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コンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断耐力に関する研究

氏名 森山 智明
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第253号
学位授与の日付 平成18年6月21日
学位論文題目 コンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断耐力に関する研究
論文審査委員
 主査 助教授 下村 匠
 副査 教授 長井 正嗣
 副査 教授 大塚 悟
 副査 助教授 岩崎 英治
 副査 副学長 丸山 久一

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第1章 序論 p.1
 1.1 研究の背景と目的 p.1
 1.2 既往の線路下横断工法 p.3
 1.3 JES工法の概要 p.6
 1.3.1 工法の特徴 p.6
 1.3.2 施工法の概要 p.7
 1.3.3 構成されるエレメント部材 p.8
 1.3.4 JES工法の適用例 p.10
 1.4 JES工法の概要 p.11
 1.5 本研究の構成 p.15
 第1章の参考文献 p.16

第2章 JES工法の開発に関する研究 p.19
 2.1 JESエレメントの開発 p.19
 2.1.1 JES継手の検討 p.19
 2.1.2 JESエレメントの適用範囲の検討 p.22
 2.1.3 JES継手の疲労試験 p.23
 2.1.4 JESエレメントを用いたはり部材の疲労試験 p.24
 2.2 JESエレメントを用いたはり部材の曲げ試験 p.28
 2.3 JESエレメントを用いたはり部材のせん断試験 p.32
 2.4 施工確認試験 p.34
 2.4.1 施工試験の概要 p.34
 2.4.2 室内における予備施工試験 p.34
 2.4.3 エレメントけん引貫入試験 p.36
 2.4.4 継手のグラウト注入試験 p.39
 2.5 まとめ p.43
 第2章の参考文献 p.45

第3章 コンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断耐力に関する実験的研究 p.45
 3.1 はじめに p.45
 3.2 実験概要 p.46
 3.2.1 試験体概要 p.46
 3.2.2 載荷方法 p.48
 3.3 実験結果および考察 p.49
 3.3.1 部材の挙動および破壊形態 p.49
 3.3.2 コンクリートのせん断ひび割れ荷重が最大耐力となるケース(I(1)型) p.51
 3.3.3 コンクリートのせん断ひび割れ荷重が最大耐力に達するケース(I(2)型) p.53
 3.3.4 支点部外側の鉛値材が変形し耐力が低下する場合 p.56
 3.3.5 せん断補強鋼板が降伏する場合(II型) p.57
 3.3.6 せん断補強鋼板位置の影響 p.58
 3.3.7 鋼板とコンクリートの付着の影響 p.58
 3.3.8 コンクリート圧縮強度fc'の影響 p.59
 3.4 コンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断耐力算定式の検討 p.60
 3.4.1 コンクリートのせん断ひび割れ耐力算定式の検討 p.60
 3.4.2 コンクリートのひび割れ発生後のせん断耐力算定式の検討 p.65
 3.4.3 せん断耐力算定式の評価 p.67
 3.4.4 既往のせん断耐力算定式との比較 p.67
 3.5 まとめ p.69
 第3章の参考文献 p.70

第4章 コンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断耐力に関する解析的研究 p.71
 4.1 はじめに p.71
 4.2 2次元FEM解析による検討 p.71
 4.2.1 解析プログラムおよび解析方法 p.71
 4.2.2 FEM解析の検証 p.71
 4.2.3 コンクリートのひび割れ発生後も荷重が増加し最大耐力に達する状況 p.76
 4.2.4 支点部外側の鉛値材が変形し耐力が低下する場合 p.77
 4.2.5 鋼板の影響 p.78
 4.3 せん断ひび割れ耐力の検討 p.79
 4.3.1 解析パラメータ p.79
 4.3.2 せん断ひび割れ耐力と影響因子の関係 p.79
 4.3.3 せん断補強鋼材の間隔比s/zによる影響 p.81
 4.3.4 引張補強鋼材比Pwによる影響 p.82
 4.3.5 コンクリート圧縮強度fc'の影響 p.83
 4.3.6 有効高さdによる影響 p.83
 4.3.7 せん断ひび割れ耐力算定式 p.83
 4.3.8 せん断ひび割れ耐力算定式の評価 p.84
 4.4 せん断ひび割れ発生後の耐荷性状 p.86
 4.4.1 せん断ひび割れ面の応力状態 p.86
 4.4.2 せん断ひび割れ面のせん断応力の影響 p.88
 4.5 コンクリートのひび割れ発生後のせん断耐力に及ぼす影響因子の影響 p.89
 4.5.1 せん断補強鋼材の間隔比s/zによる影響 p.89
 4.5.2 引張補強鋼材比Pwによる影響 p.91
 4.5.3 コンクリート断面高さdcによる影響 p.92
 4.5.4 せん断ひび割れ発生後の耐力算定式 p.92
 4.5.5 せん断ひび割れ耐力算定式の評価 p.93
 4.6 設計法の適用性の検討 p.93
 4.6.1 等分布荷重作用時のせん断耐力 p.96
 4.6.2 軸圧縮作用時のせん断耐力 p.101
 4.7 まとめ p.106
 第4章の参考文献 p.107

