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一様流中の円柱の振動に対する下流に置かれた円柱の影響に関する研究

氏名 襄 憲民
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第64号
学位授与の日付 平成4年3月25日
学位論文の題目 一様流中の円柱の振動に対する下流に置かれた円柱の影響に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 白樫 正高
 副査 助教授 増田 渉
 副査 助教授 金子 覚
 副査 助教授 佐久田 博司
 副査 助教授 佐野 正利
 副査 新潟大学教授 長谷川 富市

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目次 p.i

主な記号 p.vi

第1章 序論 p.1
1.1 緒言 p.2
1.2 従来の研究 p.9
1.2.1 流れによる単独柱状物体の振動 p.9
1.2.2 近接物体の影響 p.16
1.3 本研究の目的 p.20
1.4 本研究の概要 p.21

第2章 風洞実験装置、実験方法およびデータ処理法 p.23
2.1 実験装置 p.24
2.1.1 風洞および測定部 p.24
2.1.2 上流円柱の支持方法 p.27
2.1.3 下流円柱の支持方法 p.30
2.2 測定方法およびデータ処理法 p.30
2.2.1 円柱の変位および振動数 p.30
2.2.2 流速の測定 p.32
2.2.3 円柱表面の圧力の測定 p.35
2.2.4 測定機器および信号処理装置 p.35
2.2.5 位相平均法 p.38
2.2.6 流れの可視化 p.45
2.3 実験条件 p.48

第3章 カルマン渦励振と同期現象および履歴現象 p.51
3.1 緒言 p.52
3.2 従来の研究 p.53
3.3 本章の目的 p.54
3.4 実験装置および方法 p.55
3.5 数値解析法 p.57
3.6 実験結果および考察 p.59
3.6.1 強制振動円柱からのカルマン渦流出の同期現象 p.59
3.6.2 振動円柱のまわりの流れの数値解析 p.61
3.6.3 カルマン渦励振の履歴現象 p.67
3.7 第3章結論 p.78

第4章 下流円柱によるカルマン渦励振抑制効果 p.79
4.1 緒言 p.80
4.2 従来の研究 p.81
4.3 本章の目的 p.83
4.4 実験装置および方法 p.84
4.5 実験結果および考察 p.87
4.5.1 2円柱間距離の影響 p.87
4.5.2 2円柱の直径比の影響 p.90
4.5.3 2円柱まわりの流れ p.90
(1)上流円柱背後の流れ p.90
(2)上流円柱表面の圧力 p.96
(3)剥離点への影響 p.104
4.5.4 カルマン渦励振抑制効果の発生機構に関する考察 p.107
4.6 第4章結論 p.123

第5章 下流円柱により誘起される振動 p.125
5.1 緒言 p.126
5.2 本章の目的 p.128
5.3 実験装置および方法 p.129
5.4 実験結果および考察 p.131
5.4.1 下流円柱により誘起される振動 p.131
5.4.2 速度変動と振動の関係 p.134
5.4.3 2円柱交差部付近の流れ p.141
5.4.4 振動振幅と間隙の関係 p.144
5.4.5 円柱に作用する揚力 p.148
5.5 第5章結論 p.153

第6章 十字交差2円柱付近の流れの構造 p.155
6.1 緒言 p.156
6.2 従来の研究 p.157
6.3 本章の目的 p.163
6.4 実験装置および方法 p.163
6.5 実験結果および考察 p.165
6.5.1 交差部付近の流れの周期性 p.165
6.5.2 縦渦の流出の位相 p.182
6.5.3 縦渦の広がり p.190
6.5.4 上流円柱表面の圧力と変動揚力 p.194
6.6 交差部付近の流れの構造 p.208
6.7 第6章結論 p.214

第7章 十字交差2円柱からの周期的渦流出に及ぼす上流円柱の振動および下流円柱直径の影響 p.217
7.1 緒言 p.218
7.2 本章の目的 p.219
7.3 実験装置および方法 p.220
7.4 実験結果および考察 p.220
7.4.1 縦渦の流出に対する上流円柱の振動の影響 p.220
(1)2円柱間隙と縦渦の流出周波数の関係 p.220
(2)流速と縦渦の流出周波数の関係 p.226
7.4.2 下流円柱直径の影響 p.228
(1)振動振幅と2円柱間隙の関係に対する下流円柱直径の影響 p.228
(2)2円柱の直径が異なる場合の2円柱間隙と縦渦流出周波数の関係 p.228
7.5 第7章の結論 p.233

