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地域人口変動に対する社会環境の役割に関する基礎的研究

氏名 太田 惠子
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第258号
学位授与の日付 平成18年12月6日
学位論文題目 地域人口変動に対する社会環境の役割に関する基礎的研究
論文審査委員
 主査 教授 松本 昌二
 副査 教授 中出 文平
 副査 助教授 佐野 可寸志
 副査 助教授 李 志東
 副査 立命館大学 経済学部教授 平田 純一

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第1章 序
 1.1 研究の背景と目的 p.1
 1.2 従来の研究レビュー p.3
 1.3 研究の基本的枠組み p.6

第2章 産業別地域所得の関数型による表現
 2.1 地域所得 p.8
 2.2 地域生産とパレード最適性基準 p.13
 2.3 産業別地域生産とデータ p.20

第3章 地域農業の生産構造と技術
 3.1 地域農業の生産構造 p.25
 3.2 地域農業生産環境と技術 p.28
 3.3 農業生産環境主成分分析による地域分類 p.32

第4章 地域工業の生産構造と技術
 4.1 地域工業の生産構造 p.34
 4.2 地域工業生産環境と技術 p.34
 4.3 工業生産環境主成分分析による地域分類 p.40

第5章 地域商業・サービス業の生産構造と技術
 5.1 地域商業の生産構造 p.42
 5.2 生活環境と地域商業技術 p.44
 5.3 商業生産環境主成分分析による地域分類 p.48
 5.4 地域サービス業の生産構造と技術 p.50

第6章 生活環境と地域個人消費
 6.1 地域個人消費の動向 p.57
 6.2 地域生活環境と個人消費 p.59

第7章 社会環境が産業技術と地域効用を通じて人口と事業所数に及ぼす効果
 7.1 地域産業技術水準による地域分類 p.63
 7.2 社会環境に関する主成分分析と地域分類 p.65
 7.3 社会環境が地域人口と事業所数にもたらす効果 p.77
 7.4 地域人口増加に向けた社会環境整備策 p.84

第8章 まとめ p.100

補注 p.104

参考文献 p.107

 地域産業の衰退、人口の減少が、コミュニティの崩壊につながることが懸念されている。地域における人と人との交わり、企業間競争は、多様性と地域活力の源泉となり、新たな価値を産み出す。地域の政策目標は、社会的厚生水準の最大化であり、地域活性化の指標として、人口と事業所数があげられる。
 本研究の目的は、地域産業の技術を中心とする生産構造とコミュニケーション活動を中心とする消費構造をとらえた上、社会環境諸要因の相互作用が、産業技術と地域効用を通じて地域の人口と事業所数、さらには地方税収入に及ぼす効果について総体的に評価し、具体的な地域政策の方向性を見い出そうとしている。地域の規模範囲として都道府県単位とし、昭和63年から平成11年に至る4時点を分析対象とする。得られた結論として、産業別地域生産の規模に関する収穫は一定であり、規模集積が必ずしも生産増に効果的とはいえない。地域技術は、市場機構に基づく資源有効利用度の尺度である生産力ギャップ率と強い相関を示す。産業別技術に効果的な生産環境要因として、農業では快晴日数など自然環境、公的研究関係者数、工業では道路舗装率、大学等進学率、商業では生活基盤投資、図書館蔵書数、『新国民生活指標』PLI「費やす」、「働く」、「交わる」、サービス業では道路舗装率、大学等進学率が特定化された。
 生活環境と個人消費の関係について、国民生活指標を説明変数とする地域消費関数の推定を通じ、生活環境がコミュニケーション支出を中心とした選択的支出に影響し、コミュニケーション支出、生活環境および地域生活効用との相互関係が確認された。
 社会環境要因として、産業別技術、教育、コミュニケーション支出、国民生活指標「交わる」、地域生活効用をとりあげ、相互関係から総合的にとらえるため主成分分析し、第1主成分得点を地域効用総得点UU、第2主成分から第4主成分までの産業技術環境得点を寄与率で加重平均したものを産業技術総得点TT、両者を加えたものを社会環境総合得点TUとして求めた。また、平成9年における4つの主成分得点をもとにクラスター分析し、社会環境を6類型に地域分類した。社会環境が産業技術と地域効用を通じて地域人口と事業所数、さらには地方税収入に及ぼす効果について、4時点のパネルデータより、時間効果、都道府県個別効果、大都市圏効果をも考慮して地域人口関数、事業所数関数、地方税収入関数として推定した。その結果、地域人口自然増加の変動は、年次効果、7大都市圏効果を含め増加要因と減少要因によって説明され、社会増加の変動は、年次効果を含め、主に生産に関連した産業技術環境を反映する。地域総人口は、地域効用と産業技術の総合としての社会環境によって説明され、地域事業所数は、年次効果、7大都市圏効果を含め産業技術環境により決定される。地方税収入は、地域特有の確率変数、もしくは時間的推移をも含め、人口と事業所数によって説明される。
 社会環境と次年度の地域人口増加率との関係を4つに分類して、有効な施策について考察した。社会環境総合得点と地域人口増加率がともにプラスの地域は、関東甲信、北陸、関西を中心とする14都府県である。人口規模の大きい東京、神奈川、愛知、京都、奈良は、技術環境総得点が最上位にあるが、地域効用総得点が概して低いため、コミュニケーション活動の活性化を通じた地域効用を高める方向が考えられる。富山、石川、福井の北陸3県は、地域効用総得点が1位~3位であるが、産業技術総得点がマイナスとなっている。その他の地域は、産業技術と地域効用がともにプラスとなっている。人口規模が小さい地域は、平均教育年数が平均より低くなっているため、人材の質を高めることで産業技術を一層高めていく方向が考えられる。
 社会環境総合得点がマイナスであるにもかかわらず地域人口増加率がプラスなのは、北海道、関東、東海、山陽、九州を中心とする15道県で、商業、サービス業技術と地域効用がとくに低い。人口規模が大きい県の産業技術は、概して低く、地域効用はかなり低い。サービス業に関連した1人当り社会資本が低く、PLI「交わる」、コミュニケーション支出、工業技術に結びついていない。平均教育年数は、比較的高いので、特徴のある産業技術の育成を通じて潜在力を顕在化することが求められる。他の人口規模が小さい道県の教育年数は、マイナスとなっている。
 社会環境総合得点がプラスであるが、人口増加率がマイナスなのは、九州、四国など9県で、第一次産業就業者比率が高く、経済のサービス化が進展していない。商業技術、教育年数、PLI「交わる」、コミュニケーション支出がやや低く、農業、サービス業技術が高い。PLI「交わる」、コミニュニケーション活動の活性化、人材育成を通じた工業、商業技術育成、産業構造の高度化に向けた施策が必要となる。
 社会環境総合得点と地域人口増加率がともにマイナスは、東北を中心とした9県であり、サービス業技術がわずかにプラスであるが、他の7要因すべてマイナスとなっている。産業技術、地域効用ともにマイナスで、工業生産力ギャップ率、商業生産力ギャップ率が大きい。平均教育年数とPLI「交わる」が最下位層にある。1人当たり社会資本は、高いが、PLI「交わる」および産業技術には結びついていない。社会資本を含め未利用資源を活用して、比較優位産業を育成していく施策が必要となる。本研究を通じて、社会環境整備が、地域人口と事業所数変動に有効な政策であり、地方税収入に影響することが結論付けられた。生活の根幹となる産業技術、地域効用に関して効果的影響を与えられるよう、長期的観点から地域の独自性、広域的な関係性を踏まえて社会環境整備をしていく必要がある。

