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有機ケイ素化合物を用いたSi(001)上への高品質SiCヘテロエピタキシャル成長に関する研究

氏名 成田 克
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第303号
学位授与の日付 平成16年3月25日
学位論文題目 有機ケイ素化合物を用いたSi(001)上への高品質SiCヘテロエピタキシャル成長に関する研究
論文審査委員
 主査 助教授 安井 寛冶
 副査 教授 赤羽 正志
 副査 教授 井上 泰宣
 副査 教授 高田 雅介
 副査 講師 木村 宗弘

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目次
第1章 序論 p.1
 1.1 諸言 p.1
 1.2 炭化ケイ素(SiC)について p.2
 1.3 立方晶SiC(3C-SiC)結晶成長法 p.4
 1.4 有機ケイ素化合物を用いた3C-SiC成長 p.6
 1.5 本研究の背景と目的 p.7
 1.6 論文構成 p.10
 参考文献 p.13

第2章 MMSおよびDMSを用いたSi(001)清浄表面-(2×1)上での3C-SiC成長初期過程の観察 p.17
 2.1 諸言 p.17
 2.2 実験 p.18
 2.2.1 実験装置 p.18
 2.2.2 実験方法及び実験条件 p.18
 2.3 評価方法 p.22
 2.3.1 表面構造変化 p.22
 2.3.2 表面モフォロジー p.22
 2.3.3 c(4×4)表面における結合状態 p.24
 2.3.4 SiC/Si断面構造 p.24
 2.4 実験結果及び考察 p.25
 2.4.1 成長時における基板温度依存性 p.25
 2.4.2 RHEEDパターン変化 p.28
 2.4.3 RHEED回折強度プロファイル p.32
 2.4.4 RHEED回折強度プロファイルによるc(4×4)表面の評価 p.35
 2.4.5 XPS測定によるc(4×4)表面の評価 p.37
 2.4.6 STM測定によるc(4×4)表面の観察 p.42
 2.4.7 初期成長速度 p.44
 2.4.8 STM観察とRHEED回折強度プロファイルの比較・検討 p.46
 2.4.9 連続膜のAFM及び断面SEM観察 p.57
 2.4.10 SiC核発生時のAFM観察 p.61
 2.5 小括 p.65
 参考文献 p.69

第3章 DMSを用いた水素終端Si(001)上での3C-SiC成長初期過程の観察 p.71
 3.1 諸言 p.71
 3.2 実験 p.72
 3.2.1 実験装置 p.72
 3.2.2 実験方法及び実験条件 p.74
 3.3 評価方法 p.75
 3.4 実験結果及び考察 p.76
 3.4.1 成長時における基板温度依存性 p.76
 3.4.2 核発生温度 p.78
 3.4.3 1000℃までの昇温速度の違いによる表面モフォロジーへの影響 p.81
 3.4.4 800℃までの昇温速度の違いによる表面モフォロジーへの影響 p.84
 3.4.5 酸化膜上へのSiC成長 p.87
 3.5 小括 p.93
 参考文献 p.95

第4章 DMSを用いた減圧CVD法による3C-SiC膜の成長 p.97
 4.1 諸言 p.97
 4.2 実験 p.98
 4.2.1 実験装置 p.98
 4.2.2 実験方法及び実験条件 p.98
 4.3 評価方法 p.101
 4.3.1 堆積速度 p.101
 4.3.2 結晶性 p.101
 4.3.3 表面モフォロジー p.102
 4.3.4 SiC/Si断面構造 p.102
 4.4 実験結果及び考察 p.102
 4.4.1 堆積速度 p.102
 4.4.2 低温層形成 p.105
 4.4.3 SiC成長における昇温速度依存性 p.109
 4.4.4 SiC成長における降温速度依存性 p.112
 4.4.5 SiC成長後のアニール効果 p.114
 4.5 小括 p.118
 参考文献 p.121

第5章 結論 p.123
謝辞 p.127
本研究に関する発表論文及び学会発表 p.129

付録A Ge粒子ドット p.135
 A.1 諸言 p.135
 A.2 Si基板上のGe粒子ドット作製 p.137
 A.3 有機ケイ素化合物によって形成されたSi(001)-c(4×4)構造表面のGeドット用テンプレートとしての可能性 p.139
 参考文献 p.143

