Study of Ultraviolet Emissive Oxide Fabricated by Coupling of Ceramics(セラミックスのカップリング法により作製した紫外発光酸化物に関する研究)
氏名 鈴木 健一
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第406号
学位授与の日付 平成19年3月26日
学位論文題目 Study of Ultraviolet Emissive Oxide Fabricated by Coupling of Ceramics(セラミックスのカップリング法により作製した紫外発光酸化物に関する研究)
論文審査委員
主査 教授 高田 雅介
副査 教授 植松 敬三
副査 教授 小松 高行
副査 助教授 安井 寛治
副査 助教授 岡元智一郎
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TABLE OF CONTENTS p.i
List of publication and meetings p.v
List of figures p.xiv
Acknowledgements p.xix
Chapter 1 General Introduction p.1
1-1 Overview p.1
1-2 Literature survey p.3
1-2-1 Beta-gallium-oxide p.3
1-2-2 Electric current heating method p.8
1-2-3 Solid solutions and spinel structure material as phosphor p.9
1-2-4 Coupling method p.11
1-3 Statement of problem p.13
1-4 Objective of this study p.13
1-5 Outlines of this thesis p.14
Reference p.15
Chapter 2 Crystal Growth of β-Ga2O3 by Electric Current Heating Method p.19
2-1 Introduction p.20
2-2 Experimental p.21
2-2-1 Sample preparation p.21
2-2-2 Evaluation of sample p.21
2-3 Results and discussion p.23
2-4 Summary p.34
Reference p.35
Chapter 3 Effect of Growth Temperature on the Cathodoluminescence of β-Ga2O3 Crystals Grown by Electric Current Heating Method p.38
3-1 Introduction p.39
3-2 Experimental p.40
3-2-1 Sample preparation p.40
3-2-2 Evaluation of sample p.40
3-3 Results and discussion p.41
3-4 Summary p.45
Reference p.46
Chapter 4 Deep Ultraviolet Emission of Al-Containingβ-Ga2O3 Crystals Grown by Electric Current Heating Method p.49
4-1 Introduction p.50
4-2 Experimental p.51
4-2-1 Sample preparation p.51
4-2-2 Evaluation of sample p.52
4-3 Results and discussion p.53
4-4 Summary p.60
Reference p.61
Chapter 5 Deep Ultraviolet Emissive Material Fabricated by Coupling of β-Ga2O3 and α-Al2O3 p.64
5-1 Introduction p.65
5-2 Experimental p.66
5-2-1 Sample preparation p.66
5-2-2 Evaluation of sample p.66
5-3 Results and discussion p.69
5-4 Summary p.74
Reference p.75
Chapter 6 Cathodoluminescence of Diffusion Layer Synthesized by Coupling of β-Ga2O3 and ZnO p.77
6-1 Introduction p.78
6-2 Experimental p.79
6-2-1 Sample preparation p.79
6-2-2 Evaluation of sample p.80
6-3 Results and discussion p.83
6-4 Summary p.95
Reference p.96
Chapter 7 Cathodoluminescence of Diffusion Layer Synthesized by Coupling of ZnO and α-Al2O3 p.99
7-1 Introduction p.100
7-2 Experimental p.101
7-2-1 Sample preparation p.101
7-2-2 Evaluation of sample p.102
7-3 Results and discussion p.103
7-4 Summary p.110
Reference p.111
Chapter 8 Cathodoluminescence and Optical Properties of ZnAl2O4 p.113
