本文ここから

プラント建設における建設工程の進捗管理手法に関する研究

氏名 吉村 康史
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第282号
学位授与の日付 平成15年9月30日
学位論文題目 プラント建設における建設工程の進捗管理手法に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 大里 有生
 副査 教授 福澤 康
 副査 教授 中村 和男
 副査 教授 淺井 達雄
 副査 講師 樋口 良之

平成15(2003)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

目次

第1章 序論
1.1 緒言 p.1
1.2 本研究の対象範囲 p.3
1.3 プラント建設とその管理 p.4
1.4 本研究の概要と論文の構成 p.8
1.5 本研究に関連する従来の研究 p.9

第2章 建設工程の進捗管理支援システム
2.1 緒言 p.13
2.2 プラント建設の進捗管理 p.13
 2.2.1 建設モデル p.13
 2.2.2 作業に影響する要因 p.14
 2.2.3 生産性と進捗管理 p.16
2.3 進捗管理を支援するシステムモデル p.20
2.4 結言 p.23

第3章 基準作業時間推定法
3.1 緒言 p.24
3.2 配管据付作業と作業時間モデル p.25
 3.2.1 作業の構成 p.25
 3.2.2 作業時間モデル p.27
3.3 基準作業時間推定の方法論 p.29
3.4 基準作業時間の推定法 p.30
 3.4.1 基本動作への分解 p.30
 3.4.2 変動要因への影響推定 p.33
 3.4.3 PTS法による基準作業時間推定アルゴリズム p.39
3.5 基準作業時間推定法の適用例 p.41
 3.5.1 プラント対象例 p.41
 3.5.2 基準作業時間推定法の適用 p.43
3.6 結言 p.43

第4章 建設作業の作業モニタリング手法
4.1 緒言 p.46
4.2 建設作業を対象とした作業のモニタリング手法 p.46
4.3 VTR作業分析自動化システム p.49
 4.3.1 システム構想と構築方法 p.49
 4.3.2 システム構築 p.57
4.4 ICタグを用いた作業モニタリングシステム p.62
 4.4.1 システム構想と構築方法 p.62
 4.4.2 システムの構築 p.66
4.5 作業モニタリングシステムの適用結果 p.79
 4.5.1 VTR作業分析自動化システム p.79
 4.5.2 ICタグを用いた作業モニタリングシステム p.92
4.5 結言 p.104

第5章 プラント建設の進捗状態推定と管理方策決定手法
5.1 緒言 p.105
5.2 進捗管理に係る意思決定モデル p.106
 5.2.1 ロジスティック累積曲線を用いたプラント建設進捗モデル p.106
 5.2.2 進捗管理意思決定モデル p.110
5.3 進捗に関連する作業現場モデル p.110
 5.3.1 作業現場の状態と進捗管理 p.110
 5.3.2 作業現場モデル構築方法 p.113
5.4 進捗状態推定と管理方策決定手法 p.116
 5.4.1 進捗計画 p.116
 5.4.2 Sカーブを利用した進捗状態推定と対策決定 p.116
 5.4.3 進捗状態へ係る要因と作業現場モデル p.124
 5.4.4 要因の進捗への影響 p.127
5.5 結言 p.132

第6章 進捗管理支援システムの構築
6.1 緒言 p.133
6.2 進捗管理支援システムの機能と構成 p.133
6.3 進捗管理支援システム p.137
 6.3.1 本支援システムを利用した進捗管理実行フロー p.137
 6.3.2 サブシステムの実行フロー及び実行画面 p.139
6.4 結言 p.151

