さらに、切り込みなしで位相を随時変更しながら複数切削する加工と、先端に小さなフラット部を持つバイトで仕上げ加工する方法の2つを提案し、旋削のみで鏡面加工が可能とした。最後に、LCAを考慮した環境負荷の考察し、上記の新しい対策・構造の環境負荷を評価し、本研究が有効性であると評価した。

第1章「緒論」では、環境対応型工作機械、加工の高精度化対策技術に関する従来の研究の概要を示すとともに、本研究の目的と範囲を述べている。
第2章「ニューラルネットワークを用いた工作機械の簡易知能型熱変形制御(環境保全のために冷凍機を使用しない熱対策)」では、機械の熱変形対策を対象として、しかも環境保全に十分考慮して、機械の熱変形を強制的に除去するのではなく、熱変形の発生を容認し、それを事前に予測して補正を行う対策について検討を行った。演算装置など新たに追加することなく既存のNC装置内にあるマクロと工具補正機能を使用することで補正を行った。これにより、恒温施設や冷却機がなくても高精度な加工が可能であり、しかも環境保全に寄与できる対策であることを明らかにしている。
第3章「環境保全を考慮した構造設計による熱変形対策」では、機械の熱変形対策を対象として、しかも環境保全に十分考慮して、(1)機械を熱不感構造にするための三次元零芯構造、(2)セルフ強制冷却構造、(3)熱源断熱ユニット構造といった3つの構造を提案し、その対策を適用した旋盤を試作して評価を行った。これらの対策は、熱変形に対してその悪影響の小さい構造設計を行い、しかも冷却剤として普通の水道水を使用したものである。これにより、強制冷却装置や恒温恒湿装置が不要であること、油などの冷却油剤を使用しなくてよいことから、環境保全・省エネルギーを考慮した対策であることを明らかにした。
第4章「研削レスを目的としたチャック及び刃物台の材質を考慮した高品位面加工用びびり振動抑制対策」では、機械の振動対策を対象として、加工時に工具と工作物間に発生するびびり振動を抑制する対策の検討を行った。ここでも当然環境保全に十分考慮している。刃物台とチャック部分を鉛製とすることによってびびり振動を起こしにくくした。その結果、旋削のみで高品位な仕上げ面を得ることが可能となること、研削作用が不用となることで従来に比べて、短時間、低コストで製品加工を行うことができのみならず、工作物搬送エネルギーと研削加工機分の消費エネルギーを削減できること、機械の段取り替えが不要となるため製品の精度が向上することを明らかにした。
第5章「リニアモータ駆動旋盤による鏡面加工を目的とした切削方法の構築」では、機械の振動対策を対象として、しかも環境保全に十分考慮した対策として、機械の振動による表面粗さへの影響を容認し、リニアモータ駆動旋盤を用いて、高品位な加工面を得ることができる新しい旋削加工を提案し、評価を行った。これは、従来の旋削をした後に、切り込みなしで位相を随時変更しながら複数切削する方法と先端に小さなフラット部を持つバイトで仕上げ加工する方法の2つである。これらの方法で、旋削のみで高品位な仕上げ面を得ることが可能となること、研削レスとなることで従来に比べて、短時間、低コストで製品加工を可能できた。
第6章「LCAを考慮した旋盤の環境負荷の検討」では、LCAを参考にして旋盤の環境負荷の評価方法について検討した後、それを用いて第2章から第5章にある機械の熱変形対策や振動対策の省エネルギー効果について、それらの環境への負荷について評価した。具体的には、製作時、稼動時、廃棄時等の各工程において、従来の対策と新しい対策との比較を行い、さらに新しい対策を1台の旋盤に全て適用した場合の環境への負荷について検討、評価を行った。また、現存する省スペース省エネルギー型旋盤を例にとり、小型化・省スペース化による環境への負荷変動も評価値として組合せ、本論文の対策の効果について考察した。最後に、将来的に環境保全に配慮した旋盤を考えていく上で何が重要であるかを考察した。
第7章「結論」では、本研究で得られた結果をまとめ、ニューラルネットワークを用いた工作機械の簡易知能型熱変形制御、環境保全を考慮した構造設計による熱変形対策、研削レスのための鉛製チャック&刃物台を用いたびびり振動抑制対策、リニアモータ旋盤による鏡面加工方法が、それぞれ環境保全と高精度化に寄与できることを明らかにした。

本論文は、「環境対応型次世代旋盤のための高精度化技術の開発」と題し、7章より構成されている。
第1章「緒論」では、環境対応型工作機械、加工の高精度化対策技術に関する従来の研究の概要を示すとともに、本研究の目的と範囲を述べている。
第2章「ニューラルネットワークを用いた工作機械の簡易知能型熱変形制御(環境保全のために冷凍機を使用しない熱対策)」では、熱変形の発生を容認し、それをニューラルネットワークで事前に予測して補正を行う対策を提案した。演算装置など新たに追加することなく既存のNC装置内にあるマクロと工具補正機能を使用することで補正をした。これにより、恒温施設や冷却機がなくても高精度な加工が可能であり、しかも環境保全に寄与できる対策であることを明らかにしている。
第3章「環境保全を考慮した構造設計による熱変形対策」では、機械を熱不感構造にするための三次元零芯構造、セルフ強制冷却方法、熱源断熱ユニット構造の3つの方法を提案し、その対策を適用した旋盤を試作して評価を行った。この3つの対策にはそれぞれ旋盤の熱変形抑制効果があることが確認でき、環境保全に寄与できることも確認できた。
第4章「研削レスを目的としたチャック及び刃物台の材質を考慮した高品位面加工用びびり振動抑制対策」では、刃物台とチャック部分を鉛製とすることによってびびり振動を起こしにくくした。その結果、旋削のみで高品位な仕上げ面を得ることができ、研削作業分のエネルギー削減を可能にした。
第5章「リニアモータ駆動旋盤による鏡面加工を目的とした切削方法の構築」では、リニアモータ駆動旋盤を用いて切り込みなしで位相を随時変更しながら複数切削する方法と、先端に小さなフラット部を持つバイトで仕上げ加工する方法の2つを提案、評価した。これらの方法で、旋削のみで高品位な仕上げ面を得ることが可能となること、研削レスとなることで従来に比べて、短時間、低コストで製品加工を可能できた。
第6章「LCAを考慮した旋盤の環境負荷の検討」では、LCAを参考にして旋盤の環境負荷の評価方法について検討した後、それを用いて第2章から第5章にある機械の熱変形対策や振動対策の省エネルギー効果について検討し、本研究の有効性を評価した。
第7章「結論」では、本研究で得られた結果をまとめ、ニューラルネットワークを用いた工作機械の簡易知能型熱変形制御、環境保全を考慮した構造設計による熱変形対策、研削レスのための鉛製チャック&刃物台を用いたびびり振動抑制対策、リニアモータ旋盤による鏡面加工方法が、それぞれ環境保全と高精度化に寄与できることを明らかにした。
よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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