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大気開放型化学気相折出法による酸化物薄膜の機能設計と工業応用

氏名 時田 修二
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第320号
学位授与の日付 平成16年9月30日
学位論文題目 大気開放型化学気相折出法による酸化物薄膜の機能設計と工業応用
論文審査委員
 主査 教授 齋藤 秀俊
 副査 教授 西口 郁三
 副査 教授 植松 敬三
 副査 教授 高田 雅介
 副査 教授 小松 高行
 副査 南部 信義

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目次

第1章 序論 p.1
 1.1 研究の背景 p.1
 1.2 キーワード p.4
 1.2.1 酸化チタン p.4
 1.2.2 酸化亜鉛 p.6
 1.2.3 化学気相折出法 p.7
 1.2.4 動力学と自己組織化 p.9
 1.3 課題 p.11
 1.3.1 大気解放型CVD装置 p.11
 1.3.2 酸化チタン p.12
 1.3.3 酸化亜鉛ウイスカー p.12
 1.4 本研究の目的 p.12
 1.5 本論文の概要 p.12
 参考文献 p.15

第2章 新型気化器及びノズルを導入した大気開放型化学気相折出装置の開発 p.17
 2.1 緒言 p.18
 2.2 気化器 p.19
 2.2.1 気化器の特徴と課題 p.19
 2.2.2 新型気化器の構造 p.20
 2.3 複合酸化物用気化器 p.22
 2.3.1 気化器の特徴と課題 p.22
 2.3.2 直列式気化器システム p.22
 2.3.3 直列式気化器システムを用いた酸化物膜作成例 p.24
 2.4 スリットノズル p.27
 2.4.1 スリットノズルの特徴と課題 p.27
 2.4.2 新型スリットノズルの構造 p.30
 2.4.3 新型スリットノズルの膜厚分布 p.31
 2.5 小型大気開放型CVD装置 p.33
 2.6 大型大気解放型CVD装置 p.36
 2.7 まとめ p.38
 参考文献 p.39

第3章 大気開放型化学気相折出装置によるアナターゼ膜の高速エピタキシー p.41
 3.1 緒言 p.42
 3.2 実験方法 p.42
 3.3 結果および考察 p.46
 3.4 まとめ p.51
 参考文献 p.52

第4章 大気開放型化学気相折出装置により作製された高配向アナターゼ多結晶膜の光誘起表面反応 p.54
 4.1 緒言 p.55
 4.2 実験方法 p.56
 4.3 結果および考察 p.57
 4.4 まとめ p.61
 参考文献 p.62

第5章 走査型化学気相折出法によるアルミニウム添加酸化亜鉛ウイスカーの均一合成 p.64
 5.1 緒言 p.65
 5.2 実験方法 p.66
 5.3 結果および考察 p.68
 5.4 まとめ p.76
 参考文献 p.77

第6章 酸化亜鉛ウイスカー群から成る大面積薄膜の構造 p.78
 6.1 緒言 p.79
 6.2 実験方法 p.80
 6.3 結果および考察 p.80
 6.4 まとめ p.90
 参考文献 p.91

第7章 酸化物微粒子を用いた高速堆積法 p.93
 7.1 緒言 p.94
 7.2 実験方法 p.98
 7.3 結果および考察 p.100
 7.4 まとめ p.106
 参考文献 p.107

