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超軽量Mg-Li合金の溶製、熱処理および成形加工プロセス技術の確立

氏名 松澤 和夫
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第210号
学位授与の日付 平成15年12月10日
学位論文題目 超軽量Mg-Li合金の溶製、熱処理および成形加工プロセス技術の確立
論文審査委員
 主査 助教授 鎌土 重晴
 副査 教授 宮田 保教
 副査 教授 福澤 康
 副査 助教授 南口 誠
 副査 東京工業大学 教授 里 達雄

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目次
第1章 緒論
1.1 本研究の背景 p.1
 1.1.1 マグネシウムの物理的性質 p.2
 1.1.2 構造用マグネシウム合金の性質と加工プロセス p.5
 1.1.3 リチウムの性質と用途 p.13
 1.1.4 Mg-Li合金の特徴と従来の研究 p.15
1.2 本研究の目的と意義 p.18
1.3 本論文の構成 p.19
 参考文献 p.22

第2章 フラックスレス法によるMg-Li合金の溶製
2.1 緒言 p.24
2.2 実験方法および結果 p.25
 2.2.1 溶製法と坩堝の検討 p.25
 2.2.2 溶製手順 p.26
 2.2.3 溶製方法の改善 p.29
2.3 結言 p.32
 参考文献 p.33

第3章 Mg-5~16%Li-1%Al合金の変形特性,時効硬化および機械的性質
3.1 緒言 p.34
3.2 実験方法 p.35
 3.2.1 試料作成 p.35
 3.2.2 加工硬化測定,軟化測定および組織観察 p.36
 3.2.3 時効処理および引張試験 p.37
3.3 実験結果および考察 p.37
 3.3.1 冷間圧延性の改善 p.38
 3.3.2 軟化特性 p.41
 3.3.3 時効硬化 p.43
 3.3.4 時効および安定化処理による組織変化 p.43
 3.3.5 時効および安定化処理による引張特性変化 p.45
3.4 結言 p.49
 参考文献 p.51

第4章 Mg-Li-X(X=Al,Cu,Zn,Ag)合金の時効硬化および機械的性質
4.1 緒言 p.52
4.2 実験方法 p.52
 4.2.1 試料作成 p.52
 4.2.2 組織観察および硬さ変化測定 p.54
 4.2.3 時効処理,X線回折および引張試験 p.54
4.3 実験結果および考察 p.54
 4.3.1 圧延性および軟化特性 p.54
 4.3.2 時効挙動 p.57
 4.3.3 アルミニウム添加合金の焼入れ硬化現象および時効析出 p.59
 4.3.4 引張特性 p.64
4.4 結言 p.66
 参考文献 p.68

第5章 α+β型およびβ型Mg-Li合金の高温引張特性および超塑性
5.1 緒言 p.69
5.2 実験方法 p.70
 5.2.1 試料 p.70
 5.2.2 実験方法 p.72
5.3 実験結果および考察 p.72
 5.3.1 鋳造組織に及ぼす合金元素の影響 p.72
 5.3.2 引張特性に及ぼす試験温度の影響 p.74
 5.3.3 引張特性に及ぼすひずみ速度の影響 p.80
 5.3.4 高温引張特性に及ぼす焼鈍温度の影響 p.81
 5.3.5 高温引張変形中の組織変化 p.83
5.4 結言 p.85
 参考文献 p.86

第6章 Mg-Li-Al-Ca系合金の半溶融成形加工
6.1 緒言 p.87
6.2 実験方法 p.87
6.3 実験結果および考察 p.89
 6.3.1 as-cast材のミクロ組織および凝固温度範囲 p.89
 6.3.2 加熱時のミクロ組織変化 p.92
 6.3.3 加圧成形後のミクロ組織 p.93
 6.3.4 半溶融成形加工材の室温時効特性 p.95
 6.3.5 半溶融成形加工材の引張特性 p.98
6.4 結言 p.101
 参考文献 p.102

第7章 Mg-Li合金の切削加工性
7.1 緒言 p.103
7.2 実験方法 p.104
 7.2.1 試料 p.105
 7.2.2 切削試験 p.105
7.3 結果および考察 p.107
 7.3.1 二次元切削における切削抵抗に及ぼすリチウム量の影響 p.107
 7.3.2 二次元切削においてせん断面を単一せん断面と仮定し解析した結果 p.108
 7.3.3 二次元切削おける仕上げ面および切りくずの形状に及ぼすリチウム量ならびにすくい角の影響 p.112
 7.3.4 二元切削の切削急停止法による切削機構の解析 p.114
 7.3.5 旋削被削性 p.116
 7.3.6 穴あけ加工法 p.118
 7.3.7 穴あけ加工法に及ぼす潤滑剤の効果 p.120
7.4 緒言 p.125
 参考文献 p.126
第8章 総括 p.127
謝辞

