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高精度マスク技術による光リソグラフィの延命化に関する研究

氏名 宮崎 順二
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第535号
学位授与の日付 平成22年3月25日
学位論文題目 高精度マスク技術による光リソグラフィの延命化に関する研究
論文審査委員
 主査 准教授 河合 晃
 副査 教授 高田 雅介
 副査 教授 濱崎 勝義
 副査 教授 佐藤一則
 副査 教授 末松 久幸

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目次
第1章 序論 p.1
 1.1 緒言 p.1
 1.2 縮小投影露光システムと超解像技術 p.4
 1.3 光リソグラフィの延命化技術 p.6
 1.4 光リソグラフィにおけるフォトマスクの役割 p.8
 1.5 シリコン単結晶異方性ウエットエッチング p.10
 1.6 本研究の目的とオリジナリティ p.11
 1.7 本論文の構成 p.13
 参考文献 p.15
第2章 フォトマスク精度がリソグラフィ特性に及ぼす影響 p.17
 2.1 緒言 p.17
 2.2 フォトマスクパターンのラインエッジラフネス p.19
 2.2.1 フォトマスクパターンのエッジラフネスの結像特性への影響 p.19
 2.2.2 実験による検証 p.22
 2.3 フォトマスク平坦性の結像特性への影響 p.23
 2.4 実験 p.25
 2.4.1 フォトマスク平坦度測定 p.25
 2.4.2 ウエハ上焦点面形状変化の測定 p.25
 2.5 実験結果と考察 p.26
 2.6 結論 p.31
 参考文献 p.33
第3章 単層膜減衰型位相シフトマスクの開発とその精度に関する検討 p.35
 3.1 緒言 p.35
 3.2 単層膜減衰型位相シフトマスクの開発 p.36
 3.3 減衰型位相シフトマスクの転写特性 p.39
 3.4 マスク寸法誤差増幅率(Mask Error Enhancement Factor:MEEF) p.45
 3.5 減衰型位相シフトマスクにおける位相精度と透過率精度 p.47
 3.6 結論 p.52
 参考文献 p.54
第4章 ダブルパターニングリソグラフィにおけるマスク評価 p.56
 4.1 緒言 p.56
 4.2 各種ダブルパターニングの手法と開発課題 p.58
 4.3 ダブルパターニングリソグラフィにおける寸法ばらつき p.59
 4.4 パターン分割 p.62
 4.5 ダブルパターニングリソグラフィのエミュレーション手法の開発 p.63
 4.6 実験 p.64
 4.7 結果と考察 p.66
 4.7.1 パターン分割評価 p.66
 4.7.2 OPC,フォトマスク評価及びウエハ評価結果 p.67
 4.7.3 フォトマスク重ね合わせ精度評価と寸法精度評価 p.69
 4.7.4 ダブルパターニングエミュレーションによるマスク評価 p.70
 4.8 結論 p.72
 参考文献 p.74
第5章 単結晶シリコンの異方性ウエットエッチングの転写特性 p.76
 5.1 緒言 p.76
 5.2 実験 p.78
 5.3 マスク形状忠実性 p.79
 5.3.1 四角形マスクの場合のマスク形状忠実性 p.79
 5.3.2 四形マスクの場合のマスク形状忠実性 p.80
 5.3.3 マスク形状補正 p.83
 5.4 欠陥転写特性 p.84
 5.5 結論 p.88
 参考文献 p.89
第6章 結論 p.90
 参考文献 p.92
謝辞 p.93
本研究に関する公表 p.94
本論文で使用した記号、用語一覧 p.101

