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堆積軟岩の強度・変形特性に関する研究

氏名 細野 高康
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第97号
学位授与の日付 平成6年3月25日
学位論文の題目 堆積軟岩の強度・変形特性に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 小川 正二
 副査 教授 清水 敬二
 副査 教授 丸山 暉彦
 副査 助教授 丸山 久一
 副査 助教授 本城 勇介

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目次
第1章 序論 p.1
1.1 まえがき p.1
1.2 軟岩の強度・変形特性に関する既往の研究 p.3
1.2.1 軟岩の一般的特性 p.3
1.2.2 圧密・圧縮および変形特性 p.7
1.2.3 せん断特性 p.10
1.2.4 破壊基準 p.15
1.2.5 スレーキング特性 p.17
1.3 上総層群の地質概要 p.18
1.4 軟岩の工学的問題点 p.22
1.5 本論文の研究目的 p.24
1.6 本論文の構成 p.25
第2章 標準試験法による上総層群の圧密特性 p.28
2.1 まえがき p.28
2.2 実験概要 p.29
2.2.1 試料 p.29
2.2.2 高圧圧密試験装置 p.29
2.2.3 実験方法および条件 p.31
2.3 圧密特性 p.32
2.3.1 e-logp関係 p.32
2.3.2 e-logp曲線とセメンテーションに関する一考察 p.32
2.3.3 上総層群のセメンテーション p.33
2.4 地質年代と物性値の関係 p.36
2.4.1 上総層群における層序別の物性値分布 p.36
2.4.2 地質層序と圧密降伏圧力pcとの関係 p.40
2.4.3 沖積粘性土との対比 p.42
2.5 むすび p.46
第3章 堆積軟岩の圧密特性への載荷方法の影響 p.48
3.1 まえがき p.48
3.2 定ひずみ速度圧密試験の堆積軟岩への適用 p.49
3.2.1 定ひずみ速度圧密試験の特徴 p.49
3.2.2 軟岩を対象とした定ひずみ速度圧密試験 p.49
3.2.3 e-logp曲線 p.53
3.2.4 ひずみ速度のe-logp関係と圧密降伏応力への影響 p.55
3.3 試験法の差異が圧密特性に与える影響 p.57
3.3.1 実験方法および条件 p.57
3.3.2 εv-t関係 p.60
3.3.3 e-logp関係および圧密降伏応力 p.63
3.4 標準圧密試験と定ひずみ速度圧密試験の対比 p.65
3.4.1 試料および実験方法 p.65
3.4.2 90%圧密時間t90の評価 p.65
3.4.3 圧縮指数ccおよび圧密降伏応力pcの評価 p.68
3.4.4 側面摩擦の影響 p.71
3.4.5 定ひずみ速度圧密試におけるひずみ速度依存性 p.73
3.4.6 定ひずみ速度圧密試験における最適ひずみ速度εの決定 p.77
3.5 むすび p.78
第4章 堆積軟岩のせん断時の強度・変形特性 p.81
4.1 まえがき p.81
4.2 試験方法 p.82
4.2.1 試料 p.82
4.2.2 三軸圧縮試験の排水条件と試験法 p.82
4.3 せん断時の強度・変形特性 p.85
4.3.1 応力~ひずみ特性 p.85
4.3.2 間隙水圧係数Afと圧密応力比(pc/σc)の関係 p.90
4.3.3 最大軸差応力とσcの関係 p.91
4.3.4 E50とσcの関係 p.92
4.3.5 破壊基準 p.93
4.4 破壊形態の観察 p.98
4.5 むすび p.101
第5章 堆積軟岩の先行履歴応力を推定するための定ひずみ速度圧密の適用 p.103
5.1 まえがき p.103
5.2 実験概要 p.103
5.3 上総層群の定ひずみ速度結果からみた圧密特性 p.104
5.4 先行履歴応力の推定 p.108
5.5 むすび p.110
第6章 結論 p.112
謝辞 p.114

