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Development of Li2O-Al2O3-SiO2 Glass-Ceramic with Drawing Formability and Application to Fiber-Optic Devices (延伸成形可能なLi2O-Al2O3-SiO2結晶化ガラスの開発と光通信デバイスへの応用)

氏名 坂本 明彦
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第259号
学位授与の日付 平成18年12月6日
学位論文題目 Development of Li2O-Al2O3-SiO2 Glass-Ceramic with Drowing Formability and Application to Fiber-Optic Devices
論文審査委員
 主査 教授 小松 高行
 副査 教授 松下 和正
 副査 教授 植松 敬三
 副査 教授 野坂 芳雄
 副査 助教授 内田 希
 副査 東北大学大学院 工学研究科教授 藤原 巧

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Contents

General Introduction p.1

1 Precision Drawing of Li2O-Al2O3-SiO2 Glass-Ceramic Using Crystallized Preform p.11
 1.1 Material Design and Drawing of Crystallized Preform p.11
 1.1.1 Introduction p.11
 1.1.2 Experimental Procedure p.12
 1.1.3 Results and Discussion p.14
 1.1.4 Conclusion p.25
 1.2 Material Properties and Durability of Glass-Ceramic Capillary Formed by Perform Drawing p.26
 1.2.1 Introduction p.26
 1.2.2 Experimental Procedure p.26
 1.2.3 Results and Discussion p.28
 1.2.4 Conclusion p.31

2 Volume Changes of Li2O-Al2O3-SiO2 Glass-Ceramics due to Structural Relaxation p.33
 2.1 Introduction p.33
 2.2 Experimental Procedure p.34
 2.3 Results and Discussion p.38
 2.3.1 Structural Relaxation in β-quartz s.s Glass-Ceramic p.38
 2.3.1 Structural Relaxation in β-spodumene s.s Glass-Ceramic p.41
 2.4 Conclusion p.51

3 Optical Property of Li2O-Al2O3-SiO2 Glass-Ceramics and Performance of Fiber-Optic Devices with Glass Ceramic Ferrule p.54
 3.1 Refractive Index of Crystalline Phase and Optical Scattering in glass-Ceramic Capillary p.54
 3.1.1 Introduction p.54
 3.1.2 Experimental Procedure p.56
 3.1.3 Results and Discussion p.57
 3.1.4 Conclusion p.70
 3.2 Performance of Optical Fiber Connector and Optical Attenuator with Glass-Ceramic Ferrule p.71
 3.2.1 Introduction p.71
 3.2.2 Experimental Procedure p.71
 3.2.3 Results and Discussion p.74
 3.2.4 Conclusion p.83

4 Development of Optical Fiber-Stub Jacketed with Glass-Ceramic p.86
 4.1 Mechanical and Optical Properties of Optical Fiber-Stub with Glass-Ceramic Jacket p.86
 4.1.1 Introduction p.86
 4.1.2 Experimental Procedure p.88
 4.1.3 Results and Discussion p.91
 4.1.4 Conclusion p.101
 4.2 Durability of Glass-Ceramic Jacketed Optical Fiber-Stub p.101
 4.2.1 Introduction p.101
 4.2.2 Experimental Procedure p.102
 4.2.3 Results and Discussion p.103
 4.2.4 Conclusion p.107

5 Fiber Fabry-Perot Interferometer with Precision Glass-Ceramic Jacketing p.109
 5.1 Introduction p.109
 5.2 Experimental Procedure p.110
 5.3 Results and Discussion p.113
 5.4 Conclusion p.120