 本論文は、「地域人口変動に対する社会環境の役割に関する基礎的研究」と題し、8章より構成されている。
 第1章は、序論で、研究の背景と目的、従来の研究レビューを述べている。
 第2章では、地域所得を考察した上、代表的なマクロ生産関数をとりあげ、それぞれの特徴と相互関係、および技術進歩の型、生産の効率性基準、資源制約下での産業別地域生産関数の集計における極大値の存在条件について理論展開している。
 第3章では、地域農業生産関数の推定を通じて、地域農業技術水準を測定し、これに影響を与えている天候、公的研究関係者数など生産環境要因について特定化している。
 第4章では、地域工業生産関数の推定を通じて地域工業技術水準を測定し、これに影響を与えている道路舗装率、大学等進学率など生産環境要因について特定化している。
 第5章では、地域商業生産関数の推定を通じて地域商業技術水準を測定し、これに影響を与えている生活基盤投資、図書館蔵書数、国民生活指標「費やす」、「働く」、「交わる」など生活環境要因について特定化している。地域サービス業生産関数を通じて地域サービス業技術を推計し、道路舗装率、大学等進学率など生産環境要因を導出している。
 第6章では、生活環境とコミュニケーション支出の関係に関して、生活環境指標を取り入れた地域消費関数を推定するとともに、地域生活効用、コミュニケーション支出、国民生活指標との関係について記述している。
 第7章では、これまで考察した社会環境要因の相互作用が、産業技術と地域効用を通じて地域の人口と事業所数、さらには地方税収に及ぼす効果について、時間効果、都道府県個別効果、大都市圏効果をも考慮した地域人口関数、地域事業所数関数、地方税収入関数の推定をネル分析により行い、さらに地域の政策的対応を考察している。
 第8章は、まとめで、本研究で得られた結論を述べている。

以上のように本論文では、社会環境整備の方向性を探るため、産業別地域技術、教育年数、コミュニケーション支出、国民生活指標「交わる」、効用水準「地域生活」という社会環境要因の相互作用が、産業技術と地域効用を通じて、地域人口と事業所数、さらには地方税収入に及ぼす効果を実証分析し、地域の政策的対応について考察している。本論文は、地域発展に資する社会環境の整備手法について有用な技術を提供しており、工学上および工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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