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画像のフラクタル符号化に関する研究

氏名 古沢 竜志
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第291号
学位授与の日付 平成16年3月25日
学位論文題目 画像のフラクタル符号化に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 中川 匡弘
 副査 教授 松田 甚一
 副査 教授 神林 紀嘉
 副査 教授 中村 和男
 副査 助教授 岩橋 政宏

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目次

第1章 序論 p.1
1.1 本研究の背景 p.1
1.2 フラクタル画像符号化 p.5
 1.2.1 フラクタル画像符号化の歴史的背景 p.5
 1.2.2 Iterated Function System(IFS) p.6
 1.2.3 小アフィン変換を用いたIFSによるフラクタル画像生成 p.7
 1.2.4 フラクタル画像符号化 p.9
 1.2.5 符号化シュミレーション p.15
1.3 本研究の目的 p.20
1.4 本論文の構成 p.21

第2章 マルチスケーリングを用いたフラクタル画像符号化 p.23
2.1 はじめに p.23
2.2 Block Truncation Coding p.25
2.3 マルチスケーリング手法 p.27
 2.3.1 基本原理 p.27
 2.3.2 ビッドプレーンの符号化 p.30
 2.3.3 マルチスケーリングによる縮小変換の近似性能 p.32
 2.3.4 符号化特性 p.33
 2.3.5 ブロック比率の変化 p.41
 2.3.6 主観評価実験 p.43
2.4 カラー画像に対するマルチスケーリングフラクタル符号化 p.46
 2.4.1 目的 p.46
 2.4.2 RGB成分に対するマルチスケーリングフラクタル符号化 p.46
 2.4.3 YIQ成分に対するマルチスケーリングフラクタル符号化 p.52
 2.4.4 主観評価実験 p.60
2.5 考察 p.61
2.6 結言 p.62

第3章 マルチドメインを用いたフラクタル画像符号化 p.65
3.1 はじめに p.65
3.2 マルチドメイン手法 p.65
3.3 符号化手順 p.67
3.4 シュミレーション結果 p.68
 3.4.1 重合せ数Mによる符号化特性 p.68
 3.4.2 他の手法との比較 p.74
3.5 考察 p.76
3.6 結言 p.77

第4章 マルチスケーリング・ドメインを用いたフラクタル画像符号化 p.79
4.1 はじめに p.79
4.2 マルチスケーリング・ドメイン手法 p.79
4.3 符号化手順 p.81
4.4 シュミレーション結果 p.83
4.5 主観評価実験 p.94
4.6 考察 p.94
4.7 結言 p.95

第5章 マルチドメインを用いたハイブリッド型フラクタル画像符号化 p.97
5.1 はじめに p.97
5.2 多ドメイン数によるマルチドメイン手法 p.98
 5.2.1 マルチドメインを用いた画像再現(量子化なし) p.98
 5.2.2 マルチドメインを用いた画像再現(量子化あり) p.104
5.3 ハイブリッド型マルチドメインフラクタル画像符号化 p.107
 5.3.1 符号化手順 p.107
 5.3.2 シュミレーション結果 p.108
5.4 適応型ハイブリッドマルチドメインフラクタル画像符号化 p.118
 5.4.1 符号化手順 p.118
 5.4.2 シュミレーション結果 p.119
5.5 考察 p.123
5.6 結言 p.124

