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メタン直接燃料電池におけるアノード酸化反応の促進

氏名 小笠 和仁
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第427号
学位授与の日付 平成19年3月26日
学位論文題目 メタン直接燃料電池におけるアノード酸化反応の促進
論文審査委員
 主査 教授 佐藤 一則
 副査 教授 松下 和正
 副査 教授 梅田 実
 副査 助教授 松原 浩
 副査 助教授 斉藤 信雄

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1章 序論 p.4
 1-1. 背景 p.4
 1-2. 従来の研究 p.4
 1-3. 本研究の目的 p.6
 参考文献 p.7
2章 Ni-Co-O複合粒子によるアノード酸化活性の基礎的検討 p.9
 2-1. はじめに p.9
 2-2. 実験方法 p.10
 2-2-1. 試料作製 p.10
 2-2-2. 電極の形成 p.12
 2-2-3. 作製電極試料の結晶相同定と組織観察 p.14
 2-2-4. 原理 p.14
 2-3. 実験結果 p.18
 2-3-1. X線回折による生成相同定 p.18
 2-3-2. 走査顕微鏡による電極形態観察 p.19
 2-3-3. 端子電圧・電流と燃料ガス流量および濃度の関係 p.20
 2-3-4. 多孔質白金電極にNi0.5Co0.5O粒子を分散添加した効果 p.24
 2-4. 考察 p.35
 2-4-1. 結果の評価 p.35
 2-4-2. Ni-Co-O複合粒子のメタンアノード酸化反応活性化機構 p.37
 2-5. 小活 p.39
 参考文献 p.40
3章 Ni-YSZのCo置換によるアノード過電圧抑制 p.41
 3-1. はじめに p.41
 3-2. 実験方法 p.41
 3-2-1. 電極材料作製 p.42
 3-2-2. セル作製 p.44
 3-2-3. セル配置とシステム構成 p.46
 3-2-4. 電気化学測定 p.48
 3-2-5. 反応ガス分析 p.51
 3-2-6. ガス流通による資料への炭素析出量測定 p.52
 3-3. 実験結果 p.53
 3-3-1. 作製材料分析 p.53
 3-3-2. 放電特性比較 p.56
 3-3-3. Co添加比率の影響確認 p.60
 3-3-4. アノード過電圧とOCVの温度依存性比較 p.61
 3-3-5. 燃料極反応過電圧とOCVの水蒸気分圧依存性比較 p.67
 3-3-6. YSZサーメット電極でのNi0.5Co0.5O粒子メタンアノード酸化評価 p.72
 3-3-7. CO燃料の発電特性比較 p.81
 3-3-8. CH4分解反応活性比較 p.85
 3-4. 考察 p.86
 3-4-1. Co添加によるメタン燃料反応過電圧抑制機構 p.86
 3-5. 小活 p.88
 参考文献 p.89
4章 メタンへの二酸化炭素添加による炭素析出抑制 p.91
 4-1. はじめに p.91
 4-1-1. 研究目的 p.91
 4-1-2. 二酸化炭素混合燃料の供給減 p.92
 4-1-3. メタンの二酸化炭素改質と水蒸気改質の比較 p.92
 4-1-4. C-H-O平衡計算による炭素析出域の把握 p.95
 4-2. 実験方法 p.96
 4-2-1. 燃料極材料の準備 p.96
 4-2-2. 燃料電池発電評価 p.96
 4-2-3. メタン熱分解による炭素析出確認方法(流通系) p.99
 4-3. 実験結果 p.102
 4-3-1. CO2/CH4系起電力測定 p.102
 4-3-2. 放電時における端子電圧経時変化と運転後形状観察 p.103
 4-3-3. CO2/CH4系炭素析出条件の確認 p.108
 4-4. 考察 p.110
 4-4-1. 電極上での酸素析出と電圧出力の関係 p.110
 4-4-2. CO2/CH4系の起電力 p.111
 4-4-3. CO2/CH4系での炭素析出反応 p.112
 4-5. 小活 p.114
 参考文献 p.115
5章 総括 p.116

