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マイクロトライボロジー環境下における機能性表面評価に関する研究

氏名 小林 義和
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第198号
学位授与の日付 平成15年3月25日
学位論文題目 マイクロトライボロジー環境下における機能性表面評価に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 柳 和久
 副査 教授 田中 紘一
 副査 助教授 高田 孝次
 副査 助教授 金子 覚
 副査 助教授 明田川 正人

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目次

第1章 緒論 p.1
 1.1 本研究の背景 p.1
 1.2 従来の研究と問題点 p.2
 1.3 本研究の目的 p.9
 1.4 本論文の範囲と構成 p.10
 1.5 本研究で用いる主な記号 p.12
 参考文献 p.14

第2章 表面性状のキャラクタリゼーション p.19
 2.1 緒言 p.19
 2.2 微細表面性状測定機の特徴 p.21
 2.3 表面性状データの前処理 p.21
 2.4 突起頂上の抽出 p.23
 2.5 表面性上評価パラメータの提案 p.26
 2.5.1 突起頂上の高さ分布 p.27
 2.5.2 突起頂上の面内分布 p.29
 2.5.3 突起頂上の先端形状 p.29
 2.6 測定および解析条件の検討 p.31
 2.7 結言 p.34
 参考文献 p.38

第3章 軽負荷状態における接触解析モデルの提案 p.39
 3.1 緒言 p.39
 3.2 単一突起間の接触理論 p.39
 3.2.1 球状突起の接触 p.39
 3.2.2 楕円体突起の接触 p.42
 3.3 統計的接触理論による接触変形解析 p.46
 3.3.1 GWモデル p.46
 3.3.2 フラクタルモデル p.46
 3.4 接触頂上の弾性相互作用を考慮した接触解析モデルの提案 p.48
 3.4.1 新しい接触会席モデルの必要性 p.48
 3.4.2 処理の流れ p.48
 3.4.3 接触解析モデルとアルゴリズム p.49
 3.5 接触解析モデルの検証 p.53
 3.5.1 提案する接触解析モデルの妥当性の検証 p.53
 3.5.2 同一条件により作成した解析表面の比較 p.55
 3.5.3 GWモデルとの比較 p.55
 3.5.4 接触頂上の弾性変位相互作用を考慮しないシミュレーションとの比較 p.57
 3.6 解析事例 1:うねり成分を考慮した接触変形解析 p.58
 3.6.1 広領域における接触変形解析の必要性 p.58
 3.6.2 測定試料,測定条件 p.58
 3.6.3 評価パラメータとマイクロうねり波形 p.59
 3.6.4 解析結果と考察 p.63
 3.7 解析事例 2:軽負荷環境下の表面接触における表面形状パラメータの影響 p.73
 3.7.1 研究背景 p.73
 3.7.2 接触解析条件 p.74
 3.7.3 解析結果と考察 p.74
 3.8 結言 p.86
 参考文献 p.86

第4章 2表面の接触が関与する物理モデルの構築 p.88
 4.1 緒言 p.88
 4.2 微視領域接触時の物理モデル p.88
 4.3 解析事例 1:ヘッド/ディスク界面におけるメニスカス現象について p.92
 4.3.1 研究の目的 p.92
 4.3.2 解析試料,評価パラメータおよび解析条件 p.94
 4.3.3 結果と考察 p.94
 4.3.4 まとめ p.94
 4.4 解析事例 2:射出成形におけるコア表面粗さと離型抵抗力の関係 p.97
 4.4.1 研究の目的 p.97
 4.4.2 射出成形用金型と実験手順 p.97
 4.4.3 コアおよび成形品表面のモデル化 p.99
 4.4.4 メニスカス力の解析 p.106
 4.4.5 離型抵抗力発生のメカニズム p.108
 4.4.6 まとめ p.111
 4.5 結言 p.111
 参考文献 p.112

第5章 機能性表面おけるトライボロジー特性の推定 p.114
 5.1 緒言 p.114
 5.2 評価データ解析手法 p.114
 5.3 解析事例 1:磁気テープベースフィルムの表面形状と機能予測 p.115
 5.3.1 研究の目的 p.115
 5.3.2 評価試料と表面性状測定条件 p.118
 5.3.3 磁気テープベースフィルムの表面性状評価パラメータ p.118
 5.3.4 解析結果と考察 p.124
 5.4 解析事例 2:アルミニウム基板印刷版材の表面性状と機能評価・予測 p.130
 5.4.1 研究の目的 p.130
 5.4.2 評価試料 p.133
 5.4.3 PS版の表面性状評価パラメータ p.133
 5.4.4 解析結果と考察 p.135
 5.5 結言 p.140
 参考文献 p.141

