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A Study of Shape Finding and Structural Analysis for Flexible Cable Structures (ケーブル系構造の形状決定と構造解析に関する研究)

氏名 Dang Tung Dang
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第407号
学位授与の日付 平成19年3月26日
学位論文題目 A Study of Shape Finding and Structural Analysis for Flexible Cable Structures (ケーブル系構造の形状決定と構造解析に関する研究)
論文審査委員
 主査 教授 長井 正嗣
 副査 教授 下村 匠
 副査 首都大学東京准教授 野上 邦栄
 副査 新潟大学助教授 阿部 和久

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Contents

Abstract p.iv
Acknowledgements p.vi

1.Introduction p.1
 1.1 Overview and Background p.1
 1.2 Objectives of the Work p.3
 1.3 Literature Survey p.3
 1.3.1 Cable Element p.3
 1.3.2 Shape finding Problem for Cable Structures p.4
 1.4 Contributions of the Research p.7
 1.5 Organization of Disseration p.9

2.Fundamental formulation of Cable Element p.11
 2.1 Introduction p.11
 2.2 Assumptions p.11
 2.3 Fundamental Formulation of Cable element p.12
 2.3.1 Relation between Displacement increment and Strain increment p.12
 2.3.2 Equilibrium equation and Boundary condition of Cable member p.13
 2.3.3 Modified Functional of Cable member p.15
 2.4 Stationary Conditions for the Cable element Functional p.17
 2.5 Solution Method of the Cable element Functional p.18
 2.6 Chapter Conclusions p.21

3.The Consideration of the Cable Element in Numerical Calculation p.22
 3.1 Introduction p.22
 3.2 Proper attentions to use the Cable element in Numerical calculation p.23
 3.2.1 Tangent vector of Cable p.23
 3.2.2 Expression of property of Incompresibility of Cable element p.23
 3.2.3 Setup Tentative axial force at the first stage of computation p.25
 3.3 Confirmation of the Validity of Cable element by Numerical calculation p.26
 3.4 Proposal of a Numerical integration method p.30
 3.4.1 Discretizing integration interval p.31
 3.4.2 Confirmation of the Accuracy of proposed Numerical integration method p.34
 3.5 Chapter Conclusions p.43

4.Formulation of Cable Element with Pulley p.44
 4.1 Introduction p.44
 4.2 Pulley p.45
 4.3 Cable element with Pulley p.46
 4.4 Analysis of Cable structures with Pulley p.53
 4.4.1 Two spans of cable suspended system p.53
 4.4.2 Three spans of cable suspended system p.55
 4.5 Chapter Conclusions p.57

5.Shape Finding of Cable Structures p.59
 5.1 Introduction p.59
 5.2 Cable subjected to an applied force in pulley part p.60
 5.2.1 Case 1: Cable element is fixed at both ends p.62
 5.2.2 Case 2: Both ends of cable element are connected to beam element p.62
 5.3 Determination method of Cable pre-stress p.63
 5.4 Shape finding of Cable truss p.68
 5.5 Shape finding of Counterstressed Dual-Cable networks p.77
 5.6 Shape finding of Cable networks on fixed boundary type p.81
 5.7 Shape finding of Cable networks on cables boundary type p.89
 5.8 Chapter Conclusions p.96

6.Shape Finding of Suspended Structures p.99
 6.1 Introduction p.99
 6.2 Component of unit vector of axial force p.100
 6.3 Shape finding of Suspension bridge p.105
 6.4 Expansion of Determination method of Cable pre-stress p.109
 6.5 Shape finding of Cable-stayed bridges p.112
 6.5.1 Modeling pulley p.113
 6.5.2 Fan type Cable-stayed bridge p.115
 6.5.3 Three dimensions model of Cable-stayed bridge p.116
 6.6 Chapter Conclusions p.122

7.Conclusions and Future works p.123
 7.1 Conclusions p.123
 7.2 Future works p.126

