本文ここから

光学的手法を用いた低粘度粘性流体の平面伸張流動特性評価手法の開発

氏名 加藤 学
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第273号
学位授与の日付 平成15年3月25日
学位論文題目 光学的手法を用いた低粘度粘性流体の平面伸張流動特性評価手法の開発
論文審査委員
 主査 助教授 高橋 勉
 副査 教授 白樫 正高
 副査 教授 増田 渉
 副査 教授 五十野 善信
 副査 教授 古口 日出男
 副査 教授 金子 覚

平成14(2002)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

目次 p.1

主な記号 p.6

第1章 序論 p.1
1.1 緒言 p.1
1.2 従来の伸張流動特性測定法 p.5
 1.2.1 機械的手法 p.5
 1.2.1.1 流動性の低い流体に対する機械的手法 p.5
 1.2.1.2 流動性の高い流体に対する機械的手法 p.7
 1.2.2 光学的手法 p.11
 1.2.3 問題点の整理 p.12
1.3 本研究の目的 p.16
1.4 本論文の概要 p.16

第2章 平面伸張流動と粘弾性流体の挙動 p.18
2.1 緒言 p.18
2.2 平面伸張流動の定義および線形粘弾性モデルの伸張流動 p.19
 2.2.1 平面伸張流動の定義 p.19
 2.2.2 Newton流体の平面伸張流動 p.20
 2.2.3 粘弾性モデルによる伸張流動の解析 p.23
 2.2.1.1 界面活性剤水溶液 p.23
 2.2.3.2 Maxwellモデル p.27
2.3 平面伸張流動の発生方法 p.31
2.4 平面伸張流動特性評価法 p.38
 2.4.1 定常粘弾性試験 p.38

つづき
 2.4.2 過渡的粘弾性試験 p.38
 2.4.3 動的粘弾性試験 p.39

第3章 光学的手法による平面伸張流動特性評価手法の原理
3.1 緒言 p.42
3.2 偏光解析の基礎 p.43
 3.2.1 光の基本性質 p.43
 3.2.2 JonesベクトルとStokesベクトル p.46
 3.2.3 光学異方性 p.51
3.3 偏光解析法による複屈折測定 p.55
 3.3.1 クロスニコル法 p.55
 3.3.2 1/2波長板方式を用いた複屈折測定 p.59
3.4 光弾性則 p.64

第4章 定常平面伸張流動特性評価手法の開発 p.67
4.1 緒言 p.67
4.2 実験装置および試験流体 p.68
 4.2.1 4-ロールミル流路 p.68
 4.2.2 駆動系 p.68
 4.2.3 測定系 p.71
 4.2.4 測定システム p.71
 4.2.5 試験流体 p.74
4.3 実験結果および考察 p.77
 4.3.1 定常平面伸張粘度の評価 p.77
 4.3.1.1 流れの可視化による平面伸張粘度の評価 p.77
 4.3.1.2 流動複屈折の測定と平面伸張粘度の評価 p.82
 4.3.1.3 4-ロールミル流路における不安定流動現象 p.85
 4.3.2 4-ロールミル流路の改良とその効果 p.87
 4.3.2.1 4-ロールミル流路の問題点と改良方法 p.87
 4.3.2.2 改良(1)によるレーザ光路上の平面伸張速度分布の変化 p.89
 4.3.2.3 改良(2)によるレーザ光路上の平面伸張速度分布の変化 p.95
 4.3.2.4 レーザ光路上の平面伸張速度分布の非一様性が測定結果に及ぼす影響 p.98
4.4 結論 p.101

第5章 過渡的平面伸張流動特性評価手法の開発 p.102
5.1 緒言 p.102
5.2 実験装置および試験流体 p.103
 5.2.1 並行平板スクイーズ流路 p.103
 5.2.2 駆動系 p.104
 5.2.3 測定系 p.107
 5.2.4 測定システム p.107
 5.2.5 試験流体 p.111
5.3 実験結果および考察 p.111
 5.3.1 スクイーズ流路により発生する伸張速度の解析 p.111
 5.3.1.1 理想流体と仮定した場合 p.111
 5.3.1.2 二次元粘性流れと仮定した場合 p.113
 5.3.1.3 スクイーズ流路内の流れの可視化実験 p.118
 5.3.2 流動複屈折と配向角の過渡的挙動の測定 p.122
 5.3.3 平面伸張粘度の算出と4-ロールミル流路との比較 p.122
 5.3.4 モデルによる検証 p.124
 5.3.5 測定結果におよぼす流動条件の影響 p.127
 5.3.5.1 平板初期隙間Hoの影響 p.127
 5.3.5.2 平板形状の影響(平板のよどみ線方向の幅Wを変化させた場合) p.129
 5.3.5.3 平板形状の影響(平板の流動方向の長さLを変化させた場合) p.131
 5.3.6 レーザ光路上の平面伸張速度分布の非一様性が測定結果におよぼす影響 p.133
5.4 結論 p.139

