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鋳物の画像処理による目視検査自動化に関する研究

氏名 染次 孝博
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第180号
学位授与の日付 平成11年3月25日
学位論文の題目 鋳物の画像処理による目視検査自動化に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 秋山 伸幸
 副査 教授 栗田 政則
 副査 教授 高田 孝次
 副査 教授 久曽神 煌
 副査 教授 柳 和久

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目次

第1章 序章 p.1
 1.1 緒言 p.1
 1,2 鋳物 p.2
 1.3 鋳物の作り方 p.3
 1.4 鋳物の凝固 p.5
 1.5 鋳物の欠陥 p.5
 1,6 鋳物の検査 p.6
 1.7 本研究の目的 p.7
 1.8 本論文の構成 p.9

第2章 鋳物に発生する欠陥とその検査方法 p.11
 2.1 鋳物の欠陥 p.11
 2.1.1 鋳巣欠陥 p.11
 2.1.2 引け巣欠陥 p.12
 2.1.3 き裂・割れ p.13
 2.1.4 表面欠陥 p.14
 2.1.5 形状不良 p.15
 2.1.6 鋳込不良 p.16
 2.2 鋳物の検査 p.20
 2.2.1 外観検査 p.21
 2.2.2 内部欠陥検査 p.21
 2.2.3 材質検査 p.25

第3章 周囲一様照明による凹欠陥の自動検出の検討 p.26
 3.1 従来の検査方法と検査対象 p.26
 3.2 技術課題 p.29
 3.3 検出目標 p.31
 3.4 鋳肌面からの欠陥の検出 p.31
 3.4.1 画像のSN比評価方法 p.31
 3.4.2 画像分解能の影響 p.31
 3.4.3 空間フィルタ処理によるS/Nの向上 p.33
 3.4.4 照明角度および検査面傾斜角の影響 p.36
 3.4.5 鋳物全表面の測定方法 p.39
 3.5 実験装置 p.39
 3.6 欠陥検出アルゴリズム p.40
 3.6.1 画像処理方法 p.41
 3.6.2 特徴量の算出 p.44
 3.7 欠陥判別方法 p.49
 3.7.1 ニュ-ラルネットワ-クによる判別 p.49
 3.7.2 主成分分析による特徴量の分類 p.51
 3.7.3 欠陥判別アルゴリズム p.54
 3.8 多数個検査による検出精度の評価 p.55
 3.8.1 検査対象面 p.55
 3.8.2 検出結果 p.57
 3.9 結言 p.58

第4章 鋳物表面粗さの光学式測定法の開発 p.60
 4.1 従来の検査方法と検査対象 p.60
 4.2 光学的表面粗さ測定法の原理 p.63
 4.2.1 テクスチャ解析法 p.63
 4.2.2 濃度同時生起行列による評価法 p.64
 4.3 平板試料による基礎検討 p.65
 4.3.1 入射角θiによるCの変化 p.66
 4.3.2 距離Δx,Δyの影響 p.66
 4.3.3 表面粗さRaとCの関係 p.68
 4.4 一方向傾斜時の傾斜角許容範囲の決定 p.68
 4.4.1 実験装置 p.69
 4.4.2 照明角φの影響 p.69
 4.4.3 表面粗さRaとCの関係 p.72
 4.4.4 各照明ランプにおける試料の傾斜方向の影響 p.73
 4.5 3次元形状を有する鋳物部品への適用検討 p.75
 4.5.1 測定の目標精度 p.75
 4.5.2 表面粗さ測定領域の決定 p.76
 4.5.3 対向2方向照明法における検査面傾斜許容角度 p.76
 4.5.4 試料高さ変化によるCの変化 p.80
 4.5.5 測定値に含まれるばらつきの評価 p.81
 4.5.6 鋳物部品位置決め機構 p.82
 4.6 測定対象領域決定用テンプレ-トの作成 p.83
 4.6.1 鋳物表面法線の算出 p.83
 4.6.2 鋳物製品姿勢変化の計算 p.84
 4.6.3 測定領域決定用テンプレ-トの作成 p.87
 4.7 全表面測定結果 p.88
 4.7.1 鋳物部品測定用実験装置の概要 p.88
 4.7.2 測定結果 p.89
 4.8 結言 p.91

第5章 鋳物き裂検査における磁粉探傷目視検査の自動化 p.93
 5.1 欠陥例と従来の検査方法 p.93
 5.2 き裂検出方法の選定 p.95
 5.3 技術課題 p.99
 5.4 実験装置 p.100
 5.4.1 磁化・探傷装置 p.100
 5.4.2 撮像・画像処理装置 p.101
 5.5 磁粉探傷条件の検討 p.102
 5.5.1 検出性能の評価方法 p.103
 5.5.2 磁粉適用方法の選定 p.105
 5.5.3 漏洩磁束密度と欠陥サイズの関係 p.108
 5.5.4 磁粉粒度の影響 p.108
 5.5.5 磁粉濃度の影響 p.111
 5.5.6 磁化時間の影響 p.112
 5.5.7 浸せき時間の影響 p.112
 5.5.8 磁化角度の影響 p.112
 5.5.9 磁粉探傷条件のまとめ p.114
 5.6 画像処理方法の検討 p.114
 5.6.1 探傷条件変動に伴う輝度変動への自動対応 p.115
 5.6.2 分断された欠陥の連結・復元 p.120
 5.7 欠陥検出限度の検討 p.124
 5.8 結言 p.126

