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500Hz電力供給システムに関する研究

氏名 蘇 貴家
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第25号
学位授与の日付 平成4年9月16日
学位論文の題目 500Hz電力供給システムに関する研究
論文審査委員
 主査 教授 高橋 勲
 副査 教授 村田 正男
 副査 教授 入澤 寿逸
 副査 助教授 近藤 正示
 副査 東京工業大学 教授 深尾 正

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目次
第1章 緒言 p.1
1・1 研究の背景 p.1
1・2 研究の目的 p.3
1・3 論文の構成と概要 p.6
参考文献 p.8
第2章 500Hz電力供給システムの概要 p.11
2・1 まえがき p.11
2・2 500Hz電力供給システムの有効性 p.11
2・3 500Hzで使用できる負荷 p.14
2・3・1 超高速電動機の利用 p.14
2・3・2 誘導加熱への応用 p.16
2・3・3 デパート、インテエリジェントビルでの利用 p.18
2・4 周波数500Hzを選んだ理由 p.18
2・5 500Hz電力供給システムの構成 p.21
2・6 本章のまとめ p.23
参考文献 p.25
第3章 500Hz電力変換器 p.26
3・1 まえがき p.26
3・2 500Hz電力変換器 p.27
3・2・1 インバータ p.27
3・2・2 コンバータ p.28
3・2・3 実験システム p.30
3・3 不平衡負荷補償 p.37
3・3・1 不平衡負荷補償の原理 p.37
3・3・2 電流形インバータによる逆相電流発生の原理 p.40
3・3・3 電圧の正相逆相分検出法 p.42
3・3・4 マイコン制御回路及び実験結果 p.44
3・4 無停電化システム p.45
3・4・1 システム構成 p.47
3・4・2 制御法 p.48
3・4・3 シミュレーション結果 p.50
3・5 本章のまとめ p.51
参考文献 p.53
第4章 500Hz系統の電圧安定化制御 p.56
4・1 まえがき p.56
4・2 500Hz送電線路 p.57
4・2・1 電力ケーブル p.58
4・2・2 500Hz送電線路における電圧降下 p.63
4・2・3 模擬送電線路 p.66
4・3 TSCによる系統電圧の安定化 p.68
4・3・1 系統電圧制御の原理 p.69
4・3・2 TSCの採用とその特徴 p.70
4・3・3 TSCの構成 p.72
4・3・4 TSC投入時の過度現象 p.77
4・4 電圧帰還による系統電圧の安定化 p.77
4・4・1 制御原理 p.77
4・4・2 シミュレーションによる検討 p.83
4・4・3 DSPを使った制御回路構成 p.83
4・4・4 DSPの制御ソフトウェア p.91
4・4・5 実験結果 p.94
4・5 負荷推定による系統電圧の安定化 p.99
4・5・1 電圧帰還による制御法の問題点 p.99
4・5・2 負荷推定法 p.99
4・5・3 シミュレーションによる検討 p.102
4・5・4 DSPを使用した制御回路構成 p.102
4・5・5 制御ソフトウェア p.107
4・5・6 実験結果 p.111
4・6 本章のまとめ p.115
参考文献 p.117
第5章 500Hz電力供給システムの故障対策 p.119
5・1 まえがき p.119
5・2 シミュレーションによる故障解析 p.120
5・2・1 故障時におけるサイリスタの転流失敗 p.120
5・2・2 故障保護原理 p.122
5・2・3 システムのモデル p.124
5・2・4 シミュレーション結果 p.126
5・3 系統事故高速検出及び対策 p.131
5・4 本章のまとめ p.138
参考文献 p.140
第6章 500Hzに適した新負荷の開発 p.141
6・1 まえがき p.141
6・2 アモルファス変圧器 p.142
6・2・1 50/60Hzアモルファス変圧器の問題点 p.142
6・2・2 500Hzアモルファストランスの試作 p.143
6・3 高速サイリスタ・パワーアンプ p.151
6・3・1 デッドビート制御 p.151
6・3・2 シミュレーション結果 p.153
6・4 サイクロコンバータによる周波数変換 p.155
6・4・1 サイクロコンバータの長所 p.155
6・4・2 サイクロコンバータのマイコン直接ゲート制御 p.156
6・4・3 ゲート制御ソフトウェア p.158
6・4・4 実験結果 p.160
6・5 500Hz用蛍光灯 p.160
6・5・1 蛍光灯用安定器 p.161
6・5・2 実験回路構成および実験結果 p.163
6・6 高速電動機のソフトスタート p.166
6・6・1 主回路構成と周波数変換の原理 p.166
6・6・2 シュミレーション及び実験結果 p.169
6・7 本章のまとめ p.169
参考文献 p.174
第7章 結言 p.176
謝辞 p.183
発表論文一覧 p.184

