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蒸気タービン用部材の高温フレッティング疲労に関する研究

氏名 佐藤 豊一
学位の種類 工学博士
学位記番号 博甲第23号
学位授与の日付 平成2年3月26日
学位論文の題目 蒸気タービン用部材の高温フレッティング疲労に関する研究
論文審査委員
 主査 助教授 武藤 睦治
 副査 教授 坂本 勲
 副査 教授 矢田 敏夫
 副査 教授 田中 紘一
 副査 教授 久曽神 煌
 副査 大阪大学 教授 大路 清嗣

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目次
第1章 序論 p.1
第2章 12Cr-Mo-W-V鋼の高温フレッティング疲労特性 p.8
2-1 緒言 p.8
2-2 供試材および実験方法 p.8
2-2-1 供試材および試験温度 p.8
2-2-2 繰返し応力ひずみ特性試験 p.10
2-2-3 通常疲労試験 p.12
2-2-4 フレッティング疲労試験 p.12
2-2-4-1 フレッティング疲労試験 p.12
2-2-4-2 摩擦力測定法 p.15
2-2-4-3 相対すべり振幅測定法 p.18
2-2-4-4 表面粗さ測定 p.18
2-2-4-5 SEM観察 p.18
2-2-5 フレッティング中断疲労試験 p.21
2-2-6 疲労き裂伝ぱ試験 p.21
2-3 実験結果 p.23
2-3-1 繰返し応力ひずみ特性試験結果 p.23
2-3-2 通常疲労試験結果 p.25
2-3-3 フレッティング疲労試験結果 p.25
2-3-3-1 フレッティング疲労寿命および疲労限 p.25
2-3-3-2 相対すべり振幅および摩擦係数の測定結果 p.28
2-3-3-3 フレッティング損傷 p.30
2-3-3-4 フレッティング疲労破面 p.30
2-3-3-5 フレッティング部縦割断面の観察結果 p.30
2-3-4 フレッティング中断疲労試験結果 p.33
2-3-5 疲労き裂伝ぱ試験結果 p.36
2-4 考察 p.39
2-4-1 高温フレッティング疲労限におよぼす酸化の影響 p.39
2-4-2 フレッティング疲労におよぼす治具鋼性の影響 p.39
2-4-3 フレッティング疲労寿命の推定 p.40
2-5 結言 p.45
第3章 Cr-Mo-V鋼の高温フレッティング疲労特性 p.47
3-1 緒言 p.47
3-2 供試材および実験方法 p.47
3-2-1 供試材および試験温度 p.47
3-2-2 繰返し応力ひずみ特性試験 p.49
3-2-3 通常疲労試験 p.49
3-2-4 フレッティング疲労試験 p.49
3-2-5 フレッティング中断疲労試験 p.50
3-3 実験結果 p.53
3-3-1 繰返し応力ひずみ特性試験結果 53
3-3-2 通常疲労試験 p.54
3-3-3 フレッティング疲労試験結果 p.54
3-3-4 フレッティング中断疲労試験結果 p.64
3-4 考察 p.67
3-4-1 フレッティング損傷および疲労限におよぼす酸化の影響 p.67
3-4-2 フレッティング疲労寿命の推定 p.68
3-5 結言 p.72
第4章 高温フレッティング疲労におよぼす平均応力の影響 p.73
4-1 緒言 p.73
4-2 供試材および実験方法 p.73
4-2-1 供試材 p.73
4-2-2 疲労試験 p.73
4-2-3 疲労き裂伝ぱ試験 p.75
4-3 実験結果および考察 p.77
4-3-1 疲労試験結果(修正Goodmanの方法による検討) p.77
4-3-2 相対すべり振幅および摩擦係数の測定結果 p.82
4-3-3 疲労き裂伝ぱ試験結果 p.84
4-3-4 フレッティング疲労寿命推定 p.89
4-4 結言 p.92
第5章 実機稼動を模擬した変動荷重下の高温フレッティング疲労特性 p.93
5-1 緒言 p.93