第8章 結論 p.234

参考文献 p.238

付録 p.244
1 カルマン渦流速計 p.245
2 数値解析手法 p.255

謝辞 p.271

 流れによる物体の振動は、通常、装置等の機能低下および破壊の原因となるので、実際的な立場から見た場合、発生の条件と振動振幅および振動数を予測すると同時に、これを抑制する技術を確立することが重要である。
 流れ中に置かれた柱状物体からのカルマン渦の周期的な流出は、非常に広範な条件下で発生し、またこれに相当する流れの場は極めて広い範囲の実際的な装置・構造物で多く見られる形状である。したがって、カンマン渦による振動についてはこれまでに多くの研究がなされ、ある程度知られているが、まだ渦流出の同期現象の発生機構・発生範囲および振動の履歴現象については十分な理解が得られていない。
 カルマン渦励振の状態にある円柱の下流に90度ねじれの位置に配置されたもう一つの円柱による振動の抑制、および同じ配置においてカルマン渦励振が発生する数倍の流速の範囲において誘起される大きな振動は、本研究が初めて報告する現象である。前者は、振動している円柱あるいはその支持体に直接に変更を加えることなくその振動を抑制する方法を提供するものであり、今後新しい制振技術として広範な応用が期待される。後者の現象は、例えば、単独なら振動しない伝熱管の下流に、新しく管を縦に取りつけたとき、その干渉により非常に大きな振動が発生する場合があることを示している。
 これに対して本研究は、1)単独円柱のカルマン渦励振の発生機構の解明とこれにともなう渦流出の同期現象および履歴現象のメカニズムの解明、2)振動する円柱の下流に90度ねじれの位置に配置された円柱の、カルマン渦励振に対する影響ならびに振動抑制のための条件およびその機構の解明、3)同じ配置において誘起される新しい形の渦励振の挙動、発生条件および発生機構の解明、4)こま振動の原因となる流れの周期的特性、構造および励振力の解明および振動の予測を可能とする手法を与えること、を目的として行なったものである。
 以下に本研究で得られた結果ならびに成果の概要を記す。
 第1章『序論』では、本研究に関連する従来の研究を述べるとともに、本研究の目的およびその概要を示した。
 第2章『風洞実験装置、実験方法およびデータ処理法』では、本研究で使われた実験装置を示した。すなわち、各章の実験に使われた風洞実験装置と円柱の支持の条件をまとめて説明し、測定方法およびデータ処理について詳細に述べた。
 第3章『カルマン渦励振と同期現象および履歴現象』では、強制振動円柱による実験および数値計算により、一様流中の円柱の振動によるカルマン渦流出の同期現象(ロックイン現象)の発生条件を明らかにした。さらに、これらの結果に基づいて弾性支持円柱に発生する同期現象ならびに履歴現象の発生機構を明らかにした。
 第4章『下流円柱によるカルマン渦励振抑制効果』では、カルマン渦の流出によって振動する弾性支持円柱の下流に、これと同径あるいは異径の円柱を90度ねじれの位置に固定した場合の、上流円柱の振動に対する下流円柱の影響を調べ、優れた振動抑制効果を与える条件を明らかにした。次に、振動抑制効果が顕著な条件下におれる固定2円柱まわりの流れの観察ならびに円柱表面の圧力および円柱近傍の速度の測定を行い、振動抑制効果の機構を解明した。
 第5章『下流円柱により誘起された振動』では、第4章と同じ配置においてカルマン渦励振の発生流速の2.5~7倍の流速で下流円柱により誘起される大きな振動(縦渦励振)の挙動を示した。さらに、この縦渦励振の発生条件と特性を明らかにし、振動と流れの関係を調べた。そして、一般の場合についてこの振動を予測する情報を提供した。
 第6章『十字交差2円柱付近の流れの構造』では、直径が等しい2円柱が固定されている系について円柱交差部付近の流れを調べ、縦渦励振と流れの関係を明らかにした。すなわち、縦渦はTrailing vortexおよび首飾り渦の2種からなり、それらの消長が2円柱間隙に支配される事を示した。さらに、これらの流出周波数および変動揚力と2円柱間隙の関係を明らかにし、縦渦励振がこれらによる共振現象である事を示した。
 第7章『十字交差2円柱からの周期的渦流出に及ぼす上流円柱の振動および下流円柱直径の影響』では、上流円柱の振動および2円柱直径比の縦渦流出に対する影響を明らかにした。
 最後に、第8章『結論』において、本論文の各章で得られたおもな結論を総括した。
 さらに、『付録』では、本実験で使われた低流速において高精度の測定が可能なカルマン渦流速計の詳細について示した。また、第3章の実験結果と比較検討するため用いた数値解析の手法について述べた。

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