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ツインドライブシステムの高性能化とそのモーションコントロールへの応用

氏名 大場 譲
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第419号
学位授与の日付 平成19年3月26日
学位論文題目 ツインドライブシステムの高性能化とそのモーションコントロールへの応用
論文審査委員
 主査 教授 大石 潔
 副査 教授 近藤 正示
 副査 助教授 野口 敏彦
 副査 助教授 伊東 淳一
 副査 慶應義塾大学教授 大西 公平

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第1章 序論 p.1
 1.1 研究背景 p.1
 1.2 研究目的 p.5
 1.3 論文の構成 p.6

第2章 ツインドライブシステムによる摩擦フリーモーション p.9
 2.1 はじめに p.9
 2.2 ツインドライブシステムによる摩擦補償 p.10
 2.3 ツインドライブシステムの諸特性 p.16
 2.4 まとめ p.20

第3章 1次共振周波数を考慮したツインドライブシステムのモデル化とその制御法 p.23
 3.1 はじめに p.23
 3.2 2慣性共振モデルを用いたツインドライブシステム p.25
 3.3 制振制御系を利用したツインドライブシステムの広帯域化 p.28
 3.4 ツインドライブシステムの不平衡摩擦補償 p.36
 3.5 既約分解表現を用いたロバスト速度制御系 p.39
 3.6 まとめ p.48

第4章 2次共振周波数まで考慮したツインドライブシステムの制御法 p.51
 4.1 はじめに p.51
 4.2 3慣性共振モデルを用いたツインドライブシステム p.52
 4.3 2慣性状態フィードバックによる2次共振モードの抑圧 p.56
 4.4 2慣性状態フィードバックによる制振制御系の設計結果 p.65
 4.5 実験結果 p.67
 4.6 まとめ p.70

第5章 ツインドライブシステムを用いた摩擦フリーバイラテラルシステム p.73
 5.1 はじめに p.73
 5.2 バイラテラルシステム p.74
 5.3 まとめ p.87

第6章 既約分解表現を用いたロバスト加速度制御系 p.89
 6.1 はじめに p.89
 6.2 制御剛性 p.90
 6.3 加速度制御系 p.92
 6.4 既約分解表現を用いた加速度制御系 p.95
 6.5 既約分解表現を用いたロバスト制御系のリニアモータシステムへの実装 p.97
 6.6 まとめ p.105

第7章 結論 p.107
 7.1 本研究による成果 p.107
 7.2 今後の課題 p.109

付録A 非線形摩擦特性 p.111
 A.1 物体の静止時に働く摩擦 p.112
 A.2 物体の動作時に働く摩擦 p.113
 A.3 摩擦による問題とその補償法 p.114