Summary p.122

Lists of Publications and Award p.128

Acknowledgements p.132

 光ファイバや非球面レンズに代表される精密ガラス部材は、延伸法やリプレス法などプリフォームを再加熱して成形する間接成形法によって製造される。近年のガラス間接成形技術の進歩により、これらの精密ガラス部材は情報通信社会を支える主要部材の一つとなっている。一方、結晶化ガラスはガラスとセラミックスの特性を併せ持つユニークな機能材料として開発され、各種産業分野で広く用いられている。しかし、結晶化ガラス素材は再加熱によって結晶を析出するため間接成形を行うことができず、従来、結晶化ガラスの精密成形は困難と考えられてきた。本研究は、間接成形法による精密結晶化ガラス部材の作製とその応用を目的に実施したものであり、光ファイバと同様な延伸法によって成形可能な結晶化ガラス材料を開発し、高性能光通信デバイスの実現に寄与しようとするものである。
 著者は、結晶化ガラスの延伸を行うため、予め結晶化させたプリフォームを用いる新たな延伸成形法を考案した。これは結晶化によってプリフォームを熱力学的に安定化させるとともに、飽和結晶化度を低下させて安定なガラス相を残存させることにより再加熱時の結晶化を抑制しつつ延伸を行う方法である。プリフォーム材質には低熱膨張で耐久性の高いLi2O-Al2O3-SiO2(LAS)系結晶化ガラスを用い、結晶構成成分の低減と異種結晶析出を抑制する成分の添加によって、約50質量%のβ-スポジュメン固溶体と残存ガラス相(50質量%)から成る結晶化プリフォームを得た。延伸成形では、延伸によってプリフォームの比表面積が大幅に増加するため、たとえプリフォームが結晶化していてもその熱的安定性が不十分であると延伸による表面エネルギーの増加に伴って新たに表面結晶化が誘発される。著者は、結晶化した試料を粉砕して示差熱分析を行うことで比表面積の増加に伴う表面結晶化傾向を評価し、その結果をもとにプリフォーム組成の最適化を行った。得られた結晶化プリフォームは良好な延伸成形性を示し、外径1.25mm、内径0.125mm、内外径精度がサブミクロンオーダーである高精度なβ-スポジュメン結晶化ガラス毛細管を得ることに成功した。
 延伸成形されたガラス部材は高温構造が凍結された状態、すなわち仮想温度が高い状態にあり、使用中の構造緩和によって寸法が変化する可能性があるが、従来、結晶化ガラスの構造緩和に関する研究は殆ど例が無い。著者はLAS 系結晶化ガラスにおける構造緩和現象を調査し、非晶質ガラスにおける構造緩和との類似点および相違点を明らかにした。さらに緩和関数を用いて結晶化ガラスの寸法変化予測を行い、本結晶化ガラス毛細管の使用温度と寸法変化の関係を明らかにした。
 結晶化ガラス毛細管を高効率で延伸成形するためには、光学的方法によって毛細管の内部形状をオンラインで計測することが望まれる。本材料は可視域では白色不透明であるが赤外域では光透過性を有する。著者は仮想温度の異なる本結晶化ガラスの赤外透過率、屈折率および密度から結晶化ガラス中の結晶相とガラス相の屈折率を求める方法を提案し、本結晶化ガラス毛細管における光散乱挙動が、光軸以外の方向では散乱強度が小さいRayleigh-Gans モデルで近似可能なことを示した。これを基に、赤外レーザーを毛細管に照射した場合の光軸上の透過光によって毛細管の内部形状を投影し内外径および偏心をオンラインで計測する技術を確立した。
 本結晶化ガラス毛細管の光通信デバイスへの応用を図るに当たり、結晶化ガラス毛細管を用いて光コネクター用フェルールを作製し、これを搭載した光コネクターおよび光減衰器の特性を評価した。本光コネクターは既存のセラミックやプラスチックフェルールを用いたものに比べ光接続損失が約1/2と小さく、かつ、結晶化ガラスフェルールはセラミックフェルールより優れた化学耐久性および同等の耐摩耗性を有することが確認された。光減衰器においては、結晶化ガラスフェルールの屈折率が光ファイバクラッドのそれに近いためクラッド伝播光のフェルール界面での反射率が小さく、コア伝播光との不要な干渉が抑制されることを示した。
 結晶化ガラスの延伸技術の発展的応用として、結晶化ガラスによるシリカガラス光ファイバの被覆法を開発した。結晶化プリフォームの内孔に光ファイバを挿入しつつプリフォームを延伸することにより、光導波特性を変化させることなく光ファイバを結晶化ガラスで被覆することができる。被覆された光ファイバは光コネクターフェルールとの接続互換性を有し、接着剤を用いない高耐久性光導波部品として光デバイスの受発光部と線路の光学結合に用いることができる。また、本導波部品の両端面に反射膜を形成することによってファイバ・ファブリ・ペロ共振器が作製可能である。この共振器は構造の軸対象性が高いため光ファイバに発生する複屈折が小さく、透過ピークに分裂の無い狭帯域な透過型光フィルタや温度センサとしての応用が可能なことを示した。
 本研究によって結晶化ガラスの精密延伸成形が可能となり、結晶化ガラスの成形法に新たな展開がもたらされた。また、本研究で明らかにされた、結晶化ガラスにおける構造緩和減少、結晶相およびガラス相の屈折率評価に関する成果は、結晶化ガラス材料の更なる理解に資するものと期待される。