第6章 総括 p.128

謝辞 p.133

参考文献 p.134

 鋳物は,金属を溶かして鋳型に流し込み,冷却・凝固させたものである.それゆえ,鋳物は任意の形状を有する部品を大量に生産できるので,安価な量産部品の生産に現在でも広く利用されている製造手段である.
 鋳物工場では,作業環境改善・コスト低減等のため,生産性や品質に直接関与する造型・注湯・仕上げ工程の自動化は絶えず追求されてきたが,検査の自動化は立ち後れている.
 中でも外観検査工程は鋳造欠陥のほとんどを検出可能であるにもかかわらず,そのほとんどが作業者の目視に頼っている.しかし目視検査は,作業環境や疲労あるいは定量性・信頼性の面で根本的に問題があることから,これらの問題を解決するため,検査の自動化が要求されている.
 例えば圧延材や機械加工面等の平坦で面性状良好な部位を対象とした自動検査は以前より多数報告されているが,表面粗さが大きく自由曲面を有する鋳肌面を対象とした外観検査の報告はほとんど無い.これは,鋳物に発生する欠陥の種類が極めて多く,かつ鋳物の形状が複雑であるため,その自動化・機械化には非常に高度な技術レベルが要求されるからである.
 本研究では,信頼性やコストの面で問題となっている目視検査を自動化するため,画像処理を用いてインプロセスで使用可能な検査方法の開発を目指す.
 本論文は全6章からなっており,多様な鋳造欠陥を3つに分類して開発を進めることにする.
 第1章「序章」では,今回検査対象とした鋳鉄鋳物およびその製造方法と検査の目的に付いて説明する.
 第2章「鋳物に発生する欠陥とその検査方法」では,多種多様に発生する鋳物の欠陥の形態および発生要因,さらに,これら欠陥を検出するため実際に現場で使われている検査方法について説明する.
 第3章「周囲一様照明による凹欠陥の自動検出の検討」では,のろかみのように比較的大きく単独で存在する凹欠陥を,自動検出する方法について迩べる.本章では,まず,曲面においても欠陥が良く見えるように30度,60度.90度のリング照明による周囲一様照明を用い,特殊なフィルタ-処理により鋳肌に起因する光学ノイズを緩和する方法を開発した.さらに,鋳物はその製品としての特性上,個々の形状バラツキが大きいが,この個々の形状のバラツキを考慮し,複数の良品と統計的に比較することにより求めた正規化積算値と欠陥の形状特徴から得られる特徴量を用いて欠陥判別する手法に付いて述べる.
 第4章「鋳物表面粗さの光学式測定法の開発」では,肌荒れのような鋳肌の性状異常,すなわち鋳物の表面粗さをテクスチャ解析手法を用いることにより,光学的に非接触で測定する手法に付いて述べる.まず,平面状の表面粗さ標準板を用い,本手法により表面粗さが測定できることを確認するために,照明入射角60度にて対向する2方向から同時に平行光を照射し,得た画像からテクスチャ解析によりコントラストを求める.求めたコントラストを基に,表面粗さを求める方法について説明する.次に,この原理を3次元形状に適用するため,検査面を種々の方向に傾斜・回転させることで,曲面部の測定における本手法の適用範囲を求めた.さらに,鋳物部品の3次元形状を基に,求めた適用範囲から計測可能な部位を求め,鋳物部品を傾斜・回転させることで,鋳物部品全表面の表面粗さを測定した結果について述べる.
 第5章「鋳物き裂検査における磁粉探傷の目視検査工程の自動化」では,き裂欠陥を対象に,磁粉探傷法における磁粉模様の観察・評価工程を画像処理を用いて自動化する方法について述べる.磁粉探傷法は,30年以上もの歴史のある手法であり,その検出安定性や定量性に問題があるものの経済性や作業性が良く比較的検出性能も良い.まず,磁粉探傷条件の検討を行ったが,厳密に制御することは困難である.そこで,き裂部画像濃度を健全部の画像濃度で正規化し,さらに部分的に不鮮明なき裂の連結操作を組み込むことにより,正確にき裂を検出する手法を考案したので,その方法に付いて説明する.
 第6章「総括」では,以上の各章で得られた結論をまとめた.
 本研究で対象とした,凹欠陥,表面粗さ異常,き裂欠陥,の3種類の欠陥に,鋳物の表面欠陥のほとんどを分類することが可能である.すなわち,今回の3つの研究成果を合わせることにより鋳物の表面欠陥のほとんどを検出できると言うことを現している.
 今後の課題は,いずれの方法においても,カメラと照明の位置関係がある範囲内に限定されており,一度に検査可能な範囲が限定されるため,部品全表面の検査を行うために,検査時間の短縮が必要である.

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