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Creation of ZnO whiskers by atmospheric chemical vapor deposition and their industrial applications (大気開放型化学気相析出法によるZnOウイスカーの創製と工業応用)

氏名 植田 致知
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第271号
学位授与の日付 平成21年6月17日
学位論文題目 Creation of ZnO whiskers by atmospheric chemical vapor deposition and their industrial applications (大気開放型化学気相析出法によるZnOウイスカーの創製と工業応用)
論文審査委員
 主査 教授 齋藤 秀俊
 副査 教授 植松 敬三
 副査 教授 小松 高行
 副査 准教授 伊藤 治彦
 副査 産学融合特任准教授 田中 諭
 副査 名誉教授 朽津 耕三

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Chapter 1 General Introduction p.1
 1.1 Background of this study p.1
 1.2 Key words p.4
 1.2.1 Zinc oxide p.4
 1.2.2 Chemical vapor deposition p.5
 1.2.3 Crystal growh p.5
 1.2.3.1 Fundamental theory of crystal growth p.5
 1.2.3.2 Surface kinetic process p.6
 1.2.3.3 Epitaxy p.6
 1.2.4 Field emission p.7
 1.3 Objective of this research p.7
 1.3.1 Atmospheric CVD technique p.7
 1.3.2 ZnO whiskers for the qpplied use of field emitter p.8
 1.4 Objectives p.8
 1.5 Contents of this paper p.8
 Tables and figures p.10
 References p.21
Chapter 2 Epitaxial Growth and Growth Mechanism of Zine Oxide Whiskers by Atmospheric Chemical Vapor Deposition p.24
 2.1 Introduction p.25
 2.2 Experimental Procedure p.26
 2.3 Results and Discussion p.28
 2.3.1 Morphology p.28
 2.3.2 Orientation p.32
 2.3.3 Growth rate p.33
 2.3.4 Nucleation process and growth mecanism p.34
 2.3.4.1 Nucleation process p.34
 2.3.4.2 Derermination of growth mechanism p.35
 2.3.4.3 Ivantsov parabolic tip p.38
 2.4 Conclusions p.40
 Figures p.42
 References p.62
Chapter 3 Effects of H2 Treatment no Electrical Characteristics of Al:ZnO p.64
 3.1 Introduction p.65
 3.2 Experimental Procedure p.66
 3.3 Results and Discussion p.68
 3.3.1 Electrical characteristics of Al:ZnO after H2 treament for 1h p.68
 3.3.2 Eectrical characteristics of Al:ZnO after H2 treament at 673K p.71
 3.3.3 Effect of H2 treatment on the field emission characteristic p.72
 3.4 Conclusions p.72
 Figures p.74
 References p.88
Chapter 4 Field Emission Characteristics of Al:ZnO Whiskers Emitters with Various Crystallite Lengths, Densities, and Radii of Curvature p.90
 4.1 Summary and conclusion p.91
 4.2 Recommendations for future research p.93
 4.3 Results and Discussion p.96
 4.3.1 Properties of Al:ZnO whiskers p.96
 4.3.1.1 Effects of the reactant concentration and substrate temperature p.96
 4.3.1.2 Effects of the aluminum dopant concentration p.98
 4.3.2 Field emission characteristics of the whisker emitters p.98
 4.3.2.1 Effects of the crystallite density and length p.99
 4.3.2.2 Effects of the crystallite radius of curvature p.102
 4.3.2.3 Fowler-Nordheim plot p.104
 4.4 Conlusions p.105
 Tables and Figures p.107
 References p.132
Chapter 5 Prooerties and Field Eemission Caracteristice of Ga:ZnO Whiskers p.134
 5.1 Introduction p.135
 5.2 Experimental Procedure p.136
 5.3 Results and Discussion p.140
 5.3.1 Properties of Ga:ZnO whiskers p.140
 5.3.2 Field emisson characteristics of whisker emitters p.145
 5.4 Conclustions p.150
 Tables and Figures p.152
 References p.168
Chapter 6 General Conclusions p.169
 Lists of Papers p.173
 List of Patents p.175
 Acknowledgements p.179

