本文ここから

ポーラスアスファルト舗装の機能評価と機能維持に関する研究

氏名 増山 幸衛
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第255号
学位授与の日付 平成18年9月13日
学位論文題目 ポーラスアスファルト舗装の機能評価と機能維持に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 助教授 宮木 康幸
 副査 助教授 高橋 修
 副査 助教授 下村 匠
 副査 日本大学 理工学部教授 岩井 茂雄

平成18(2006)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

第1章 序論 p.1
 1.1 研究の背景 p.1
 1.2 研究の目的 p.7
 1.2.1 既住の研究 p.7
 1.2.2 研究の目的 p.14
 1.3 本論文の構成 p.15
 第1章の参考文献 p.21

第2章 空隙づまりの状況の把握 p.27
 2.1 背景 p.27
 2.2 目的 p.27
 2.3 空隙づまりの堆積位置の把握 p.28
 2.3.1 評価方法に関する検討 p.28
 2.3.2 堆積位置に関する評価 p.31
 2.4 空隙づまりの堆積量の把握 p.36
 2.4.1 空隙つまり物の抽出方法 p.36
 2.4.2 堆積量に関する評価 p.40
 2.5 空隙づまりの進行状況 p.43
 2.6 機能維持作業の評価指標 p.45
 2.7 2章の結論 p.48
 第2章の参考文献 p.49

第3章 機能維持技術の開発 p.51
 3.1 背景 p.51
 3.2 目的 p.52
 3.3 機能維持手法の基礎検討 p.53
 3.3.1 予備検討および基礎実験 p.54
 3.3.2 機械構成の決定 p.57
 3.4 機能維持装置 p.61
 3.5 機能維持作業のつまり物除去効果の検証 p.69
 3.5.1 低速作業のつまり物除去効果 p.69
 3.5.2 作業方式の違いによる効果の比較 p.70
 3.3 3章の結論 p.73
 第3章の参考文献 p.73

第4章 排水機能の評価 p.75
 4.1 背景 p.75
 4.2 目的 p.76
 4.3 横方向排水機能の評価方法 p.77
 4.3.1 試験装置 p.77
 4.3.2 試験に用いる供試験寸法の決定 p.79
 4.3.3 横方向透水係数の評価 p.81
 4.4 縦方向透水係数の評価方法と横方向透水係数との関係 p.83
 4.4.1 縦方向透水係数の測定方法の確認 p.84
 4.4.2 横方向透水係数と縦方向透水係数との相関性 p.87
 4.5 浸透水量の評価方法と横方向透水係数の関係 p.88
 4.5.1 現場透水量試験の測定方法の確認 p.88
 4.5.2 横方向透水係数と浸透水量の相関性 p.96
 4.5.3 現場透水量試験の特徴と留意点 p.97
 4.6 現場試験による排水機能の評価 p.98
 4.6.1 実験方法 p.99
 4.6.2 試験結果と考察 p.101
 4.7 機能維持作業の効果の評価 p.103
 4.7.1 低速作業の効果の評価 p.103
 4.7.2 浸透水量の回復効果へ対する作業方式の比較 p.104
 4.8 4章の結論 p.106
 第4章の参考文献 p.108

第5章 テクスチャの評価 p.111
 5.1 背景 p.111
 5.2 目的 p.113
 5.3 測定装置と解析方法 p.113
 5.3.1 レーザセンサによるテクスチャ評価の可能性 p.114
 5.3.2 測定装置 p.116
 5.3.3 解析方法の概要 p.117
 5.4 テクスチャの画的評価 p.117
 5.4.1 テクスチャの不均一性 p.118
 5.4.2 画的評価の必要性 p.118
 5.4.3 データのサンプル数の検討 p.120
 5.5 評価方法の妥当性の確認 p.123
 5.5.1 基長およびサンプリング間隔の影響 p.124
 5.5.2 他の解析方法との相関性 p.126
 5.5.3 MPD(S)の検証 p.128
 5.6 5章の結論 p.132
 第5章の参考文献 p.133

