Development of Non-Linear Shallow Water Wave Models and the Application to Highly Non-Linear Fluid Flows (非線形長波モデルの開発と強非線形流体現象に対する適用)
氏名 張 瑞瑾
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第382号
学位授与の日付 平成18年6月30日
学位論文題目 Development of Non-Linear Shallow Water Wave Models and the Application to Highly Non-Linear Fluid Flows (非線形長波モデルの開発と強非線形流体現象に対する適用)
論文審査委員
主査 助教授 細山田得三
副査 助教授 睦 旻皎
副査 助教授 熊倉 俊郎
副査 東京大学大学院新領域創成科学研究科助教授 黄 光偉
副査 長岡技術科学大学名誉教授 早川 典生
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Abstract
Table of Contents
List of Table
List of Figures
Chapter 1 Introducation p.1
1.1 Background p.1
1.2 Scope of research p.4
1.2.1 Sewage Selection of goverming equation p.4
1.2.2 Tidal model p.5
1.2.3 Treatment of advectionterm p.7
1.2.4 Numerical models for the generation of tsunami or surface water waves by submarine slides or debris flow p.8
1.3 Dissertation Layout p.9
References p.12
Chapter 2
An Accurate and highly efficient three-dimensional tidal model p.21
2.1 Introduction p.21
2.2 Model description p.21
2.2.1 Governing equations p.21
2.2.2 Boundary conditions p.22
2.2.3 Numerical scheme p.23
2.2.4 Euler-Langrangian discretization of advection and viscous terms p.25
2.2.5 Solution algorithm p.27
2.2.6 Numerical stability p.31
2.2.7 Overall characteristics of the numerical model p.32
2.3 Numerical experiment for simple rectangular basin p.33
2.4 Simple application to Dalian Bay p.35
2.4.1 The computational region p.35
2.4.2 Tide-induced currents p.36
2.5 Summary p.40
References p.42
Chapter 3
Highly accurate and conservative numerical model for treatment of advection terms p.43
3.1 Introduction p.43
3.2 Review of the CIP,the CIP-CLS2 and the CIPCLSR1 methods p.43
3.2.1 CIP methods p.44
3.2.1.1 Strategy of CIP method p.44
3.2.1.2 Application to non-linear equation p.47
3.2.2 CIP-CLS2 method p.49
3.2.3 CIP-CLSR1 method p.52
3.2.4 Extension to two-dimension p.55
3.2.4.1 Extension to two-dimension for the CIP method p.55
3.2.4.2 Extension to two-dimension for the CIPCSL2 method and the CIPCLSR1 methods p.57
3.3 Verification of the CIP series methods p.59
3.3.1 Verification of one-dimensional methods p.59
3.3.2 Verification of two-dimensional methods p.61
3.4 Summary p.66
References p.66
Chapter 4
A numerical study on generation,propagation and run-up of surface water waves generated by plunging of debris flow p.69
4.1 Introduction p.69
4.2 The numerical method in this study p.69
4.2.1 The kinematics condition of the free surface p.70
4.2.2 Governing equations p.74
4.2.2.1 One-dimensional governing equations p.76
4.2.2.2 two-dimensional governing equations p.76
4.2.2.3 Calculation of the density of debris flow p.77
4.2.2.4 Treatment of advection term p.78
4.3 Numerical calculation p.79
4.3.1 One-dimensional governing calculation p.79
4.3.1.1 Calculating cases and calculating conditions p.79
4.3.1.2 Numerical results p.80