5-2 供試材におよび実験方法 p.93
5-2-1 供試材および実験装置 p.93
5-2-2 実機稼動を模擬した変動荷重波形 p.95
5-2-3 ランダム荷重波形 p.97
5-2-4 フレッティング疲労試験 p.98
5-2-5 疲労き裂伝ぱ試験 p.99
5-3 実験結果 p.102
5-3-1 ブロック荷重下のフレッティング疲労試験結果 p.102
5-3-2 ブロック荷重下の通常およびフレッティング疲労試験結果 p.102
5-3-3 相対すべり振降および摩擦係数の測定結果 p.105
5-3-4 フレッティング損傷 p.105
5-3-5 フレッティング疲労破面 p.105
5-3-6 疲労き裂伝ぱ試験結果 p.108
5-4 考察 p.110
5-4-1 修正マイナー則による検討 p.110
5-4-2 ブロック荷重下でのフレッティング疲労寿命におよぼすブロックの繰返し数の影響 p.112
5-4-3 破壊力学手法に基づくフレッティング疲労寿命の推定 p.114
5-5 結言 p.116
第6章 高温フレッティング疲労強度のショットピーニングによる改善 p.117
6-1 緒言 p.117
6-2 供試材および実験方法 p.117
6-2-1 供試材 p.117
6-2-2 実験方法 p.118
6-2-2-1 フレッティング疲労試験 p.118
6-2-2-2 残留応力測定法 p.119
6-3 実験結果 p.121
6-3-1 フレッティング疲労試験結果 p.121
6-3-1-1 フレッティング疲労特性 p.121
6-3-1-2 摩擦係数の測定結果 p.121
6-3-2 残留応力測定結果 p.124
6-4 考察 p.127
6-4-1 フレッティング疲労強度におよぼすショットピーニング処理の影響 p.127
6-4-2 ショットピーニング材のフレッティング疲労寿命推定 p.133
6-5 結言 p.138
第7章 フレッティングき裂の応力拡大係数の有限要素法による解析 p.140
7-1 緒言 p.140
7-2 応力拡大係数解析p. 140
7-2-1 計算モデル p.140
7-2-2 応力拡大係数の計算 p.144
7-3 解析結果および考察 p.146
7-3-1 簡略化モデルと有限要素モデルの比較 p.146
7-3-2 接触面圧による応力拡大係数 p.146
7-3-3 接触面圧を考慮したフレッティング疲労寿命推定 p.150
7-4 結言 p.152
第8章 結論 p.153
参考文献 p.157
謝辞 p.162

 近年の発電用プラントの高出力化、高効率化にともない、使用条件の厳しくなりつつある蒸気タービンにおいて、高温フレッティング疲労が問題になってきている。そこで本研究では、現在までの研究では取り扱われていない蒸気タービン用鋼をとりあげ、高温フレッティング疲労試験を行い、それらの基本的な高温フレッティング疲労特性を調べるとともに、実機稼動を模擬した不規則波下での特性や高温フレッティング疲労強度の改善、さらに、破壊力学的手法による高温フレッティング疲労寿命の推定法を検討した。
 第1章「緒論」では、フレッティング疲労の研究の重要性および本研究で注目している蒸気タービンでのフレッティング疲労の発生例について述べ、本研究の意義と目的を明らかにした。
 第2章「12Cr-Mo-W-V鋼の高温フレッティング疲労特性」では、フレッティング疲労特性を力学的に扱うために必須の因子である摩擦力および押し付け力を高温で制御、測定可能とするために試作した治具について記述し、さらにそれを用いたフェライト系ステンレス鋼12Cr-Mo-W-V鋼の高温フレッティング疲労試験結果などを詳細に述べた。
