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高機能性および経済性を有するECC合成鋼床版の開発に関する研究

氏名 三田村 浩
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第411号
学位授与の日付 平成19年3月26日
学位論文題目 高機能性および経済性を有するECC合成鋼床版の開発に関する研究
論文審査委員
 主査 助教授 下村 匠
 副査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 長井 正嗣
 副査 副学長 丸山 久一
 副査 東京工業大学教授 二羽 淳一郎

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第1章 序論 p.1
 1.1 研究の背景 p.2
 1.2 研究の目的 p.10
 1.3 既往の研究成果 p.14
 1.4 論文の構成と概要 p.20
 参考文献 p.21

第2章 合成鋼床版の新技術の開発 p.23
 2.1 概説 p.24
 2.2 新しく開発した合成鋼床版 p.25
 2.2.1 新工法の考案 p.25
 2.2.2 新工法を用いた補強方法 p.27
 2.2.3 新工法による舗装の評価 p.29
 2.3 まとめ p.33
 参考文献 p.34

第3章 合成鋼床版に用いる材料と要求性能 p.35
 3.1 概説 p.36
 3.2 高靭性繊維補強セメント複合材料ECCの開発 p.37
 3.2.1 ECCの要求性能 p.37
 3.2.2 ECCの材料設計 p.40
 3.2.3 ECCの施工性能 p.45
 3.2.4 凍結融解抵抗性能 p.54
 3.2.5 ECCのひび割れ幅抑制機能 p.61
 3.3 プレートジベル p.63
 3.3.1 プレートジベルの要求性能 p.63
 3.3.2 せん断抵抗性能 p.66
 3.3.3 FEM解析検討 p.72
 3.3.4 剥離抵抗性能 p.78
 3.4 防水工 p.84
 3.4.1 防水工の要求性能 p.84
 3.5 まとめ p.89
 参考文献 p.91

第4章 ECC合成鋼床版の合成効果の検証 p.93
 4.1 概説 p.94
 4.2 一本化の構造 p.96
 4.3 合成効果とひび割れ分散性状に関する基礎的検討 p.100
 4.3.1 部分パネル試験 p.100
 4.3.2 試験結果 p.104
 4.3.3 FEM解析検討 p.108
 4.4 定点疲労載荷試験による合成前後の補強効果の確認 p.114
 4.4.1 定点疲労載荷試験 p.114
 4.4.2 試験結果 p.117
 4.5 走行ラインの違いに着目した動的疲労載荷試験 p.120
 4.5.1 輪荷重走行試験-A p.120
 4.5.2 試験結果 p.124
 4.5.3 疲労後のせん断および剥離抵抗試験 p.129
 4.5.4 試験結果 p.131
 4.6 大荷重時の局所応力に着目した動的疲労載荷試験 p.134
 4.6.1 輪荷重走行試験-B p.134
 4.6.2 試験結果 p.136
 4.7 まとめ p.139
 参考文献 p.141

第5章 ECC合成鋼床版の施工方法の検討 p.142
 5.1 概説 p.143
 5.2 ECCの製造方法 p.144
 5.2.1 フレシュ性状確保のための検討 p.144
 5.2.2 硬化コンクリートの性能確保のための検討 p.154
 5.3 実施工時の課題の抽出と解決のための検討 p.158
 5.3.1 課題の抽出 p.158
 5.3.2 室内試験による検討 p.161
 5.3.3 試験施工による検討 p.165
 5.4 まとめ p.169
 参考文献 p.170

第6章 実橋への適用と補強効果の検証 p.171
 6.1 概説 p.172
 6.2 実橋における補強の必用性 p.173
 6.2.1 実橋の設計経緯と耐用年数 p.173
 6.2.2 FEM解析による補強の必要性 p.175
 6.2.3 疲労試験による照査 p.179
 6.3 実橋における施工と施工管理 p.184
 6.3.1 合成構造の概要 p.184
 6.3.2 施工 p.186
 6.3.3 施工管理 p.190
 6.4 実橋における補強効果の検証 p.197
 6.4.1 補強効果の検証方法 p.197
 6.4.2 補強効果の検証結果 p.201
 6.4.3 供用後の損傷と対応策 p.205
 6.5 まとめ p.208
 参考文献 p.209