Appendix p.127

Notation p.129

Bibliography p.130

List of Publications p.134

Author Biography p.136

 ケーブル系構造の構造解析では,幾何学的非線形問題としてつり合いを計算するのが普通であるが,同時にケーブル長を調整しながら目的の構造を実現するという形状解析が必要となる場合が多い.また,ケーブルネットでは,所定の外力の作用下で大空間を確保するために,節点位置などの制約条件を満足するようなケーブルプレストレスやケーブルの無応力長を決める必要がある.一方,吊橋や斜張橋では,自重の作用した状態で,塔に曲げモーメントが発生せず,桁は所定の形状になるようにケーブルの無応力長やプレストレス力を決める必要がある.これらは,形状決定の問題と呼ばれ,種々の構造物の形状決定問題を汎用的に解くことは非常に難しいため,個々の構造形式ごとに独自の解法が提案されている.確立した構造形式の場合には,そのような解法を用いることもできるが,新形式の構造物の場合には,別途形状決定の問題の解法を構築する必要がある.
 本研究の特色・独創的な点として仮想的な「滑車」の概念を導入したケーブル系構造の等張力場での形状決定を行った後,滑車として扱った節点での滑り変位を拘束し,通常の節点として扱うことで,引き続きケーブル系構造に作用した荷重による構造解析が行える.すなわち,形状決定と構造解析を同一の手法で行うことができるため,簡便にケーブル系構造の解析が行える特徴を有している.各章の具体的内容に関する要約を以下に述べる.
 第1章「Introduction」においては,本研究の背景として近年,精緻な力学理論と設計・施工技術に支えられ,大空間確保への適用性に優れるケーブル系構造が新たな構造形式として多用されつつある.ケーブル要素の開発とケーブル系構造の設計における形状決定の重要性に関する従来の研究について述べた.また,本論文で提案したケーブル系構造の形状決定と構造解析に関する研究の経緯についてまとめ,本研究の意義を示した.
 第2章「Fundamental Formulation of Cable Element」において,使用したケーブル要素の定式化を行う.本ケーブル要素は,要素内での平衡方程式を満足するような応力仮定のハイブリッド型の有限要素であり,通常の変位法に基づいた有限要素のような要素内での変位を仮定する必要がないため,少ない自由度でも精度の良い解析が行える特徴を有している.一方,通常の有限要素法では必要のない数値計算上の配慮すべき事柄がある.また,要素内の平衡方程式を満たしているので,一つの要素で非常にたわんだケーブルの解析も可能な要素である.
 第3章「The Consideration of the Cable Element in Numerical Calculation」においては,使用したケーブル要素では通常の有限要素法では必要のない数値計算上の配慮すべき事柄がある.そこで,本章でケーブルは引張軸力が発生するまで構造が安定しないことや,非抗圧性のため,数値計算上の留意点について考察を行い,また,被積分関数に軸力の逆数が含まれているために,その積分を正確に行うための手法を提案している.
 第4章「Formulation of Cable Element with Pulley」においては,本研究で扱うような滑車の概念を導入した形状決定の問題では,すべり変位により計算前後のケーブル長は大きく変化することになるが,一つのケーブル要素でケーブルの変形状態を精度良く表現して,要素長を大きくとる必要がある.そこで,著者は汎関数を修正することで,積分さえ正確に行えれば,一つの要素で大きく弛緩したケーブルを表現可能な滑車を有するケーブル要素を開発している.
 第5章「Shape Finding of Cable Structures」においては,第4章で提案した軸力が等しくなるような滑車を有するケーブル要素を元に,滑車部でケーブルに直接,張力を作用させる方法を用い,ケーブルプレストレス決定法を開発することによりケーブルトラス,ケーブルネット,境界ケーブルを有するケーブルネットなど種々のケーブル構造を対象に形状決定が行えることを示した.
 第6章「Shape Finding of Suspended Structures」においては,吊橋や斜張橋のような吊形式橋梁では,自重の作用した状態で塔に曲げが作用せず,桁の曲げを最小に抑えるために,桁とケーブルの取り付け部で自重による鉛直変位が生じないようにケーブルの形状決定を行うことが多い.このような問題も滑車を改良することや前章の形状決定法を拡張することにより容易に扱える.塔に曲げが生じないようにするには,塔に取り付けられた前後のケーブルの橋軸方向水平分力が等しくなるようにすれば良い.そのため,任意な方向の軸力成分が等しくなるような滑車を含んだ要素を提案した.また,桁とケーブルの取り付け位置が鉛直方向に移動しないようにするには,鉛直変位の二乗和が最小になるようにケーブル張力を決定すればよい.そのため,第5章で提案したケーブルプレストレス決定法を拡張し,特異値分解による最小二乗法の解法を用いて,任意の変位成分の規定値と計算値との残差の二乗和が最小になるように,滑車部でのケーブル張力を決める方法を開発している.さらに,いくつかの例を取り上げて,既往の形状決定法と比較検証し,本手法の有効性を確認した.
 第7章「Conclusions and Future works」では,以上の結果及び考察を踏まえて,今後の課題を提示し,本研究で提案したケーブル系構造の形状決定法の有効性と応用に関する結論をまとめた.

 本論文は,「A Study of Shape Finding and Structural Analysis for Flexible Cable Structures(ケーブル系構造の形状決定と構造解析に関する研究)」と題し,7章で構成されている.
 第1章では,本研究の背景と既往の研究について論じるとともに,本研究における目的と論文の構成を述べている.
 第2章では,本研究で使用するケーブル要素の定式化を行い,本要素の特徴を述べている.
 第3章では,使用するケーブル要素の数値計算上,配慮すべき事柄について考察を行い,軸力の逆数の項を含んだ要素剛性方程式に含まれる積分項を正確に計算するための手法を提案している.
 第4章では,滑車の概念を導入し,積分さえ正確に行えれば,一つの要素で大きく弛緩したケーブルを表現可能な滑車を有するケーブル要素を開発している.
 第5章では,第4章で誘導した滑車を有するケーブル要素を元に,滑車部でケーブルに直接,張力を作用させる方法を考案し,ケーブルプレストレス決定法を開発している.これによりケーブルトラス,ケーブルネット,境界ケーブルを有するケーブルネットなど種々のケーブル構造の等張力状態での形状決定が行えることを示している.
 第6章では,吊橋や斜張橋のような吊形式橋梁について,自重の作用した状態で,塔に曲げが作用せず,桁が所定の位置を保つような条件の下での形状決定を扱っている.第5章の滑車の概念を拡張することで,このような形状決定の問題も容易に扱えることを示している.また,形状決定の制約条件の数と,形状決定に用いる変数としてのケーブル張力の数が一致しない問題での形状決定法として,特異値分解による最小二乗法を用いた手法を適用し,既往の形状決定法による結果と比較検証し,本手法の有効性を確認している.
 第7章では,以上の結果及び考察を踏まえて,今後の課題を提示し,本研究で提案したケーブル系構造の形状決定法の有効性と応用に関する結論をまとめている.
 本論文は,滑車の概念を導入したケーブル要素を使用して,ケーブル系構造の形状決定が行えることを示している.これにより,従来,別々の手法が用いられていた形状決定と構造解析の解法に,同一の計算手法を用いることが可能になり,新形式のケーブル系構造の提案や開発が容易になる.よって,本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく,博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める.

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