第5章 せん断ん断補強鋼板を離散的に配置しコンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断力に関する研究 p.108
 5.1 はじめに p.108
 5.2 試験概要 p.109
 5.2.1 試験体概要 p.109
 5.2.2 載荷方法 p.110
 5.3 実験結果および考察 p.112
 5.3.1 破壊形態 p.112
 5.3.2 せん断力ー変位曲線 p.114
 5.3.3 開口位置の影響 p.114
 5.3.4 せん断補強鋼板の作用力 p.115
 5.4 3次元FEM解析による検討 p.117
 5.4.1 解析プログラムおよび解析方法 p.117
 5.4.2 FEM解析の検証 p.117
 5.4.3 解析パラメータ p.120
 5.4.4 解析結果 p.121
 5.5 せん断補強鋼板を離散的に配置しコンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断耐力 p.124
 5.5.1 せん断耐力の算定方法 p.124
 5.5.2 せん断耐力算定式の評価 p.126
 5.6 まとめ p.128
 第5章の参考文献 p.129

第6章 結論 p.130

 謝辞 p.134
 発表論文 p.135

 本論文は,既設の鉄道線路の下を横断方向に構造物を構築する際の安全で経済的な工法の開発と,その工法で構築される構造物のせん断耐荷機構を解明したものである.
従来の工法は,本体構造物の構築に先立ち,既設の軌道を防護するため,地盤を安定させるための仮設設備が必要であったが,本研究で特殊な継手を有する鋼製エレメントを開発したことにより,軌道防護を行なうのと同時に本設構造物を構築する工法(Jointed Element Structure工法,以下JES工法)を開発した.さらに,構築される鋼・コンクリート複合構造物の耐荷機構の中で,せん断耐力については,メカニズムが未解明となっており,鉄筋コンクリートはりのせん断耐力算定式が準用されている.今回,実験および非線形FEM解析により,コンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断耐荷機構を解明し,この種の構造物のせん断耐力算定式を提案し,適切な設計が容易に行えるようにしたものである.本論文は,第1章から第6章で構成されている.各章の概要と得られた主な知見は以下である.
第1章は序論であり,本研究の対象であるJES工法の開発の背景となっている既往の線路下横断構造物の施工法の特長および問題点について述べるとともに,JES工法の概要について述べている.また,本工法で構築される鋼とコンクリートの複合構造物の既往の設計法について述べている.
第2章では,本研究の対象であるJES工法の開発のために行われた各種試験について述べている.構造物の施工性を考慮したJES継手の開発を行い,線路下横断構造物に要求される引張強度,疲労強度を有することを確認した.実大供試体による曲げ載荷実験より,JES工法で構築された部材の曲げ剛性は,不連続面であるジョイントの開口を考慮し,RC断面として計算した剛性の60%低減することで簡易に評価できることを示した.施工試験より,JESエレメントの施工性を確認した.施工試験におけるグラウト注入試験により,継手内に空隙無くグラウトを注入されていることが確認された.
第3章では,コンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断破壊実験により,破壊性状,せん断耐力への影響因子について検討を行った.コンクリートの破壊によりせん断耐力が決定する部材の挙動として,せん断ひび割れの発生により荷重が低下し,せん断ひび割れ発生荷重が最大耐力となるもの(I(1)型),(2)せん断ひび割れ発生後もさらに荷重が増加し,最大耐力に達するもの(I(2)型),支点部外側の鉛直材がコンクリートの圧縮斜材として荷重を受けられず,変形し耐力が低下するもの(I(3)型)の3パターンが見られた.せん断ひび割れ発生後,ひび割れ面上下のコンクリートの圧縮力は,鋼製エレメントの対角線となる軸線からずれることにより,上下の鋼板に曲げ応力が作用することを明らかにした.せん断ひび割れ発生後のせん断耐力の増加割合は,せん断補強鋼板の間隔比(s/z),有効高さdが小さいものほど大きい傾向を示した.
第4章では,コンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断耐荷機構について2次元非線形FEM解析により検討を行った.せん断ひび割れの発生は,トラス機構によって負担するコンクリートの斜め圧縮力により生じるコンクリートの引張応力がコンクリート引張強度ftに達した時と推定できる.せん断ひび割れ発生後のせん断耐力は,せん断ひび割れ面でのせん断応力の伝達が重要であり,せん断ひび割れ面のせん断応力が限界値に達した時と仮定するとよく合うことを示した.せん断ひび割れ耐力算定式およびせん断ひび割れ発生後のせん断耐力算定式より,せん断ひび割れ発生後もさらに荷重が増加するものとせん断ひび割れ発生により荷重が低下するものの2つの挙動を把握することできることを示した.
第5章では,コンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断補強鋼板を分割配置した試験体によるせん断破壊実験および3次元非線形FEM解析により破壊性状,せん断耐力への影響因子について検討を行った.実験および解析より,せん断補強鋼板を分割配置したコンクリート充填鋼製エレメントはりのせん断耐力は,せん断補強鋼材の開口率が大きくなるに従ってせん断耐力が低下する傾向にあること,さらに,その影響度は,s/zが小さい場合ほど,開口率の増加によるせん断耐力の減少が大きくなる傾向にあることが明らかとなった.せん断補強鋼板を分割配置したコンクリート充填鋼製エレメントはりのせん断耐力の算定方法として,せん断ひび割れ耐力式とせん断ひび割れ後のせん断耐力式を組み合わせた算定方法を提案した.
第6章は,本論文で得られた結論をとりまとめた.

