ゴムチップ弾性舗装の混合物特性と騒音低減効果に関する研究
氏名 小林 昭則
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第403号
学位授与の日付 平成19年3月26日
学位論文題目 ゴムチップ弾性舗装の混合物特性と騒音低減効果に関する研究
論文審査委員
主査 教授 丸山 暉彦
副査 助教授 宮木 康幸
副査 助教授 下村 匠
副査 助教授 高橋 修
副査 中央大学 教授 姫野 賢治
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第1章 序論
1.1 はじめに p.1
1.2 研究の目的 p.2
1.3 本論文の構成 p.2
参考文献 p.4
第2章 車道舗装材としての適用性の検討
2.1 本章の概要 p.5
2.2 骨材および混合物粒度の選定 p.6
2.2.1 実験材料 p.6
2.2.2 試験方法 p.7
2.2.3 細骨材混合物の曲げ試験結果 p.7
2.2.4 混合物粒度の選定 p.8
2.3 ゴム弾性舗装用混合物の検討 p.9
2.3.1 実験材料 p.9
2.3.2 実験配合 p.9
2.3.3 混合物性状試験方法 p.10
2.4 試験結果と考察 p.12
2.4.1 円柱供試体作製方法 p.12
2.4.2 バインダ量と曲げ強度の関係 p.13
2.4.3 すべり特性 p.14
2.4.4 耐摩耗性 p.15
2.4.5 耐油性 p.15
2.4.6 混合物性状のまとめ p.16
2.5 基層の検討 p.17
2.5.1 実験材料 p.17
2.5.2 室内における接着試験方法 p.17
2.5.3 供用路面における接着試験方法 p.18
2.5.4 促進載荷試験後の接着試験方法 p.19
2.5.5 基層試験結果と考察 p.21
2.5.6 基層のまとめ p.23
2.6 本章のまとめ p.23
参考文献 p.24
第3章 ゴム弾性混合物の硬化特性と評価方法の検討
3.1 本章の概要 p.25
3.2 実験材料および供試験体寸法 p.26
3.3 ゴム弾性混合物の試験方法 p.27
3.4 硬化特性に関する試験結果と考察 p.30
3.4.1 硬化特性 p.30
3.4.2 硬化性の評価法 p.30
3.5 交通開放基準値の検討 p.32
3.5.1 目的 p.32
3.5.2 試験方法 p.32
3.5.3 実験結果と考察 p.33
3.6 硬化促進手法の検討 p.34
3.6.1 目的 p.34
3.6.2 実験方法 p.34
3.6.3 実験結果と考察 p.35
3.7 本章のまとめ p.38
参考文献 p.38
第4章 吸音特性と騒音低減効果の持続性に関する検討
4.1 本章の概要 p.39
4.2 実験材料 p.40
4.3 室内試験方法 p.40
4.3.1 室内試験供試体の作製方法 p.40
4.3.2 吸音率試験方法 p.41
4.3.3 室内におけるタイヤ/路面騒音測定方法 p.41
4.4 試験舗装による効果の検証 p.42
4.4.1 試験舗装の構築方法 p.42
4.4.2 屋外試験方法 p.43
4.5 実験結果と考察 p.45
4.5.1 厚さと吸音率 p.45
4.5.2 室内ドラムによるタイヤ近接音 p.45
4.5.3 試験舗装によるタイヤ/路面騒音の低減効果 p.46
4.5.4 本章のまとめ p.47
参考文献 p.48
第5章 商業施設駐車場舗装への適用性に関する検討
5.1 本章の概要 p.49
5.2 実験材料 p.50
5.3 室内試験方法 p.51
5.3.1 静的ばね定数試験方法 p.51
5.3.2 骨材飛散抵抗試験方法 p.52
5.3.3 吸音率試験方法 p.53
5.3.4 タイヤ/路面騒音試験方法 p.54
5.4 屋外試験方法 p.56
5.4.1 試験舗装の概要 p.56
5.4.2 実車騒音の測定方法 p.57
5.4.3 実車によるすえきり試験方法 p.58
5.4.4 基層との接着性試験方法 p.59
5.5 ショッピングカート騒音の試験方法 p.60
5.5.1 使用ショッピングカート p.60
5.5.2 カートの騒音測定方法 p.61
5.6 室内試験結果と考察 p.62
5.6.1 静的ばね定数 p.62
5.6.2 骨材飛散抵抗性 p.62
