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生活行動を考慮した世帯主等の交通行動ミクロシミュレーション・モデルに関する研究

氏名 加藤 研二
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第260号
学位授与の日付 平成18年12月6日
学位論文題目 生活行動を考慮した世帯主等の交通行動ミクロシミュレーション・モデルに関する研究
論文審査委員
 主査 教授 松本 昌二
 副査 教授 中出 文平
 副査 助教授 佐野 可寸志
 副査 助教授 樋口 秀
 副査 金沢大学大学院 自然科学研究所 助教授 中山 晶一朗

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第1章 序論 p.1
 1-1 本研究の背景 p.1
 1-2 本研究の目的 p.1
 1-3 本論文の構成 p.2
 第1章 参考文献 p.3

第2章 既住研究の整理と本研究の方法 p.4
 2-1 従来の代表的な交通行動モデル p.4
 2-2 交通行動シミュレーション・モデル p.5
 2-3 NNモデルを用いた既住研究 p.9
 2-4 複数日の生活行動を考慮したモデル p.10
 2-5 本研究の方法 p.12
 第2章 参考文献 p.13

第3章 交通行動解析のための基礎データについて p.16
 3-1 ダイアリー調査について p.16
 3-2 新津市におけるダイアリー調査の概要 p.17
 3-3 徳島都市圏におけるダイアリー調査の概要 p.20
 第3章 参考文献 p.29

第4章 ツアーコンセプトによる交通行動ミクロシミュレーション・モデルの構築 p.30
 4-1 序言 p.30
 4-2 個人の意思決定過程 p.30
 4-3 ミクロシミュレーション・モデルの概要 p.31
 4-4 ミクロシミュレーション・モデルの検証 p.36
 4-5 結言 p.49
 第4章 参考文献 p.54

第5章 世帯構成員の生活行動を考慮したミクロシミュレーション・モデルの構築 p.55
 5-1 序言 p.55
 5-2 世帯内交通行動の因果関係の把握 p.55
 5-3 ミクロシミュレーション・モデルの概要 p.59
 5-4 ミクロシミュレーション・モデルの推定 p.61
 5-4-1 活動時間推計モデル p.62
 5-4-2 EIiを用いたNNモデルの説明変数評価 p.65
 5-4-3 NNモデルを用いたサブモデルの推定 p.67
 5-5 ミクロシミュレーション・モデルの検証と適用 p.80
 5-6 平日5日間のミクロシミュレーション・モデルの検討 p.83
 5-6-1 平日5日間の交通行動予測 p.83
 5-6-2 就業者の活動と交通行動の概要 p.88
 5-7 結論 p.97
 第5章 参考文献 p.99

第6章 就業者の1週間自宅外自由活動における活動時間・トリップ数決定の構造分析 p.100
 6-1 序言 p.100
 6-2 自由活動の定義 p.100
 6-3 使用するデータ p.101
 6-4 平休日の自由活動の実態分析 p.101
 6-4-1 活動選好水準および家事活動割合の実態 p.101
 6-4-2 平日5日と休日2日の実態調査 p.101
 6-4-3 平休日の曜日毎の実態分析 p.105
 6-5 平休日の自宅外自由活動の因果関係 p.107
 6-5-1 共分散構造モデルの推定 p.107
 6-5-2 平休日の因果関係の把握 p.111
 6-6 自宅外自由活動発生予測モデルの構築 p.114
 6-7 結語 p.120
 第6章 参考文献 p.123