第6章 結論 p.142

関連論文,解説記事,国際学会および口頭発表 p.145

謝辞 p.148

 本論文は、金属間化合物Al3Tiに遷移金属元素を添加したAl-Ti基3元系Ll2型合金の常温延性の改善を図る試みの一つとして4元系に着目し、4元系Ll2型合金の1450Kにおける単相領域の検討、4元系Ll2型単相合金の格子定数および粉末試料中の残留ひずみの検討、4元系Ll2型単相合金の粉末試料中の残留ひずみとバルク試料の曲げひずみの検討、ならびに4元系Ll2型単相合金の曲げひずみに及ぼす組成の検討の4部分から構成され、それぞれの要旨は以下のとうりである。
1.4元系Ll2型合金の1450Kにおける単相領域の検討
 広いLl2型単相領域を持つ3元系(AlMn)3Ti合金をベースに、その構成元素の組成比を変えずに第4元素(X=Zr,V,Ag,Ga)を添加した4元系(AlMn)3Ti(X)合金は明瞭にLl2単相領域を形成し、第4元素の最大固溶量はGaの13mo1%であった。また、Ll2相境界面の形状から推定したZr,V,Gaの固溶サイトはAlとTiで優先占有サイトはAlであるが、AgはAlサイトを占有した。また、格子定数の変化は添加第4元素の原子サイズで説明できた。一方、2種類の三元系Ll2型単相合金を組合せた4元系Ll2型(AlY,Z)3Ti(Y,Z=Mn,Cr,Ag,Fe)合金のLl2単相領域はパイプ形状であった。これら合金の格子定数変化は組合せた第4元素の原子サイズに依存した。またポア量はAg添加合金で多く観察された。そしてEngel-Brewer理論の電子濃度(e/a)を3元系Ll2型単相(AlMn)3Ti合金に適用し、単相領域の予測には限界のあることを示した。
2.4元系Ll2型単相合金の格子定数および粉末試料中の残留ひずみの検討
 第4元素を添加したLl2型単相(AlMn)3Ti(X)合金の粉末化試料を用いてX線回折法(Wilson法)で定量的に求めた残留ひずみと単相材の硬さ測定に際してミクロ・クラックの発生する荷重を比較したところ、残留ひずみとミクロ・クラック発生荷重は正の相関を示し、V添加は両者の値を増大させた。また3元系Ll2型(AlMn)3Ti合金の残留ひずみ量はAl-Mn側の中央の組成で最大値を示した。一方、組合せた4元系Ll2型(AlY,Z)3Ti合金の添加元素Y,Zによる格子定数の変化は原子サイズ効果で説明できた。また、Ag添加4元系合金の残留ひずみの変化は直線回帰分析からポア面積率とポアサイズにより説明できた。
3.4元系Ll2型単相合金の粉末試料中の残留ひずみとバルク試料の曲げひずみの検討
 4元系Ll2型単相(AlMn)3Ti(V)合金の粉末試料中の残留ひずみはV添加量と共に増加した。また残留ひずみと3点曲げ試験による曲げひずみは正の相関を持ち、曲げひずみは6mo1%までのV量と共に増加した。一方、種々の3元系Ll2型単相(AlD)3Ti(D=Ag,Mn,Cr,Fe,Ni,Cu)合金にVを添加した時、格子定数は減少する傾向であったが、Cr,Cu,Ni添加合金との相関は明瞭ではなかった。8mo1%Vを固溶したLl2型(AlMn)3Ti(V)合金は最も多量の残留ひずみを形成した。
4.4元系Ll2型単相合金の曲げひずみに及ぼす組成の検討
 4元系Ll2型単相(AlMn)3Ti(V)合金の高Ti(.25.74mo1% )および高Mn(.12.5mo1%)組成域でのVの添加は曲げひずみに正の効果を示した。また、曲げひずみはTi量の減少と共に増加した。曲げひずみが0.3%を超えた高Mn合金試料の破断面には数本の帯状濃淡がリバーパターンに重複して観察された。一方、組合せた4元系Ll2型単相(AlMnCr)3Ti合金で26mo1%以上のTiを含む組成では、ポア面積率およびポアサイズはTi量と共に減少する。また、最大曲げひずみは0.49%で、Ti-rich組成側の合金では延性改善の効果は期待できないことがわかった。曲げひずみが0.3%を超えると破断面には数本の帯状濃淡が観察された。

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