本論文は,「コンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断耐力に関する研究」題し,6章から構成されている.
第1章は序論であり,開発の背景となっている既往の線路下横断構造物の施工法の特長および問題点について述べるとともに,本研究の対象である特殊な継手を有する鋼製エレメントを地盤中に貫入し線路下横断構造物を構築する工法(JES工法,Jointed Element Structure工法)の概要について述べている.また,本工法で構築される鋼とコンクリートの複合構造物の既往の設計法について述べている.
第2章では,構造物の施工性を考慮したJES継手の開発を行い,線路下横断構造物に要求される引張強度,疲労強度を有することを確認している.また. 曲げ耐力試験,施工試験により,本工法により構築される構造体が本体構造物としての所要の剛性と耐力を有していること確認し,本工法を開発している.
第3章では,本工法により構築される鋼・コンクリートの複合構造物であるコンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断破壊実験により,破壊性状,せん断耐力への影響因子について検討を行っている.
第4章では,コンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断耐荷機構について2次元非線形FEM解析により,せん断耐荷機構を明らかにし,この種の構造物のせん断耐力算定式を提案している.
第5章では,コンクリート充填された鋼製エレメントはりのせん断補強鋼板を分割配置した試験体による実験および3次元非線形FEM解析により破壊性状,せん断耐力への影響因子について検討を行っている.第3,4章では,部材軸直交方向が一様な2次元での解析に対し,3次元的なせん断耐荷機構の影響の検討を行なっている.
第6章は,本論文で得られた結論をとりまとめている.
以上のことから,従来の工法は,本体構造物の構築に先立ち,既設の軌道を防護するため,地盤を安定させるための仮設設備が必要であったが,本研究で特殊な継手を有する鋼製エレメントを開発したことにより,軌道防護を行なうのと同時に本設構造物の構築も可能としている.さらに,構築される鋼・コンクリート複合構造物の耐荷機構の中で,未解明となっていたせん断耐力について,実験および非線形FEM解析により,その耐荷機構を解明し,この種の構造物のせん断耐力算定式を提案し,適切な設計が容易に行えるようにしている.本研究成果は,すでに実用化されていることから,工学上および工業上貢献するところが大きい.よって,博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める.

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