第7章 結論 p.124

謝辞 p.127

巻末資料
・新津市ダイアリー調査票
・徳島都市圏ダイアリー調査票

 本研究の目的は,世帯主等を対象として,ニューラルネットワーク(NN)モデルを用いて,交通行動をより的確に表現し,交通需要予測を行うことが可能なミクロシミュレーション・モデルを構築すること,ならびに共分散構造モデルならびに1週間の自宅外自由活動発生モデルの構築を行い経日的な交通行動の関係を明らかにすることを目的とする.
 第2章では,既往のactivity-based approachに基づいた研究をサーベイし,本研究の目的を具体的に設定する.そして,本研究の方針を検討した.
 第3章では,ミクロシミュレーション・モデルの開発に使用する新津市ダイアリー調査データおよび徳島都市圏ダイアリー調査データについて述べる.
 第4章では,NNモデルを用いた交通行動ミクロシミュレーション・モデルを構築する.その際,Bowmanらが提案した「ツアーコンセプト」に基づきモデルシステムを応用した.さらに,個人の意志決定要素に着目すると,「各要素を同時に決定する場合」,「逐次的に決定する場合」,および「各要素の決定がそれぞれの要素を決定する時に影響を与える場合」という3つの決定過程が考えられるため,それぞれに対応した3つのモデルを構築し,適用性の検討を行う.その結果,「各要素の決定がそれぞれの要素を決定する時に影響を与える場合」の的中率が他の2つのモデルよりも良いことを示した.このことから,個人の交通行動を表現するには,意志決定要素を相互に考慮することが重要であることがわかった.また,各サブモデルの的中率から,NNモデルの適用性の高いことを示すことができた.
 第5章では,個人の交通行動は各世帯構成員の生活行動と何らかの関係があるとの認識から,世帯を分析単位とし,世帯主および配偶者の交通行動の再現をするミクロシミュレーション・モデルの開発を行った.その際,第4章で考慮できなかった時空間の関係を考慮した.そして,個々の意志決定を活動内容選択モデル,交通手段選択モデル等の複数のサブモデルでモデル化し,それらを組み合わせることでミクロシミュレーション・モデルを構成した.また,個々のサブモデルはNNモデルおよびDuration modelによって構築され,各未知パラメータの推定には,徳島都市圏ダイアリー調査から得られたデータを使用した.その結果,プリズム制約を考慮することの重要性が示され,サンプルの約7割の個人について生活行動を再現することが可能となった.また,本章で提案した評価値EIiを用いることにより,NNモデルにおける説明変数選択,ならびに外的基準に与える影響評価を行えることが確認できた.
 第6章は,経日的な交通行動を対象として,共分散構造モデルを用いて自宅外自由活動時間,個人属性など各要因間の因果関係について明らかにした.その結果,1週間を経日的にみると,月曜・火曜日の自由活動が水曜・木曜・金曜日の自由活動決定に,水曜・木曜・金曜日の自由活動が制約の少ない休日自由活動決定に関係しているという因果関係を実証した.このことから,経日的な交通行動の依存性が大きいことが確認できた.また,休日自由活動の決定には「男性世帯主指向」,「世帯規模」という属性だけではなく,「自宅外買物娯楽選考」といった個人の心理的な要因を含む個人属性との関係が大きいことが実証されたその結果を踏まえ1週間における仕事以外に自宅外での活動を行うか否かを表現できる自宅外自由活動発生予測モデルの構築をおこなった.この結果より,2つ目の目的である経日的な交通行動の依存性を把握できたことことは,本研究の中でも特筆すべき成果だと考える.
 最後に結論として,交通行動の再現性を高めることを可能としたミクロシミュレーション・モデルの成果,ならび経日的な交通行動の因果関係を明らかにし,1週間の自宅外自由活動発生予測モデルを構築できたたことなど,本研究で得られた知見を第7章でまとめる.

 本論文は、「生活行動を考慮した世帯主等の交通行動ミクロシミュレーション・モデルに関する研究」と題し、7章より構成されている。
 第1章は、序論で、研究の背景と目的、論文の構成を述べている。
 第2章は、既往のactivity-based approachに基づいた研究をサーベイし、本研究の目的を具体的に設定し、本研究の方針を検討している。
 第3章は、ミクロシミュレーション・モデルの開発に使用する新津市ダイアリー調査データおよび徳島都市圏ダイアリー調査データについて記述している。
 第4章は、ニューラルネットワーク(NN)モデルを用いた交通行動ミクロシミュレーション・モデルの構築について記述している。「ツアーコンセプト」に基づき、個人の意志決定過程を表す3つのモデルを構築し、適用性を検討した結果、意志決定要素を相互に考慮することが重要であること、およびNNモデルの適用性が高いことを示している。
 第5章は、世帯を分析単位とし、世帯主および配偶者の交通行動を再現するミクロシミュレーション・モデルの開発について記述している。複数のサブモデルで構成し、NNモデルおよびDuration modelによって構築し、プリズム制約を考慮することの重要性を示している。また本章で提案した評価値EIiが、NNモデルにおける説明変数の選択、ならびに外的基準に及ぼす影響評価を行うために有用であることを示している。
 第6章は、経日的な交通行動を対象として、共分散構造モデルを用いて自宅外自由活動時間の因果関係を分析し、経日的な交通行動の依存性が大きいことを確認している。その結果を踏まえ、1週間における自宅外自由活動の発生予測モデルを構築し、経日的な交通行動の依存性について記述している。
 第7章は、第2章から6章までの総括を記述し、今後の研究課題について考察している。
 以上のように本論文は、ツアーコンセプトの概念に基づき、ニューラルネットワーク(NN)モデルを用いて、個人の交通行動を表現することが可能であり、世帯構成員の生活行動を考慮することにより1日の交通行動の再現性を向上できること、および経日的な生活行動の依存性を考慮することにより1週間の交通行動を再現性良く予測できることを実証している。本論文は、交通行動ミクロシミュレーション・モデルの開発について有用な技術を提供しており、工学上および工業上貢献するところが大きき、博士(工学)の学位論文として十分は価値を有するものと認める。

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