 本研究は、500Hzの高周波電力供給システムをコンビナートや商業地域などの特定の電力密集地域に分散敷設することを提案し、この地域で発生する高調波、フリッカ障害、故障などの障害を一括処理し、かつここで使用する負荷の省エネルギー・省資源化を実現しようとするものである。本論文では、このシステム全般にわたり、電力変換器、送電線路、変電設備、負荷について実用化を指向した検討を加えた。
 本論文は、『500Hz電力供給システムに関する研究』と題し、7章から構成されている。
 第1章「緒言」では、本研究の背景、目的及び技術課題について述べている。第2章「500Hz電力供給システムの概要」では、まず500Hz電力の有効性を示し、市場調査によりコンビナートや商業地域などにおける500Hzに対する負荷の需要、例えば、大容量高速電動機、誘導加熱、照明などの存在を明らかにした。次にこれら負荷の需要と500Hzシステムを構成する電力変換器、送電線路、アモルファス変圧器など機器の周波数制限等を総合的に検討しその結果、20km四方程度のコンビナートでは500~600Hz、3km程度の商業地域では500~1,000Hzが最も有利であるという結論を得た。最後にコンビナートと商業地域で使用する2つのシステムの構成を示している。
 第3章「500Hz電力変換器」では、まず500Hzの電力源となる電力変換器、電流形インバータと電圧形インバータの構成、波形改善について述べている。次に、電流形インバータの基本回路を用いて、1)出力電圧制御を行った。2)サイリスタの非対称ゲートパルス幅制御による不平衡負荷補償法を提案し、補償可能の範囲を明らかにした。3)超電導エネルギー貯蔵装置を組込んだシステムの無停電化の回路構成と瞬時有効・無効電力に基づく高速制御法を提案し、シミュレーションによってその有効性を確かめた。電圧形インバータについては、波形良好なトランジスタ多重形インバータを試作し上記と同様な実験を行った。
 第4章「500Hz系統の電圧安定化制御」では、1)500Hzにおける従来の架空送電線路とケーブル送電容量、距離を調べその結果3心ケーブルで上記の2つのシステムを送電できることが明らかになった。2)500Hz送電ケーブルを設計し線路電圧降下について調べ、その結果、負荷力率が悪いと線路電圧降下が大きいことが示された。3)コンデンサを使用した静止形無効電力補償装置を用いて線路電圧降下の補償を行い系統の電圧安定化を図った。この無効電力補償装置の制御法については、まず簡単な電圧帰還による手法について調べ、PIのゲイン設定が難しい、安定性に問題があるなどの欠点を明らかにし、次に、これらの問題を解決できる負荷推定法を提案している。この方式では、負荷状態を推定し電圧補償に必要な投入コンデンサを直接求めるため、ゲイン設定などが不要で、安定に制御できるなどの特長がある。更に制御回路の全ディジタル化をDSPを用いて実現した。
 第5章「500Hz電力供給システムの故障対策」では、線間短絡や地絡などの故障時系統の挙動をシミュレーション解析によって明らかにした上、電力変換器のDCリンクに着目し系統事故の高速検出並びにその保護をマイコンを用いて実現した。
 第6章「500Hzに適した新負荷の開発」では、アモルファストランス、サイリスタパワーアンプ、サイクロコンバータ、蛍光灯、高速電動機について以下のような検討を行った。
1)高周波におけるアモルファストランスの設計を実験的に考察し500Hz、10kVAのものを試作した。けい素鋼板を用いた場合と比べると、総重量は35%、全損失は67%となり、高効率・省資源化が図れた。これにより500Hzの配電室は1/3~1/4と小形化できる。
2)500Hzではサイリスタパワーアンプの応答が50Hzの場合と比べ10倍速くなるので、その上アンプの制御にデットビート制御を適用すれば1ms以内の高速応答が得られることをシミュレーションにより確認した。
3)500Hz用蛍光灯では、安定器にアモルファス鉄心を用いて小形・高効率化を図り、商用周波の場合と比べ体積は約1/3、鉄損は約1/5に削減でき、総合的に効率が16%程改善された。
4)16バットマイコンでサイクロコンバータの直接ゲート制御を行い、良好な結果が得られた。
5)従来のサイリスタ電圧調整装置を流用して周波数変換を行い高速誘導電動機のソフトスタートを実現した。
 第7章「結言」では、本研究で得られた結果を要約し、更に今後の研究課題について展望を述べた。
 このように本論文は、従来50/60Hzの下で展開されていた技術と新素材、素子、制御法を用いて新しい周波数のシステムの可能性を示したものである。

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