 高温固体酸化物燃料電子(SOFC)は小規模分散型電源として都市ビルや個別・集合住宅への利用可能性が大である。将来的には現在のリン酸型燃料電池に替わる次世代燃料電池として期待されている。さらには、燃料電池自動車やマイクロ燃料電池への開発基礎研究も行われている。しかしながら、実用的には開発途上段階であり、構成材料、システム設計、および製造法などにおける技術的課題解決のために活発な開発研究が要求されている。
 本研究では、SOFCにおけるエネルギー変換効率を高めるために、メタンの直接使用が可能なSOFC開発を目指した。このためには、従来よりも低温領域において高い酸化物イオン導電率を示す電解質、およびメタンに対する電気化学的酸化反応を活性化させる新たな燃料極材料が必要である。このために、メタンに対する電気化学的酸化反応を活性化させる新たな燃料極材料として、固溶型金属粒子と安定化ジルコニア電解質(YSZ)から構成されるNi1-XCoX/YSZサーメットに着目した。本研究では、YSZ電解質とNi1-XCoX/YSZサーメット燃料極を用いて構成した基本セルについて、メタン直接酸化に対するNi1-XCoX/YSZサーメット燃料極の活性化効果および、その反応活性化機構について検討した。その結果、Ni基サーメット燃料極に対するNi-Co固溶合金複合化は、燃料極と電解質の界面抵抗および燃料極のオーミック抵抗を低減することを見いだし、メタンに対する部分酸化能力は燃料極における金属粒子と電解質の接合状態に依存するものと考察した。さらに、二酸化炭素によるメタン改質反応に対する基礎的検討を行ない、炭素析出を抑制しながら燃料電池特性の向上がNi1-XCoX/YSZサーメット燃料極によって期待できることを示した。
 第1章では、序論として本研究の背景と目的を述べた。第2章では、多孔質白金電極を基質としたモデル型燃料極を用いて、Ni0.5Co0.5O粒子の存在がメタンに対して高い放電特性をもたらすことを示し、アノード酸化反応活性化の基本的な検討因子を明らかにした。第3章では、メタン直接燃料電池のサーメット燃料極において、Niに対するCoの固溶効果とその活性化機構について検討した。Niに対してCoの比率を変えたNiXCo1-X/YSZの放電特性評価の結果、X=0.5が最適であり、固溶によりNi単体、Co単体より高いメタン酸化活性を得る事が可能であることを明らかにした。反応生成ガスである水蒸気を外部供給し、開回路電圧、アノード過電圧、および生成ガス組成について評価を行なった。その結果、Coを固溶することでメタンの水蒸気改質能が向上していることを確認した。第4章では、メタン直接燃料電池において問題となる燃料極への炭素析出を抑制するために二酸化炭素(CO2)の添加効果について検討を行なった。流通法による測定結果から、CO2混入により炭素析出抑制が可能な定量的検討を行ない、熱力学的平衡における計算結果との対応性を明らかにした。この過程で、メタン熱分解による炭素析出は比較的遅く、CO2によるメタンからの水素引き抜き反応による炭素析出が発生することを示した。第5章では、本研究で得た結果について総括を述べた。
 以上のように本論文では、燃料極サーメット中の金属と酸化物電解質が接している界面における固溶合金粒子の存在がSOFCの発電効率向上に寄与することを明らかにし、メタンに対するアノード酸化反応活性化をもたらすメカニズムについて知見と述べている。

 本論文は「メタン直接燃料電池におけるアノード酸化反応の促進」と題し、5章より構成されている。
 第1章では、天然ガス等の主成分であるメタンを直接に使用可能な固体酸化物燃料電池(SOFC)の開発を目的として、メタンのアノード酸化反応に対して高い酸化活性をもたらす燃料極物質の探索、最適電極構造、およびメタン直接酸化における電極反応機構解明の重要性をそれぞれ指摘し、本研究の背景と目的を述べている。
 第2章では、多孔質白金の電極基質に対して、金属酸化物粒子としてNiO粒子あるいはNi0.5Co0.5O粒子をそれぞれ少量混合し、多孔白金電極に対する電極性能変化を述べている。多孔質白金電極に3 mass%のNi0.5Co0.5O粒子を分散添加した電極は、多孔質白金電極単独および多孔質白金電極に3 mass%NiOを添加したものに比べ、メタンに対して高い放電特性を示すことを見いだしている。Ni0.5Co0.5O粒子に対する還元と酸化が発生電圧および水素生性能に変化を与えることを示し、メタンのアノード酸化反応に対してNi0.5Co0.5O酸化物の存在が鍵となることを見い出している。
 第3章では、メタン直接燃料電池のサーメット燃料極において、Niに対するCoの固溶効果とその活性化機構について検討した結果を述べている。Niに対してCoの比率を変えたNiXCo1-X/YSZの放電特性浄化の結果、X=0.5が最適であり、固溶によりNi単体、Co単体より高いメタン直接発電性能を得る事が可能であることを明らかにしている。反応生成ガスである水蒸気を外部供給し、開回路電圧、アノード過電圧、および生成ガス組成について評価を行なった結果、Coを固溶することでメタンの水蒸気改質能の向上が得られることを示している。
 第4章では、メタン直接燃料電池において問題となる燃料極への炭素析出を抑制するために二酸化炭素(CO2)の添加効果について検討を行なった結果を述べている。流通法による測定結果から、CO2混入により炭素析出抑制が可能な定量的検討を行ない、熱力学平衡における計算結果との対応性を明らかにしている。この過程で、メタン熱分解による炭素析出は比較的遅く、CO2によるメタンからの水素引き抜き反応による炭素析出が発生することを示している。
 第5章では、本研究で得た結果について総括を述べている。
 以上のように本論文では、燃料極サーメット中の金属と酸化物電解質が接している界面における固溶合金粒子の存在がSOFCの発電効率向上に寄与することを明らかにし、メタンに対するアノード酸化反応活性化をもたらすメカニズムについて有用な知見を与えている。よって、本論文は、工学上および工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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