5.6.3 吸音特性の比較 p.63
5.6.4 室内におけるタイヤ/路面騒音測定結果 p.63
5.6.5 室内検討のまとめ p.64
5.7 屋外試験結果と考察 p.65
5.7.1 普通車の騒音低減効果 p.65
5.7.2 室内騒音と実車騒音の関係 p.66
5.7.3 すえきり抵抗性 p.67
5.7.4 接着性 p.68
5.8 実験結果と考察 p.70
5.8.1 騒音ピーク値による騒音低減効果 p.70
5.8.2 周波数分析から見た騒音低減効果 p.70
5.8.3 屋外検討のまとめ p.72
5.9 本章のまとめ p.73
参考文献 p.74
第6章 ゴム弾性舗装の弾力性と低騒音性に関する検討
6.1 本章の概要 p.75
6.2 検討の手順 p.76
6.3 室内実験 p.76
6.3.1 実験材料 p.76
6.3.2 静的ばね定数試験方法 p.76
6.3.3 衝撃吸収性試験方法 p.76
6.3.4 タイヤ落下試験方法 p.78
6.4 室内実験結果と考察 p.79
6.4.1 ゴム系弾性材料の硬さと衝撃吸収性の関係 p.79
6.4.2 タイヤ落下衝突音の評価 p.79
6.5 試験施工による検討 p.81
6.5.1 試験施工の概要 p.81
6.6 試験施工結果と考察 p.85
6.6.1 衝撃加速度と普通車騒音の関係 p.85
6.6.2 タイヤへの衝撃力低減効果 p.86
6.6.3 カート騒音の低減効果 p.86
6.6.4 カート振動の低減効果 p.87
6.7 本章のまとめ p.88
参考文献 p.90
第7章 用途拡大に関する検討
7.1 本章の概要 p.91
7.2 実験材料 p.92
7.3 試験方法 p.92
7.3.1 氷着試験方法 p.92
7.3.2 すべり抵抗試験方法 p.94
7.4 室内試験結果と考察 p.95
7.4.1 凍結抑制効果 p.95
7.4.2 すべり抵抗性 p.95
7.5 試験舗装による検証 p.96
7.6 試験施工結果と考察 p.96
7.7 本章のまとめ p.98
参考文献 p.98
第8章 結論および今後の研究課題
8.1 結論 p.99
8.2 今後の研究課題 p.100
謝辞 p.101
近年,我が国おいては環境問題がクローズアップされ,環境保全・改善に対する国民の意識が高まっており,交通騒音も都市部の沿道住民にとっては切実な問題となっている.この騒音対策として排水性舗装が開発・実用化され効果をあげている.しかし,大都市圏においては,騒音に関わる環境基準を昼夜とも超過している箇所が多く依然として深刻な状況である.一方,自動車騒音は道路に限定した問題でなく,近年はスーパー等の大規模小売店舗の営業に伴う騒音問題も取り上げられるようになり,2000年には「大規模小売店舗立地法」が施行され,大規模小売店舗の設置者は,増改築・営業延長の際には周辺地域の生活環境に影響を及ぼさないよう,交通や騒音への対応が一層求められるようになった.
交通騒音の一つであるタイヤと路面の接触騒音を低減する舗装として,前述の排水性舗装が挙げられるが,騒音問題の現状ではさらにタイヤ/路面騒音を低減した舗装が必要とされている.
本論文では,排水性舗装に比べ高い騒音低減効果が得られるタイヤリサイクルゴムを活用した多孔質なゴム弾性舗装の舗装への適用を目的に,舗装材としての混合物性状,硬化特性,騒音低減効果の持続性,低速走行時の低騒音性およびその騒音低減メカニズムについて研究を行い,舗装材としての未解明な点を明らかにしたものであるとともに,実用性を示したものである.
本論文は8章からなっている.
第1章「序論」では,道路交通騒音の現状と騒音対策の課題を示すとともに,多孔質な弾性舗装に係わる既往の研究の課題を述べ研究の背景とした.そして,ゴム弾性舗装の舗装材としての混合物性状,硬化特性,騒音低減効果の持続性,低速走行時の低騒音性およびその騒音低減メカニズムを明らかにすることを本研究の目的とした.
第2章では,弾性骨材としてタイヤリサイクルゴムチップと細骨材を選定し,粒度の選定,供試体作製方法の検討,曲げ強度によるバインダ量の検討,すべり抵抗性,耐摩耗性,骨材飛散抵抗性およびたわみ特性等の検討を行い,通常のアスファルト舗装材と比較検討した.また,弾性舗装材に適した基層を,室内実験および屋外実験から検証した.