 本供試材のフレッティングによる疲労寿命および疲労限の低下は室温および773Kともに顕著であること、試験片と接触材間の摩擦係数は、相対すべり振幅または応力振幅に比例して上昇するが、巨視的すべりの生じる領域に入るとほぼ一定値に飽和し、その飽和値は室温および773Kともに0.8程度であるあることを示した。また、フレッティング疲労試験を中断し、通常疲労試験を行うフレッティング中断疲労試験結果から、フレッティングき裂の摩擦力による加速およびき裂形状の変化の様子を示した。さらに、疲労き裂伝ぱ試験結果とともに、フレッティング中断疲労試験結果、停留き裂観察結果、繰返し応力ひずみ特性などを参照し、フレッティング疲労試験中のき裂伝ぱ寿命の破壊力学的推定を行い、実験値とよく一致することを示した。
 第3章「Cr-Mo-V鋼の高温フレッティング疲労特性」では、前章で用いた12Cr-Mo-W-V鋼に比べ耐酸化特性の劣るCr-Mo-V鋼の高温フレッティング疲労特性について述べた。Cr-Mo-V鋼の高温フレッティングによる疲労寿命および疲労限の低下は温室と同様に顕著であり、フレッティング面では保護性の酸化物を生成して高温フレッティング疲労強度を改善することはないが、き裂面では、き裂開口レベル上昇させることでき裂伝ぱ速度をさせ、みかけ上有効に働くことが示唆された。
 第4章「高温フレッティング疲労におよぼす平均応力の影響」では、蒸気タービン用部材には回転にともなう遠心力による引張応力が平均応力として作用することを考慮して、平均応力下での高温フレッティング疲労試験を行い、設計の立場からフレッティング疲労に対する疲労限度線図の作成、および保守・管理の立場から平均応力がある場合のフレッティング疲労寿命の推定法について検討した。
 その結果、高温フレッティング疲労限は通常疲労限と同様に修正Goodman線で表されること、および平均応力のフレッティング疲労寿命は疲労き裂伝ぱ曲線に応力比の効果を取り入れ、き裂開閉口挙動を考慮することにより、基本的には第2章で提案した破壊力学的手法に基づく方法で推定できることを示した。
 第5章「実機稼動を模擬した変動荷重下の高温フレッティング疲労特性」では、一日の出力変動から予想される蒸気タービン部材に作用する変動荷重(ブロック荷重)および、より不規則な変動を想定したランダム荷重の2種類の荷重波形下での高温フレッティング疲労特性について調べた。その結果、実機稼動を模擬したブロック荷重下の高温フレッティング疲労に対して修正マイナー則がよく成立すること、また、ランダム荷重下の場合は実効値(rms値)応力による取り扱いが有効であることを示した。さらに、第2章で示したフレッティング疲労寿命推定法がこれらの変動荷重の場合も有効であることを示した。
 第6章「高温フレッティング疲労強度のショットピーニングによる改善」では、高温フレッティング疲労強度の改善のための一手法としてショットピーニング処理をとりあげ、ショットピーニングを施した試験片を用いた高温フレッティング疲労試験結果について述べた。12Cr-Mo-W-V鋼の高温フレッティング疲労強度はショットピーニングにより改善され、その主な原因はショットピーニングにより生じた圧縮残留応力であることを明らかにした。また、高温(773K)における長時間での使用に対してもショットピーニングが有効であることを示した。
 第7章「フレッティングき裂の応力拡大係数の有限要素法による解析」では、接触部の摩擦力および接触面圧を考慮したフレッティングき裂の応力拡大係数の有限要素解析を行った。その結果、接触面圧と摩擦力が作用する場合のき裂の応力拡大係数は、モードII成分はモードI成分の10%以下と小さく、フレッティング疲労き裂の伝ぱは主としてモードI成分により扱うことができる。また、接触面圧を考慮したフレッティング疲労寿命の推定を行った結果、接触面圧は静的平均応力として作用するが、その効果は小さく第1近似としては、簡略化のために接触面圧を無視した前章までの扱いが妥当であることを示した。
 第8章「結論」では、以上の各章の主な結論を要約して論文の結論とした。

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