 近年の急速な経済成長と土木技術の発達につれて、都市およびその周辺部において開発の対象となる領域は、地下深部へと進行している。わが国の都市開発は例外なく沖積~洪積層の上に展開されており、土木的な基礎地盤もこれらの沖積~洪積層が対象となっていた。しかし、開発の大深度化の傾向により、土木技術が対象とする地層は、沖積~洪積層の下位に分布する地層となりつつある。この沖積~洪積層の下位に分布する地層としては、更新世中期以前の地層群が相当し、このうちの大部分がいわゆる『堆積軟岩』とよばれる物理・力学特性を有している。また、土木構造物の大型化に伴って、長大橋や原子力発電所などの大規模重要構造物が堆積軟岩を基礎地盤として建設される機会も多くなっている。
 したがって、都市部付近の地下深部の開発、あるいは堆積軟岩を基礎地盤として大規模重要構造物の建設にあたっては、この堆積軟岩に関する知識が不可欠であるといえる。しかし、堆積軟岩についての工学的力学特性については、徐々に研究が進められているが、堆積軟岩が土と岩の中間的な性質を示すために、特殊な試験機でσc=10kgf/cm2~200kgf/cm2程度の低圧力から高圧力までの応力範囲について検討することが必要なことなどもあり、その工学的性質は完全に解明されているとは言い難い。
 本研究では、圧密およびせん断試験により、粒子間のセメンテーションの影響が顕著な堆積軟岩の強度・変形に関する基礎的特性を明らかにしている。なお、実験に用いた堆積軟岩は、南関東地域に広範囲に厚く堆積し、近年、東京湾横断道路や東京港連絡橋(レインボーブリッジ)などの基礎地盤となっている上総層群を主体としている。この上総層群の軟岩は、計画されている東京湾口道路の長大橋の支持層としても注目されている。
 第1章「序論」では、既往の堆積軟岩に関する研究例を紹介し、堆積軟岩について今後、解明すべき問題について検討している。その後、上総層群の地質学的な概要を説明し、本研究の目的と背景について述べている。
 第2章「標準圧密試験法による上総層群の圧密特性」では、上総層群の泥質岩を対象として、累層ごとに従来から行われている標準圧密試験による上総層群の圧密特性を論じるとともに、地質年代との係わりについて考察している。その結果、圧密降伏応力と地質年代との関係は初期間隙比を介して、相関性が得られることを示した。
 第3章「堆積軟岩の圧密特性への載荷方法の影響」では、定ひずみ速度圧密試験の適用性について述べ、その有効性について論じている。また、定ひずみ速度圧密試験、標準圧密試験、K0圧密試験および等方圧密試験の試験条件が試験結果に及ぼす影響について検討している。特に定ひずみ速度圧密試験と標準圧密試験とを対比し、堆積軟岩の圧密試験の実用上の提案との問題点を抽出している。
 第4章「堆積軟岩のせん断時の強度・変形特性」では、上総層群の試料を用いて、高圧密圧力条件、すなわちσc=240kgf/cm2までの圧力条件で三軸圧縮試験を実施し、得られた過圧密領域と正規圧密領域におけるせん断時の特性について比較検討している。
 第5章「堆積軟岩の先行履歴応力を推定するための定ひずみ速度圧密の適用」では、上総層群の自然試料と練返し試料の定ひずみ速度圧密試験による圧密特性から、上総層群のセメンテーションについて考察し、新しい堆積軟岩ほどセメンテーション効果による強度増加が小さいことを明瞭に示した。さらに定ひずみ速度圧密試験結果を用いて強度・変形特性が変化する点(先行履歴応力)の推定を試みている。その結果、三軸圧縮試験から得られる応力レベルとほぼ一致することがわかった。
 第6章「結論」では、以上の各章で得られた結論をまとめている。
 以上を総括すると、堆積軟岩の圧密試験方法について実用上の提案を行い、その試験方法で得られた圧密特性から、堆積軟岩の強度・変形特性を難解にしていた要因の一つであるセメンテーションについて、その効果を圧密特性から定量的に評価した。また、堆積軟岩はある応力レベルでその力学的挙動が変化することが知られており、その応力レベルを確認することは構造物の設計・施工上重要である。本研究では、簡便な定ひずみ速度圧密試験で得られる圧密特性からその応力レベルを推定しており、土木工学上貢献できると考えられる。

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