第6章 動的平面伸張流動特性評価手法の開発 p.140
6.1 緒言 p.140
6.2 実験装置および試験流体 p.141
 6.2.1 並行平板スクイーズ流路 p.141
 6.2.2 駆動系 p.143
 6.2.3 測定系 p.143
 6.2.4 測定システム p.146
 6.2.5 試験流体 p.149
6.3 実験結果および考察 p.153
 6.3.1 スクイーズ流路内の流れの可視化実験 p.153
 6.3.2 光学的手法を用いた動的粘性弾性特性の評価 p.159
 6.3.2.1 動的平面伸張流動場における流動複屈折測定 p.159
 6.3.2.2 貯蔵弾性率,損失弾性率および複素平面伸張粘度の評価 p.163
 6.3.3 流動条件が測定結果におよぼす影響 p.168
 6.3.3.1 試験流体の流動特性の違いによる影響 p.168
 6.3.3.2 平面伸張ひずみ量の振幅が実験結果におよぼす影響 p.173
 6.3.4 スクイーズ流路内の白濁化現象および不安定流動現象 p.179
6.4 結論 p.184

第7章 開発された測定手法の適用が制限される現象 p.185
7.1 緒言 p.185
7.2 実験装置および試験流体 p.186
 7.2.1 実験装置 p.186
 7.2.2 試験流体 p.186
7.3 事件結果および考察 p.188
 7.3.1 流路内の流れの可視化 p.188
 7.3.2 レーザ透過光強度と流動複屈折の時間的変化 p.193
 7.3.3 平面伸張ひずみ量の評価 p.197
 7.3.4 光学的測定量の変化と平面伸張ひずみ量の関係 p.200
7.4 結論 p.206