第6章 機能維持方法の提案 p.137
 6.1 背景及び目的 p.137
 6.2 作業方法及び作業費用についての検討 p.137
 6.3 機能維持作業の評価方法 p.140
 6.4 6章の結論 p.145
 第6章の参考文献 p.146

第7章 結論 p.149

謝辞 p.155

資料-1 排水性舗装の空隙つまり物排出方法(案) p.157
資料-2 空隙つまり物質の除去技術に関する詳細検討 p.165
資料-3 ポーラスアスファルト混合物の横方向透水試験方法(案) p.179

 高い空隙率を有するポーラスな構造の舗装(以下,ポーラスアスファルト舗装)は,舗装体内部を通して排水する特性を有することから,雨天走行時の安全性向上を目的に1930年代,アメリカにおいて摩耗層であるOGFC(Open-Grade Friction Course)として開発された.その後1970年代に,ヨーロッパ諸国において現在のような50mm程度の厚さを有する舗装が開発され,現在にいたっている.我が国においては,1985年に騒音低減効果を目的として東京都が,雨天走行時の安全性向上を目的として建設省(現国土交通省)が施工を行っている.その後1995年国道43号における公害裁判を契機に,騒音低減効果を期待して,また長岡技術科学大学における高粘度改質アスファルトの開発とあいまって,その施工量は急激に増大してきた.さらに2003年特定都市河川浸水被害対策法の施行により,雨水の一時貯留としての機能が大きく注目されるようになっている.しかしながらポーラスアスファルト舗装は,供用とともに空隙が閉塞し機能が低下することから,機能維持が大きな課題となっているものの,まだ有効な対策が示されるには至っていない.
 本論文では,ポーラスアスファルト舗装の機能維持方法の提案を目的に,作業の対象となる空隙つまりの状況を把握した.またつまり物の除去を目的に,機能維持作業の可能性について研究を行った.さらにポーラスアスファルト舗装の透水機能について,空隙と表面テクスチャに着目した,機能維持作業前後の機能の評価方法を明確にし,その効果について研究を行った.
 その結果,つまり物は舗装面全体にほぼ同じ量が堆積していくものの,車輪走行部では下から,路肩部と車輪間部は上のほうから堆積していくことを明らかにし,機能回復作業の方法を決定する基礎データとした.ついで,つまり物の除去装置として機能維持機を開発し,現場検証を行った結果,つまり物の除去効果を示す事ができた.
 作業の評価方法として,排水機能については現場透水量試験が適用できるものの,測定者による誤差が測定結果に大きな影響を与えるため,改良型の試験器を製作し,高い精度で評価できることを明らかにした.テクスチャについては,舗装を面として評価することにより測定精度を高め,信頼性の高い評価を行えることを明らかにした.
 これらの結論として,つまり物の除去による機能維持作業方法を提案するとともに,その評価方法として,浸透水量とMPD(S)を選定した.
 本論文は,7章から構成されている.
 第1章では,本研究の背景について述べ,機能維持方法に関わる既往の研究をまとめ,研究の必要性を示すとともに,最終的研究テーマを明確にし,目的を示した.
 第2章では,空隙つまりの状況に関して,堆積位置を明確にすると同時に,その堆積量は供用後では路面全体に均一であることが確認できた.ただし堆積量は,機能維持作業を行う路線によって特徴を有しており,多い場合は1,000g/m2・年にも達する可能性が示された.また機能評価の対象として,排水機能と騒音値が必要であるものの,先達らが行っている研究の現状より,筆者の研究すべき対象として排水機能とテクスチャを選定した.
 第3章では,ポーラスアスファルト舗装の機能維持を行うための装置を開発し,空隙つまり物の除去技術に関する研究を行い,効果についての検証を行った.その結果1km/h以下の低速作業のみならず,10km/h程度の高速作業でも作業回数を増やすなどにより,つまり物を除去できる事が確認できた.
 第4章では,排水機能の評価に関して,ポーラスアスファルト舗装における水の流れを考慮した横方向透水係数による評価を行うべきとの考えから,横方向透水係数の測定方法を提示した.さらに従来用いられている室内定水位試験による縦方向透水係数と浸透水量の相関性についての検討を行った.その結果,相関性は高いものの,舗装が異なるとその比率は大きく異なる事から,同一のものとして評価できない事を示した.それらの結果から,排水性舗装は現場透水量試験による浸透水量として評価すべきであることを明確にした.さらに評価方法の妥当性として,機能維持作業の効果を浸透水量により評価可能である事が確認できた.
 第5章では,テクスチャの評価に関して,舗装を2次元平面として計測する測定装置を開発し,テクスチャの分布状況を把握することにより,面的評価の必要性を見出した.また面として評価するための解析方法に関する研究を行い,一定面積のMPDを平均化したMPD(S)によってテクスチャを評価することとした.
 第6章では,つまり物の堆積量,回収量のデータが揃っている東京国道事務所のデータに基づき,各作業方式を行った場合の効果についての検討を行った.さらに,新しく開発された空気洗浄方式の装置も考慮した結果,108円/m2・年程度の費用で作業可能である事から,空気洗浄方式による機能維持作業を提案した.またMPD(S)は,タイヤ/路面騒音レベルや動的摩擦と高い相関のある事から,評価指標として浸透水量とMPD(S)を提案した.
 第7章では,研究の結論と機能維持作業の今後の課題を示した.

