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改質アスファルトの製造、貯蔵時の品質特性および品質管理方法に関する研究

氏名 上坂 憲一
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第412号
学位授与の日付 平成19年3月26日
学位論文題目 改質アスファルトの製造、貯蔵時の品質特性および品質管理方法に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 助教授 宮木 康幸
 副査 助教授 下村 匠
 副査 助教授 高橋 修
 副査 中央大学教授 姫野 賢治

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第1章 序論 p.1
 1-1 研究の背景 p.1
 1-2 研究の目的 p.4
 1-3 本論文の構成 p.4
 第1章の参考文献 p.6

第2章 室内パイロット装置による製造実験 p.8
 2-1 概説 p.8
 2-2 PMA製造方法の概要 p.8
 2-2-1 PMA製造装置 p.8
 2-2-2 PMA製造方法の例 p.10
 2-3 室内パイロット装置の試作・開発 p.12
 2-4 製造、貯蔵上の品質特性評価方法 p.14
 2-4-1 ポリマーとアスファルトの分散状態 p.14
 2-4-2 分散状態に関する評価方法(第1、第2工程) p.16
 2-4-3 貯蔵分離に関する評価方法(第3工程) p.18
 2-4-4 貯蔵劣化に関する評価方法(第3工程) p.18
 2-5 相似比の設定 p.18
 2-5-1 ポリマー粉砕相似比の設定(第1工程) p.18
 1)ポリマー粉砕相似比の定義 p.18
 2)コロイドミルのせん断性能比較 p.19
 3)試験方法および結果 p.20
 2-5-2 熟成相似比の設定(第2工程) p.20
 1)熟成相似比の定義 p.20
 2)攪拌混合性能比較 p.21
 3)試験方法および結果 p.23
 2-5-3 貯蔵相似比の設定(第3工程) p.24
 1)貯蔵相似比の定義 p.25
 2)貯蔵性能比較 p.25
 3)試験方法および結果 p.26
 2-6 結語 p.28
 第2章の参考文献 p.29

第3章 製造、貯蔵上の品質特性に関する検討 p.31
 3-1 概説 p.31
 3-2 PMA-H製造貯蔵時の品質に関する3つのクリティカルポイント p.31
 3-3 製造時の分散状態と品質挙動 p.33
 3-3-1 分散状態評価 p.33
 1)バインダー曲げ試験による評価 p.33
 2)顕微鏡による評価 p.36
 3-3-2 規格合格点の設定 p.40
 1)試験結果 p.40
 2)規格合格点 p.42
 3-3-3 分解解消点の設定 p.42
 1)試験方法 p.42
 2)試験結果 p.42
 3)分離解消点 p.44
 3-3-4 貯蔵劣化点の設定 p.44
 1)試験方法 p.44
 2)試験結果 p.46
 3)貯蔵劣化点の設定および確認 p.49
 4)品質保証期限の設定 p.55
 3-4 結語 p.57
 第3章の参考文献 p.58

第4章 バインダー品質物性の混合物特性に及ぼす効果 p.60
 4-1 概説 p.60
 4-2 バインダーの粘度特性 p.61
 4-3 高温時のダレ特性とバインダー物性(粘度) p.62
 1)試験用材料および試験方法 p.62
 2)ダレ試験結果 p.63
 3)骨材性状がダレに及ぼす影響 p.64
 4-4 施工時の混合,締固めのための適正粘度 p.65
 4-4-1 混合適正粘度 p.65
 1)試験方法 p.66
 2)試験結果 p.66
 4-4-2 締固め適正粘度 p.69
 1)試験方法 p.69
 2)試験結果 p.69
 4-4-3混合、締固め適正粘度のまとめ p.70
 4-5 骨材飛散抵抗性とバインダー物性 p.71
 1)試験方法 p.71
 2)試験結果 p.72
 4-6 混合物試験方法の検討 p.73
 4-6-1 ダレ試験 p.73
 4-6-2 カンタブロ試験 p.74
 4-7 結語 p.77
 第4章の参考文献 p.78

第5章 品質保証のための品質管理基準 p.80
 5-1 概説 p.80
 5-2 PMAとして保証すべき品質 p.80
 5-3 PMAの製造工程上の品質管理基準の設定 p.82
 5-3-1 各製造工程における品質管理試験方法 p.82
 5-3-2 粘度管理基準の設定 p.84
 1)改質I、IIおよびIII型の粘度管理基準の設定 p.84
 2)PMA-Hの粘度管理基準の設定 p.87
 5-3-3 粘度管理基準のまとめ p.91
 5-4 製造管理への応用例 p.91
 5-5 結語 p.94
 第5章の参考文献 p.95