本論文は、「Development of Li2O-Al2O3-SiO2 Glass-Ceramic with Drawing Formability and Application to Fiber-Optic Devices」(延伸成形可能なLi2O-Al2O3-SiO2結晶化ガラスの開発と光通信デバイスへの応用)と題し、5章より構成されている。
 General Introductionでは、結晶化ガラスの歴史的経緯とその特徴を明らかにすると共に、高性能光通信デバイスへの結晶化ガラスの応用に際しての利点や問題点を指摘し、本研究の目的と意義を述べている。
 第1章「Precision Drawing of Li2O-Al2O3-SiO2 Glass-Ceramic Using Crystallized Preform」では、予め結晶化させたプリフォームを用いる新たな結晶化ガラスの延伸成形法を考案し、低熱膨張のLi2O-Al2O3-SiO2(LAS)系結晶化ガラスを用いて、内外径精度がサブミクロンオーダーである高精度なβ-スポジュメン結晶化ガラス毛細管を得ることに成功した。
 第2章「Volume Changes of Li2O-Al2O3-SiO2 Glass-Ceramics due to Structural Relaxation」では、LAS系結晶化ガラスにおける構造緩和現象を世界で初めて調査し、その特徴を明らかにすると共に、本結晶化ガラス毛細管の使用温度と寸法変化の関係を明らかにした。
 第3章「Optical Property of Li2O-Al2O3-SiO2 Glass-Ceramics and Performance of Fiber-Optic Devices with Glass-Ceramic Ferrule」では、結晶化ガラスの透過率、屈折率および密度から結晶化ガラス中の結晶相とガラス相の屈折率を求める方法を考案し、これを基に本結晶化ガラス毛細管における光散乱挙動が、Rayleigh-Gans モデルに近いことを示した。さらに、毛細管の内外径および偏心をオンラインで計測する技術を確立した。
 第4章「Development of Optical Fiber-Stub Jacketed with Glass-Ceramic」では、開発したLAS系結晶化ガラスを用いて光コネクター用フェルールを試作し、既存のセラミックやプラスチックフェルールを用いたものに比べ光ファイバーとの接続損失が約1/2と小さく、かつ、優れた化学耐久性や耐摩耗性を有することが明らかにした。
 第5章「Fiber Fabry-Perot Interferometer with Precision Glass-Ceramic Jacketing」では、結晶化ガラスによる光ファイバの被覆法を開発し、軸対象性が高いファイバ・ファブリ・ペロ共振器を作製し、狭帯域な透過型光フィルタや温度センサとしての応用が可能なことを示した。
 Summaryでは、各章の結論を総括している。
 本論文は以上のように、光ファイバーと同様な延伸法によって成形可能な結晶化ガラス材料を開発し、高性能光通信デバイスの実現に寄与している。よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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