Structural performance of concrete members reinforced with continuous fiber rope (連続繊維ロープにより補強されたコンクリート部材の構造性能)
氏名 Nguyen Hung Phong
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第386号
学位授与の日付 平成18年8月31日
学位論文題目 Structural performance of concrete members reinforced with continuous fiber rope (連続繊維ロープにより補強されたコンクリート部材の構造性能)
論文審査委員
主査 助教授 下村 匠
副査 教授 長井 正嗣
副査 助教授 高橋 修
副査 副学長 丸山 久一
副査 北海道大学大学院工学研究科 教授 上惰 多門
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TABLE OF CONTENTS
ACKNOWLWDGEMENTS p.i
ABSTRACT p.ii
TABLE OF CONTENTS p.iv
1 INTRODUCTION p.1
1.1 Research background and purpose p.1
1.1.1 Continuous fiber reinforced concrete p.1
1.1.2 Continuous fiber rope p.3
1.1.3 Purpose of the study p.4
1.2 Structure of the dissertation p.4
References p.6
2 REVIEW OF PREVIOUS RESEARCH ON CONTINUOUS FIBER REINFORCEMENT FOR CONCRETE STRUCTURES p.7
2.1 Research on shear strengthening of RC beams with continuous fiber reinforcements p.7
2.1.1 Research on continuous fiber rods p.7
2.1.2 Research on continuous fiber sheets p.9
2.2 Research on seismic retrofitting of RC columns with continuous fiber sheets p.12
2.2.1 Research on conventional continuous fiber sheets p.12
2.2.2 Research on continuous fiber with large fracturing strain p.14
References p.16
3 TENSILE TEST OF CONTINUOUS FIBER ROPE p.18
3.1 Introduction p.18
3.2 Development of method for tensile test of continuous fiber rope p.18
3.2.1 Details of test pieces for tensile test p.18
3.2.2 Preparation of the test pieces p.20
3.2.3 Pressure of expensive grout p.21
3.2.4 Tensile test setup p.22
3.2.5 Test results p.22
3.3 Tensile properties of continuous fiber ropes p.25
3.3.1 Aramid continuous fiber ropes p.25
3.3.2 Vinylon continuous fiber rope p.28
3.4 Conclusions p.29
References p.29
4 SHEAR STRENGTHENING OF RC BEAMS BY INTERNAL CONTINUOUS FIBER ROPE REINFORCEMENT p.31
4.1 Introduction p.31
4.2 Details of beam speciments p.31
4.3 Preparation of beam specimens p.34
4.3.1 Preparation of specimens with internal continuous fiber rope reinforcement p.34
4.3.2 Preparation of specimen with external continuous fiber rope reinforcement p.35
4.4 Loading test method p.36
4.5 Test results and discussion p.38
4.5.1 Maximum load and load-displacement curves p.38
4.5.2 Failure mode p.39
4.5.3 Development of strain of continuous fiber rope stirrups p.41
4.6 Shear contribution of continuous fiber rope stirrup p.43