第6章 PMA-Hの合理的製造方法の実験的検討 p.96
 6-1 概説 p.96
 6-2 製造時間短縮の検討 p.96
 1)相溶性向上の方法 p.96
 2)相溶性評価指標 p.96
 3)試験方法および結果 p.98
 6-3 品質保持期限延長の検討 p.103
 1)貯蔵劣化抑制の方法 p.103
 2)試験方法および結果 p.103
 6-4 結語 p.107
 第6章の参考文献 p.108

第7章 積雪寒冷地域に適したPMA-Hの開発と現場実験 p.109
 7-1 概説 p.109
 7-2 PMA-H(F)の試作開発 p.109
 7-2-1 試作PMA-H(F)のバインダ性状および混合物性状試験結果 p.109
 7-2-2 試作PMA-H(F)の品質保持期限の設定 p.111
 7-3 現場実験(施工事例) p.115
 7-4 結語 p.117
 第7章の参考文献 p.118

第8章 結論と今後の課題 p.119
 1)結論 p.119
 2)今後の課題 p.122

謝辞 p.123

 ポリマー改質アスファルトH型(以下、PMA-H)は、道路に対する社会的ニーズである低騒音やすべり抵抗性の確保などの路面機能が期待されるポーラスアスファルト舗装(以下、ポーラス舗装)に汎用的に使用されている。そして、近年のポーラス舗装は適用場所や環境条件に応じてますます多様化、高度化が進められている。さらに、公共工事に対する要請は、舗装についてもコスト縮減および品質確保に資するために一層の耐久性向上が望まれており、ポーラス舗装に用いられるPMA-Hについて、より高耐久性が望まれている。それは、近年推進されている性能規定発注工事においてもPMA-Hについてのより確実な品質の保証が重要な課題になっている背景である。
 PMA-Hは、舗装設計施工指針に規定される標準的性状等に基づいて品質を保証している。しかし、このバインダはストレートアスファルト(以下、ストアス)に熱可塑性ポリマー(以下、ポリマー)や添加材を多く含む複合系材料のため、製造や貯蔵時の品質特性が複雑であり、主成分のストアスとポリマーの分散状態、貯蔵時の分離や劣化などの挙動や、それらが混合物性状に与える影響について、いまだ十分な解明がなされていない。また、ポーラス混合物の製造、施工などに対するPMA-Hの混合・締固め温度などの取扱い条件を設定するための確立された方法がない。
 以上の背景から、PMA-Hを用いたポーラス混合物が適切に製造、施工でき、ポーラス舗装のより安定した品質を確保するための、PMA-Hの製造および貯蔵時の品質管理方法の確立を目的とした。