第7章 総括 p.211
 7.1 研究成果の総括 p.212
 7.2 今後の課題と展望 p.215

謝辞

 近年,大型車交通量の増加や車両の大型化に伴い,鋼床版の疲労損傷が多数報告されている.本論文は,既設鋼床版の疲労損傷を回避するため,高機能性および経済性に優れた高靭性繊維補強セメント複合材料ECC(Engineered Cementitious Composite.以下,ECCと略記)を用いた鋼床版上面増厚補強工法の開発と設計・施工法の確立を目的として,構造細目の立案と材料性能試験を含む各種要素試験および実物型試験体を用いた定点載荷疲労試験,輪荷重走行疲労試験等を各条件に基づいて行い,提案した設計・施工法の妥当性を検証したものである.本論文は,第1章から第7章で構成されている.各章の概要と得られた主な知見は以下である.
 第1章は序論であり,本研究の背景と目的および本論文の主要な参考資料になっている既往の研究成果について取りまとめている.
 第2章では,鋼床版の合成化に関して,新しく開発した合成構造とその構造を用いた補強方法を提案した.鋼床版は,同一構造ディテールの数の多さから,局部的な構造対応から鋼床版上の面的構造対応による対策工法が最も合理的で経済性に優れるため,その要求性能に対応できる上面増厚補強材料としてECCを選定し,ECCと鋼床版とを一体化させる高強度繊維強化プラスチック製のプレートジベル(以下PLジベルと略記)を考案し,これらを用いた鋼床版の新しい補強工法を開発した.また,開発した新工法による舗装に対する評価を行った.
 第3章では,新工法に用いる上面増厚補強材料としてのECCとECCのずれ止め用に用いるPLジベルおよび鋼床版の腐食防止用として用いる防水工についての基礎的性能照査に関する検討を行った.ECCは,一軸引張応力下において鋼材と同様の擬似ひずみ硬化性挙動を示す材料であり,その優れた伸び性能と繰返し荷重に対する高いひび割れ幅抑制機能により,鋼床版の疲労損傷対策に用いる上面増厚材料として最も適した材料であることを評価した.また,PLジベルはECCと組合せて用いることにより,鋼床版とECCのずれ止め構造として必要なせん断抵抗性能および剥離抵抗性能を有していることを明らかにした.防水工には,樹脂系防水材の中では比較的強度が大きく,ひび割れ追従性があり,遮塩性,酸素遮断性に優れるポリウレアが適していることを検証した.
 第4章では,鋼床版の上面増厚補強材料としてのECCとの合成効果を検証するため,部分パネル試験,定点載荷疲労試験,輪荷重走行疲労試験および3次元非線形FEM解析を行い,PLジベルとECCのせん断伝達機構およびECC合成鋼床版構造による応力(ひずみ)低減効果について検討を行った.部分パネル試験,定点載荷疲労試験および輪荷重走行疲労試験の結果から,Uリブウェブ両側上や主桁直近傍上のように局所応力が作用する場合において,ECCのひび割れ分散性およびひび割れ幅抑制効果が確認された.既設鋼床版について,補強設計後の予定供用期間における大型車の想定走行回数が200万回以下であり,PLジベルに作用するせん断力が本論文における実験検討の範囲であれば,PLジベルを用いたECC合成鋼床版構造化によるひずみ(応力)低減効果を考慮した補強設計が可能であることを明らかにした.鋼床版のひずみ(応力)を解析的に評価する際には,要素分割に配慮した鋼床版とECCを一体化した3次元非線形FEM解析によるものとし,ECCの引張特性には初期ひび割れの引張降伏強度を上限とした完全弾塑性モデルを適用する.解析により得られた鋼床版のひずみ(応力)を輪荷重走行によるひずみ増加を見込んで割増し,予定設計期間における累積損傷ひずみ(応力)を照査して,補強効果の検討を行うことを提案した.
 第5章では,ECCの大規模製造方法および施工方法について検討し,実施工時の課題の抽出を行い,その解決方法について検討した.ECCは,材料の投入手順,練混ぜ時間を調整することによって市中のレディーミクストコンクリート工場の大型ミキサにて製造できることを確認した.ただし,より均一なECCを製造するためには,打設前に中型ミキサにて再攪拌する必要がある.運搬方法ではアジテート車のドラムの回転を停止することでECCのファイバーボールの発生を抑制できることを確認した.また,敷均しではフィニッシャーの改良によって円滑な敷均しと目標とする平坦性が確保された.
 第6章では,実橋のフィールド工事として,鋼床版の補強の必要性を照査し,施工計画と施工管理方法について検討を行い,補強前後の実橋において実車両を用いた載荷試験により補強効果を検証した.実橋梁に対する疲労耐久性照査では,輪荷重走行疲労試験と解析結果から現状の26年程度の耐久性に対しECC合成鋼床版とすることにより,100年以上相当の疲労耐久性が期待できることが明らかになった.また、適切な施工管理により,目視検査でのひび割れ発生は確認されなかった.しかし、供用後に発生した損傷について、調査と実験検証から水が大きく影響していることを確認し、その対策工法を立案し実施した.
 第7章は,本論文で明らかになったことを要約し本研究の総括として取りまとめた.最後に,今後の課題と展望を記した.

