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通電加熱法を用いたZnO結晶の成長制御と発光特性評価

氏名 根崎 大
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第304号
学位授与の日付 平成16年3月25日
学位論文題目 通電加熱法を用いたZnO結晶の成長制御と発光特性評価
論文審査委員
 主査 教授 高田 雅介
 副査 教授 打木 久雄
 副査 助教授 安井 孝成
 副査 助教授 小野 浩司
 副査 助教授 川本 昴

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目次

第1章 諸言 p.1
1-1 酸化亜鉛(ZnO) p.1
1-1-1 はじめに p.1
1-1-2 ZnOの基本物性 p.1
1-1-3 ZnO研究の近年の動向 p.3
1-2 結晶成長 p.5
1-2-1 結晶の成長様式 p.5
1-2-2 ZnO結晶成長法の研究動向 p.6
1-2-3 新規結晶成長法「通電加熱法」 p.7
1-3 本論文の目的と構成 p.10
文献 p.11

第2章 通電加熱法によるZnO結晶の成長制御 p.13
2-1 実験方法 p.13
2-1-1 試料の作製 p.13
2-1-2 通電方法 p.15
2-1-3 通電時の試料温度測定 p.15
2-1-4 結晶形態の評価 p.15
2-1-5 成長雰囲気制御 p.15
2-2 結果と考察 p.18
2-2-1 結晶成長のその場観察 p.18
2-2-2 通電時の試料温度 p.20
2-2-3 結晶形態の電流密度依存性 p.23
2-3-4 結晶成長におけるO2濃度の影響(1)(結晶サイズ変化) p.28
2-3-5 結晶成長におけるO2濃度の影響(2)(結晶形態変化) p.30
2-3-6 結晶成長におけるZnO線材の密度の影響 p.33
2-3-6 放電による二重ホローの成長 p.36
2-3-7 通電加熱法による結晶成長条件 p.43
2-3 まとめ p.45
文献 p.46

第3章 結晶成長条件と発光特性の相関 p.47
3-1 実験方法 p.47
3-1-1 フォトルミネッセンス測定 p.47
3-1-2 カソードルミネッセンス測定 p.47
3-2 結果と考察 p.50
3-2-1 PLにける成長雰囲気の影響 p.50
3-2-2 PLにおける線材の密度の影響 p.54
3-2-3 水素と低密度線材を用いたナノウィルスの作製とPL評価 p.56
3-2-4 光強励起によるレーザー発振の試み p.61
3-2-5 CLによる微小領域の発光特定評価 p.66
3-3 まとめ p.73
文献 p.74

第4章 触媒配列基板への選択成長 p.75
4-1 実験方法 p.75
4-1-1 基板への触媒配列法 p.75
4-1-2 結晶成長法 p.75
4-2 結果と考察 p.80
4-2-1 ZnOナノウィスカーの選択成長 p.80
4-2-2 選択成長ナノウィスカーのEDS分析 p.83
4-2-3 成長機構の考察 p.86
4-3-4 選択成長ナノウィスカーのCL評価 p.89
4-3 まとめ p.91
文献 p.91

第5章 総括 p.92
謝辞 p.95
業績一覧 p.96

 ZnOは代表的な多機能性材料の一つであり、古くからバリスター、ガスセンサー、表面弾性波素子等として利用され、応用範囲が多岐にわたる極めて有用な材料である。また近年、ZnOは新たな紫外レーザー材料として注目され、紫外発光の高効率化を目指した様々な結晶成長法が研究されている。最近では、薄膜作製にとどまらず、さらなる高機能化を目指したナノスケールの細線構造作製のための結晶成長法の研究が世界的規模で活発化している。そのようにZnOの結晶形態を高度に制御することができれば、従来の機能物性の高度化の実現、さらには新規機能物性が発現する可能性がある。
本研究グループは、ZnOセラミックスを通電加熱した場合に、その表面にZnO結晶が成長する現象を見出した。筆者は、本現象を利用した独自のZnO結晶成長法の研究を進め、種々の条件を制御することにより細線構造を有するウイスカーをはじめ、中空の六角柱状(ホロー状)結晶やテトラポット型の結晶など多種多様なZnO結晶を作製することに成功した。そして、本手法を通電加熱法と命名した。
本論文では通電加熱法を新たなZnOの結晶成長法として確立することを目的とし、結晶成長制御についての詳細な検討を行った。さらに、得られたZnO結晶の発光特性評価を行い、紫外発光素子への応用を検討した。
第1章「序論」では、ZnOを取り扱った近年の研究動向について概観した後、本研究で扱う通電加熱法についての説明を行った。最後に本論文の目的と構成について述べた。
第2章「通電加熱法によるZnO結晶の成長制御」では、通電時の電流の大きさ、成長雰囲気の酸素濃度、ZnOセラミックス線材の密度を成長パラメーターとした結晶成長制御を試みた。第1に電流の大きさの影響として、低電流では六角柱であった形態が、電流増加に伴いホロー状結晶へと移行することが明らかとなった。第2に雰囲気の酸素濃度の影響として、ホロー状結晶の直径が酸素濃度の低下に伴い減少することが明らかとなった。さらに、Ar雰囲気中においては結晶サイズはさらに減少し、微細なウイスカーが成長した。第3にZnOセラミックス線材の密度の影響として、高密度なZnO線材上には直径がミクロンオーダーのウイスカーが成長し、低密度なZnO線材上には直径がナノオーダーのウイスカーが成長することがわかった。前述のパラメーター制御によって、ZnO線材表面近傍の過飽和度や成長温度が変化したことが結晶成長に影響を与えたものと考えられる。以上のことから、通電加熱法においては、電流、雰囲気、線材の密度を制御することで結晶成長制御が可能であることを明らかとした。
 第3章「結晶成長条件と発光特性の相関」では、第2章で得られた結晶成長制御に関する知見をもとに作製したZnO結晶の発光特性を評価した。フォトルミネッセンス測定の結果、空気中で成長したホロー状結晶は酸素欠陥または不純物に起因するとされる緑色発光が、Ar雰囲気中で成長したウイスカーはバンド端付近の紫外発光が支配的であった。従って、ウイスカーは欠陥もしくは不純物が少なく優れた結晶性を有することが示唆された。また、低密度線材上に成長したウイスカーは高密度線材上のウイスカーと比較して緑色発光が抑制された。さらに、成長雰囲気に水素を加えることにより、ウイスカーの紫外発光が増大し、緑色発光が抑制された。以上の結果から、紫外発光素子への応用という観点からのウイスカーの優位性を明らかとし、さらに、ウイスカーの紫外発光増大手法を見出した。
 第4章「触媒配列基板への選択成長」では、通電加熱法とナノインデンターによる触媒配列法を組み合わせた以下の新規結晶成長法を開発し、基板上へのウイスカーの選択成長を試みた。Auを触媒として基板上にパターンニングし、その基板を通電加熱したZnO線材に近接させる形で配置した。この系を炉内に挿入し、外部からも加熱することで、触媒位置を起点としたウイスカーの選択成長を実現した。通電加熱法を応用した本新規結晶成長法を、迅速かつ低コストな製造法として提案した。本研究成果は、ナノスケールテクノロジー構築の道を切り開くための一手法として貢献できうるものと考えられる。
 第5章「総括」では、以上の各章で得た結果を総括し、本論文の結論とした。

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