半導体デバイスの微細化は、すでに物理限界に近い領域に達しており、単に微細化を進めるだけでなく、その特性ばらつきを如何に制御するかが非常に重要な開発課題となっている。光リソグラフィは半導体デバイスの微細化に必須の技術であり、その延命化は重要な課題である。先端リソグラフィの技術は、多くのプロセス技術の集積によって構築されている。個々のプロセス技術の開発は継続的に行われているが、マスク、転写、エッチングといったプロセス全体を通じての最適化は例を見ない。そこで、本研究では、従来とは異なり、リソグラフィ全体を一体と捉え、特に露光システムとフォトマスクを一体と見なしてフォトマスクに必要な精度を検討する。必要かつ十分な精度とは何かを議論することで、光リソグラフィの延命化に必要なフォトマスク精度を明らかにする。特に、位相シフトマスク技術とダブルパターニングリソグラフィは、光リソグラフィを延命化する重要技術であり、今後の半導体の微細化を支えていく技術となる。そこで位相シフトマスクやダブルパターニングに特有なフォトマスクへの要求性能について検討する。これらを通して現行の光リソグラフィが、ダブルパターニングからEUVへと進化していく過程における高精度フォトマスクの役割を示す。また光リソグラフィの半導体以外の分野への応用もその技術の延命化として重要である。MEMSデバイスは近年重要なデバイス分野となっているが、MEMSデバイスへの光リソグラフィの応用には、MEMS特有の開発課題がある。特に単結晶シリコンの異方性ウエットエッチングは三次元構造の作成に必須の技術であるが、一方その異方性のため、マスクとエッチング後形状が一致しないという特性がある。そこで、異方性ウエットエッチングにおける、マスク忠実度と欠陥転写特性を明らかにすることを目的とする。
本論文は、全六章から構成される。第一章では、光リソグラフィの微細化の現状と今後の延命化技術について述べ、高精度フォトマスクの光リソグラフィの延命化における重要性を論じる。第二章では、光リソグラフィの延命化に必要なフォトマスクの要求精度について論じる。フォトマスクに要求される最も重要な特性は、パターン寸法ばらつきとフォトマスク基板の平坦性である。パターンの寸法ばらつきは、ラインエッジラフネスに着目して、その繰り返し周期が光学系のカットオフ周波数以上であっても光学像のコントラストを劣化させることを明らかにする。フォトマスク基板の平坦性に関しては、その平坦度とウエハに転写される焦点位置への影響を検討し、露光装置において補正される傾斜成分と湾曲成分補正後の平坦度がウエハ上の焦点位置ばらつきと一致することを実験的に確認する。第三章では、新規に開発・実用化した単層膜減衰型位相シフトマスクに関して論じる。単層膜で減衰型位相シフトマスクを実現するために必要な単層膜に求められる屈折率と消衰係数の関係を明らかにし、反応性スパッタ法により、その条件を満たす単層膜を形成し単層化が可能であることを示す。また、本位相シフトマスクを実用化する際に課題となる露光領域外の遮光を微細ホールパターンを用いて行う方法を提案する。この単層膜減衰型位相シフトマスクを用いて、リソグラフィのプロセス余裕度の改善効果を示し、また位相シフトマスクに特有の位相誤差と焦点面変動の関係を論理的に解明し、実験により確認する。これらの知見に基づき、位相シフトマスクに求められる透過率誤差と位相誤差の許容値を明らかにする。第四章では、光リソグラフィの延命化技術であるダブルパターニングリソグラフィに関して論じる。ダブルパターニングリソグラフィでは、ハードマスク層の成膜やエッチングの工程など複雑なプロセスが必要となる。そこで、ダブルパターニング用フォトマスクの精度を評価する新規手法として、ハードマスク層の成膜や、エッチングが不要であり、簡便でかつ有効な手法を提案する。これは二重露光法を用いて形成したパターンを使用してダブルパターニングリソグラフィをエミュレートする手法であり、本手法により現状のフォトマスクがダブルパターニングリソグラフィにおいて十分な寸法精度と位置精度を達成可能であることを示す。第五章では、単結晶シリコンの異方性ウエットエッチングにおける、マスク忠実度に関して論じる。異方性ウエットエッチング中のマスク形状とエッチング形状の関係を明らかにし、その新規補正方法を提案する。さらに、この補正方法によりエッチング後に高精度に設計形状が得られることを実験的に確認する。またマスクに異物が付着した際に発生するパターン残り欠陥に関して、擬似欠陥マスクを用いて、その欠陥転写特性を明らかにし、その欠陥許容度を明確にする。最後に第六章にて、本研究で得られた結果を総括し、これらの知見が光リソグラフィの延命化における高精度マスクの開発の指針を示す。

 本論文は、「高精度マスク技術による光リソグラフィの延命化に関する研究」と題し、6章より構成されている。
 第1章では、光リソグラフィの微細化の現状と今後の延命化技術に述べ、高精度フォトマスクの光リソグラフィの延命化における重要性を論じるとともに、本研究のオリジナリティと目的について述べている。第2章では、光リソグラフィの延命化に必要なフォトマスクの要求精度について論じている。遮光パターンの寸法ばらつきは、その繰り返し周期が光学系のカットオフ周波数以下であっても光学像のコントラストを劣化させることを明らかにしている。フォトマスク基板の平坦性に関しては、その平坦度とウエハに転写される焦点位置への影響を検討し、露光装置において補正される、傾斜成分と湾曲成分補正後の平坦度がウエハ上の焦点位置ばらつきと一致することを実験的に示している。
 第3章では、新規に開発し実用化した単層膜減衰形位相シフトマスクに関して論じている。単層膜で減衰型位相シフトマスクを実現するために単層膜に求められる屈折率と吸収係数の関係を明らかにし、反応性スパッタ法により、その条件を満たす単層膜を形成し単層化が可能であることを示している。また、本位相シフトマスクを実用化する際に課題となる露光領域周辺の遮光を微細ホールパターンを用いて行う方法を提案している。この知見に基づき、位相シフトマスクに求められる透過率誤差と位相誤差の許容値を明らかにしている。
 第4章では、光リソグラフィの延命化技術であるダブルパターニングリソグラフィに関して論じている。ダブルパターニング用フォトマスクの精度を評価する新規手法として、ハードマスク相の成膜や、エッチングが不要であり、簡便でかつ有効な手法を提案している。本手法により現状のフォトマスクがダブルパターニングリソグラフィにおいても十分な寸法精度と位置精度を達成可能であることを示す。
 第5章では、シリコン単結晶の異方性ウエットエッチングにおける、マスク忠実度に関して論じている。異方性ウエットエッチング中のマスク形状とエッチング形状の関係を明らかにし、その新規補正方法を提案し、この補正方法によりエッチング後に高精度に設計形状が得られることを実証している。
 第6章では、本研究で得られた結果を総括する。これらの知見が光リソグラフィの延命化における高精度マスクの開発の指針となると結論する。
 よって、本論文は工学上および工業上貢献するところが大きく、博士(光学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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