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クローラ式建設機械におけるボギー機構の最適化に関する研究

氏名 中村 晋也
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第262号
学位授与の日付 平成15年3月25日
学位論文題目 クローラ式建設機械におけるボギー機構の最適化に関する研究
論文審査委員
 主査 助教授 阿部 雅二朗
 副査 教授 矢鍋 重夫
 副査 教授 中村 和男
 副査 教授 杉本 光隆
 副査 助教授 永澤 茂

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目次

主要記号一覧 p.1

第1章 諸論 p.3
1.1 緒言 p.3
1.2 クローラ式建設機械の動特性に関する従来の研究 p.4
1.3 本論文の概要 p.4

第2章 ボギー機構を有するクローラ式建設機械の走行シュミレーション p.6
2.1 緒言 p.6
2.2 シュミレーション方法 p.6
 2.2.1 仮定 p.6
 2.2.2 シュミレーションモデルの特徴 p.7
 2.2.3 動特性の数値解析方法 p.8
2.3 クローラ式建設機械のモデリング p.10
 2.3.1 概要 p.10
 2.3.2 ボギー機構の概略 p.10
 2.3.3 建設機械マルチボディシステムモデルの構成要素 p.12
 2.3.4 建設機械マルチボディシステムモデルの拘束条件 p.18
2.4 作業地盤のモデリング p.20
2.5 建設機械構成要素に作用する外力 p.22
 2.5.1 概要 p.22
 2.5.2 重力 p.22
 2.5.3 トラックリンクと駆動輪間の接触反力 p.22
 2.5.4 トラックリンクと車輪間の接触反力 p.23
 2.5.5 X型ボギー機構の緩衝トルクおよび揺動角制限トルク p.25
 2.5.6 K型ボギー機構の緩衝トルクおよび揺動角制限トルク p.28
 2.5.7 トラックピン摩擦力 p.31
 2.5.8 トラックリンクとの屈曲角制限トルク p.31
 2.5.9 開ループ化したクローラベルトの切断部接合力 p.31
 2.5.10 運転台支持力 p.33
 2.5.11 トラックリンクに作用する走行駆動力 p.33
 2.5.12 クローラシューが作業地盤から受ける反力 p.37
2.6 走行シュミレーションの妥当性検証 p.41
 2.6.1 概要 p.41
 2.6.2 解析条件 p.41
 2.6.3 運転席位置のバウンシング加速度 p.49
 2.6.4 下部転輪支持軸に作用する動荷重 p.55
2.7 緒言 p.61

第3章 単一突乗越え時の動特性 p.62
3.1 緒言 p.62
3.2 解析条件  p.62
3.3 ボギー機構の形式の影響 p.64
 3.3.1 運転席位置のバウンシング挙動 p.64
 3.3.2 転輪支持軸に作用する動荷重 p.70
3.4 緒言 p.75

第4章 連続凹凸走行時の動特性 p.76
4.1 緒言 p.76
4.2 解析条件 p.76
4.3 ボギー機構の形式の影響 p.80
 4.3.1 運転席位置のバウンシング挙動 p.80
 4.3.2 転輪支持軸に作用する動荷重 p.85
4.7 緒言 p.89

第5章 ボギー機構特性の最適化
5.1 緒言 p.90
5.2 解析条件 p.90
5.3 運転席位置のバウンシング挙動 p.95
5.4 下部転輪支持軸に作用する動荷重 p.104
5.5 緒言 p.110