第7章 結論 p.152

著者による発表論文 p.156

参考文献 p.158

謝辞 p.166

プラントの建設が,大幅な原価低減を要求されている中,本論文は,現地での建設における生産性の向上や進捗管理精度の向上に貢献することを目的に,知識工学や情報技術等の発展した工学技術を有効に利用した科学的方法論を利用して,管理手法の標準化や平均管理能力の向上を図る進捗管理支援手法について論じたものである.
 本論文は7章から構成され,まず,進捗管理を支援する今までにないシステムモデルを提案し,その具現化方法について各章で論じた.各章の概要を以下に示す.
 序論では,本論文の背景・目的を述べるとともに,プラント建設及び管理を概説すると同時に本論文の対象範囲を明確にした.さらに,本論文の目的に関連する従来の研究を紹介し,新たな進捗管理を支援するシステムの必要性と本研究の意義を明確にした.
 第2章では,建設を入出力モデルで表し建設の進捗に影響する要因を明らかにすると共に,進捗管理は日々の生産性を目標値に維持することにあるという観点から,前述した要因を考慮しながら進捗管理を支援するシステムの構想を提案した.このシステムは,進捗制御サブシステム,作業モニタリングサブシステム,基準作業時間推定サブシステムよりなる.各章では,この3つのサブシステムを具現化するための進捗管理手法について述べた.
 第3章では,基準作業時間推定サブシステムを構築するための基準作業時間推定法を確立した.作業をモニタリングした結果である作業時間等を評価するには,基準となる値が必要である.そこで,プラント建設では作業割合が最も多くかつ進捗の管理がむずかしい配管作業を対象として,プラント建設では適用が試みられてない標準時間設定法であるPTS法の適用方法を明らかにし,基準作業時間推定法を確立した.
 第4章では,作業モニタリングサブシステムを構築するため,画像処理を利用したVTR(Video Tape Recorder)作業分析の自動化方法,広域に及ぶ作業領域から作業をモニタリングすることへのICタグの適用方法を確立した.動画像の中にある配管色の面積変化,発光現象を画像処理により識別することにより作業の切れ目を判断でき,作業時間を推定できることがわかった.なお,この手法は配管以外にも適用できることを示した.
 作業現場内の環境でICタグが発信する信号を一定領域で受信でき,さらに,無線LANで複数の受信機(クライアント)のネットワークを構成することにより広域に及ぶ作業領域から作業員を特定でき,稼働率,作業領域内作業員数推移等を把握できるシステムを構築した.
 第5章では,進捗制御サブシステムを構築するため,プロジェクトマネジャー(PMr)の進捗管理に係る知識を分析し,その知識をシステム化した.まず,PMrの意思決定モデルを明らかにすることにより,ロジスティック累積曲線(Sカーブ)から進捗を推定し,原因推定,対策立案にいたる管理方策をシステム化した.一方,進捗管理には,作業現場の状況をどのように捉えるかが重要である.PMrの知識を分析することにより,作業現場内で進捗状態に影響する定性的要因11項目抽出し,これらの要因で作業現場の状況を表す手法を提案した.さらに,11項目の定性的要因を入力することにより将来の進捗を予測できる作業現場モデル(プロジェクトモデル)を構築した.
 第6章では,各章の結果を踏まえた進捗管理支援システムを構築した.このシステムは,進捗制御サブシステム,作業モニタリングサブシステム,基準作業時間推定サブシステムよりなる.これらの3つのサブシステム利用した進捗管理を支援する手法を確立した.
 第7章では,本論文の結論を述べた.
 以上の結果から広域に及ぶ作業現場からリアルタイムに作業をモニタリングし,そのデータを熟練者の判断を模擬したロジックで評価する今までにない進捗管理支援システムを構築することができた.現在,本支援システムは,数々の建設管理経験者の評価を経て,進行中の建設現場へ導入を開始した.管理の標準化,平均管理レベル向上が図られ,生産性の向上や管理精度の向上に有効であると考える.
また,本研究は建設を1つのシステム,管理をそのシステムを制御する行為という考え方を基礎としている.このことは,建設管理をシステム工学の視点で捉えていることを意味しており,建設管理の研究分野では従来になく,新しい進捗管理手法を確立したと言える.

非公開論文

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る