8-1 Introduction p.114
8-2 Experimental p.115
8-2-1 Sample preparation p.115
8-2-2 Evaluation of sample p.115
8-3 Results and discussion p.116
8-4 Summary p.124
Reference p.125
Chapter 9 General Conclusion p.127
光記録媒体の登場以降、その記憶容量は加速度的に増加してきた。近い将来、現在よりも更に容量の大きい光記録媒体への要求が高まることは容易に予測することができる。光記録において光源の波長は記録密度を決定する重要な要素の一つであるため、より短波長で発光する新規光機能材料の開発に大きな期待が寄せられている。酸化ガリウム(β-Ga2O3)は4.8 eVのバンドギャップを有し、深紫外発光材料や高透過率材料として注目されている。しかし、可視領域での発光は報告されているものの、バンド端に起因する深紫外発光の報告はない。本研究では、酸化亜鉛(ZnO)において良好な紫外発光特性を示す結晶が得られた実績のある通電加熱法を用いてβ-Ga2O3結晶の作製を試みた。その結果、これまでに報告例のない紫外発光を示β-Ga2O3結晶の作製に成功した。一方、多種類の元素からなる複合酸化物は多くの組成を取りうることから、新規の発光特性を示す材料を見出せる可能性がある。しかしながら、複合酸化物はその組成の複雑さから従来の方法では効果的な材料探索が困難であった。そこで、筆者はセラミックスのカップリングにより作製した拡散層をエネルギー分散型X線分光法(EDS)とカソードルミネッセンス(CL)によって同時に評価する手法を提唱し、酸化ガリウム・酸化アルミニウム・酸化亜鉛に適用することによって、これまでに報告例のない新規の紫外・深紫外発光を示す材料を見出した。
本論文は「Study of Ultraviolet Emissive Oxide Fabricated by Coupling of Ceramics (セラミックスのカップリング法により作製した紫外発光酸化物に関する研究)」と題し、以下の9章より構成されている。
第1章「General Introduction」では、深紫外発光材料として期待されるβ-Ga2O3をはじめとした種々のワイドバンドギャップ酸化物材料における最近の研究動向、および本研究の背景について説明し、最後に本論文の目的と構成を述べた。
第2章「Crystal Growth ofβ-Ga2O3 by Electric Current Heating Method」では、結晶成長手法の一つであり、酸化亜鉛(ZnO)において良好な紫外発光特性を示す結晶が得られる通電加熱法を用いてβ-Ga2O3の結晶成長を試みた。大気圧下においてβ-Ga2O3結晶は成長しなかったものの、減圧雰囲気下において β-Ga2O3結晶成長に成功した。得られた結晶から、これまでに報告されているβ-Ga2O3の青色発光(2.9 eV)よりも高エネルギーの紫外発光(3.5 eV)をカソードルミネッセンス(CL)にて観測した。
第3章「Effect of Growth Temperature on the Cathodoluminescence ofβ-Ga2O3 Crystals Grown by Electric Current Heating Method」では、第2章で得られた知見を元に、良好な紫外発光特性を示すβ-Ga2O3結晶の成長を目的とし、種々の雰囲気温度の下において通電加熱法によるβ-Ga2O3結晶の作製を試みた。得られたβ-Ga2O3結晶から青色(2.9 eV)と紫外(3.5 eV)に2つの明確な発光を観測した。さらに、青色発光に対する紫外発光の割合は400oCの雰囲気温度で成長したβ-Ga2O3結晶において最も大きくなるという結果を得た。
第4章「Deep Ultraviolet Emission of Al-Containingβ-Ga2O3 Crystals Grown by Electric Current Heating Method」では、通電加熱法によるβ-Ga2O3の結晶成長において、ごく稀に成長する高エネルギー(3.7 eV)の紫外発光を示す結晶についてβ-Ga2O3中に含まれる不純物の観点から調査した。EDSによる分析の結果からβ-Ga2O3中に含まれるアルミニウム(Al)が高エネルギーの紫外発光に深く関与していることを明らかにした。
第5章「Deep Ultraviolet Emissive Material Fabricated by Coupling ofβ-Ga2O3 and α-Al2O3」では、第4章で得られた知見を元にβ-Ga2O3中のAlがCLにおよぼす影響について調査した。効果的な調査のために、拡散に関する研究の一手法であるカップリング法にEDSとCLを組み合わせた材料探索手法を提唱し、適用したβ-Ga2O3とα-Al2O3のカップリングによって組成が連続的に変化する傾斜組成層が生成し、CLによる発光特性も組成の変化に応じて2.9 eVから4.6 eVまで連続的に変化するという結果を得た。この結果から、β-Ga2O3とα-Al2O3の固溶体が新規の紫外・深紫外発光材料として有望であることを示した。
第6章「Cathodoluminescence of Diffusion Layer Synthesized by Coupling ofβ-Ga2O3 and ZnO」では、第5章で得られた知見を元に、セラミックスのカップリングにEDSとCLを組み合わせた手法をβ-Ga2O3とZnOに適用することにより、紫外発光を示すZnGa2O4の作製を試みた。得られたZnGa2O4から、これまでに報告例のない単色性の高い紫外発光(3.5 eV)を観測した。一方、比較のために通常の固相反応法によって作製したZnGa2O4からは青色~紫外に分布を持つブロードな発光を観測するにとどまった。この結果から、カップリングによる材料の合成が優れた紫外発光特性を示す材料を作製するための一手法となりうることを示した。