4.3.2 two-dimensional governing calculation p.91
4.3.2.1 Calculating cases and calculating conditions p.91
4.3.2.2 Numerical results p.92
4.4 Summary p.95
References p.95
Chapter 5
Transport of passive scholar in a semi-closed bay p.97
5.1 Introduction p.97
5.2 Numerical models p.97
5.3 Calculation condition p.98
5.4 Calculation results p.99
5.5 Summary p.103
References p.103
Chapter 6
Numerical experiment on the effects of river water and coastal fluctuation on the generation of sand bar at the river mouth p.105
6.1 Introduction p.105
6.2 Numerical model p.105
6.2.1 Calculation of multi-directional irregular wave p.106
6.2.1.1 Directional spectrum p.106
6.2.1.2 Making the wave generation signal at the boundary p.108
6.2.2 Calculation of wave propagation p.110
6.2.2.1 Boussinesq equation p.110
6.2.2.2 Treatment of wave breaking and turbulence induced by wave breaking p.110
6.2.3 Calculation of near shore current p.112
6.2.4 Calculation of the transformation of topography by sediment transport p.112
6.2.5 Treatment of wave run-up and backwash p.113
6.2.6 Temporal integration and calculation domain of the numerical model p.115
6.3 Calculating condition p.116
6.4 Numerical Results p.117
6.4.1 Wave propagation p.118
6.4.2 Near shore current p.118
6.4.3 Change of bathymetry p.120
6.4.4 Adaptability to Agano River mouth p.123
6.5 Summary p.123
References p.124
Chapter 7 Conclusions p.125
Acknowledgment p.127
長波近似に基づく波動モデルとは,鉛直方向の流体運動の方程式を静水圧近似に基づいて簡略化して波動現象に適用したものである.このような近似による波動モデルは海岸工学における海岸波動や潮流,河川工学における不定流などの土木工学の随所で適用されている.また,土木工学以外の分野では浅水方程式モデルとも称され,海洋物理学や気象学などの地球流体力学の分野においても広く用いられている.一般に流れの場の水平方向の空間スケールが鉛直方向の空間スケールをよりも十分大きい場合,鉛直方向の加速度が無視できるため,長波近似は有効である.長波近似に基づかない計算手法は,流体現象をより正確に表現できるものの流速と圧力の相互作用を取り扱い上で必ず反復計算を必要とし,現在の計算機の能力では大領域を取り扱うことは現実的ではない.本研究は長波近似という枠組みでありながらもさまざまな工夫により,高度な数値計算を実施することが可能であるという立場をとっている.本論文は,このような長波モデルを非常に非線形性の高い種々の現象に適用するためのアルゴリズムの開発を行い,それら種々の現象に対して計算を実施した結果を示したものである.本論文は7章によって構成されており,以下にその概要について順を追って述べる.
第1章では,本研究の背景と必要性について著者の見識を示すとともに論文の構成を示した.
第2章では,潮流計算の高度化のためのセミラグランジアン手法に基づいた計算法を導入した.この方法では非線形長波方程式および物質の移流・拡散方程式に対して特性曲線の概念を用いることにより,数値計算の時間ステップをCFL条件に拘束されないような大きな値とすることが可能であることを示した.このことにより数値計算の高速化を図ることが可能となった.
第3章では,CIP法およびその発展形としてのラグランジアン手法を加味した種々のCIP法による数値計算を実施し,その性能の評価を行って非線形長波現象への適用可能性を示した.この方法により,波形が急激に増加する衝撃波的な現象を取り扱うことが可能となり,また,物理量の保存条件の保持が極めて高いことを確認することができた.
第4章では,非線形長波現象の1つとして,土石流とそれが水面に衝突することによって発生する水面波の相互作用に対する適用を述べている.この計算においては,水面の変動と土石流の流動の相互作用を計算するアルゴリズムとして以下のような方法を独自で考案した.すなわち,水面変動を計算する基礎式となる鉛直積分された連続条件式の底面でのふるまいを底面が鉛直方向に変動することによる運動学的条件式として評価した.さらに土石流が水面に衝突した際に発生する土石流の進行に対する造波抵抗を水面の上昇による圧力上昇として評価するものとした.これらのアルゴリズムを同一時間ステップ内で計算することにより,両者が影響を与え合いながら時間発展の計算を進めることが可能となり土石流の衝突とそれによって発生する水面波動との相互作用を計算することが可能となった.このような2つの現象の連成アルゴリズムに現れる移流項に第2章で述べたCIP系のスキームを適用することにより,水と土石流の相互作用のような高非線形の現象の解析が可能となることを示した.計算は1次元および平面2次元であり,平面2次元では,2次元的に分布した斜面の勾配に依存した土砂の運動とその衝突に伴う局所的で急激な水位上昇と波の伝播について計算した.