第8章 結論 p.207

参考文献 p.210

謝辞 p.215

SiC繊維強化チタン基複合材料(TMC:Titanium Matrix Composites)は、高い比強度、比剛性 と優れた耐熱性を兼ね備えた材料であることから、従来のニッケル基合金や鉄基合金の代替材として、航空機エンジン部材への適用が期待されている。
 そこで、本研究では、はじめに、TMCを実機適用するために不可欠な材料の信頼性を確保することを目的に、Ti-45Al-5Cr合金やSP-700合金など種々のチタン合金をマトリックスとして、SiC連続繊維との組み合わせで製造温度などの条件を変化させて、静的な強度特性に及ぼす影響を調べた。その結果、Ti-45Al-5Cr合金系のTMCでは、製造温度条件によって引張強度や界面せん断強度が著しく変化し、1000~1050℃の温度で製造したTMCがもっとも優れた特性を示すことを明らかにした。これは、1000℃未満の温度条件では、マトリックスの拡散接合が不十分で、応力伝達に必要な界面が形成されず、また、1050℃を越えた温度では、繊維/マトリックス界面の化学反応が著しく進行し、厚く脆い化合物が形成され、これが破壊の起点となって強度が低下するためであることを見出した。また、この製造温度の力学特性に及ぼす影響は、マトリックスの違いによって異なり、SP-700合金系では、その影響は小さいことも明らかにした。これは、SP-700合金の優れた変形能によって、Ti-45Al-5Cr合金系よりも200℃も低い温度条件で複合化が達成でき、界面反応層を極めて薄く抑制することができたことによると考察した。
つぎに、航空機エンジン材料に求められる高温環境下での疲労特性を把握することを目的にマトリックスの違いによって界面の性質が異なるSCS-6/Beta21S系、SCS-6/SP-700系、およびSCS-6/Ti-45Al-5Cr系の3種類のTMC対象として、500℃、大気中の環境下で疲労試験を行い、疲労破壊の特徴を調べながら、マトリックスや界面の性質の相違がTMCの疲労特性に及ぼす影響について検討した。その結果、高温における疲労特性は、SP-700系がもっとも優れ、次いでBeta21S系の順で、これら2種類のTMCはモノリシックチタン合金よりも優れた特性を示すことを実験により明らかにした。一方、界面反応層の厚いTi-45Al-5Cr系では、モノリシックチタン合金より疲労特性が劣ることを確認した。これら3種類のTMCの界面強度は、反応層の極めて薄いSP-700系でもっとも高く、疲労強度の優劣とも定性的に対応することを示した。また、界面反応層の性質(厚さ、生成物など)の相違は、疲労破壊メカニズムに影響を及ぼすと考察した。すなわち、界面反応層が過度に成長し、脆弱なシリサイド相が形成されると、たとえ界面強度が強くても、反応層そのものがき裂発生の起点となり、また、マトリックス中を進展してきたき裂に対しても、脆い反応層はき裂を停留させる能力に欠け、容易に繊維破断を誘発するなど、いずれも疲労強度を低下させる方向に作用すると考察した。これらのことから、マトリックスや界面反応層の性質は、TMCの疲労特性に影響を及ぼす因子の一つであり、これらを巧く制御できれば、TMCの疲労強度を向上させる可能性のあることを明らかにした。そこで、SCS-6/SP-700系のTMCを対象に、さらなる疲労特性の向上を目的として、熱処理によるマトリックスの微視組織の制御に着目し、TMCにβ変態点近傍の温度域で様々に熱履歴を与え、マトリックスの微視組織を変化させることによって、TMCの疲労特性に及ぼす影響を調査した。その結果、製造ままの微細α+β組織のTMCよりも、熱履歴を付与し微視組織を変化させたTMCの室温疲労強度が、高寿命側の領域において大幅に向上することを実験により示した。これは、SP-700マトリックス材の静強度特性 や疲労特性の向上によるものではなく、疲労き裂進展抵抗による効果であることを明らかにした。
 さらに、TMCの高温環境下における耐久性を確認するため、熱サイクル負荷によって生じる損傷のメカニズムやそれらがTMCの特性に及ぼす影響などについて、Ti-24Al-11Nb合金をマトリックスとした複合材料を対象に調査を行った。その結果、真空中、大気中のいずれの環境下においても、熱サイクルの付与によって複合材には各種形態のき裂が繰り返しの初期から発生し、密度増加を伴いながら熱疲労損傷が進行することを確認した。また、これらの熱疲労損傷の発生や恒温曝露負荷により、TMCの安定き裂成長に対する抵抗は著しく低下し、弾性係数およびポアソン比などの弾性的特性も変化することを確認した。これら熱疲労損傷の進行を定量的に評価するため、Push-out試験による繊維/マトリックス界面のせん断強度を調べた結果、本複合材の恒温曝露、あるいは熱サイクル付与による主な損傷のメカニズムは、恒温曝露が界面酸化であるのに対して、熱サイクル付与が熱膨張率の差によって発生する熱応力によるものであり、それぞれ損傷の形態も異なることを明らかにした。また、損傷メカニズムによって環境依存性が異なることも明らかにした。
 最後に、TMCの航空機エンジン部材への適用性を把握するため、実機の低圧タービンディスクを模擬した部品の製造プロセスを検討した。その結果、実機を模擬したTMC製ディスクの試作では、キャニングHIPプロセスによって製造した複雑形状のTMC製ディスクの健全性を確認し、本研究で採用したキャニングHIPプロセスが、複雑なTMC製ディスクの製造に適した手法であることを示した。また、TMC製ディスクの試設計においては、ディスクの回転によって発生する応力を有限要素法により解析的に求め、既存の金属製ディスクと比較することによって、TMC製ディスクの成立性や適用効果を検討した。その結果、既存ディスク形状に対しては、TMCを単純に適用することが困難であることを確認した。そのため、TMCに適した断面積変化の少ない新形状のTMC製ディスクを考案し、回転による遠心力荷重と温度分布による熱荷重を考慮した応力解析を行った結果、新形状のTMC製ディスクは、強度的にも、また重量軽減的観点からみても、ニッケル基合金製ディスクよりも十分に有効であり、本研究で明らかにしたTMCの高温疲労強度や熱サイクル損傷の観点からも、TMC製ディスクが成立する可能性のあることを考察した。

非公開論文

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る