4.6.1 Experimental results p.43
4.6.2 Calculation by JSCE recommendation p.44
4.6.3 Calculation based on real crack patterns p.46
4.7 Comparison of shear strengthening mechanism of continuous fiber ropes, sheets and rods p.47
4.8 Conclusions p.49
References p.49
5 PREPARATORY EXPERIMENT ON STRENGTHENING OF RC MEMBERS BY EXTERNAL CONTINUOUS FIBER ROPE REINFORCEMNT p.51
5.1 Introduction p.51
5.2 Speciments p.51
5.3 Retrofitting procedure p.53
5.3.1 Grinding surface and corner p.54
5.3.2 Arrangement of continuous fiber rope p.54
5.3.3 Jacketing p.55
5.4 Loading test method p.57
5.5 Test results and discussion p.58
5.5.1 Load-displacement curves p.58
5.5.2 Development of strain of continuous fiber rope p.59
5.5.3 Crack patterns and failure mode p.60
5.6 Conclusions p.61
References p.62
6 SEISMIC RETROFITTING OF RC COLUMNS WITH CONTINUOUS FIBER ROPE AND CONCRETE JACKET p.63
6.1 Introduction p.63
6.2 Specimens p.63
6.2.1 Column specimens before retrofitting p.63
6.2.2 Column specimens after retrofitting p.67
6.2.3 Retrofitting procedure p.67
6.2.4 Comparison between continuous fiber rope and continuous fiber sheet
6.3 Loading test method p.72
6.4 Test results and discussion p.75
6.4.1 Load-displacement curves p.75
6.4.2 Development of strain of continuous fiber rope p.78
6.4.3 Load-carrying mechanism and failure modes p.81
6.4.4 The role of continuous fiber rope p.85
6.4.5 The role of concrete jacket p.85
6.5 Conclusions p.86
References p.86
7 CONCLUSIONS p.88
7.1 Conclusions p.88
7.2 Recommendations for future research p.89
APPENDICES p.91
Appendix A-1 p.91
Appendix A-2 p.93
References p.96
本論文はロープ状の連続繊維をコンクリート用の補強材として用いるための検討過程について述べたものである。
鉄筋に代わるコンクリート用補強材として、炭素、アラミド、ガラスなどの連続繊維にエポキシなどの樹脂を含浸・硬化させてFRP化した連続繊維補強材が1980年代に開発された。その形態として、鉄筋のような棒材をはじめ、格子状、メッシュ、板、シートなどさまざまな形態が試みられた。連続繊維補強材は、錆びない、軽量である、成形性に富むなど、鉄筋にない特長を持つので、当初は鉄筋にとって代わって普及することが期待された。しかし、鉄筋に比べて高価であること、降伏する性質を有しないことなどから、鉄筋代替としては使いにくいことが次第に明らかとなった。今日では、連続繊維補強材の利用としては、既存コンクリート構造物の表面に連続繊維シートを樹脂により接着する耐震補強工法が比較的適用されているに過ぎない。
本研究は、従来コンクリート用補強材としては利用が検討されていないロープ状の連続繊維を用いることに着想を得て行なったものである。ロープ状であることの利点である現場での成形性を積極的に生かすため、手で据え付けるだけとし、エポキシ等の樹脂の含浸を行なわないことにした。すなわち、FRP化するのではなく、繊維のみをコンクリート中に埋設し補強材として用いることを開発の基本思想とした。FRP化されていないので、ロープは柔らかく、現場で人間の手で所定の配筋位置に簡単に据え付けることができる。また、現場での樹脂含浸作業がないことは、工程が簡略化されるだけなく、作業環境の向上にも貢献することが期待される。このような特長を生かした用途に特化すれば、ロープ状連続繊維補強材は十分実用の可能性があると考えたのである。
本論文1章では、棒材、グリッド、シートなどのコンクリート用連続繊維補強材を紹介し、本研究の背景について述べている。