付録B 2慣性共振系への既約分解表現を用いたロバスト制御系を設計する際の注意点 p.117

 高性能広帯域ロボットモーション制御では、摩擦の影響の無いアクチュエータが望まれる。摩擦や共振の影響のないアクチュエータとして、リニアモータが近年盛んに用いられているが、その可動範囲とパワーレートの問題からすべてのシステムに適用するのは困難である。そのため通常のロボットでは減速機と回転型サーボモータが用いられるのが一般的である。回転型サーボモータに摩擦フリーシステムを提供するツインドライブシステムと呼ばれる機構が提案されてきた。ツインドライブシステムを用いることで、減速機を用いた回転型サーボモータでも摩擦フリーシステムを実現できる。しかしながらその高性能広帯域化はツインドライブシステムが共振特性を持つため難しい問題であった。本論文では、その問題を解決するためツインドライブシステムの詳細モデルを作成する。提案する詳細モデルは共振現象やパラメータ誤差を考慮しているモデルであり、本モデルを用いることでさらなる性能向上を見込むことができる。また本論文では作成したモデルに対し、振動現象を抑圧する制御系を新しく提案する。本制御法によって多くのロボットシステムに適用できる高性能摩擦フリーアクチュエータが実現可能となる。ツインドライブシステムを用いた実機実験により、その有効性を検証した。
 第1章では、本研究の背景となる技術的な歴史および目的を述べ、本研究の意義、位置づけを明らかにした。
 第2章では、非線形摩擦特性について述べ、その補償方法について述べている。非線形摩擦がモーションコントロールに与える影響について、その摩擦の作動原理から述べ、摩擦特性について明らかにする。またその摩擦特性を補償する制御技術について例を挙げ、制御による摩擦補償の有効性と問題点を述べる。次に機構的に摩擦の補償を行えるツインドライブシステムについて説明する。ツインドライブシステムによる摩擦補償についてその基本構造と、制御方法について述べ、シミュレーション及び実験により有益性を確認する。
 第3章では、第2章で理想形として扱ってきたツインドライブシステムの特性について言及する。通常ギアを用いたシステムでは、その軸剛性の低下から共振現象を起こすことがよく知られている。本章ではツインドライブシステムを1次共振のみを持つ、2慣性系であるとしてモデリングを行い、その妥当性を検証する。そして提案するモデルに対してその振動現象を押さえる制御系を提案しその有効性を確認する。また第2章においては、使用するモータパラメータがすべて同一である前提で行ってきたが、実際にはそのようなことはまれであり、パラメータ誤差が摩擦補償性能に影響を与える。本章ではパラメータ誤差がシステムに与える影響について考察し、そこでパラメータ誤差が最小となるようなツインドライブシステムの駆動法を提案する。
 第4章では、第3章で提案した2慣性モデルをさらに詳細なモデルとし、3慣性モデルによるツインドライブシステムを提案する。3慣性系でツインドライブシステムをモデル化することによりシステムの2次共振の影響まで考慮することができる。本章では3慣性系でモデリングしたシステムに対して、制御器の次数を上げずに2次共振の影響までを抑圧できる制振制御系を提案する。提案する制振制御系は2慣性モデルに対して設計した制振制御系の構造と同構造をとっており、これにより制御系の次数を上げることなく、振動を抑えることができる。提案する制振制御系はCDM(係数図法)を応用して制御器を設計することで、安定度と応答速度の両方の面から設計しやすくしている。本提案法の有効性は実験により示している。
 第5章では、前章までに提案してきたツインドライブシステムをバイラテラルシステムに応用する。まずバイラテラルシステムの基本的理論について述べ、制振制御を行ったツインドライブシステムを力帰還型バイラテラルシステムに応用することで、その有効性を確認する。また本章では加速度制御を中心としたバイラテラル制御に関する諸理論を説明し、その有効性について論じる。加速度制御系を中心とした諸理論の有効性をシミュレーションにより確認し、さらなる帯域の向上が可能であることを提示する。
 最後に第6章において本論文を総括し、提案する制御法の有効性と問題点をあげ、今後の課題についてまとめる。
 以上の結果よりツインドライブシステムの高性能化技術を確立したことは、工学的、社会的に意義のあるものである。

 本論文は、「ツインドライブシステムの高性能化とそのモーションコントロールへの応用」と題し、7章より構成されている。
 第1章では、本研究の背景となる技術的な歴史および目的を述べ、本研究の意義、位置づけを明らかにしている。
 第2章では、非線形摩擦特性について述べ、機構的に摩擦の補償を行えるツインドライブシステムについて説明している。より高性能な制御を目指し、ツインドライブシステムの周波数特性、摩擦補償特性を示し、実験機により検証を行っている。
 第3章では、理想形として扱ってきたツインドライブシステムの共振周波数を考慮したモデルを提案している。本章ではツインドライブシステムを1次共振のみを持つ、2慣性系であるとしてモデリングを行い、その妥当性を検証している。提案するモデルに対してその振動現象を押さえる制御系を提案しその有効性を確認検証している。また本章ではパラメータ誤差がシステムに与える影響について考察し、パラメータ誤差が最小となるようなツインドライブシステムの駆動法を提案している。
 第4章では、第3章で提案したモデルをさらに詳細なモデルとし、2次共振周波数を考慮した3慣性モデルによるツインドライブシステムを提案している。本章では3慣性系でモデリングしたシステムに対して、制御器の次数を上げずに2次共振の影響までを抑圧できる制振制御系を提案している。提案する制振制御系は2慣性モデルに対して設計した制振制御系の構造と同構造をとっており、これにより制御系の次数を上げることなく、振動を抑えることを可能としている。本提案法の有効性は実験により確認されている。
 第5章では、前章までに提案してきたツインドライブシステムをバイラテラルシステムに応用している。制振制御を行ったツインドライブシステムを力帰還型バイラテラルシステムに応用することで、本論文の有効性を確認している。
 第6章では既約分解表現を用いた加速度制御を説明し、その有効性について論じている。加速度制御系を中心とした諸理論の有効性をシミュレーションにより確認し、さらなる帯域の向上が可能であることを提示している。
 最後に第7章では本論文で得られた研究成果をまとめ総括している。
 以上のように、本論文ではツインドライブシステムの新しいモデルと制御法を確立し、より高性能なモーション制御システムを実現している。よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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