第3章では,ゴム弾性舗装材の硬化特性とそれを的確に評価する指標を検討し,交通開放に必要な評価手法と評価値を提案した.
第4章では,ゴム弾性舗装の吸音性,騒音低減効果を室内試験および屋外試験により検討するとともに,輪荷重49kNの促進載荷試験により,ゴム弾性舗装の騒音低減効果の持続性が長いことを明らかにした.
第5章では,ゴム弾性舗装の駐車場への適用の可能性を,室内試験および試験舗装により検討を行い,低速走行時における騒音低減効果およびすえ切り抵抗性について検討を行い,適用性を明らかにした.
また,大規模小売店舗等で使用されるショッピングカート等の騒音レベルの現状把握,およびゴム弾性舗装によるショッピングカート騒音低減効果について検討し,ゴム弾性舗装の効果を証明した.
第6章では,ゴム弾性舗装の弾力性と低騒音性について検討を行い,舗装体の衝撃吸収性が普通車騒音の低減、タイヤ振動の低減,ショッピングカートの振動低減に大きく影響していることを証明した.
第7章では,ゴムチップ弾性舗装の用途拡大を目的に,ゴム弾性舗装の凍結抑制効果について,室内実験および実路試験施工から凍結抑制舗装としての有効性を明確にした.
第8章では,第2章から第7章までの研究成果をまとめるとともに,今後の研究課題についてとりまとめ結論とした.
以上,本論文は,タイヤリサイクルゴムを活用した多孔質なゴム弾性舗装の舗装材としての未解明点を明確にしたことで,本研究の成果を適用すれば道路交通騒音(タイヤと路面の接触騒音)の大幅な低減に貢献できる.また,凍結路面対策舗装としての適用は,円滑な冬期交通の確保に一層貢献できる.
本論文は「ゴムチップ弾性舗装の混合物特性と騒音低減効果に関する研究」と題し、8章より構成されている。近年、環境保全・改善に対する国民の意識が高まっており、交通騒音も沿道住民にとって切実な問題となっている。この対策としてポーラス舗装が開発され効果をあげているが、騒音に関わる環境基準を昼夜とも超過している箇所が依然として多い。本論文は、ポーラスアスファルト舗装に比べ高い騒音低減効果が得られるタイヤリサイクルゴムを活用した多孔質ゴム弾性舗装の実用化を図るものである。
第1章「序論」では、道路交通騒音の現状と課題を示すとともに、多孔質弾性舗装に係わる既往の研究について述べ、ゴム弾性舗装の実用性向上を目的としている。
第2章「車道舗装材としての適用性」では、各種材料試験から、既存施工機械で施工できる多孔質ゴム弾性舗装に適した材料選定及び配合設計を示している。また、弾性舗装に適した基層についても検証し、その材料設計を提案している。
第3章「ゴム弾性舗装材の硬化特性とその評価方法」では、交通開放に必要な硬化特性評価手法と評価値を提案している。
第4章「吸音特性と騒音低減効果の持続性」では、ゴム弾性舗装の騒音低減効果を室内試験および屋外試験により検討するとともに、輪荷重49kNの促進載荷試験により、ゴム弾性舗装の騒音低減効果の持続性が長いことを明らかにしている。
第5章「商業施設駐車場舗装への適用性」では、室内試験および試験舗装により、低速走行時における騒音低減効果およびすえ切り抵抗性について検討を行い、ゴム弾性舗装の駐車場への適用性を明らかにしている。また、ゴム弾性舗装がショッピングカート騒音低減効果を有することを証明している。
第6章「ゴム弾性舗装の弾力性と低騒音性」では、舗装体の衝撃吸収性が普通車騒音の低減、タイヤ振動の低減、ショッピングカートの振動低減に大きく影響していることを証明している。
第7章「用途拡大に関する検討」では、ゴム弾性舗装の凍結抑制効果について、室内実験および実路試験施工からその有効性を明確にしている。
第8章「結論」では、結論と今後の課題について述べている。
以上、本論文は、タイヤリサイクルゴムを活用した実用的な多孔質ゴム弾性舗装を開発し、道路交通騒音低減の可能性を示すとともに、凍結路面対策舗装としての適用可能性も明らかにしている。よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。