 本論文は、「ポーラスアスファルト舗装の機能評価と機能維持に関する研究」と題し、7章より構成されている。
 わが国のポーラスアスファルト舗装は、1985年に騒音低減効果を目的として、東京都が最初に施工を行った。その後1988年の長岡技術科学大学における高粘度アスファルトの開発を契機にその施工量は急激に増大してきた。その交通安全機能、騒音低減機能、雨水の一時貯留機能が大きく注目されるようになっている。しかしながらポーラスアスファルト舗装は、供用とともに空隙が閉塞し機能が低下することから、機能回復・維持が大きな課題となっているものの、まだ有効な対策が示されるには至っていない。本研究は、ポーラスアスファルト舗装の機能維持方法を開発し、透水機能、騒音低減機能について、機能回復作業前後の機能評価方法を明確にし、その効果を示している。
 第1章「序論」では、ポーラスアスファルト舗装の機能回復・維持方法に関わる既往の研究の概要を示すとともに、本研究の目的と範囲を述べている。
 第2章「空隙つまりの状況の把握」では、ポーラスアスファルト舗装の空隙閉塞の状況に関して、閉塞物質の堆積位置を明確にすると同時に、その堆積量は路面全体に均一であることを確認している。
 第3章「機能維持技術と評価」では、ポーラスアスファルト舗装の空隙閉塞物質除去技術を開発し、その効果について検証を行っている。その結果、最も可能性の高い作業方法は空気洗浄と吸引回収であることを見出している。
 第4章「排水機能の評価」では、ポーラスアスファルト舗装における水の流れを考慮した透水係数と現場透水量試験の結果は同じものではなく、浸透水量として評価すべきであることを明確にしている。さらに現場透水量試験の測定者の違いによる誤差発生要因、試験装置自体の問題点を明確にし、精度の高い試験器を製作し、現場試験としての評価方法を提案している。
 第5章「テクスチャの評価」では、舗装を2次元平面として計測する測定装置を開発し、テクスチャ分布状況に基づく新しい評価方法を提案している。
 第6章「機能維持方法の提案」では、実際の舗装に本研究を適用し、提案した空気洗浄式機能回復装置の能力を、提案した方法で評価するとともに、作業コスト等を計算している。
 第7章「結論」では、研究の結論と機能回復・維持作業の今後の展望を示している。以上、本論文はポーラスアスファルト舗装の空隙閉塞による機能低下を回復する装置を開発するとともに、その評価方法を提案している。本機能回復装置はすでに実用に供されており、ポーラス舗装の寿命延伸に役立っている。よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

平成18(2006)年度博士論文題名一覧

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る