第6章 結論 p.111
参考文献 p.114

研究に関連した発表論文 p.115
I. 学会論文 p.115
II. 講演論文 p.116

謝辞 p.117

 本論文は、ボギー機構を有するクローラ式建設機械において、その基本性能に大きく影響を及ぼすボギー機構の形式、特性の最適化に関する基礎研究より得られた成果をまとめたものである。機械、特に、走行装置の機構および特性条件、作業地盤条件、機械の走行条件について代表的と考えられる各種条件を考え、条件に応じた最適な走行装置および関連システムを設計開発する際に活用できるシミュレーションモデルおよび方法を構築し、その方法によるシミュレーション解析により走行システムの最適化に有用な知見を得ることを目的とする。実用化されているがその動特性が十分明らかになっているとは言い難い現行のボギー機構および特性を有する機械を対象に、機体各部の加速度や足回り動荷重に代表される動特性を精度良く解析できるシミュレーションモデルおよび方法を構築した。本方法の妥当性を実機実験結果により検証し確認した。さらに建設機械の快適性およびその走行装置の耐久性の評価等に不可欠な運転席位置のバウンシング加速度や足回り動荷重に対するボギー機構の形式および特性の影響を定量的に明らかにし考察した。
 本論文は第1章 緒論、第2~5章 本論、第6章 結論の6章より構成されている。各章の概要は以下の通りである。
 第1章ではまず、本研究の背景を概説し本研究の目的について述べた。続いてクローラ式建設機械の動特性解析に関する従来の研究を紹介して解決すべき課題を抽出し、それと対比して本研究の意義を明確にした。また、本論文の概要も述べた。
 第2章では走行装置にボギー機構を有するクローラ式建設機械とその作業地盤を一つのシステムと見なしてモデル化するシミュレーション方法を示す。本方法において建設機械は汎用性の高いマルチボディシステムとして取り扱う。クローラベルトはその屈曲形状が機械の動特性に及ぼす重要性に配慮し個々のトラックリンク毎にモデル化する。ボギー機構はその定量的効果を十分評価できるように、機構および特性を詳細にモデル化する。作業地盤は形状を自由にモデル化できるようにする。作業地盤の力学特性は地盤法線方向に粘弾性体、せん断方向に粘弾塑性体としてモデル化する。これらによりクローラ式建設機械と作業地盤を実状に即してモデル化および解析できる。ボギー機構は下部転輪支持形式の異なるX型およびK型という代表的な2種類を解析対象とした。これらのボギー機構を有するクローラ式建設機械について単一大突起乗越え時のシミュレーションを行った結果を実機実験結果と比較検討し、確立したシミュレーション方法の妥当性を確認した。
 第3章では建設機械に小頻度であるが高負荷が作用しやすい単一突起乗越え時を、一方、第4章では高頻度に中小負荷が作用する連続凹凸上走行時をそれぞれ対象に走行シミュレーション解析を行い考察した。単一突起乗越え時には運転者に過大なバウンシング加速度が生じ、足回りには衝撃的な動荷重が作用する等の問題が起こる。連続凹凸上走行時には運転者は定常的に変動するバウンシング加速度環境下にさらされる。また、足回りは定常的に変動する動荷重を受け疲労強度等が問題となる。これらの問題は建設機械の快適性や走行装置の耐久性に関わる。単一突起では突起の高さを、連続凹凸では凸部高さおよびピッチをそれぞれ変化させた地盤条件とした。ボギー機構は運転席位置バウンシング加速度の低減、足回りへの負荷集中や衝撃負荷の低減に効果があることとその低減割合を明らかにした。X型ボギー機構とK型ボギー機構を比較すると足回りに作用する動荷重の最大値は同程度であった。しかし、運転席位置バウンシング加速度についてはK型ボギー機構の方が低減効果が高いことを示した。
 第5章では、第3、4章における考察結果を受けて、K型ボギー機構を有するクローラ式建設機械について走行シミュレーション解析を行った。足回り改良の費用対効果に配慮し、低コストな小改良で大きな効果が得られる最適化のための検討を行った。ボギー機構の特性を下部転輪間隔やボギー-トラックフレーム間の緩衝用ゴムパッド剛性を変化させて変更し、単一突起乗越え時および連続凹凸上走行時の解析を行った。これらよりボギー機構の特性が運転席位置のバウンシング挙動および足回りの動荷重に及ぼす影響を調べ考察した。緩衝用ゴムパッド剛性が運転席位置バウンシング加速度等に及ぼす影響は無視できず、新機種開発時などにはその入念な最適化が必要と考えられることを示した。
 第6章では本論文を工業有用性の観点から総括し結論を述べた。
 本論文で示したようなシミュレーションモデルおよび方法により、ボギー機構を代表とする軟式懸架機構を有するクローラ式建設機械の快適性や耐久性と関わる機体各部の挙動や動荷重を定量的に把握することが可能となり、その最適な設計や運用に有用であると思われる。

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