 本論文は「高機能性および経済性を有するECC合成鋼床版の開発に関する研究」と題し、7章より構成されている。
 第1章は序論であり、本研究の背景と目的および既往の研究成果について取りまとめている。近年、大型車交通量の増加や車両の大型化に伴い問題化している鋼床版の疲労損傷を回避するため、高機能性および経済性に優れた高靭性繊維補強セメント複合材料ECC(Engineered Cementitious Composite)を用いた鋼床版上面増厚補強工法の開発と設計・施工法の確立を目的としていることを述べている。
 第2章では、合成鋼床版の新技術の開発について述べている。上面増厚補強材料としてECCと、ECCと鋼床版とを一体化させる高強度繊維強化プラスチック製のプレートジベルを用いた鋼床版の新しい補強工法を提案している。また、開発した新工法の経済性と適用の概念について整理している。
 第3章では、合成鋼床版に用いる材料と要求性能について述べている。新工法に用いるECCとECCのずれ止め用に用いるプレートジベルおよび鋼床版の腐食防止用として用いる防水工についての基礎的性能の検討を行っている。
 第4章では、ECC合成鋼床版の合成効果の検証について述べている。鋼床版とECCとの合成効果を検証するため、部分パネル試験、定点載荷試験、輪荷重走行試験および3次元非線形FEM解析を行い、プレートジベルとECCのせん断伝達機構およびECC合成鋼床版構造による応力低減効果について検討を行っている。解析により得られた鋼床版の応力を輪荷重走行による増加を見込んで割増し、予定供用期間における疲労による累積損傷応力度を照査して、補強効果の検討を行うことを提案している。
 第5章では、ECC合成鋼床版の施工方法の検討について述べている。実施工時の課題の抽出を行い、その解決方法について検討している。材料の投入手順、練混ぜ時間を調整することによって市中のレディーミクストコンクリート工場の大型ミキサにてECCを製造できることを確認している。
 第6章では、実橋への適用と補強効果の検証について述べている。実験と解析結果により現状の26年程度の耐久性に対しECC合成鋼床版とすることで100年以上相当の疲労耐久性が期待できることを明らかにしている。実橋梁に適用後に発生したひび割れについて、現地調査と実験検証から水が大きく影響していることを明らかにし、その対策工法を立案し、実施したことを述べている。
 第7章は結論であり、本論文で明らかになったことを要約し本研究の総括として取りまとめ、今後の課題と展望を記している。
 よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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