 ウイスカーは、針状の単結晶である。従来、ウイスカーはその強度を利用して、主に樹脂や塗料等の補強剤としてバルクで使用されてきた。1998年に大気開放型CVD法を用いて、(0001)α-Al2O3単結晶基板上に新規なZnOエピタキシャルウイスカーが創製された。この時期を境に、ウイスカーを始めとするマイクロコンポジットの利用方法が変わってきた。具体的には、バルクの利用から、例えば配向した構造体としての利用が挙げられる。
 本研究は、高度に配向し、かつ形状の揃ったZnOウイスカーの構造体としての用途として、電界電子放出素子に着目した。課題を解決するための方法として、第一にZnOウイスカーの形態観察を通じてZnOウイスカーの結晶成長機構を明らかにする。次に、ZnOウイスカーを水素処理することで電気的特性を変化させる。最後に、明らかにされた結晶成長機構に基づき、成膜条件を変化させることでウイスカー形状を変化させ、電界電子放出素子として最適な形状を提案する。その結果、100 μA/cm2の電流密度を得るために必要な電界が最小3.6 V/μmという値を得ることができた。この特性は、現在工業的に利用できると考えられているカーボンナノチューブの電界放出特性に匹敵するものである。以上の結果から、ZnOウイスカーの工業応用への道を開いたと考えている。
 第1章「General Introduction」では、本研究の背景としてウイスカーの工業応用の変化、発光素子と電界電子放出素子の現状と課題を解説した。さらに、キーワードとして結晶成長及び電界放出の基礎理論を解説し、次いで電界電子放出素子の設計指針を明らかにした。これらに基づき、本研究の目的及び構成を示した。
 第2章「Epitaxial Growth and Growth Mechanism of Zinc Oxide Whiskers by Atmospheric Chemical Vapor Deposition」では、(0001)α-Al2O3単結晶基板上に形成されたZnOエピタキシャルウイスカーの形態観察を行った。その結果、ZnOエピタキシャルウイスカーの結晶成長機構は以下のような特徴を有することを明らかにした。第一に、ウイスカー先端の形態観察から、前駆体の過飽和状態に依存した結晶成長機構をとること、第二に、原料気化温度とウイスカー存在密度から換算した前駆体の拡散距離から、前駆体の拡散過程が結晶成長を支配していること、第三に、ウイスカー先端が放物線形状を示すこと、ウイスカーの面外方向の成長速度とウイスカー先端の曲率半径の関係が一定であることからIvantsovの解に依存することである。
 第3章「Effects of H2 Treatment on Electrical Characteristics of Al:ZnO」では、Al:ZnOウイスカーを水素アニール処理することで、ウイスカーの比抵抗が減少すると同時に、移動度が向上するという従来のキャリア密度の増加による比抵抗の減少機構とは異なった電気特性の変化が起きた。さらに、水素アニール処理によってAl:ZnOウイスカーの電子放出特性が大幅に向上した。
 第4章「Field Emission Characteristics of Al:ZnO Whiskers Emitters with Various Crystallite Densities, Lengths, and Radii of Curvature」では、第2章で示されたZnOウイスカーの成長機構を利用したウイスカー形状の最適化、第3章で得られた水素アニール処理の知見を利用して、ウイスカー形状と電子放出特性の関係を明らかにした。ウイスカー形状として、結晶密度、結晶長さ、結晶先端の曲率半径に着目した。結晶密度は、18万本/mm2と3万本/mm2の間に閾値が存在した。結晶長さは12 μmと19 μmの間に閾値が存在した。結晶先端の曲率半径は小さいほど良好な電子放出特性を示した。いずれの試料の場合も、Fowler-Nordheimプロットを行った結果、直線の領域が存在した。従って、電界放出であることが実証された。電界放出特性の基準として100 μA/cm2の電流密度を得るために必要な電界値を用いた。この電界値は、電界集中係数Βに強く相関した。すなわち、Βが大きくなるほど電界値は小さくなった。100 μA/cm2の電流密度を得るために必要な電界値が約3.6~5 V/μmの場合、均一な発光が認められた。
 第5章「Properties and Field Emission Characteristics of Ga:ZnO Whiskers」では、ドーパントとしてGaを用いた場合のウイスカー形状の変化、電界放出特性の関係を明らかにした。GaはAlと比較して結晶格子に組み込まれる量が少なかった。また、結晶の径も電界放出特性に影響した。電界放出特性はドーパント種に関係なく、Βに相関した。
 第6章「General Conclusions」では各章の結果を詳細に検討し、本研究の目的に対して電界放出ランプの試作に成功したという結論を得た。

 本論文は「Creation of ZnO Whiskers by Atmospheric Chemical vapor Deposition and Their Industrial Applications」と題し、6章から構成されている。
 第1章「General Introduction」では、本研究の背景、結晶成長及び電界放出の基礎理論を解説し、次いで電界電子放出素子の設計指針を明らかにするとともに、本研究の目的及び構成を示している。
 第2章「Epitaxial Growth and Growth Mechanism of Zinc Oxide Whiskers by Atmospheric Chemical Vapor Deposition」では、(0001)α-Al2O3単結晶基板上に形成されたZnOエピタキシャルウイスカーの結晶成長機構が過飽和状態に依存した結晶成長機構をとること、前駆体の拡散過程が結晶成長を支配していること、ウイスカーの面外方向の成長速度とウイスカー先端の曲率半径の関係が一定であることを見出し、成長先端がIvantsov型であることを明らかにしている。
 第3章「Effects of H2 Treatment on Electrical Characteristics of Al:ZnO」では、Al:ZnOウイスカーを水素アニール処理することで、ウイスカーの比抵抗が減少すると同時に、移動度が向上する現象を見出し、さらにAl:ZnOウイスカーの電界放射特性が大幅に向上することを明らかにしている。
 第4章「Field Emission Characteristics of Al:ZnO Whiskers Emitters with Various Crystallite Densities, Lengths, and Radii of Curvature」では、第2章で示されたZnOウイスカーの成長機構を利用してウイスカー形状を最適化するとともに、第3章で得られた水素アニール処理の知見を利用して、ウイスカー形状と電界放射特性の関係を明らかにしている。良好な電界放射を得るために、結晶密度には、18万本/mm2と3万本/mm2の間に閾値が存在し、結晶長さには12μmと19μmの間に閾値が存在していることを示している。また、すべての試料における電界放射特性を解析し、電界放射がFowler-Nordheim型であることを証明している。さらに電界放射特性が電界集中係数Βに強く相関していることを明らかにしている。以上の特性を示す電界放射素子と蛍光体で電界放射ランプを構成したところ、均一な発光を得ている。
 第5章「Properties and Field Emission Characteristics of Ga:ZnO Whiskers」では、ZnOウイスカーへのドーパントとしてGaを用いた場合のウイスカー形状の変化、電界放出特性の関係を明らかにしている。
 第6章「General Conclusions」では各章の結果を詳細に検討し、本研究の目的に対して電界放出ランプの試作に成功したという結論を得ている。
 本論文は工学上及び興行場貢献するところがきわめて大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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