第7章「Cathodoluminescence of Diffusion Layer Synthesized by Coupling of ZnO and α-Al2O3」では、第5章および第6章で得られた知見を元に、ZnOとα-Al2O3のカップリングによって、紫外発光を示すZnAl2O4の作製を試みた。得られたZnAl2O4の発光特性から、これまでに報告されているZnAl2O4のバンドギャップとほぼ等しいエネルギーを有する強度の大きい紫外発光(3.75 eV)を観測した。一方、比較のために通常の固相反応法によって作製したZnAl2O4からは強度が小さいもののエネルギーの高い深紫外発光(4.6 eV)を観測した。
第8章「Cathodoluminescence and Optical Properties of ZnAl2O4」では、第7章で得られた知見に加えて、光学特性の評価をおこない、ZnAl2O4のバンドギャップエネルギーを見積もった。ZnAl2O4の透過率測定から、これまでに報告されている波長(326 nm)よりも短い270 nm近傍に吸収端が存在することを明らかとした。さらにZnAl2O4の反射率測定によって得た結果から、ZnAl2O4のバンドギャップエネルギーが6.2 eVもしくはそれ以上であることを示した。
第9章「General Conclusions」では、以上の各章から得られた研究成果を要約し、本論文の結論とした。
本論文は「Study of Ultraviolet Emissive Oxide Fabricated by Coupling of Ceramics (セラミックスのカップリング法により作製した紫外発光酸化物に関する研究)」と題し、以下の9章より構成されている。
第1章「General Introduction」には、深紫外発光材料として期待されるβ-Ga2O3をはじめとした種々のワイドバンドギャップ酸化物材料における最近の研究動向、および本研究の背景について説明がされており、最後に本論文の目的と構成が述べられている。
第2章「Crystal Growth of β-Ga2O3 by Electric Current Heating Method」には、減圧雰囲気下におけるβ-Ga2O3セラミックスの通電加熱によってβ-Ga2O3結晶の作製に成功し、得られた結晶のカソードルミネッセンス(CL)がこれまでに報告されているβ-Ga2O3の青色発光(2.9 eV)よりも高エネルギーの紫外発光(3.5 eV)を示したことが述べられている。
第3章「Effect of Growth Temperature on the Cathodoluminescence of β-Ga2O3 Crystals Grown by Electric Current Heating Method」には、種々の雰囲気温度の下における通電加熱によって作製されたβ-Ga2O3結晶の発光特性が述べられており、400oCの雰囲気温度で成長した β-Ga2O3結晶において最も良好な紫外発光特性を示す β-Ga2O3結晶が成長可能であることが述べられている。
第4章「Deep Ultraviolet Emission of Al-Containing β-Ga2O3Crystals Grown by Electric Current Heating Method」には、通電加熱法による β-Ga2O3の結晶成長において、ごく稀に成長する高エネルギー(3.7 eV)の紫外発光を示す結晶について調査した結果が述べられており、β-Ga2O3結晶中に含まれるアルミニウムが高エネルギーの紫外発光に深く関与していることが明らかにされている。
第5章「Deep Ultraviolet Emissive Material Fabricated by Coupling of β-Ga2O3 and α-Al2O3」には、カップリング法にEDSとCLを組み合わせた効率的な新規材料探索手法が提唱されており、β-Ga2O3とα-Al2O3のカップリングによって生成する、傾斜組成を有する固溶体が、2.9~4.6 eVまでの任意の発光を示す、新規の紫外・深紫外発光材料となりうることが述べられている。
第6章「Cathodoluminescence of Diffusion Layer Synthesized by Coupling of β-Ga2O3 and ZnO」には、β-Ga2O3とZnOのカップリングによって作製したZnGa2O4が、これまでに報告例のない単色性の高い紫外発光(3.5 eV)を示したことが述べられており、カップリングによる材料合成が優れた紫外発光特性を示す材料を作製するための一手法となりうることが示唆されている。
第7章「Cathodoluminescence of Diffusion Layer Synthesized by Coupling of ZnO and α-Al2O3」には、ZnOとα-Al2O3のカップリングによって作製したZnAl2O4が、これまでに報告されているZnAl2O4のバンドギャップと同等の紫外発光(3.75 eV)を示し、通常の固相反応法によって作製したZnAl2O4が更にエネルギーの高い深紫外発光(4.6 eV)を示したことが述べられている。
第8章「Cathodoluminescence and Optical Properties of ZnAl2O4」には、高純度の原料を用いて作製されたZnAl2O4の光透過率および反射率を評価した結果が述べられており、そこから見積もられたZnAl2O4のバンドギャップエネルギーが提唱されている。
第9章「General Conclusions」では、以上の各章から得られた研究成果を要約している。
よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。