本論文2章では、本研究に関係が深い連続繊維補強材を用いたコンクリート部材の耐荷性状に関する既往の研究について紹介している。
本論文3章では、ロープ状連続繊維補強材をコンクリート用補強材として用いる際に設計上必要な引張特性である引張強度と弾性係数についての試験方法を検討している。連続繊維は素材としての引張強度は高いが、せん断には弱いため、引張試験の際の定着部に工夫を要する。鉄筋や金属片の引張試験の定着具を用いるとそこで破断してしまう。そこで、連続繊維棒材の試験方法にならい、鋼管の中に連続繊維を入れその間に膨張材を充填することで、均一に力を伝達する方法を試みた。さらに定着部のみロープに樹脂含浸を施すことにより、定着部での破断の可能性を小さくすることに成功し、安定した引張特性の試験値を得ることができた。
本論文4章では、連続繊維ロープをコンクリート打設当初からコンクリート中に埋設し、せん断補強筋としての使用を検討している。軸方向筋に鉄筋を、せん断補強筋に連続繊維ロープを用いたコンクリートはりを載荷試験した。コンクリートにせん断ひび割れ発生後に連続繊維ロープがせん断力を受け持ち、部材のせん断耐力を向上させることが明らかとなった。そのせん断補強効果は、トラスモデルにより表されることが確認された。
本論文5章では、連続繊維ロープの施工の簡便性をより生かした利用法として既存コンクリート部材の補強への利用を検討した。樹脂を用いないので繊維を外部から保護する工夫が必要であること、およびひび割れ発生後に繊維が有効に力を受け持つには既存部材との付着が必要あることから、既存部材の表面に連続繊維ロープを巻き付け、その上からコンクリートで被覆する工法を考案した。5章では、ロープによる巻き立てとコンクリートによる被覆を組み合わせることの実現可能性を検討するために、はり供試体で試験を行なった。数センチのコンクリートの被覆により、コンクリートと連続繊維ロープとの付着の効果が見られ、ひび割れ発生後ロープが力を受け持つメカニズムが確認された。
本論文6章では、連続繊維ロープ巻き立てとコンクリート被覆を併用する工法の適用目標である、鉄筋コンクリート柱部材の耐震補強について実験を行なった。柱供試体に本工法を適用し、正負交番載荷試験を行なった。被覆コンクリートにひび割れが生じるとただちにロープが力を受け持つことが確認された。載荷が進むにつれて被覆コンクリートは徐々にひび割れ、部分的に剥離するが、ロープが内部のコンクリートを拘束することにより、部材は崩壊することなく耐荷メカニズムを維持し、じん性が向上することが明らかとなった。既往の研究における連続繊維シートによる補強と同等のじん性向上効果があることが確認された。
本論文7章では、本研究で得られた結論をまとめている。
本論文「Structural performance of concrete members reinforced with continuous fiber rope (連続繊維ロープにより補強されたコンクリート部材の構造性能)」と題し、7章より構成されている。
第1章では、本研究の背景について述べている。鉄筋に代わるコンクリート用補強材として、炭素、アラミド、ガラスなどの連続繊維を、鉄筋のような棒材、格子状、メッシュ、板、シート状などの形態に成形した連続繊維補強材が開発され、利用が試みられてきたことを紹介している。本研究は、従来コンクリート用補強材としては利用が検討されていないロープ状の連続繊維を用いることに着想を得て行なったものであるとの立場を述べている。
第2章では、本研究に関係が深い連続繊維補強材を用いたコンクリート部材の耐荷性状に関する既往の研究について取りまとめている。
第3章では、ロープ状連続繊維補強材をコンクリート用補強材として用いる際に設計上必要な引張特性である引張強度と弾性係数についての試験方法を検討している。定着部に膨張材を充填した鋼管を用い、さらに定着部の繊維をエポキシ樹脂で補強することにより、定着部での破断の可能性を小さくし、安定した引張特性の試験値を得ることに成功している。
第4章では、連続繊維ロープをコンクリート打設当初からコンクリート中に埋設し、せん断補強筋としての使用を検討している。軸方向筋に鉄筋を、せん断補強筋に連続繊維ロープを用いたコンクリートはりの載荷試験を行い、コンクリートにせん断ひび割れ発生後に連続繊維ロープがせん断力を受け持ち、部材のせん断耐力を向上させることが明らかにしている。またそのせん断補強効果はトラスモデルにより表されることを確認している。
第5章、第6章では、連続繊維ロープの施工の簡便性をより生かした利用法として既存コンクリート部材の耐震補強への利用を検討している。第5章では、既存部材の表面に連続繊維ロープを巻き付け、その上からコンクリートで被覆する補強工法の施工方法、基本的な補強効果をはり供試体により検討している。第6章では、本耐震補強工法を鉄筋コンクリート柱供試体に適用し、正負交番載荷試験によりじん性補強効果を確認している。ロープが内部のコンクリートを拘束することにより、繰返し荷重を受けての大変形のもとでも部材は崩壊することなく耐荷メカニズムを維持し、じん性が向上することを明らかにした。本補強工法は既往の研究における連続繊維シートによる補強と同等のじん性向上効果があることを確認し、実用上十分な耐震補強効果があることを結論付けている。
第7章では、本研究で得られた結論をまとめている。
以上より、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。