地球環境保全及び化石燃料の枯渇の観点から、エネルギーの節減と利用の効率化が重要であり、特に、電気エネルギーの高効率化は極めて重要である。その電気エネルギーの利用には多くのシリコン(Si)で構成されたパワーデバイスが使用されているが、Si本来の物性に起因する性能限界が近づいており、更なる高耐圧化は期待できない。また、砒化ガリウム(GaAs)を用いた高周波デバイスにおいては、より一層の大容量高速通信デバイスの実現には、耐圧や耐熱性に問題があり、同様に限界に近づきつつある。現在、それらの問題を解決するため、SiやGaAsよりも優れた物理的性質を有する炭化ケイ素(SiC)を用いたデバイス作製が盛んに試みられている。しかし、基板には高価な六方晶系である6H-と4H-SiCが使われているため、デバイスのコストを押し上げており、基板の低コスト化が課題となっている。
本研究は、安価なSi基板上へヘテロエピタキシャル成長が可能であるため低コスト化及び大面積化が期待できる立方晶SiC(3C-SiC)を、シラン系ガスよりも安全性の高いモノメチルシラン(MMS)及びジメチルシラン(DMS)といった有機ケイ素化合物を用いて、高品質なSiC膜を作製することを目的として研究を行った。
第1章では、現在の半導体デバイスの現状と問題点を述べ、それを解決する材料として期待されているSiCの特徴及び課題を示すとともに、有機ケイ素化合物を用いたSi基板上へのSiCヘテロエピタキシャル膜成長の必要性を述べ、本研究の目的及び本論文の構成を示した。
第2章では、Si(001)-( )表面上でのMMS及びDMSを用いたSiC成長初期過程の観察の結果について述べた。両原料ガス共に650-750℃の温度範囲でSiCの成長が確認され、また、炭化水素系ガスと同様な表面構造変化を示し、SiC核発生前にc(4 )構造が現れた。この構造は、原料分子中に含まれる炭素(C)原子のSi基板内への拡散により形成されていることが分かった。また同時に原料分子中のSi原子は表面に存在するダイマー欠損を修復していることを見出した。SiC核は、c(4 )領域上に形成されると推察され、SiC核周辺のダイマーからの水素脱離によって成長が律速していることが分かった。以上の結果から、MMS及びDMSは、GSMBE法においてSiC成長前に行われる低温層(炭化層)形成用ガスとして有効であると同時に、低温層形成からSiC成長まで単一原料で高品質なSiC膜が作製できることを示した。また、両原料ガスを用いた場合のSiC核発生密度を比較したところ、DMSを用いた方が核発生密度が高く、成長初期に均質なSiC膜が形成されることを見出し、CVD法を用いてSiC成長を行う場合、成長初期には原料ガスとして核発生密度の高いDMSの使用が望ましいことを示した。
第3章では、CVD法で一般的に使用される水素終端化処理が施されたSi(001)上でのSiC成長初期過程の観察を超高真空中で行った結果について述べた。( )表面上での結果とは異なり、750℃以上でSiC核の発生が見られ、また、800℃以上でSiCの成長が確認され、SiC核発生温度及びSiC成長温度はともに高かった。更に、成長温度及び昇温速度が表面モフォロジーに多大な影響を与えることを見出した。昇温速度が遅い場合、昇温速度が速い場合と比較して核発生密度が高く、結果としてボイドの密度は減少し、表面モフォロジーの改善につながることが分かった。また、800℃という成長温度は、清浄表面上でSiC膜が成長する温度よりは若干高いものの、CVD法による炭化水素系ガスを用いた炭化層形成温度よりも十分に低く、水素終端表面上でもDMSは低温層形成用ガスとして利用できることを示した。
第4章では、前章で得られた実験結果を基に、水素希釈したDMSを用いたCVD法による、水素終端表面上へのSiC成長を行った結果について述べた。結晶SiC膜は950℃以上で得られ、一方950℃より低温ではアモルファス膜しか得られず、DMSを用いた低温層形成による高品質化は望めず、この低温層導入に頼らない成長プロセスが必要であることが判明した。そこで、成長プログラムにおける昇温速度及び降温速度を変えて、高品質化を図った。第3章で得られた結果と同様に、昇温速度が遅い場合、核発生密度が向上し、表面モフォロジーの改善と共にSiC/Si界面に発生するボイドのサイズを縮小させることができた。一方、降温速度を大きくすることにより、降温中でのSiC成長が抑えられ、結果として表面モフォロジーが改善された。更に、降温前にDMS供給を停止し、水素雰囲気中でのアニールを行うことにより、更なる表面モフォロジーの改善が得られた。
第5章では、以上の各章で得られた結果を総括し、本論文の結論とした。

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