 研究内容は以下のとおりである。
 第1章では、研究の背景として、PMA-H開発の経緯および現状の問題点を概括し、それに基づいて研究の目的を述べた。
 第2章では、改質アスファルト実工場の製造工程上の品質挙動を把握するために、実工場の製造工程をシミュレートできる室内パイロット装置を試作開発した。これによって、3つの重要なポイント(規格合格点、貯蔵分離解消点および貯蔵劣化点)を明確に設定(定義)した。
 第3章では、室内パイロット装置を用いてPMA-Hの試作試験を行い、ストアスとポリマーの分散状態(モロフォロジィ)の評価方法について検討した。この結果、直接的な評価方法として、顕微鏡写真の画像解析による方法を見出し、また、分散状態の良否は低温域のバインダ物性試験方法である曲げ試験で評価できることを提案した。次に、この分散状態と関連付けてPMA-Hの製造、貯蔵品質挙動から、分散状態がPMA-Hの性状と貯蔵分離に影響することを確認した。また、貯蔵時の品質変化が、主としてポリマーの熱酸化劣化に起因することを確認した。そしてこれらから、製造貯蔵工程上における上記の3つの重要ポイントを確定した。
 第4章では、PMA-Hを用いたポーラス混合物に関する検討から、ポーラス混合物の混合、施工時の温度を設定するためのPMA-Hの高温粘度条件を求めた。また、ポーラス混合物の骨材飛散抵抗性を評価するカンタブロ損失率基準に適合するためのPMA-Hの品質目標値(曲げスティフネス)を確認した。さらに、これらのPMA-Hの使用温度条件を設定するために用いたポーラス混合物試験(ダレ試験およびカンタブロ試験)についての精度向上および効率化について提案した。
 第5章では、室内パイロット装置によるPMA-Hの製造貯蔵時の品質挙動の把握とポーラス混合物試験の結果に基づいて、改質アスファルト工場におけるPMA-Hの製造および貯蔵品質を保証するための、製造現場で比較的簡便に行える評価試験方法として160℃粘度試験を提案し、その基準を設定した。改質アスファルトI型~III型についても160℃粘度の基準を設定した。
 第6章では、ポリマー添加量のより多い、高耐久型のPMA-Hの改質アスファルト工場での製造、貯蔵時の品質の確保と製造の合理化を図るため、材料面(アスファルトおよびポリマー)の最適化の方向性を見出した。
 第7章では、以上の知見をもとに、寒冷地用PMA-Hの開発し、実施工の評価を行った。
 第8章では、結論として、改質アスファルトの製造ならびに貯蔵に係わる品質を保証するためには、単に標準的性状等の目標品質に適合しているだけではなく、製造時のストアスとポリマーの分散状態の把握や、改質アスファルトの貯蔵時の品質保持期限および混合物の混合や締固め温度といった取扱い条件も勘案した品質保証が必要であるといえる。そして、工場で確認できる分散状態の把握の方法としては、顕微鏡による方法が有効であるとした。また、改質アスファルトを製造、貯蔵するときの品質を確認するために、工場で最も簡便にできる試験として高温粘度試験が適切であるとした。これによって、工場で製造された改質アスファルトが、より以上に安定した品質で供給できる。このことから、舗装の耐久性がより向上し、現在および将来の道路維持管理コスト削減および道路舗装の品質確保に資するといえる。
 今後の課題としては、ポリマーや添加材を多く含む高耐久型の改質アスファルトについて、混合物性状と関連性の高い評価方法と品質管理基準の検討、およびより合理的な製造方法の研究開発が必要である。

 本論文は「改質アスファルトの製造、貯蔵時の品質特性および品質管理方法に関する研究」と題し8章より構成されている。ポーラスアスファルト舗装に使用されている改質アスファルトH型(以下、PMA-H)は、舗装設計施工指針に規定される標準性状に基づいて品質を保証している。しかし、このバインダーは製造や貯蔵時の品質特性が複雑であり、アスアファルトとポリマーの分散状態、貯蔵時の分離や劣化の程度、それらが混合物性状に与える影響について解明がなされていない。本論文は、PMA-Hの製造および貯蔵時の品質管理方法の確立を目的としている。
 第1章「序論」では、研究の背景と目的を述べている。
 第2章「室内パイロット装置による製造実験」では、改質アスファルトの製造工程をシミュレートできる室内パイロット装置を試作開発している。これによって、規格合格点、貯蔵分離解消点および貯蔵劣化点を定義している。
 第3章「製造、貯蔵上の品質特性に関する検討」では、PMA-Hの顕微鏡写真からアスファルトとポリマーの分散状態は低温域のバインダー曲げ試験で評価できることを見出し、この分散状態がPMA-Hの性状と貯蔵分離に影響すること、貯蔵時の品質変化がポリマーの熱酸化劣化に起因することを確認している。
 第4章「バインダー品質物性の混合物特性に及ぼす効果」では、ポーラス混合物の混合、施工時の温度を設定するためのPMA-Hの高温粘度を求めた。また、ポーラス混合物の骨材飛散抵抗性を評価するためのPMA-Hの品質目標値を確認した。
 第5章「品質保証のための品質管理基準」では、PMA-Hの製造および貯蔵品質を保証するための、製造現場で簡便に行える試験方法として160℃粘度試験を提案し、その基準を設定している。
 第6章「積雪寒冷地に適したPMA-Hの開発と現場試験」では、本研究が提案した品質管理方法に基づいて寒冷地用PMA-Hを製造し、材料の最適化方法を提案している。
 第7章「PMAの合理的製造方法の実験的検討」では、寒冷地用PMA-Hを使用して実施工の評価を行った。
 第8章「結章」では、結論と今後の課題について述べている。
 本研究の手法は、すでに実際のPMA製造工程に使用されているばかりでなく、他の改質アスファルト製造にも適用できる。この結果、舗装の耐久性向上、道路維持コストの低減が図られる。よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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