第6章 総括 p.127
謝辞 p.131
参考文献 p.133
本研究に関する p.135

現代の情報化社会において,膨大な情報を高速・効率的に処理し,通信コストや蓄積媒体容量を軽減するため,高能率な情報符号化・圧縮技術の確立が渇望されている.このような情報技術革新の要請の中,次世代画像符号化手法の一つとして,フラクタル符号化が最近注目されており,国内外で広く研究されている.フラクタル画像符号化手法は,現在主流のブロック変換をベースとした方式に比べ,ブロック歪み等が軽減されるという長所を有するが,一般の自然画像が厳密なフラクタル性を有していないため,高精度の縮小写像を構築することが困難であり,結果として高品位な復号画像が得られないという短所が指摘されてきた.
 上記の観点から,本研究では,従来のフラクタル符号化手法を拡張したマルチスケーリング手法,及び,マルチドメイン手法を提案し,縮小写像の近似精度を高め,符号化・圧縮性能の向上を目指した.さらに,上記の両手法を組み合わせたマルチスケーリング・ドメイン手法においては,ドメイン数増加時のPSNRの低下を抑制する新規なハイブリッド符号化手法を提案し,さらなる符号化性能の向上を実現した.
 本論文は全6章から構成されており,各章の要旨は以下の通りである.
 まず,第1章では,本研究の歴史的背景とその目的を記し,序論とした.具体的には,フラクタル符号化の基礎となるIterated Function Systems(IFS)の基本的な性質,並びに,フラクタル画像符号化手法について概説し,従来手法の問題点を指摘した.
 次いで,第2章では,レンジブロックを領域分割し,各領域に対して個別の輝度スケーリング変換を施す,マルチスケーリング手法を用いたフラクタル画像符号化を提案した.本手法では,ブロックを領域分割することによって,ブロック内でエッジを境界とする複数の領域に対して個別の輝度スケーリング変換を施し,縮小写像の近似精度の向上を実現した.その結果,従来のフラクタル符号化手法では十分な再現性が得られなかった急峻なエッジを有する画像に対しても,高いPSNR,及び,良好なエッジの再現性が実現され得ることを示した.さらに,本マルチスケーリング手法をカラー画像に対して適用し,本手法の有用性を確認した.
 また,第3章では,複数のドメインブロックの縮小写像の重ね合わせにより,従来手法よりも高い近似精度を実現するマルチドメインフラクタル画像符号化手法を提案した.本手法では,レンジブロックの輝度値を縮小写像の近似誤差を直交化したドメインブロックで展開することで,縮小写像の近似精度を向上することに成功した.第2章で述べたマルチスケーリング手法と比較した場合,急峻なエッジを含んだ画像では優位性は低いが,原画像の相似性が比較的低い場合には,本章で提案する直交化したドメインの重合せが有効であることを確認した.また,とりわけ復号画像に高い再現性を要求する場合には,重複ドメイン数を増加させることで対応可能であり,マルチスケーリング手法よりも簡便な手法であることを確認した.さらに,第4章では,第2章で提案したマルチスケーリング手法,並びに,第3章で述べたマルチドメイン手法を融合した,新規なマルチスケーリング・ドメイン手法を用いたフラクタル符号化手法を提案した.本提案手法により,各手法を単独で用いた場合よりも,PSNRの飽和値の大幅な向上が実現され,視覚的にも高品位な復号画像が得られた.
 第5章では,第3章で述べたマルチドメイン手法を用いる際に,復号画像からドメインブロックを抽出して符号化する,新規なハイブリッド型マルチドメインフラクタル画像符号化手法を提案した.本手法では,復号の際に,変換を反復する必要がないため,再符号化においては変換の縮小性を考慮する必要がなく,より高精度な輝度スケーリング変換が実現可能であり,結果として復号画像の再現性が大幅に向上した.さらに,ハイブリッド型マルチドメイン手法に対して,レンジブロックに対する近似度に依存したドメイン数の適応化を行い,低ビットレート領域だけではなく,広範囲に亘って符号化性能が向上した.
 最後に,第6章では,各章で述べた研究成果を総括し,本研究で得られた知見をまとめた.
 上記のように,本論文では,マルチスケーリング手法,及び,マルチドメイン手法を用いた新規なフラクタル符号化を提案し,コラージュ定理の観点からも改善が要求される縮小写像の近似精度を高めることにより,従来のフラクタル符号化手法に比べ,同ビットレートで,PSNRで約10dB高品位な復号画像が得られることを示した.

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