第8章 結論 p.108
発表論文 p.111

大気開放型化学気相析出(CVD)過程において、酸化物ミクロ・ナノスケール結晶は成長先端の動力学に支配されて成長する。動力学過程では結晶の成長先端はある特異面で囲まれるため、成長結晶群は自己組織化する。まずアナターゼ型チタニア結晶をヘテロエピタキシーして自己組織化した。組織の優先結晶配向を得ることで、アナターゼ光触媒能の最適化手法を提案した。次に酸化亜鉛ウイスカーを高過飽和環境下で自己組織化した。CVDノズル中の原料流れを最適化することで、8インチ-シリコン単結晶ウエハ上に均一な自己組織化酸化亜鉛ウイスカー群を得た。以上の知見を基に大気開放型CVD法による酸化物結晶の自己組織化手法を工業応用する道を開拓した。これらの結果を以下に示す8章からなる論文に示す。
第1章「序論」では研究の背景を述べた。本論文のキーワードである大気開放型CVD法、動力学過程と自己組織化、酸化チタン及び酸化亜鉛に関する技術的現状・動向について述べ、課題を明らかにし、本研究の目的および論文構成を示した。
第2章「新型気化器及びノズルを導入した大気開放型化学気相析出装置の開発」では大気開放型CVD装置の技術の特徴と課題を明らかにし、工業応用するための改良点を構成要素ごとに検討した。気化器では、原料用加熱プレート設置及びサイカンヒーターを本体に粗密を付けて巻くことで原料気化量の安定性を向上させた。また直列気化器システムでは、2元素複合酸化物合成の再現性を向上させた。スリットノズルでは、原料流れを最適化するための拡散板とスリットを設計して装着し、膜厚分布が面内方向±10%以内の薄膜作製を可能にした。以上の検討結果を酸化亜鉛、チタン酸バリウム及びアルミニウム添加酸化亜鉛―酸化アルミニウム傾斜機能膜を作製することで試験した。
第3章「大気開放型化学気相析出法によるアナターゼ膜の高速エピタキシー」では大気開放型CVD法を用いて4種類の配向を有するアナターゼ膜を単結晶基板上にヘテロエピタキシーし、自己組織化によって特異な表面形態を有する結晶を作製し、基板とのエピタキシャル関係を明らかにした。エピタキシャルアナターゼ膜の優先配向方位は〈112〉、〈110〉、〈001〉及び〈100〉でいずれも速い成長速度を有していた。光触媒能を示すメチレンブルーの分解速度が結晶の配向方位に依存していることを見出し、アナターゼ光触媒能の最適化手法を提案した。
第4章「大気開放型化学気相析出装置により作製された高配向アナターゼ多結晶膜の光誘起表面反応」では大気開放型CVD法を用いて4種類の配向を有する多結晶アナターゼ膜を石英ガラス基板上に作製した。多結晶アナターゼ膜の優先配向方位は〈112〉,〈110〉,〈001〉及び〈100〉で速い成長速度を有していた。光触媒能を示すメチレンブルーの分解速度が多結晶アナターゼ膜の配向方位に依存していることを明らかにし、アナターゼ光触媒能の最適化手法が多結晶膜についても適用できることを示した。
第5章「走査型化学気相析出法によるアルミニウム添加酸化亜鉛ウイスカー群の均一合成」では可動式ノズルを有する大気開放型CVD装置を用いて基板サイズ50×50 mm2 シリコン上にアルミニウム添加酸化亜鉛ウイスカー群を合成した。面内において長さ20 μm±5 μm、直径2.6 μm±0.8 μm、面外配向±2.3 °及びアルミニウム濃度0.83 at.%±0.03 at.%を有するウイスカーを合成し、ほぼ均一な自己組織化を達成した。
第6章「酸化亜鉛ウイスカー群から成る大面積薄膜の構造」ではスリットサイズ0.5×240 mm2大型ノズル2台を有する大気開放型CVD装置を開発し、酸化亜鉛ウイスカー群を8インチ-シリコン単結晶ウエハ上に成長させた。長さ17 μm±6 μm、直径2.3 μm±1.0 μmならびに面外配向±3.4 °の均一な自己組織化膜になることがわかった。このことは装置ならびに試料の工業応用にきわめて重要な意味をもつ。
第7章「酸化物微粒子を用いた高速堆積法」では高温に加熱された酸化物微粒子を膜成長促進のための核として用いることを提案し、酸化物微粒子を噴出できる高温ノズルを備えた大気開放型CVD装置を用いて酸化イットリウムの高速堆積を検討した。ノズル温度500℃、600℃及び700℃において酸化イットリウム膜を作製し堆積速度を比較した。酸化イットリウム膜は600℃において最も堆積速度が速く従来の大気開放型CVD法の6倍の高速化に成功した。
第8章「結論」では各章の結果を検討し本研究の目的に対して次の結論を得た。(1)酸化物結晶の自己組織化を安定に得るために、大気開放型CVD装置の気化器の原料気化量の安定性、直列気化器システムでは2元素複合酸化物作製の再現性を向上させ、スリットノズルでは拡散板とスリットによって膜厚分布が面内方向±10%以内の薄膜作製を可能にした。(2)エピタキシャル及び多結晶アナターゼ膜の優先結晶配向を得ることで光触媒能が配向方位に依存していることを見出し、アナターゼ光触媒能の最適化手法を提案した。(3)工業応用の達成目標として基板の大きさに8インチサイズ-シリコン単結晶ウエハを選択し、大型大気開放型CVD装置によって酸化亜鉛ウイスカーを作製した。従来の堆積速度を上回る手法として酸化物微粒子を用いた酸化イットリウム膜作製方法を提案し、従来の6倍の高速堆積に成功した。

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