第5章では,閉鎖性海域の物質輸送を評価するため,波動現象によって誘起された流れとそれによる物質の移動とを取り扱っている.流れの計算には第3章で述べた高非線形現象に対する移流計算スキームを適用した.この計算の結果は,特に閉鎖性海域の湾口部の埋め戻しの効果を評価するものであり,湾口が狭くなることによりそこを通過する物質交換が促進されるという常識とは逆の効果について検討を行った.その結果,湾口の面積が狭小になることにより,運動量の流入が増加することがそのような現象に関係していることを示すことができた.
第6章においては,海岸波動とそれによる地形変化の特性について検討を行った.特に阿賀野川の河口砂州の形成に対する海岸波動の影響を考慮するため,波動による流れとその非線形効果によって誘起される海浜流,さらに海浜流による海浜地形の変化や河口砂州の形成過程について検討を行った.これらの現象もすべて同一時間ステップ内に含まれており,それぞれの現象が連成している.また,計算のための海岸波動の沖での入射条件としてより現実的な入射条件としての修正ブレットシュナイダー光易型の多方向不規則波を発生させた.この計算の結果,多方向性を持つ波の主波向きに依存する海浜流の分布を計算することが可能となり,さらにそれに依存した地形変化や砂州形状の伸張を示すことができた.
第7章では本論文の総括を行い,今後の発展や課題について述べた.
本論文は,「Development of non-linear shallow water wave models and the application to highly non-linear fluid flows(非線形長波モデルの開発と強非線形流体現象に対する適用)」と題し,7章より構成されている。非線形長波方程式は,海岸工学や河川工学等の土木工学の分野や海洋物理学等の理学分野でも広く用いられているが,より現実的な問題に適用する場合,様々なアルゴリズムの開発が必要となる。本論文は,このような長波モデルを非常に非線形性の高い種々の現象に適用するためのアルゴリズムの開発を行い,それら種々の現象に対して計算を実施した結果を示したものである。
第1章では,本研究の背景と必要性について著者の見識を示すとともに論文の構成を示している。
第2章では,潮流計算の高度化のためのセミラグランジアン手法に基づいた計算法を導入している。この方法では非線形長波方程式および物質の移流・拡散方程式に対して特性曲線の概念を用い,数値計算の時間ステップをCFL条件に拘束されない大きな値とすることが可能であることを示している。
第3章では,CIP法およびその発展形としてのラグランジアン手法を加味した種々のCIP法による数値計算を実施し,その性能の評価を行って非線形長波現象への適用可能性を示している。この方法により,波形が急激に増加する衝撃波的な現象を取り扱うことが可能となり,また,物理量の保存条件の保持が極めて高いことを確認している。
第4章では,非線形長波現象の1つとして,土石流とそれが水面に衝突することによって発生する水面波の相互作用に対する適用を述べている。この計算においては,水面の変動と土石流の流動の相互作用を計算する独創的なアルゴリズムを考案している。さらにこの2つの現象の連成アルゴリズムに現れる移流項に第2章で述べたCIP系のスキームを適用することにより,水と土石流の相互作用のような高非線形の現象の解析が可能となることを示している。
第5章では,閉鎖性海域の物質輸送を評価するため,波動現象によって誘起された流れとそれによる物質の移動とを取り扱っている。この計算の結果は,特に閉鎖性海域の湾口部の埋め戻しの効果を評価するものであり,湾口が狭くなることによりそこを通過する物質交換が促進されるという常識とは逆の効果について検討を行っている。
第6章においては,海岸波動とそれによる地形変化の相互作用について検討を行っている。特に阿賀野川の河口砂州の形成に対する海岸波動の影響を考慮するため,波動の非線形効果によって誘起される海浜流,さらに海浜流による海浜地形の変化や河口砂州の形成過程について検討を行った。この計算の結果,波の主波向きに依存する海浜流の分布を計算することが可能となり,さらにそれに依存した地形変化や砂州形状の伸張を示すことができた。
第7章では本論文の総括を行い,今後の発展や課題について展望している。よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。