マグネシウム合金は低密度で、省エネルギーとリサイクル性に優れたエコマテリアルとして脚光を浴び、用途拡大が進みつつあるが、マグネシウム合金が有する高い比強度や比剛性はもとより、延性に優れた合金が望まれている。実用金属中最も低密度なMg-Li合金は構造用金属中で最も密度が低く、しかも6mass%以上のリチウムの添加により体心立方晶のリチウム固溶体(β相)が晶出して室温における塑性加工性が改善されるため有望である。本研究ではまず、活性な金属元素で構成されるMg-Li合金の溶製プロセスとして、鉄るつぼを用いたアルゴン置換雰囲気でのフラックスレス溶解法を提案した。さらに、熱処理特性の組成依存性ならびに時効硬化現象について調べた。また、マグネシウム固溶体(α相)とβ相が共存する合金での超塑性現象や、ニアネットシェイプ加工法として知られる半溶融成形加工の適用を試み、さらには切削加工性のリチウム量依存性について検討し、本合金の成形加工プロセスを確立することを目的とした。
第1章「緒論」では、研究の背景としてのマグネシウム合金の性質と加工プロセスやMg-Li合金の特徴と従来の研究について述べるとともに、本研究の目的、意義、構成について述べた。
第2章「Mg-Li合金の溶製」では、従来用いられたフラックスを用いた溶製法に代わり、燃焼反応の危険性や介在物の巻き込み等の要因を減らすため、アルゴン置換雰囲気下で溶製するフラックスレス溶製法を提案し、その溶製のノウハウについて詳細に述べた。溶製条件の最適化によりリチウムの歩留まりも当初より改善され、溶製法を確立した。
第3章「Mg-5~16%Li-1%Al合金の変形特性、時効硬化および機械的性質」では、まず、リチウム添加により冷間圧延性が大幅に改善され、Mg-16%Li-%1Al合金では99.9%以上の冷間圧延が可能であることを示した。さらに、時効特性および機械的性質に及ぼすリチウム量の影響を調べた結果、α+β合金では室温でも時効硬化し、ピーク時効状態では20~30 nmの板状のθ(MgLi2Al)相が析出することを明らかにした。また、時効硬化させたβ合金は脆性的な粒界破壊により著しく伸びが低下するものの、安定化熱処理を施すことにより大きな伸びが得られるようになることを見出し、その熱処理の有用性を示した。
第4章「Mg-Li-X (X= Al, Cu, Zn, Ag) 合金の時効硬化および機械的性質」では、前節で時効硬化が認められたα+β二相型のMg-8%Li系ならびにβ単相型のMg-13%Li系合金に着目し、第三元素(A、Cu、Zn、Ag)を添加して熱処理、時効挙動ならびに機械的性質を調べた。AlとAg添加により明確な時効硬化が認められ、しかもMg-13%Li-5%Al合金では焼入れ硬化現象が発現することを初めて見出した。その組織構造について詳細に検討した結果、この焼入れ硬化はLi-rich相とLi-poor相へのスピノーダル分解による変調構造の形成に起因することを明らかにした。
第5章「α+β型およびβ型Mg-Li合金の高温引張特性および超塑性」では、高温引張試験により、温間・熱間での塑性加工性を判断する上で重要な高温変形特性を調べた。α+β二相型Mg-8%Li-1%Zn合金は、573K、4.2×10-4s-1の初期ひずみ速度で最大約840%の伸び値を示す超塑性現象を発現することを確認した。 型合金は高温引張変形中にまず 相の結晶粒の等軸化・微細化が生じ、 相、 相の粗大化、キャビテーションの発生というプロセスを経て破断に至ること、動的再結晶により生成する微細な 相が粒界すべりを促進していることを明らかにした。
第6章「Mg-Li-Al-Ca系合金の半溶融成形加工」では、溶製時の難燃性や組織の微細化効果を期待して1および2%のCaを添加したMg- 5, 9, 14%Li-3%Al合金に半溶融成形加工を適用した。その結果、半溶融温度範囲では大気中でも燃焼せず、Ca添加量の増加に伴い凝固温度範囲も広くなり、半溶融成形加工に適していることを示した。あらかじめひずみを導入し、半溶融温度に昇温することにより、デンドライト枝の分断と球状化が認められ、固相粒子の大きさは予ひずみ量が大きいほど小さくなることを見出した。α+β合金を半溶融成形加工することにより20%以上の伸びを有し、強さと靭性を具備する成形品を得ることができることを明らかにした。
第7章「Mg-Li合金の切削加工性」では、二次元切削加工時の切削機構、旋削被削性や穴あけ加工性に及ぼすリチウム添加量の影響を検討した。切削抵抗はリチウム量の増加に伴って増加すること、16%Li合金においては切削が不安定で刃先前方に先行亀裂が生じることを明らかにし、さらに、切削速度300m/minでの切削や潤滑剤利用が高リチウム合金の切削加工性改善に有効であることを示した。
第8章「総括」では、以上の各章の結論を要約して、総括とした。

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